アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~米株最高値更新をけん引した銘柄群から注目銘柄をピックアップ~
投資情報部 榮 聡
2024/05/20
先週は生産者物価指数、消費者物価指数がインフレの低下トレンド継続を示唆したことから、FRBによる年内の利下げ期待が復活して株式相場を押し上げました。今週の株価材料として、エヌビディアの決算、FOMC議事要旨、「Microsoft Build」、などが注目されます。
今回はS&P500指数が最高値を更新したことに着目して、過去1ヵ月に指数の上昇をけん引した銘柄から、エヌビディア(NVDA)、アルファベット A(GOOGL)、JPモルガン チェース(JPM)、イーライ リリィ(LLY)、ネクステラ エナジー(NEE)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
物価指標の落ち着きを受けて一気に最高値更新に進みました。メジャーな株価指数が押し目を経て高値を更新した場合には、3~5%の上値があるというのが筆者の経験則です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 2.9% | 11.3% | 8.1% |
不動産 | 2.5% | 7.9% | 1.0% |
ヘルスケア | 1.8% | 5.2% | 0.9% |
コミュニケーションサービス | 1.7% | 6.0% | 9.9% |
S&P500 | 1.5% | 6.8% | 6.6% |
金融 | 1.4% | 4.9% | 7.4% |
公益事業 | 1.2% | 10.1% | 18.2% |
生活必需品 | 0.7% | 5.1% | 6.2% |
エネルギー | 0.7% | -0.6% | 12.2% |
素材 | 0.3% | 3.5% | 8.3% |
一般消費財・サービス | -0.1% | 5.3% | 2.1% |
資本財・サービス | -0.4% | 3.9% | 6.5% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 8.3% |
ウォルマート | 6.9% |
インテル | 6.6% |
クアルコム | 6.5% |
3M | 6.4% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
フェデックス | -3.2% |
ディア | -2.7% |
ブッキング・ホールディングス | -2.6% |
ウォルト・ディズニー・カンパニー | -2.4% |
エマソン・エレクトリック | -2.3% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.5%、ダウ平均は1.2%、ナスダック指数は2.1%の上昇となりました。S&P500指数は4週連続の上昇です。
4月の生産者物価指数および消費者物価指数が、「下がりにくさ」が意識されていたインフレの沈静を示唆したことから、市場ではFRBによる年内の利下げ期待が復活、株式を大きく押し上げて最高値更新に進みました。
生産者物価指数は前年比+2.2%と3月の同+1.8%から上昇するも市場予想に一致、消費者物価指数は前年比+3.4%と3月の同+3.5%から低下して市場予想に一致しました(図表3)。
また、4月小売売上高が前月比0%と、市場予想の同+0.4%を大幅に下回って、物価の下がりにくさの背景と捉えられていた個人消費の強さに陰りがみえたことも株式市場にはプラスに働いたとみられます。
業種指数では「情報技術」が騰落率トップで、エヌビディア、アップル、マイクロソフトなどの超大型株が上昇をけん引しました。個別株では、2-4月期決算を発表したウォルマート インク(WMT)の上昇が目立ちました。2-4月期の既存店売上が前年同期比3.8%増と市場予想を上回る堅調で、通期の調整後EPSはガイダンス上限近辺かそれ以上になるとコメントしました。マクロ的には個人消費に減速の兆しが見られる中、中高所得者層のトレードダウン(価格が安いモノ・サービスに消費をシフトすること)が同社の売上には有利に働いているようです。
今週の米国株式市場
S&P500指数は、企業業績の堅調が確認される中で、インフレ沈静化の兆しが出て米長期金利が低下したことから、3/28(木)につけた史上最高値(5,264.85ポイント)を更新しました。テクニカル的に当面の上値を検討すると、以下のことが言えます。
・メジャーな株価指数が最高値を更新した場合は、3~5%程度の上値があることが多い(筆者個人の経験則です)。その場合、5,423~5,528ポイントが計算できます。
・3/28(木)高値から4/19(金)安値への押し幅(311ポイント)の倍返しとなるなら、5,575ポイントが計算できます。
以上のとおり5,500ポイントに到達する可能性が示唆されます。5,500ポイントというのは、年末のターゲット(2025年予想EPS276ポイント×予想PER20倍)と考えているため、実現するタイミングとしては早すぎる印象です。
ただ、今年は大統領選挙があるため、その影響で相場が不安定化する前に上値の限界を試しておきたいというインセンティブは市場参加者に働きやすいかもしれません。
