日銀「金融政策正常化」が追い風!?の銀行株

日銀「金融政策正常化」が追い風!?の銀行株

投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実

2024/09/06

日銀「金融政策正常化」が追い風!?の銀行株

東京株式市場は、一時落ち着きを取り戻したかにみえましたが、再び波乱の展開となっています。9/4(水)には日経平均株価が前日比1,638円安と、8/5(月)以来の下落幅を記録しました。

エヌビディア株の下落が続き、日本の半導体株や関連株も軟調な展開です。米経済指標の下振れを受けて米経済悪化懸念が再燃し、米長期金利が8/5(月)の水準を下回り、円高・ドル安が続いたことも日本株への逆風になりました。

そうした中、足元の株式市場は、米国時間9/6(金)発表の米雇用統計(8月)次第といった状況になっています。事前の市場予想(Bloombergコンセンサス)では、非農業部門雇用者数が前月比16.5万人増(前回は11.4万人増)、失業率が4.2%(同4.3%増)と、台風の影響があったとみられる7月から改善の見通しです。予想通り改善が確認されれば株価は落ち着き、雇用者数が予想を大きく下振れると再び波乱につながる可能性があります。

今後はどうなるでしょうか。日銀は金融引き締め(正常化)を指向し、米国は金融緩和を指向しており、日米金利差は縮小しやすく、円高・ドル安が進みやすい状況は続くとみられます。円高・ドル安が進むと日経平均株価は下がりやすい面があり、要注意です。

ちなみに、日銀が金融引き締めを指向し、金利上昇が予想される中で、そのメリットを受ける業種があります。銀行セクターはその代表的存在のひとつでしょう。銀行が調達する資金の金利(預金利回り等)が上がる一方で、貸出金利の引き上げで利ざやは拡大しやすくなります。金利を引き上げられるということは景気が良くなっている証であるともいわれ、貸倒引当金の減少が期待されます。

日本の10年国債利回りは2022年末に0.42%でしたが、9/5(木)時点では0.87%に上昇しています。この間、TOPIXは38.5%上昇しましたが、東証銀行株指数は59.2%上昇と大きくアウトパフォームしています。

市場(Bloombergコンセンサス 9/5時点)では、日本の10年国債利回りについて、2024年末1.10%、2025年末1.35%、2026年末1.57%と予想しています。もし、その通りになるのであれば、また水準はともかく長期金利が上昇基調となるのであれば、銀行株の上昇は有望であると考えられるのではないでしょうか。

ちなみに、銀行業(日経業種・9/3データ)の加重平均PBRは0.73倍(日経平均は1.40倍)、同予想配当利回りは3.22%(同1.93%)と、割安かつ配当利回りは高めでもあります。投資を促す要因は複数ありそうです。

こうした銀行株への投資を検討するのであれば、業種指数との連動を狙って投資するのもひとつの手です。NEXT FUND 東証銀行業株価指数連動型上場投信(1615)は流動性も豊かなようです。

ちなみに、東証上場の「銀行業」に属す銘柄の時価総額上位(2024/9/4時点)は以下の通りです。予想配当利回りはBloombergコンセンサスの予想EPSに基づきます。

※以下の銘柄は客観的なデータを示す目的で紹介しており、推奨の意図はありません。

・三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)・・・・・株価(9/4終値)1,509円(予想配当利回り年3.3%)

以下同様

・三井住友フィナンシャルグループ(8316)・・・・同9,415円(同3.6%)

・みずほフィナンシャルグループ(8411)・・・・・同2,974円(同4.0%)

・ゆうちょ銀行(7182)・・・・・・・・・・・・・同1,375.5円(同3.8%)

・三井住友トラスト・ホールディングス(8309)・・同3,582円(同4.0%)

上記5社で、銀行時価総額合計の75%を占めており、銀行株指数はこれらの銘柄の動きに強く影響を受けると考えられます。

今回の「日本株投資戦略」ではさらに、以下の条件でスクリーニングを行ってみました。銀行株の中から、好業績が見込まれ、割安感が強く、予想配当利回りが高い銘柄を抽出してみました。ご参考頂ければ幸いです。

(1)東証銀行株指数の構成銘柄

(2)業績予想を公表するアナリストが3名以上

(3)予想配当利回り(Bloombergデータ)3%超

(4)PBR(同)0.9倍未満

(5)今期・来期とも純利益(同予想)が増益予想

図表の銘柄は上記の(1)~(5)をすべて満たしています。掲載は予想配当利回りの高い順となっています。

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気になる投資テーマ等がございましたら、こちらにご意見お待ちしております。

■図表 『日銀「金融政策正常化」が追い風!?の銀行株

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 終値(円)
【9/4】
市場予想年間
配当利回り
PBR(倍)
8309 8309 8309 8309 三井住友トラスト・ホールディングス 3,582 4.03% 0.81
8411 8411 8411 8411 みずほフィナンシャルグループ 2,974 3.95% 0.72
7182 7182 7182 7182 ゆうちょ銀行 1,375.5 3.81% 0.54
5831 5831 5831 5831 しずおかフィナンシャルグループ 1,279.5 3.78% 0.58
8354 8354 8354 8354 ふくおかフィナンシャルグループ 3,761 3.46% 0.71
8306 8306 8306 8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 1,509 3.31% 0.85
7186 7186 7186 7186 コンコルディア・フィナンシャルグループ 816.2 3.31% 0.74
8331 8331 8331 8331 千葉銀行 1,189 3.11% 0.71
スクロールできます
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
  • ※年間予想配当利回りは、市場予想(Bloomberg)1株当配当金をベースに計算

一部掲載銘柄を解説!

