「トランプ関税」のヤマ場は通過か?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2025/07/08
日経平均は4週ぶり反落。貿易交渉の期限は今月末まで延期
7月第1週(6/30~7/4)の日経平均株価は、前週末比339円91銭安(▲0.85%)と週足ベースで4週ぶりに反落。4/7(月)を底に取引時間中ベースで1万円超上昇する場面もありましたが、過熱感が一服しました。6月の日経平均株価は前月末比+6.6%と急速に回復し、本年1月以来の4万円台を回復しました。7月に入ると新四半期突入のための機関投資家の益出しや、ETF分配金捻出のための売りも生じるため、需給面でも抑制された部分もあったとみられます。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/27~7/4・図表7)の首位は、東京電力ホールディングス(9501)です。7/1(火)に同社や6位の関西電力(9503)が、データセンター事業への本格参入を目指し、大型投資計画を行うと報じられました。その後、7/4(金)に東京電力ホールディングス(9501)は、データセンターや半導体工場への電力供給などを中長期の成長戦略と位置づけ、電力と通信のインフラを一体で整備する「ワット・ビット連携」構想を明らかにしています。
2位のダイキン工業(6367)は、海外新工場での生産拡大などが寄与するとし、6月末に国内証券から“買い”でレーティングが開始されたことや、目標株価の引き上げなどが好感されました。また、うだるような暑さが続く中、サマー・ストック(猛暑関連株)として物色された面もありそうです。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/27~7/4・図表8)は、首位の川崎重工業(7012)を筆頭に、防衛関連の大手3社が並びました。また、ゲーム関連株なども複数銘柄が顔を並べ、6月の株価上昇をけん引してきた業種への売りが目立った格好です。
7月第2週(7/7~7/11)の日経平均株価は下落してスタート。週中の7/9(水)に米政権による相互関税の一時停止期限を迎える予定で、トランプ大統領は7/9(水)の期限の延期はしないとしていました。しかし、現地時間7/7(月)、トランプ大統領は貿易相手国へ書簡を送付したと発表。日本の輸入品に対しては8月から25%の関税を課すと表明し、交渉期間が参院選後の今月末まで延期されました。株式市場は、TACOトレード(Trump Always Chickens Out=トランプ米大統領はいつも土壇場で逃げる)を織り込み、足元の株高局面が続いていました。現在は、TACOトレードによる期待が後退したことで、一定の調整が入ることが想定されます。また、企業業績にとっても先行き不透明感が増した状況です。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/27~7/4)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/27~7/4)

「トランプ関税」のヤマ場は通過か?
7/9(水)に、海外から米国への輸入について賦課される「相互関税」の上乗せ部分の停止期間が終わります。トランプ政権は米国時間7/7(月)に、複数国に書簡を送付し、「相互関税」等の税率を示すとしていました。そうした中、日本への税率は25%とすることが通告されました。適用は8/1(金)からとなる予定です。
4月に示されていた「相互関税」(24%)より1%高い税率になります。ただ、適用が8/1(金)以降となったことで、交渉期間が実質的に延期された形になりました。一時30%ないし35%といった税率で賦課される可能性が台頭していましたが、それはなくなったとみてよさそうです。別途賦課されている鉄鋼・アルミ関税50%、自動車関税25%はそのままで、上記の25%が上乗せされる訳ではありません。
日本にとって、「トランプ関税」でこれ以上悪材料が重なる可能性は後退したとみてよさそうです。日米通商交渉が成功裏に終われば関税率が下がる可能性があり、失敗しても関税率25%に収まる可能性が大きいと考えられます。
とはいえ、日本から米国への輸出に関税が賦課される見込みである以上、その影響については検討しておくべきでしょう。
日本から世界への輸出総額109兆円弱のうち、米国は21.6兆円を占めています(令和6年度)。図表9は、21.6兆円の対米輸出のうち、各業界が何%を占めているのかを、その比率が高い業種の順に示しています。財務省「貿易統計」では、業種を9つに大別していますが、ここでは、それよりも一段階細かい区分で表示しています。
図表9からご理解いただけるように、日本から米国への輸出総額の3分の1強が、「自動車+自動車の部分品」で占められています。「自動車+自動車の部分品」の輸出額は計7兆4千億円ですが、米国から日本への輸入はわずか1,877億円です。米国の指摘通り、日本は米国から自動車を買っていないに等しいというのが現実です。このことの良し悪しは別として、米国にとり、対日貿易赤字を縮小しようとするならば、自動車業界がターゲットになりやすいことは明らかであると考えられます。
ただ、自動車最大手のトヨタ(7203)では、米国販売台数に対し、日本からの輸入は23%で、逆に米国での現地生産比率は約5割です。ホンダ(7267)の米国販売についても現地生産が多く、日本からの輸入はほぼありません。日本の自動車業界の利益額トップ2社の米国販売において、現地生産が進んでいることを考えると、「トランプ関税」については十分対応可能ではないかと思われます。
7/8(火)の東京株式市場では、自動車株の一角が買い先行となりました。自動車株は「トランプ関税」のヤマ場を越えた可能性が大きそうです。
図表9 米国への貿易黒字の多くは自動車・自動車部品

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