今週の株価材料として、エヌビディアの決算、FOMC議事要旨、「Microsoft Build」、などが注目されます。
エヌビディアは22日(水)に2-4月期決算を発表する予定です。関連企業の決算、マクロデータからは市場予想並みかそれを上回る良好な決算が期待できそうです。なお、詳しくは5/15(水)付外国株式特集レポート『どうなる来週のエヌビディア決算!?「データポイント」を整理して備える』をご覧ください。
前回FOMC(4月30日、5月1日開催分)の声明文では、「インフレ2%目標への進捗が不足している」と、インフレの下がりにくさが強調されました。記者会見ではパウエルFRB議長が、一部で言われている「利上げの可能性は低い」と発言しています。
マイクロソフトの年次開発者会議「Microsoft Build」が5/23(木)から5/25(土)にかけて開催されます。ビジネスソフト「オフィス」での「Copilot」機能提供などAI事業で先行する同社の事業展開が注目されます。
経済指標では、5/22(水)に米国の4月中古住宅販売件数(前月比+0.6%の予想)、5/23(木)に米国の4月新築住宅販売件数(前月比-2.1%の予想)、5/24(金)に米国の4月耐久財受注(前月比-0.7%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回はS&P500指数が5/15(水)に最高値を更新したことに着目し、同日までの1ヵ月間の指数上昇への寄与度が大きい銘柄をご紹介いたします。
図表4に指数の上昇に対する寄与度上位15銘柄をリストアップしました。過去4週の通期EPSの修正率の情報も加味して、エヌビディア(NVDA)、アルファベット A(GOOGL)、JPモルガン チェース(JPM)、イーライ リリィ(LLY)、ネクステラ エナジー(NEE)を選んでご紹介いたします。
図表3 消費者物価指数のコア指数(食品・エネルギーを除く)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 5/15(水)までの1ヵ月にS&P500指数の上昇寄与度が大きい銘柄
コード | 銘柄名 | 指数上昇に対する寄与度 | 株価騰落 (1ヵ月) |
株価 (5/15) (ドル) |
通期EPS 修正率 (4週) |
AAPL | アップル | 12.6 % | 7.6 % | 189.72 | 0.1 |
NVDA | エヌビディア | 10.3 % | 7.3 % | 946.30 | 5.6 |
GOOGL | アルファベット | 5.6 % | 9.4 % | 172.51 | 7.0 |
UNH | ユナイテッドヘルス・グループ | 4.7 % | 17.8 % | 517.55 | -0.6 |
JPM | JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー | 3.6 % | 10.6 % | 202.11 | 2.9 |
AVGO | ブロードコム | 2.6 % | 6.9 % | 1436.17 | 0.6 |
LLY | イーライリリー | 1.9 % | 4.9 % | 787.02 | 7.4 |
NEE | ネクステラ・エナジー | 1.8 % | 22.1 % | 77.05 | 0.1 |
PG | プロクター・アンド・ギャンブル | 1.8 % | 7.9 % | 166.51 | 1.4 |
AMGN | アムジェン | 1.8 % | 19.4 % | 319.04 | -0.3 |
TXN | テキサス・インスツルメンツ | 1.8 % | 18.4 % | 195.53 | -2.1 |
QCOM | クアルコム | 1.7 % | 13.6 % | 194.61 | 2.6 |
COST | コストコホールセール | 1.6 % | 7.8 % | 787.04 | 2.0 |
GS | ゴールドマン・サックス・グループ | 1.6 % | 19.7 % | 466.09 | 9.6 |
WFC | ウェルズ・ファーゴ | 1.4 % | 11.0 % | 62.34 | 5.5 |
注:データは5/15(水)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (5/17) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | エヌビディア(NVDA) | 924.79ドル | 36.6 | 【今週2-4月期決算を発表】 ・5/22(水)に2-4月期決算を発表予定です。AI関連は物色の柱となっていることから、テクノロジー株だけでなく相場全体の行方を左右する可能性のある決算として注目を集めています。現在の市場コンセンサスでは、2-4月期売上は246億ドルで前年同期比3.4倍、5-7月期売上は267億ドルで同98%増の予想です。 ・同社が半導体の生産を委託する台湾セミコンダクターが5/10(金)に発表した4月売上が前年比60%増となって2月、3月から加速したこと、同社のAIコンピュータをサーバーに組んでデータセンターに納入しているスーパーマイクロコンピューターの4-6月期売上が1-3月期から37%増のガイダンスとなっていること、などから2-4月期の売上実績、5-7月期ガイダンスとも強い結果が出てくると期待されます。 | |
