金利上昇基調は追い風?「無借金」で「キャッシュリッチ」な12銘柄

金利上昇基調は追い風?「無借金」で「キャッシュリッチ」な12銘柄

投資情報部 鈴木英之/髙田航輝

2026/09/18

金利上昇基調は追い風?「無借金」で「キャッシュリッチ」な12銘柄

今回の「日本株投資戦略」では、金利上昇基調も追い風になり得る、「無借金」で「キャッシュリッチ」な12銘柄をご紹介したいと思います。

ここで、「無借金」は有利子負債※がゼロである状態を示しています。無借金であるため、金利が上昇しても直接的な金利負担は増加しないと考えられます。また、現金及び預金の総資産に占める比率が高く、むしろ預金金利の上昇メリットが相対的に大きいとみられます。アクティビスト等の投資家から見ると、「現金及び預金」をためこんでいる企業は、事業活動等へ十分な投資を行っていないとして批判されがちですが、掲載企業は資本から効率的に利益をあげる収益力をみるROE(株主資本利益率)も一定水準以上です。豊富な資金力は十分に経営上の武器になっている可能性もありそうです。

※ここでは長期借入金、1年以内に返済予定の長期借入金、社債等の債務、短期借入金、リース債務がゼロの財政状態を指しています。

9/10(木)にECB(欧州中銀)が6月以来2会合ぶりに政策金利引き上げ(2.25%→2.5%)を決定しました。9/16(水)にはFRB(米連邦準備制度理事会)も、政策金利であるFFレートを「3.5%~3.75%」から「3.75%~4.0%」に引き上げました。日銀も今後複数回の利上げが有力視されており、主要国は利上げラッシュになっています。原油価格の上昇や主要国の財政拡張傾向が世界的にインフレ懸念を強め、日米欧で長期金利も上昇基調になっています。株式市場で投資対象を検討する際にも「金利上昇」をメインシナリオとして考える必要があるように思われます。

一般的に金利上昇局面では、利ザヤ拡大の期待が膨らむ銀行株が注目されやすいとみられます。また、インフレ懸念が続く間は、資源・エネルギー関連株や非鉄金属等の素材株も物色されやすいと予想されます。

さらに、冒頭で述べた、「無借金」で「キャッシュリッチ」な銘柄への注目も高まるとみられます。一般的にROEの高い企業は資本を有効に利益につなげているとされますが、収益力の強化よりも、純資産(株主資本)の減少によってROEを高めた企業は金利上昇が逆風になる可能性があります。金利上昇局面では、ROE向上についても、その質が問われると考えられます。

【銘柄一覧】金利上昇基調は追い風?「無借金」で「キャッシュリッチ」な12銘柄

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 株価
(9/16・円)
現金及び預金が総資産に占める割合 ROE(前期実績) 予想配当利回り
4071 4071 4071 4071 プラスアルファ・コンサルティング(9) 2,066 81.1% 24.3% 2.42%
9684 9684 9684 9684 スクウェア・エニックス・ホールディングス 2,938.5 60.3% 8.7% 1.46%
7483 7483 7483 7483 ドウシシャ 3,135 53.2% 9.5% 3.51%
2222 2222 2222 2222 寿スピリッツ 2,528.5 51.2% 28.5% 1.78%
9697 9697 9697 9697 カプコン 4,345 47.2% 22.1% 1.06%
7974 7974 7974 7974 任天堂 8,126 40.5% 14.9% 1.99%
3923 3923 3923 3923 ラクス 1,061 39.9% 55.4% 0.75%
6417 6417 6417 6417 SANKYO 2,111.5 39.2% 17.6% 4.74%
6954 6954 6954 6954 ファナック 5,838 34.2% 9.3% 2.27%
9759 9759 9759 9759 NSD 2,867 32.7% 18.4% 3.38%
6345 6345 6345 6345 アイチコーポレーション 1,451 32.1% 8.4% 4.48%
6420 6420 6420 6420 ガリレイホールディングス 3,460 30.6% 11.4% 2.57%
  • ※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
  • ※「現金及び預金」が総資産に占める比率:(現金及び預金/総資産)×100(2026年6月末時点)
  • ※ROE(株主資本利益率)は前期実績で決算短信に示された数字です。
  • ※銘柄名右横に(9)と記載したプラスアルファ・コンサルティング(4071) のみ9月決算で他は3月決算銘柄です。3月決算銘柄・9月決算銘柄ともに権利付最終日は9/28(月)です。
  • ※プラスアルファ・コンサルティング(4071)の中間配当(2026年3月末)は無配(実績)、期末配当(2026年9月末)は1株50円の予想です。
  • ※予想配当利回りは9/16(水)時点の会社予想年間1株配当金を基準に計算しています。ファナック(6954)は会社予想が未公表のため市場予想年間1株配当金(Bloombergコンセンサス)から計算しています。
  • ※中間配当(2026年9月末)予想が無配または未定の銘柄:任天堂(7974)、ラクス(3923)、NSD(9759)、ガリレイホールディングス(6420)。またファナック(6954)は未公表ですが、前年同期は実施しています。

