「10年に1度」?意外な猛暑関連

「10年に1度」?意外な猛暑関連

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実

2025/07/09

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「10年に1度」?意外な猛暑関連

2025年の東京株式市場は、トランプ米大統領に振り回され続け約半分を通過しました。しかし7/7(月)に同氏が日本からのすべての輸入に25%の関税を賦課すると発表したことで、日本の「トランプ関税」問題は大きなヤマ場を越した印象です。相互関税が30%ないしは35%賦課されたり、自動車関税が強化されるなどの最悪の事態を免れた可能性が大きい上、交渉期限も7/9(水)から7月いっぱいに実質延長された形になっています。それらを好感し、7/8(火)の日経平均株価は上昇し、自動車株も堅調に推移しました。

投資家はクールに市場に対応できるようになるでしょうか。どうやら、そうもいかない事情がありそうです。2025年夏の北半球は世界的な熱波に襲われており、欧州では気温が40度を超える所が多出しています。日本でも、6月は大した雨も降らず暑い日が多くなり、西日本各地は7月を迎える前に軒並み梅雨明けとなりました。7月は「10年に1度」と言われる猛暑日が続くと予想されており、クールになるには程遠い日々が続きそうです。

こうした中、株式市場では空調大手のダイキン工業(6367)が7月には入って動意をみせるなど「サマーストック」の一角が動意をみせています。今回の新興株ウィークリーでは、猛暑関連とみられながら、一般には気づかれにくい銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。

①東証スタンダード市場、または同グロース市場に上場

②時価総額が100億円以上

③売買高移動平均(25日)が2万株以上

④各種報道等、または「猛暑」や「熱中症」、「台風」、「サマーストック」等のキーワードで検索し、導き出される銘柄

⑤今期の会社予想数値のいずれの利益項目にも赤字予想がない

⑥取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く

図表の銘柄は、上記条件をすべて満たしています。掲載は銘柄コード順です。



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【参考】 7/1(火)~7/8(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 「10年に1度」?意外な猛暑関連

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 株価
(7/8・円)
注目の意外なサマーストックは?
1914 1914 1914 1914 日本基礎技術 662 建築基礎の特殊分野で活躍。土砂災害を防ぐ等、防災分野の新工法も開発
4992 4992 4992 4992 北興化学工業 1,379 気候変動により農薬への需要増
6915 6915 6915 6915 千代田インテグレ 2,807 総合部品メーカー。断熱・遮熱機能を持つ素材と加工法に強みを持つ製品も
7564 7564 7564 7564 ワークマン 6,670 FCメインに作業服・作業関連用品を販売。ファンウェアが既存店売上高に追い風
9166 9166 9166 9166 GENDA 819 室内で楽しめるアミューズメント施設やカラオケなどを運営
9768 9768 9768 9768 いであ 3,165 環境・建築コンサルタント。気候変動・防災などの調査依頼も行う
  • ※会社発表データ、Quick Workstation Astra Manager、各種報道等をもとにSBI証券が作成

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■千代田インテグレ(6915)~「ソフトプレス」を中核とする総合部品メーカー。猛暑で自動車、空調向け製品への需要増?

★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■「ソフトプレス」を中核とする総合部品メーカー

総合部品メーカー。軟らかい素材(フィルムやウレタンなど)を顧客の要望通りに自在に加工する技術『ソフトプレス』を事業の中核として多分野他企業に部品を製造・販売しています。

業種別の売上高構成比(24.12期)は主なもので、プリンターやパソコンなどのOA機器部品が34%、自動車向け機器部品が30%、テレビ・映像機器向けが15%です。ほかは、通信機器やアミューズメント機器、医療・健康機器向け部品などを扱っています。

世界13カ国40拠点18工場を有するグローバルメーカーです。海外売上高比率(24.12期)は75%に上り、10期前から全売上高の約4分の3水準を維持しています。

ただ、日系メーカーの現地生産現場への供給が多いようです。確認できる限り最新の資料(22.12期2Q決算説明資料)によると、対非日系売上高比率は4分の1程度です。今後の目標の一つとして、外資メガサプライヤーの開拓を掲げています。製造拠点はアジアが中心でしたが欧米エリアにも順次拡大中で、関税や地政学リスクへの懸念にも対応しています。

主要取引先には、トヨタグループ、ソニー、NEC、SAMSUNGなど名だたる大企業があります。しかし、24.12期の有価証券報告書では、売上高比率が10%以上を占める企業情報の開示はみられませんでした。技術力以外にも、特定の顧客に依存していないことも強みのひとつであるとみられます。

■猛暑で自動車、空調向け製品への需要増?