■ふくおかフィナンシャルグループ(8354)~国内金利の上昇やTSMCの九州進出が追い風

★月足チャート(5年)

  • ※データは2024/9/6 (月足)10:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■九州を代表する地域金融グループ

九州を拠点とする国内最大規模の地域金融グループ。福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行、福岡中央銀行の4つの地銀を中心に、証券会社、カード会社、コンサルティング会社など幅広い事業を展開しています。

2022年12月、台湾の中國信託フィナンシャルホールディングと業務提携を発表。TSMCの熊本進出をきっかけに、台湾と九州の相互進出や連携を支援しています。TSMCの熊本進出にともなう経済波及効果は2031年までの10年間で約11兆2,000億円の上るとの試算(九州FG発表値)で、九州経済全体の大きな成長材料です。

■国内金利上昇が追い風

日銀による金融政策正常化の影響に関しては、現状の国内の市場金利水準が継続した場合、27.3期までで資金利益は100億円程度増加するとしています。しかし、同目安は24.3末時点の金利が前提で、日銀は7月末にも0.25%ptの追加利上げを実施済みです。市場金利が0.1%pt上昇すると、3年後(27.3期)の資金利益は70億円程度増加する計算としており、業績寄与が期待されます。

直近業績動向は堅調。利回り反転に伴う貸出金利息の増加が寄与した格好です。通期計画に対する今期1Q(24.4-6月期)時点の進捗率は、コア業務純益が27%、連結純利益が30%と順調に推移しています。

■設立以来、非減配を記録!

2007年に設立して以来、一度も減配はありません。配当方針に関しては、配当性向35%程度の他に、連結純利益の目安テーブルに応じて1株あたり配当金目安を設定しています。

また、安定的な配当実施を目指しており、23.3期の連結純利益は311億円でしたが、配当性向63%で増配を実施しました。今期(25.3期)計画の連結当期純利は685億円で、年間の1株あたり配当は130円になる予定です。

■コンコルディアフィナンシャルグループ(7186)~ポテンシャルの高い営業基盤が強み。金利上昇の恩恵が顕在化

★週足チャート(2年)

  • ※データは2024/9/6 (週足)10:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■ポテンシャルの高い東京・神奈川が主戦場

1920年に横浜最大の七十四銀行が破綻し、預金者救済と地域経済安定のため、地元財界が立ち上がって設立した「横浜興信銀行」が母体です。1957年に横浜銀行へ社名変更。2016年に東日本銀行と経営統合し、現体制となりました。

東京・神奈川は上場企業の60%が集積し、富裕層も集中しています。当社はそうしたポテンシャルの高い東京、神奈川に数多く出店していることが強みです。

金利は米国等海外で低下傾向、国内で上昇基調です。そうした中、国内貸出金の比率はメガバンク3社合計の63%(23.3期)に対し、当社は96%であり、国内金利上昇の恩恵は大きいとみられます。

ROE向上を重視し、①収益力強化、②コストコントロール、③リスクアセットコントロール、④資本の最適配分、⑤株主還元の充実に取り組んでいます。

1四半期に金利上昇の恩恵が顕在化

25.3期1Q(24.4-6月期)は、純利益が226億円(前年同期比11%増)でした。国内預貸金利息は貸出金残高増加に加え、市場金利上昇で利ザヤが改善しました。通期では純利益750億円(前期比12%増)が会社予想です。

国内貸出金利回りから国内預金利回りを差し引いた「国内預貸金利ざや」は24.3期上期0.950%から同下半期0.958%、25.3期1Qは0.975%と拡大しつつあります。会社側では政策金利変更(0.25%への引き上げ)が与えるプラス影響額(有価証券運用を除く)は25.3期に70億円、4年後に230億円と予想しています。仮に今後も金利の上昇が続けば、さらなる利ざやの拡大が期待できそうです。

株主還元については、横ばいまたは増配を継続する「累進的配当」を基本とし、配当性向は40%程度を目安にしています。25.3期は上期13円、下期13円、年間26円(前期は23円)が会社計画で、9/4終値816.2円に対する予想配当利回りは3.18%です。「柔軟かつ機動的な自社株の取得」にも努め、22.3期100億円、23.3期60億円、24.3期70億円(11/10決議)と直近は3年連続で実施しています。

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