アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~今四半期に増収モメンタム加速が見込まれる、GM、ブロードコム、ブラックロックほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~今四半期に増収モメンタム加速が見込まれる、GM、ブロードコム、ブラックロックほか~

投資情報部 榮 聡

2024/04/08

先週は堅調な経済、インフレの下がりにくさを示唆する経済指標を受けて、市場の利下げ期待時期が後ずれし、米10年国債利回りの上昇が株式相場を抑えました。今週の株価材料として、3月消費者・生産者物価指数、FOMC議事要旨(3月19日、20日開催分)、金融当局者発言、などが注目されます。

今回は四半期決算の発表で前四半期から増収モメンタムの加速が見込まれている銘柄から、ゼネラル モーターズ(GM)ブロードコム(AVGO)ブラックロック A(BLK)ペプシコ(PEP)セールスフォース(CRM)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

先々週まで続いた最高値の更新は途切れ、高値圏でのもみ合いに転じたとみられます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 3.9% 12.1% 17.1%
コミュニケーションサービス 2.5% 7.0% 17.8%
素材 -0.1% 4.0% 9.4%
資本財・サービス -0.2% 3.1% 12.1%
公益事業 -0.7% 3.0% 0.2%
S&P500 -1.0% 1.6% 9.3%
情報技術 -1.0% 0.2% 13.0%
金融 -1.4% 2.6% 9.4%
一般消費財・サービス -1.9% 0.4% 4.6%
生活必需品 -2.7% -0.5% 3.2%
不動産 -2.9% -4.3% -3.8%
ヘルスケア -3.1% -1.9% 2.1%
騰落率上位(5日) 騰落率
ゼネラル・エレクトリック 11.7%
メタ・プラットフォームズ 8.6%
コノコフィリップス 4.9%
ネットフリックス 4.8%
ゼネラル・ダイナミクス 4.5%
騰落率下位(5日) 騰落率
インテル -12.4%
チャーター・コミュニケーションズ -8.0%
ユナイテッドヘルス・グループ -7.9%
ホーム・デポ -6.7%
アッヴィ -6.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.0%、NYダウは2.3%、ナスダック指数は0.8%の下落でした。

堅調な経済、インフレの下がりにくさを示唆する経済指標を受けて、市場の利下げ期待時期が後ずれし、米10年国債利回りの上昇が株式相場を抑えた形です。金利上昇に寄与したのは、2月個人消費支出物価指数、3月ISM製造業景気指数、2月製造業受注、3月ADP雇用統計などで、一方、ISM非製造業景気指数は予想を下回って前月から低下しました。

大陰線となった4/4(木)は、雇用市場の緩和を示唆する指標を受けて上昇で始まりましたが、午後にミネアポリス連銀カシュカリ総裁がインフレ動向次第で年内の利下げが適切でない可能性もあると発言して下落に転じました。4/5(金)は3月雇用統計が好内容と捉えられ、また、前日に雇用統計への警戒で下げていた部分もあったとみられ、反発しました。

3月雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比+30.3万人と市場予想の同+20.4万人を上回って強い一方、平均時給の伸びが前年比+4.1%と前月の同+4.3%から低下したことから、株式相場でポジティブに捉えられました。労働参加率が上昇する中で失業率が低下したことも好材料と考えられます。

業種指数では、原油価格の上昇を受けて「エネルギー」が大幅に上昇しました。イスラエルによるイラン大使館空爆に対して、イランは報復を宣言しており、中東情勢の緊迫化が背景にあります。

個別株では、電力事業をGEベルノバ(GEV)として分離したGEエアロスペース(GE)(従来のゼネラルエレクトリックが社名変更したものです)が大幅に上昇しました。会社分割による企業価値の顕在化を材料に、過去1年で株価は2.1倍となっています。

一方、インテル(INTC)は新しく立ち上げたファウンドリ事業の赤字が2024年に拡大し、黒字化には数年かかるとの見通しを明らかにして嫌気されました。ただし、主力事業の回復で、会社全体のEPSは2023年の0.35ドルから2024年の1.33ドルへ拡大すると見込まれています。

今週の米国株式

米10年国債利回りは先週、2月下旬につけた3.5%を上回って推移する時間が長くなり、株式市場は金利上昇を気にしているとみられます。今週は下に挙げた注目材料がいずれも金利に影響を与える可能性があり、株式市場は神経質な展開となりそうです。

今週の株価材料として、3月消費者・生産者物価指数、FOMC議事要旨(3月19日、20日開催分)、金融当局者発言、などが注目されます。

4/10(水)の3月消費者物価指数は、総合指数が前年比+3.4%の予想(前月は同+3.2%)、コア指数が前年比+3.7%の予想(前月は同+3.8%)、4/11(木)の3月生産者物価指数消は総合指数が前年比+2.2%の予想(前月は同+1.6%)、コア指数が前年比+2.3%の予想(前月は同+2.0%)です。