多分野で事業を展開する中でも、猛暑によって自動車や空調向け部品が恩恵を受けると想定されます。

自動車向け部品では、EV/HVに搭載されているリチウムイオン電池は高温に弱く、熱対策部材の需要増加が見込まれます。さらに直射日光に晒されやすい、ディスプレイやセンサーなど、同社の加工法などの技術力に裏打ちされた断熱・遮熱機能を持つ製品への需要増が期待されます。

空調・冷却関連部品では、猛暑によるエアコンの販売増が予想されます。エアコン内部に使用される断熱部材や防振材、粘着テープ等の同社製品への需要も増加が期待されます。

■株主還元も強化。隠れ高配当銘柄?

中期経営計画では、PBR1倍が目標。7/7(月)時点でPBRは0.68倍と割安水準に位置しています。トランプ関税を背景に、今期1Q(25.1-3月期)決算発表時に通期の目標業績数値を下方修正したことなどが嫌気されたもようです。


前期(24.12期)は、東南アジアが最も受注高が多かったのに加え、前年比の伸び率もトップで業績拡大に寄与しました。

今期は中計(25.12期~27.12期)の初年度に該当し、高付加価値ビジネスの拡大に取り組む変革期に突入しました。DOE(株主資本配当率)4.0%、総還元性向120%を目標に掲げています。会社計画の1株当たりの配当金は公表されていませんが、直近3カ年の総還元性向は109~124%でした。

DOE4%と25.12期1Q(1-3月期)末の1株純資産を基準に計算すると1株当たりの予想年間配当金は、155円です。前期(24.12期)からは減配となる計算ですが、7/8(火)の終値に対し、予想配当利回りは5.5%と高水準といえるでしょう。

■ワークマン (7564)~FC展開をメインに、作業服・作業関連用品を販売。「ファンウェア」が好調

★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

FC展開をメインに、作業服・作業関連用品を販売

作業服・作業関連用品を中心に、アウトドア・スポーツウェア等を販売する大型専門チェーンです。物販チェーン7社を中心とする流通企業グループ「ベイシアグループ」の中核企業になっています。

全国に1,051店舗を展開し、うち974店が個人経営のフランチャイズ(FC)店です。店舗粗利の40%を加盟店の、60%を本部の収入とし、本部が店舗地代家賃、設備投資、配送コスト、折り込みチラシ等の経費を負担する仕組みになっています。商品の仕入は海外からが約63%になっています。(25.3期)

「WORKMAN」「WORKMAN Plus」「WORKMAN Pro」「ワークマン女子」4業態があり、ターゲットを分けて客層拡大を図っています。取扱商品はおおむね同じで「見せ方」を変えて様々な顧客にアピールしています。

客層拡大・競合他社との差別化を目的に、PB(プライベートブランド)商品開発を積極的に行っています。チェーン全店売上高に占めるPB比率は18.3期32%から24.3期には67%まで拡大しました。

5月、6月に既存店売上高が急伸~「ファンウェア」が追い風

25.3期の売上高は1,369億円(前期比3%増)、営業利益243億円(同5%増)でした。3期ぶりの増収増益です。チェーン店売上高はおおむね計画通りでした。

26.3期は売上高1,471億円(前期比7%増)、営業利益260億円(同6%増)と増収増益を継続する計画です。年間1株配当は73円(中間配当なし)の予想です。中期計画では30.3期に店舗数で1,300店舗、営業利益は350億円を目指しています。

そうした中、会社側発表の月次販売動向によると、4月の既存店売上高は前年同月比0.1%増にとどまりましたが、5月は同11.4%増、6月は15.0%増と急伸しました。両月とも気温の上昇によりファンウェア(電動ファン付ウェア)が伸長したようです。

ファンウェアは日本生まれの製品で、2018年の猛暑を契機に市場が拡大。物流、警備、テーマパーク等次第に採用業種が広がりました。繊維専門誌「繊維ニュース」が公表した予想では、2025年の市場規模は240億円程度と推計されています。

気象庁によると今夏の日本は気温が高く、猛暑が続くとみられます。ファンウェアの需要が拡大し、同社業績にとっては追い風になることが期待されます。

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