金利正常化に備えよ?キャッシュリッチな9銘柄

金利正常化に備えよ?キャッシュリッチな9銘柄

投資情報部 栗本奈緒実 鈴木英之

2025/09/12

金利正常化に備えよ?キャッシュリッチな9銘柄

東京株式市場では、9月11日に日経平均株価が44,372円と史上最高値を更新。一方、予想PERは18倍超と過去10年間で最高を記録し、やや過熱感を帯びてきたようです。株高をけん引したのはAI関連のグロース株が中心となりました。

9月第3週は、日米で中銀ウィークを迎える予定です。米国ではFRBによる利下げがほぼ確実視されています。一方、日本では日銀が9月は5会合連続で政策金利の据え置きとなるとの見方が大方です。

国内政治情勢は、短期的に先行き不透明感が強まっています。石破首相が9/7(日)に辞任を表明し、10/4(土)に自民党総裁選の投開票が行われる予定です。新政権の積極財政に期待感は募っていますが、その場合日銀の利上げに対してけん制が入る可能性もあります。また、米国では足元の経済指標が弱含んでいることなどもあり、不確実性が大きい中、9月会合での政策金利の引き上げに対し、日銀は慎重にならざるを得ないといった状況です。ただ、年内や翌26年年初での年初での利上げは、引き続き予想が織り込まれています。

時期の特定は難しいですが、物価の粘着性や金融政策の正常化の流れを踏まえれば、日銀はいずれ利上げに向かう公算が大きいです。


そのため、今回の「日本株投資戦略」では、国内金利の上昇局面でも耐性があるキャッシュリッチな銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。

スクリーニング条件は下記のとおりです。

・東証プライム市場上場銘柄

・直近通期の海外売上高構成比が10%以下

・長期借入金/短期借入金の倍率が1倍以上

・有利子負債/自己資本が10%以下

・ROICが10%以上

・ネットキャッシュ/時価総額が30%以上

・流動比率が200%以上

・直近通期実績でいずれの利益項目にも赤字がない

・取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く

図表の銘柄は上記の条件をすべて満たしています。掲載は、ネットキャッシュ/時価総額が大きい順です。

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気になる投資テーマ等がございましたら、こちらにご意見お待ちしております。

■【銘柄一覧】金利正常化に備えよ?キャッシュリッチな9銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 終値(円)
【9/11】
ネットキャッシュ/時価総額 ROIC
9341 9341 9341 9341 GENOVA 685 47.6% 21.38%
9702 9702 9702 9702 アイ・エス・ビー 1,817 43.5% 14.26%
7595 7595 7595 7595 アルゴグラフィックス 4,980 38.7% 12.37%
4333 4333 4333 4333 東邦システムサイエンス 1,242 35.5% 13.04%
6070 6070 6070 6070 キャリアリンク 2,403 32.8% 12.10%
6750 6750 6750 6750 エレコム 1,856 31.9% 11.30%
4743 4743 4743 4743 アイティフォー 1,490 30.8% 12.87%
9790 9790 9790 9790 福井コンピュータホールディングス 3,330 30.7% 15.58%
9692 9692 9692 9692 シーイーシー 2,331.0 30.2% 11.41%
  • ※Quick Workstation Astra Manager、会社発表データをもとにSBI証券が作成。

一部掲載銘柄を解説!

■エレコム (6750)~PC周辺機器やデジタル機器関連の大手メーカー。ファブレス型でキャッシュリッチ

★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

PC周辺機器やデジタル機器関連の大手メーカー。時流に合った幅広い商品展開

PC周辺機器やデジタル機器関連の大手メーカー。モバイルバッテリーや、オーディオ等、取り扱い製品は多岐にわたり、国内高シェア製品を多数有しています。

商品点数は約17,000点に上ります。年間2,000以上の新製品を開発・販売しています。また、新製品投入と既存商品の改廃を繰り返しており、おおむね3~4年で商品群が一巡するサイクルです。時流に合わせた幅広いラインナップと、「手ごろな値段で、標準的な品質の商品を安定的に提供している」点が消費者の支持を集めています。

法人向け事業も展開。学校法人向けには、ICT教育のためのタブレットやネット環境の導入、工場や会社向けには、パワー&I/Oデバイス(電源・入出力関連)の提供等を行っています。パワー&I/Oデバイス(電源・入出力関連)とは、パソコンや機械を安定してつなぎ動かす機器のことを指します。


