クオンツ・ESGこれからのファクター投資を考える

世界的な金融政策の転換後は、新たなスマートベータ運用が登場するか

12月20日の日銀金融政策決定会合では、長期金利の変動許容幅を0.25%から0.5%に引き上げるとの方針発表を受け、株式市場はサプライズに見舞われた。今後のマーケットは、長らく低金利や量的緩和時代が続いた後の金利上昇局面となり、従来有効とされていたスタイル投資に大きなトレンド転換が訪れるとみている。過去の金融政策とスマートベータ戦略の歴史を振り返りながら今後の展開についてのヒントを探ってみたい。
かつて米国でQEが実施された時期では、経済指標に対する市場サプライズが起きると資金はクオリティ銘柄に逃避する傾向が強く、長期的に金利が低下局面にある事を背景に債券運用の代替としてのミニマムボラティリティ運用は投資資金の大きな受け皿になった。その頃に、登場したのがクオリティ指数だ。クオリティ指数とは、資本効率や財務健全性や安定成長の質が高い銘柄に投資を行う運用ベンチマークである。当指数が参照している代表的な指標は、ROE(PBR÷PER)、低財務レバレッジ等が挙げられる。
この様な投資戦略が有効だった市況に比べると、世界的に金利上昇が進むマーケットは正反対にみえる。昨今の世界景気後退懸念や金利上昇に伴う株式市場の下落が続くマーケットでは、徐々に「ヒストリカルベータ」や「財務レバレッジ」が高い銘柄における投資リターンやモメンタムの高まりを観測すると共に、バリュエーション面ではサプライズ時の低PBRの有効性が強くなってきた。これらのトレンドは、クオリティ指数の特徴とは対照的な動きであると言えよう。総じて、「逆クオリティ指数」のようなスマートベータ戦略が今後登場するのかに注目している。

波多野 紅美
SBI証券 金融調査部 チーフクオンツアナリスト

事業会社、外資系証券会社を経て、2010年MSCI入社、2019年6月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券より転籍。日経ヴェリタス誌ランキングは、2019年はテクニカルアナリスト7位とクオンツアナリスト8位。セールストレーディングや定量リサーチ分野で実務経験を積む。アナリスト業務では、主にESG投資や定量分析に従事する。ロンドンImperial College工学部、東京工業大学総合理工学部修士課程卒業。

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