消費者物価指数、生産者物価指数とも総合指数は原油価格の上昇が寄与して前年比伸び率が前月から拡大する見通し。FRBによる利下げ開始時期の後ずれにつながるリスクが意識されそうです。

前回FOMCでは、メンバーによる2024年末政策金利予想が年内3回の利下げに相当する4.50~4.75%に維持されました。市場には上方修正されるのではとの警戒があったため、これをポジティブに捉えました。

しかし、2024年の実質GDP成長率が前年比+1.4%から同+2.1%へ、個人消費支出物価指数のコアが前年比+2.4%から同+2.6%へ上方修正され、2024年末の政策金利予想が上方修正されていてもおかしくなかった内容で、市場には警戒感が残ったとみられます。

今週も複数の金融当局者の発言が予想されています。特に4/8(月)のカシュカリ総裁はタカ派で知られ、先週には年内の利下げがない可能性に言及したため、警戒されています。

経済指標では上記のほか、4/12(金)に中国の3月貿易統計(輸出は前年比-2.0%の予想、前月は同+5.6%、輸入は前年比+1.0%の予想、前月は同-8.2%)、米国の4月ミシガン大学消費者信頼感(前月の79.4から79.0に悪化の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は今週から始まる四半期決算の発表で注目できる銘柄をスクリーニングで抽出してみました。

抽出したのは、今四半期の予想増収率が前四半期の増収率よりも高い銘柄です。つまり、売上増勢の加速が見込まれている銘柄で、図表3では「増収モメンタム」としています。

「増収モメンタム」がプラスの銘柄に、「今四半期の予想増収率が前年同期比プラスである」、「過去3ヵ月の予想EPSの修正率がプラスである」という条件を加えて、図表3の銘柄を抽出しました。

ここから目標株価との乖離率なども考慮して、ゼネラルモーターズ(GM)、ブロードコム(AVGO)、ブラックロック A(BLK)、ペプシコ(PEP)、セールスフォース(CRM)を選んでご紹介いたします。

図表3 今四半期の増収率が前四半期の増収率を上回ると予想されている銘柄(S&P100指数構成銘柄対象)

コード 銘柄名 今四半期
予想増収率
(%)
今四半期
予想増益率
(%)
増収
モメンタム
予想EPS
修正率
(3ヵ月)
(%)
目標株価
乖離率
(%)
GM ゼネラル・モーターズ 4.6 -7.6 4.9 19.5 14.9
AVGO ブロードコム 37.9 4.7 3.8 0.1 11.0
BLK ブラックロック 9.7 16.1 2.9 3.4 10.7
PEP ペプシコ 1.5 1.3 2.0 0.1 10.1
DIS ウォルト・ディズニー・カンパニー 1.7 15.4 1.5 8.9 5.4
VZ ベライゾン・コミュニケーションズ 1.1 -6.7 1.4 0.0 4.3
META メタ・プラットフォームズ 25.9 94.2 1.2 13.8 4.7
NFLX ネットフリックス 13.4 56.4 1.0 7.9 -2.6
CAT キャタピラー 2.5 3.3 0.2 3.9 -12.5
ABT アボットラボラトリーズ 1.6 -7.2 0.1 0.0 12.6
CRM セールスフォース 10.9 40.5 0.1 1.7 10.1

注:「増収モメンタム」は、「今四半期予想増収率-前四半期実績増収率」で計算しています。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(4/5)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートゼネラル モーターズ(GM)44.23ドル4.9

【2024年は明るい年に】

・2023年は労働者のストライキに加え、EVトラックの不振、自動運転によるロボタクシーに対する当局の調査など、苦しい年になりましたが、2024年は明るい見通しをもっています。CEOは「(同社が独自開発した)『アルティウム』バッテリーによるEVのブレイクスルーの年にする」とコメントしています。また、米政府がEV普及策の規制を緩和したことも安心感を生んでいます。

・10-12月期決算は、売上・EPSとも市場予想を上回りました。2024年見通しは調整後EBITを120~140億ドルとして、中央値は2023年実績の124億ドル、市場予想の109億ドルを上回りました。

買付チャートブロードコム(AVGO)1339.43ドル28.6

【買収でソフトウェアが4割に】

・2023年11月に仮想化ソフトウェアのVMウェア買収を完了して、2024年10月期の売上高構成比は半導体が約60%、インフラ・ソフトウェアが約40%になる見込みです。半導体はスマホ向けが低迷している一方、AI関連需要によりデータセンターでの通信向けが伸びる見込みで、半導体売上に占めるAI関連構成比は35%に高まる見通しです。