    ★スクリーニング条件
    (1)時価総額500億円以上の東証プライム市場上場銘柄
    (2)「有利子負債」が直近四半期末にゼロ:ここでは、長期借入金、1年以内に返済予定の長期借入金、社債等の債務、短期借入金、リース債務を「有利子負債」としています。
    (3)「現金及び預金」が総資産(2026年6月末時点)に占める比率が30%以上
    (4)ROE(株主資本利益率)が8%以上(前期末基準)
    (5)取引所または日証金、当社による信用規制・注意喚起銘柄を除く(空売り規制銘柄は除きません)

    掲載銘柄は上記条件をすべて満たしています。掲載の順番は「現金及び預金」が総資産(2026年6月末時点)に占める比率が高い順です。

一部掲載銘柄を解説!

■プラスアルファ・コンサルティング(4071)~データを見える化しプラスアルファを生み出す

◎人材データを一元化して人事戦略立案を支援する「タレントパレット」が中心

2006年に設立され、東京都港区に本社を置く東証プライム上場企業です。「HRソリューション事業」が売上高の77.5%、営業利益の78.7%を占める主力事業で、他に「マーケティングソリューション事業」を展開しています。(構成比は2025年9月期)

主力製品は、「HRソリューション事業」の中核をなすタレントマネジメントシステム「タレントパレット」です。人事評価や異動、採用など社内に散在する人材データを一元化し、AI機能も活用しながら科学的な人事戦略の立案を支援します。加えて、顧客体験を可視化するマーケティング事業の「見える化エンジン」も展開しており、データ分析力を軸とした複数事業を強みとしています。

◎ラクス(3923)と資本業務提携

当レポートの銘柄表にも掲載されているラクス(3923)は、2025年11月にプラスアルファ・コンサルティング株式4.09%を取得し資本業務提携を締結、タレントパレットをOEM化した中小企業向け人事労務システム「楽楽人事労務」を提供開始しました。さらに2026年7月には追加の株式取得を発表し、ラクスの議決権比率は22.21%へ上昇、持分法適用関連会社となりました。中小企業向けに強い営業網を持つラクスと、AI活用の人事プラットフォームを持つ同社が組むことで、両社の市場カバレッジ拡大とサービス開発の加速が期待されます。

◎株価的には過小評価されている側面も

2007年9月期(会社設立は2006年12月)を起点に2025年9月まで、18期連続で増収を達成し、経常利益も2015年9月期を除き増益を続けています。2026年9月期第3四半期累計(2025年10月~2026年6月)は、売上高140億1,000万円(前年同期比12.3%増)、営業利益53億6,800万円(同21.2%増)、経常利益53億5,800万円(同22.5%増)と増収増益を確保しました。タレントパレットを擁するHRソリューション事業が前年同期比17.7%増収とけん引した一方、マーケティングソリューション事業は5.7%減収となり、利益の伸びが売上の伸びを上回る高収益な成長が続いています。19期連続増収・11期連続経常増益が視野に入っているといえそうです。

