アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~4-6月期の好決算期待銘柄~

投資情報部 榮 聡
2025/07/07
先週の米国株式市場は、関税交渉進展への楽観、減税・歳出法案の成立への期待、6月雇用統計が懸念したほど悪くなかったことを受けてS&P500指数とナスダック指数の最高値更新が続きました。今週の株価材料として、トランプ関税の動向、FOMC議事要旨、NY連銀のインフレ期待などが注目されます。
今回は4-6月期決算発表で好業績が期待される銘柄から、メタ プラットフォームズ A(META)、ネットフリックス(NFLX)、チャールズシュワブ(SCHW)、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、ビザ A(V)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、6ヵ月)

約4ヵ月ぶりに最高値を更新しました。主要な株価指数が最高値を更新した場合には、3~4%程度の上値を試す展開となることが多いため、今回もそのような動きが想定されます。7/3(木)終値は2月の高値に対して2.1%上です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は6/26(木)終値~7/3(木)終値によります。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
素材 | 3.8% | 4.3% | 19.1% |
資本財・サービス | 2.8% | 3.3% | 27.1% |
金融 | 2.7% | 4.0% | 20.6% |
一般消費財・サービス | 2.6% | 4.5% | 23.5% |
情報技術 | 2.5% | 8.1% | 41.0% |
S&P500 | 2.3% | 4.6% | 24.0% |
生活必需品 | 2.0% | 0.3% | 6.7% |
不動産 | 2.0% | 0.1% | 10.0% |
エネルギー | 1.6% | 5.4% | 10.6% |
コミュニケーションサービス | 1.4% | 3.3% | 27.4% |
ヘルスケア | 1.0% | 1.1% | 0.8% |
公益事業 | 0.9% | 1.3% | 11.4% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ナイキ | 22.1% |
オラクル | 11.5% |
フォード・モーター | 11.1% |
フェデックス | 9.1% |
ゼネラル・モーターズ | 7.6% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -4.0% |
テスラ | -3.2% |
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) | -2.1% |
イーライリリー | -1.8% |
GEエレクトリック | -1.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.3%、ダウ平均は2.3%、ナスダック指数は1.6%の上昇でした。S&P500指数とナスダック指数は最高値の更新が続いています。
週前半は関税交渉進展に対する期待、減税・歳出法案成立への期待、利下げ前倒し期待、などが相場を押し上げました。7/3(木)の非農業部門雇用者数が市場予想を上回って堅調で、利下げ期待は後退しましたが、株式相場は続伸しました。
関税交渉では7/2(水)にベトナムと合意に達して、他国の交渉進展に対する期待を高めました。トランプ政権の減税・歳出法案(「One Big Beautiful Bill」)は7/3(木)午後に下院で可決して成立しました。
同日は半日取引のため、可決前に市場は閉じていましたが、可決の可能性が高いことがポジティブに織り込まれていたとみられます。2017年の「トランプ減税」の延長やチップ収入、残業代への新たな減税を含み、景気の下支え効果が期待されます。
業種指数では、素材は産業素材などが上昇、資本財・サービスは幅広い産業機器銘柄が上昇、金融は銀行のストレステスト通過を好感。
個別銘柄で騰落率トップのナイキ B(NKE)は、6/26(木)引け後に発表した6-8月期売上見通しが、市場が想定したほど悪くないことが好感された上、先週は米国・ベトナム間の関税交渉が合意に達して、さらに買われました。米国がベトナムに対して課す関税率を20%、中国などからベトナム経由で米国に輸出される製品には40%の関税を課す一方で、ベトナムは米国製品に対して関税をゼロにすることで合意しました。
今週の米国株式市場
S&P500指数は6/27(金)に2月に付けた史上最高値を更新した後も高値の更新が続いて非常に強い動きです。株価上昇の背景として、以下が考えられます。
(1)市場の注目は、トランプ関税から減税策や規制緩和に移っている
(2)AI半導体の需要拡大が確認されたことから、テクノロジー株全般に対する市場の信頼が回復した
(3)「ディープシーク」ショックやトランプ関税ショックを受けて投資家は株式のポジションを落としたものの、相場が急激に戻ったことから、株式ポジションを引き上げる動きがあり、好需給につながっている
主要な株価指数が最高値を更新した場合には、3~4%程度の上値を試す展開となることが多く、今回もそのような動きが想定されます。ただし、関税の影響による景気減速、物価上昇の兆しがあるため、過度に楽観的になるのは控えたい局面でしょう。
今週の株価材料として、トランプ関税の動向、FOMC議事要旨、NY連銀のインフレ期待、などが注目されます。
関税引き下げ交渉に関してベッセント財務長官は、7/9(水)の上乗せ関税の延長期限までに合意を目指すグループと9/1(月)のレイバーデーをめどとして合意を目指すグループに分けていると発言しています。市場は米国が課す関税の世界加重平均は10~20%に収まることを前提に動いていると言われています。これを大きく超えるような兆しがあれば、警戒感が高まりそうです。
先々週から先週にかけて、金融当局者発言で利下げ前倒し期待が一旦高まりましたが、その後に堅調な6月雇用統計で早期利下げ期待が後退して、政策金利に対する市場の見方が揺らいでいます。そのため、FOMC議事要旨も要注目です。FedWatchによると、7月は据え置き、9月、10月と2回連続で利下げを行うというのが中心的な予想となっています(日本時間7/7(月)午前8時半)。
7/8(火)に発表予定の6月NY連銀インフレ期待は前年比で+3.2%と、前月に続いて落ち着いた動きとなることが予想されています。
今週の5銘柄
今回は今週から始まる4-6月期の発表において堅調と期待される銘柄を、以下のスクリーニングで抽出してご紹介いたします。
【スクリーニング条件】
(1)通期予想EPSの修正率が、過去3ヵ月、4週とも0%以上
(2)4-6月期業績が増収増益予想
(3)S&P100指数採用銘柄で、8月の第1週までに決算発表予定の銘柄