・11-1月期決算は売上が前年同期比34%増、調整後EPSは同6%増でした。VMウェア買収の影響を除く売上は同11%増で、半導体の売上は同4%増と堅調でした。2024年10月期の売上は約500億ドル、調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)は約300億ドルを見込みます。

買付チャートブラックロック A(BLK)797.56ドル19.6

【金融市場好調の恩恵が期待される】

・世界最大の独立系資産運用会社で、株式、債券、オルタナティブ資産等での運用と投資助言を行います。「iシェアーズ」のETFがよく知られています。金融市場の好調が続いているため、恩恵を受けやすいポジションにあると考えられます。

・10-12月期決算は、売上が前年同期比7%増、調整後EPSが同8%増と堅調でした。ネット資金流入は956億ドルで運用資産額は前年比16%増で10兆ドルを超えました。2022年後半から2023年前半にかけて金融市場の調整や手数料の低下圧力を受けて前年同期比減収が続きましたが、増収が定着しつつあるとみられます。

買付チャートペプシコ(PEP)169.14ドル20.7

【一桁台半ばの売上成長が期待される】

・10-12月期決算は「度重なる値上げが消費者から嫌気されて前年同期比0.5%の減収に転じた」とヘッドラインで報じられ、ネガティブな印象となりました。実際、販売数量は菓子が前年同期比3%減、飲料が同2%減となっています。一方、0.5%の減収については、決算期間の変動で3%ポイント、為替変動で1.5%ポイントのマイナスとなっており、これらを修正したオーガニック成長率は同4.5%増で、さほどの懸念は必要ないと考えられます。

・2024年12月期については、売上のオーガニック成長率は前年比4%増以上、修正後EPSは少なくとも8.15ドル(前年比7%増相当)を見込んでいます。主要市場で経済の急減速などがなければ十分に達成可能とみられます。2023年は52年連続の増配を達成しています。

買付チャートセールスフォース(CRM)301.91ドル30.8

【収益改善が進む】

・顧客関係管理(CRM)やマーケティング、カスタマーサービスなどを支援する企業向けソフトウェアをクラウドベースで提供する企業で、主力の顧客関係管理ソフトウェアでは世界トップ。これまで企業買収を繰り返し、規模の拡大を追い求めてきましたが、2022年末より収益性を重視するように経営の舵が切られました。

・11-1月期の売上は前年同期比11%増、調整後EPSは同36%増と堅調です。マーケティング&販売費用等の抑制で、調整後営業利益率は前年同期の29.2%から31.4%に改善、受注高(残存履行義務)は前年同期比17%増で市場予想を5%上回って好調です。初めての配当支払いを開始し、100億ドルの自社株買いを承認しました。2025年1月期のガイダンスは売上が市場予想を下回ったものの、調整後EPSは市場予想を上回りました。GAAPベースの営業利益率は20.4%程度、調整後営業利益率は32.5%程度へさらなる改善を見込みます。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ブロードコムが2024年10月期、セールスフォースが2025年1月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
8(月) ・NY連銀1年インフレ期待(1月)
・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁がタウンミーティングを開催
 
9(火) ・NFIB中小企業楽観指数(3月)
・3年国債入札
 
10(水) ・米消費者物価指数(3月)
・FOMC議事要旨(3月19日、20日開催分)
・10年国債入札
・シカゴ連銀グールズビー総裁が討論に参加
 
11(木) ・中国生産者・消費者物価指数(3月)
・ECB主要政策金利
・米生産者物価指数(3月)
・米新規失業保険申請件数(4月6日に終わる週)
・30年国債入札
・NY連銀ウィリアムズ総裁が講演
・ボストン連銀コリンズ総裁が講演
 
12(金) ・中国貿易統計(3月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(4月、速報値)
・サンフランシスコ連銀デイリー総裁が討論に参加
JPモルガンチェース、シティグループ、ウェルズファーゴ
デルタ航空
15(月) ・日本機械受注(2月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(4月)
・米小売売上高(3月)
・米NAHB住宅市場指数(4月)
ゴールドマンサックス、ブラックロック
16(火) ・中国実質GDP(1-3月期)
・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(3月)
・ドイツZEW景気期待指数(4月)
・米住宅着工・建設許可件数(3月)
・米鉱工業生産(3月)
ジョンソン&ジョンソンバンクオブアメリカ
モルガンスタンレー、ユナイテッドヘルスグループ
17(水) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
・20年国債入札
 
18(木) ・EU27ヵ国新車登録台数(3月)
・米新規失業保険申請件数(4月13日に終わる週)
・米中古住宅販売件数(3月)
・ボウマンFRB理事が講演
台湾セミコンダクター、インチュイティブサージカル
ロッキードマーチン
19(金) ・シカゴ連銀グールズビー総裁がQ&Aセッションに参加 プロクター&ギャンブルテスラネットフリックス
アメリカンエキスプレス、ラムリサーチ、ラスベガスサンズ

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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