財務面では、自己資本比率が83.9%、総資産に占める現金及び預金の割合が約81.1%(いずれも2026年6月末)と高く、長期・短期借入金、リース債務のいずれもゼロという「無借金経営」が際立ちます。ROE(前期実績)は24.3%、予想配当利回りは2.42%と資本効率も良好で、豊富な自己資金を背景に、機動的なM&Aや株主還元策を打ち出せる財務基盤の強さが特徴といえます。そうした中、2026年9月期末配当から配当方針を変更し「配当性向40%、またはDOE8%のいずれか高い方を適用」する方針です。今期の会社予想1株年間配当金(中間配当なし・期末配当のみ)は50円で、おおむね配当性向の目安に沿った計画です。

9/16(水)の終値は2,066円ですが、年初来高値2,997円(7/8)・年初来安値1,944円(2/16)であり、時価は年初来安値にむしろ近い水準です。強固な財務体質でキャッシュリッチでありながらROEも高く、予想PERは16.8倍(9/16)と東証プライム市場の平均(17.04倍)並みであり、割安感が強いといえそうです。

■カプコン(9697AI・半導体に次ぐ投資テーマに期待

◎国内有数のゲームメーカー

東証プライム市場に上場しており、時価総額は2兆3,623億円です(※1)。

同社の事業は、ゲーム・モバイルコンテンツの開発・販売を行う「デジタルコンテンツ事業」、アミューズメント施設や物販店等の運営などを手掛ける「アミューズメント施設事業」、遊戯機器(パチンコ・パチスロ)等の開発・製造・販売を行う「アミューズメント機器事業」、キャラクタービジネス等を扱う「その他事業」によって構成されています。

2027年3月期の売上高の会社予想2,100億円のうち、デジタルコンテンツ事業が1,522億円で72.4%を占めており、主力事業です。代表作として「バイオハザード」シリーズ、「モンスターハンター」シリーズ、「ストリートファイター」シリーズ、「鬼武者」シリーズ、「ロックマン」シリーズが挙げられます。

※1:2026年9月17日時点。

◎完全新作IPがけん引し、業績好調

7/28(火)に発表された、2027年3月期第1四半期の業績では、売上高が704億1,000万円(前年同期比54.7%増)、営業利益が410億5,400万円(同66.9%増)の増収増益でした。完全新作IP「プラグマタ」やリピート作の販売本数が好調に推移し、デジタルコンテンツ事業が大きく伸びました。

年間の1株当たり配当金の会社予想は46円(中間は23円)で、前期比1円の増配計画です。予想配当利回りは1.03%です(※2)。

※2:2026年9月17日の終値をもとに算出。

AI・半導体関連銘柄からの資金流入に期待

2026年前半はAI・半導体関連銘柄が相場全体をけん引してきたといえます。直近では関連銘柄の株価は、さえない展開が続いています。日経半導体株指数は6月22日に年初来高値36,378.32をつけ、その後は下落基調で推移しました。一方で、カプコンの株価は6月15日に年初来安値2,736円をつけてから、半導体関連銘柄と逆行するように、上昇基調に転じています。

この6月に安値を付け、反転上昇する動きは、スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)やコナミグループ(9766)、バンダイナムコホールディングス(7832)などのIP(知的財産)・ゲーム関連銘柄全体にみられます。軟調な半導体関連銘柄からの流出資金の受け皿の一つとして、IP・ゲーム関連銘柄が注目されていると思われます。

IP、ゲームは政府が掲げる戦略17分野に含まれており、今後も注目が集まりそうです。

「国策に売りなし」という格言があるように、AI・半導体関連銘柄に次ぐ投資テーマとして、株価上昇に期待したいです。

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