売上高構成比(25.3期)は、一般消費者向けのBtoCが67%、法人向けのBtoBが33%です。BtoBは安定的な需要が期待されるため、今後の注力分野として位置付けられています。

■円高恩恵にも期待


22.3期-23.3期の業績は軟調でした。コロナ禍の反動で、PC等の民生品需要の落ち込みや、円安によるコスト増などが重しとなり、23.3期は13年ぶりに減収、営業利益は初の2期連続での前期比減益となりました。

その後、24.3期-25.3期は2期連続で増収営業増益を達成し、業績は回復基調に転換しています。M&Aによる事業拡大や、コストコントロールの強化などが奏功した格好です。

生産拠点の多くは海外にあります。また、グローバル展開を図る一方で、販売の拠点は日本が中心です。そのため、仕入れコストが下がる「円高」が、業績の押し上げ材料となる傾向です。

ファブレス型でキャッシュリッチ。積極的な株主還元も

「メーカー」というと、工場や生産設備の投資があるためキャッシュリッチのイメージは持たれにくいです。

一方、同社は工場を持たないファブレス型メーカーなので、投資負担が少なく利益もキャッシュとして残りやすくなります。そのため、ネットキャッシュ(実質的に手元にあるお金)543億円に対して、有利子負債が5.4億円とキャッシュリッチといえる状態です。


民生品需要は景気動向の影響を受けやすいとみられますが、手元資金に余裕があるため、成長投資や株主還元の余力も確保しています。総還元性向は、23.3期106%、24.3期86%、25.3期114%と、株主還元の実績も厚いです。

株価は本年8月に国内大手証券会社が、投資判断の引き下げ(「買い」から「中立」)、および目標株価の引き下げ(2,300円から2,100円)等を背景に、売りが広がりました。ただ、引き下げ後の目標株価も9/11(木)時点の株価1,856円とはかい離があります。

今後、業績動向のみならず、マクロ環境の変化による株式市場の物色動向の変化を考慮すると、キャッシュリッチで円高メリット企業の同社の株価上昇にも期待が持てます。

■福井コンピュータホールディングス (9790)~建設・土木業界のDXを支える高収益力企業。強固な財務体質

★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■建設・土木業界のDXを支える高収益力企業

住宅を含む建設、土木業界向けにCADをはじめとする各種ソリューションを提供しています。

「建設システム事業」は売上高(25.3期)の47%を占め、3D建築CADシステム等のソリューションにより住宅事業者を支援する事業が中心です。建材・設備と住まいのシミュレーションサービスやBIM(コンピュータ上に建築物の3次元モデルを作成)事業にも展開しています。

「測量土木事業」は、売上高(同)の49%を占め、測量会社・土地家屋調査士向けに3Dレーザースキャナー等を提供。また、土木会社・官公庁向け施工管理システム・CADシステム、建設工事受発注者向け3次元データ活用ソリューション等にも展開しています。

両事業とも保守や使用権などのARR(年間経常収益)が半分以上占めているのが特徴です。建設CAD等では国内トップクラスのシェアを有しているとみられ、売上高営業利益率(25.3期)は41.3%という高収益率を誇っています。

■強固な財務体質、高い収益力

26.3期の会社計画では、売上高155億円(前期比5%増)、営業利益66億円(同8%増)と増収増益を見込んでいます。

住宅・建材向け市場では25年4月の建築基準法改正(省エネ基準適合義務化・構造安全性強化)に対応した製品の需要が見込めそうです。また、測量土木市場では、3次元測量CADシステムでのバージョンアップ需要が期待されます。

8/8(金)に発表された26.3期1Q決算では売上高39億円(前年同期比13%増)、営業利益16億円(同19%増)と増収増益でした。1Qとして売上高、営業利益、純利益が過去最高を更新しました。

財務体質(25.3期末時点)は堅固です。総資産330億円に対し、現金預金が211億円と64%を占め、無借金経営であり、自己資本比率は82%です。それでも、ROICは15.6%と高水準にあり、仮に金利が上昇したとしても、資本コストを上回る収益力を維持できる力があると考えられます。

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