条件を満たす銘柄を通期予想EPSの過去3ヵ月修正率が大きい順に図表3に抽出しました。これら銘柄から、メタ プラットフォームズ A(META)、ネットフリックス(NFLX)、チャールズシュワブ(SCHW)、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、ビザ A(V)を選んでご紹介いたします。
なお、上位銘柄のうち、アルファベットはAI利用の広がりが、同社のネット検索事業にマイナスの影響を与える可能性があること、パランティアテクノロジーは目標株価乖離率のマイナス幅が大きいことを考慮して、今回は取り上げていません。
図表3 4-6月期の好決算が期待される銘柄のスクリーニング(S&P100指数採用銘柄対象)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/3) |
予想PER (倍) |
ポイント |
買付 | メタ プラットフォームズ A(META) | 719.01ドル | 22.2 | 【広告単価が堅調】 ・4-6月期業績の伸びは1-3月期から減速ながら、前年同期比で10%以上の増収増益が予想されています。過去4週の通期予想EPS修正率も+4.8%と足もとでも業績の好調が続いていると考えられます。米国・カナダの広告単価は1-3月期に前年同期比14%増と10-12月期の前年同期比12%増から加速しており、広告単価の伸びが好業績の背景にあるとみられます。 ・少額輸入関税の見直しで「Temu」など中国EC事業者の広告は減少しているとみられますが、広告ターゲティングの改善やTikTok事業の不透明感などが助けになっているとみられます。中期的には生成AIへの投資が広告事業の押し上げにつながると期待されます。 | |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 1,297.18ドル | 48.8 | 【新規加入者増と値上げで業績拡大】 ・4-6月期の売上は前年同期比15%増と、1-3月期の同13%増から加速の市場予想です。加入者数の増加や1-3月期に行った米国での料金引き上げの効果が全面的に反映される見通しです。会社は2025年12月期の売上を前年比12~14%増に相当する435~445億ドルを計画しています。 ・WWE(プロレス)、NFL(アメリカンフットボール)との提携を通じたライブイベント番組への展開が注目されてきましたが、7/2(水)にWSJ紙が報じたスポティファイとの提携によるコンサート、音楽コンクール、音楽賞番組など音楽コンテンツへの展開も注目されそうです。 | |
買付 | チャールズシュワブ(SCHW) | 91.48ドル | 21.3 | 【2025年は25~30%の利益成長を見込む】 ・4-6月期業績は、売上が前年同期比20%増、EPSが同46%増と好調となる市場予想です。株式市場のボラティリティの高まりが顧客活動の活発化につながっていることが期待されます。会社は2025年12月期通期では、25~30%の増益を計画しています。 ・地銀の信用不安を受けた資金引き上げの動きは落ち着き、新規資金の流入による顧客資産の伸びは前年比5~7%の水準に戻ると期待されます。2025年初にCEOが交代しましたが、戦略に大きな変更はないとみられます。収益の改善と株主資本の増加を受けて自社株買いの再開が期待されます。 | |
買付 | フィリップ モリス インターナショナル(PM) | 178.88ドル | 24.0 | 【紙巻タバコ代替品が好調】 ・米国で加熱式タバコの「IQOS」が普及期に入っていることから、堅調な業績拡大が続くと期待されます。同社は米国で紙巻タバコを販売していないことから、「IQOS」の普及は製品の代替でないため、売上増につながりやすいです。4-6月期は前年同期比9%の増収、同17%の増益が予想されています。 ・1-3月期には加熱式タバコ「IQOS」とニコチンパウチ「Zyn」の増加によって、煙の出ないタバコ製品の売上構成比は42%に達しました。米国での「IQOS」展開によって、同比率を2030年までに3分の2以上にするとの会社目標は達成可能と見込まれています。 | |
買付 | ビザ A(V) | 358.86ドル | 28.1 | 【堅調な業績見通し】 ・消費の減速など事業環境には懸念される点もありますが、4-6月期決算も堅調な伸びが見込まれています。主力のクレジットカード、デビットカードが決済のデジタル化の恩恵を受けるほか、付加価値サービスへの展開や新しい資金フローの取り込みが寄与していると考えられます。 ・ステーブルコインのサークルインターネットの上場が注目されたときには、決済事業が浸食されるのではないかとの懸念から株価が下落しましたが、いまのところ「懸念」にとどまっています。1-3月期決算では、決済総額(為替の影響を除く)が米国で前年同期比7%増、海外が同11%増、クロスボーダー取引が同13%増などと堅調でした。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ビザが2026年9月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
7(月) | ||
8(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) ・NY連銀1年インフレ期待(6月) ・米消費者信用残高(5月) ・3年国債入札 |
|
9(水) | ・日本工作機械受注(6月) ・FOMC議事要旨(6月17日、18日開催分) ・10年国債入札 |
|
10(木) | ・米新規失業保険申請件数(7月5日に終わる週) ・サンフランシスコ連銀デイリー総裁が講演 ・30年国債入札 |
デルタ航空、コナグラブランズ |
11(金) | ||
14(月) | ・中国実質GDP(4-6月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高(6月) |
|
15(火) | ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(7月) ・米消費者物価指数(6月) ・ボストン連銀コリンズ総裁が講演 ・ダラス連銀ローガン総裁が講演 |
JPモルガンチェース、ウェルズファーゴ、シティグループ |
16(水) | ・米生産者物価指数(6月) ・米鉱工業生産(6月) ・米貿易統計(6月) ・NY連銀ウィリアムズ総裁が講演 |
ジョンソン&ジョンソン、バンクオブアメリカ ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー |
17(木) | ・米新規失業保険申請件数(7月12日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(7月) ・米NAHB住宅市場指数(7月) |
台湾セミコンダクター、ネットフリックス ペプシコ、トラベラーズ |
18(金) | ・米住宅着工・建設許可件数(6月) ・米ミシガン大学消費者信頼感指数(7月) |
アメリカンエキスプレス |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
新着記事(2025/07/07)

