外国株式2023年:中国はWithコロナと成長重視へ、株高の素地整う

2022年は、3大要因により調整

2022年の中国株は、1)米上場の中国ADRの上場廃止リスク、2)「ゼロコロナ政策」の堅持、3)不動産市場の低迷により調整しました。1)は、米上場の中国企業の監査をめぐる米中対立によるもので、中国株のバリュエーション(株価水準)を押し下げました。2)と3)は、中国当局の政策運営による側面が強く、ともに中国の景気減速を招く要因となりました。

2023年は、3大要因の剝落による反発に期待

2022年の中国株安につながった3つの要因は、ともに2022年末にかけて剝落し始めています。1)については、中国当局が中国企業の監査へのアクセスを米当局に認めたことで、米上場の中国ADRの上場廃止リスクは大幅に低下しました。2)については、中国当局は2022年11月から「ゼロコロナ政策」を見直し、Withコロナに向けて進み始めました。12月には感染急拡大などWithコロナの初期段階の混乱もみられましたが、中国当局はワクチン接種の強化とともに「ゼロコロナ政策」の見直しを続けました。ワクチン接種率の上昇とともに感染拡大も落ち着き、2023年半ば以降は中国も遅ればせながらリオープンするとみられます。3)については、中国当局はこれまで断片的な支援にとどめていましたが、2022年末に不動産市場に対し包括的な支援に乗り出しました。

1)-3)はいずれも中国当局の方向転換を示します。これまでと違って中国当局がイデオロギーよりも現実主義へ、長期的な共同富裕よりも短期的には成長重視へ転換したことが背景と考えられます。市場にとってみれば、中国当局が一転して「フレンドリー」(友好的)になったことを意味します。この点は、中国株に対する信頼につながる重要な要素であるため、中国株のバリュエーション修正につながるとみられます。そして、Withコロナ(初期段階は混乱が想定されるものの、最終的にはリオープン)や成長重視へのシフト、および今後予想される景気浮揚策によって、中国経済や中国企業の収益は2023年(特に後半)に回復すると見込まれます。

注目テーマは、消費関連やネット大手、素材など

中国当局は2022年末にWithコロナへシフトすると同時に、2023年の経済運営方針について消費喚起と民間セクターの支援、不動産支援を掲げました。2023年に入ってからより具体的な支援措置を策定し、3月の全国人民代表会議では景気浮揚策を打ち出す可能性があります。

過去3年も続いた「ゼロコロナ政策」の撤廃に伴うペントアップ需要と合わせて考えると、旅行会社や航空、カジノなどレジャー関連銘柄に加え、消費関連サービスを手掛けるネット大手が恩恵を受けると予想されます。リオープンと不動産支援による経済の持ち直しは、銅やアルミニウムなど素材に対する需要を押し上げる可能性があり、景気に敏感な素材も注目されそうです。

李 燕
SBI証券 投資情報部(外国株担当 シニア・マーケットアナリスト)

中国出身。2006年に東京外国語大学卒業後、タワー投資顧問にて従事。Cape Asset Management Limited(日系運用会社)、みずほ証券、内藤証券を経て2021年4月よりSBI証券投資情報部に所属。香港および日本で中国株式ファンドのRMや中国株式の調査・分析業務に長年携わる。中国本土および香港の現地情報に基づいて調査・分析できることに強み。

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