外国株式
アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~4-6月期の好決算期待銘柄~
先週の米国株式市場は、中東での停戦が実現・維持されたほか、早期利下げ期待が台頭し、また、AI半導体への物色が継続されて、S&P500指数は2月に付けた最高値を約4ヵ月ぶりに更新しました。今週の株価材料として、トランプ関税の動向、雇用指標、祝...
投資情報部 榮 聡
2025/07/07

投資信託
リスクはS&P500の約半分で好成績!? S&P500・日経平均 年初来高値で考えたい分散投資
2025年の上半期(1月~6月)が終了しました。2025年上半期の株式市場においては、3月下旬から4月上旬にかけて米国の関税政策に対する不透明感などから大幅下落となりましたが、その後は米関税政策に対する悲観論の後退や米利下げ観測の高まりなど...
投資情報部 川上雅人
2025/07/07

国内株式
30万円以下で買える割安・高配当株8選
米中通商会議の進展期待や、米労働指標が堅調さを示したことで、東京株式市場では日経平均株価が6/9(月)~6/12(木)に4日連続で終値が38,000円台を超えて推移しました。しかし、イスラエルによるイラン攻撃が伝わり、6/13(金)の東京株...
投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実
2025/07/04

国内株式
年前半に活躍し、年後半も期待の好業績銘柄10選
2025年も半分が過ぎました。日経平均株価は、過去3番目の下落幅を記録した4/7(月)の急落後は上昇に転じ、6/27(金)には約5カ月ぶりに4万円台を回復しました。トランプ関税や地政学的リスクが逆風となりましたが、それらのリスクが後退するこ...
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2025/07/02
免責事項・注意事項
・レポートおよびコラムの配信は、状況により遅延や中止、または中断させていただくことがございます。あらかじめご了承ください。
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。