買付 | アルファベット A(GOOGL) | 176.06ドル | 23.1 | 【AIへの期待が回復】 ・1-3月期は市場予想を上回る好決算でした。検索収入が3%、YouTube広告が5%、クラウド収入が2%、それぞれ市場予想を上回りました。1株当たり20セントの初の配当を発表、自社株買いを700億ドル追加することも明らかにしました。 ・CFOは「AIが当社クラウド顧客にもたらす恩恵にすっかり興奮している。AIソリューションからの貢献が増えた」とコメントしました。同社は大手テクノロジー企業の中でもAI関連のリソースが最も分厚いと見られていましたし、実際にそうだと推察されます。しかし、昨年から注目を集めた生成AIでは出遅れたとみえて懸念されていましたが、これをかなり解消したとみられます。 | |
買付 | JPモルガン チェース(JPM) | 204.79ドル | 11.1 | 【決算後の株価下落から回復】 ・4/12(金)の1-3月期決算の発表を受けて株価は大きく下落しました。1-3月期の純金利収入が市場予想をわずかに下回ったこと、通期の純金利収入見通しを約900億ドルで据え置いたこと、調整後の経費は910億ドルと従来見通しから引き上げたことが嫌気されたようです。 ・しかし、業績の拡大基調は継続することから株式相場全体の回復に沿って株価は回復してきました。1-3月期の銀行業界決算では投資銀行とトレイディング業務の好調が目立ちましたが、同社は商業銀行主体の銀行ですが、投資銀行・トレーディングでも高い競争力をもっていることがポジティブです。 | |
買付 | イーライ リリィ(LLY) | 770.00ドル | 56.0 | 【通期売上見通しを上方修正】 ・1-3月期の売上はマンジャロ、ゼップバウンド、ベージニオ、ジャディアンスなどが牽引、前年同期比26%増、EPSは同59%増と好調です。 ・同社の糖尿病治療薬「マンジャロ」と肥満治療薬「ゼップバウンド」(両薬とも物質名は「チルセパチド」で同じものです)は需要が供給を上回って市場では品薄の状態が続いています。生産設備の能力が売上の制約要因になっていますが、設備増強の目途が立ったことで2024年12月期の売上ガイダンスを424~436億ドルへ、従来から20億ドルひきあげました。 | |
買付 | ネクステラ エナジー(NEE) | 76.09ドル | 22.3 | 【買いやすいバリュエーションに低下】 ・フロリダ基盤の電力会社。子会社のネクステラ・エナジー・リソーシズ(NEER)は再生可能エネルギーで世界最大級です。NEERを保有することで、株価は高いPERで買われていましたが、過去2年余りにわたる株価下落で買いやすいバリュエーションに低下したと言えそうです。最近はデータセンター投資の拡大に伴う電力需要の拡大が市場で注目されています。 ・1-3月期の調整後EPSは前年同期比8%増で市場予想を上回りました。調整後EPSはFPL(フロリダの電力事業)が同7%増、NEERが同11%増と両事業とも堅調です。中期の業績見通しとして、2026年にかけて調整後EPSは年率6~8%の成長、配当は年率約10%の成長を見込んでいます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアが2025年1月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
20(月) | ・アトランタ連銀ボスティック総裁があいさつ ・バーFRB副議長(銀行監督担当)が講演 ・アトランタ連銀ボスティック総裁が討論の司会 ・ジェファーソンFRB副議長が講演 |
ズームビデオコミュニケーションズ |
21(火) | ・リッチモンド連銀バーキン総裁があいさつ ・複数のFRB関係者が討論に参加 |
|
22(水) | ・日本機械受注(3月) ・EU27ヵ国新車登録台数(4月) ・米中古住宅販売件数(4月) ・FOMC議事要旨(4月30日、5月1日開催分) ・米20年国債入札 |
エヌビディア、ターゲット |
23(木) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(5月) ・米新規失業保険申請件数(5月18日に終わる週) ・シカゴ連銀全米活動指数(4月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(5月) ・米新築住宅販売件数(4月) ・米10年インフレ連動債入札 ・アトランタ連銀ボスティック総裁が質疑応答に参加 |
・マイクロソフト年次開発者会議「Microsoft Build」(25日まで) メドトロニック |
24(金) | ・米耐久財受注(4月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(5月、速報値) |
|
27(月) | ・米国市場休場(メモリアルデー) ・中国工業部門利益(4月) |
|
28(火) | ・S&PコアロジックCS住宅価格(3月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(5月) |
|
29(水) | ・リッチモンド連銀製造業景気指数(5月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
シースリーエーアイ、セールスフォース |
30(木) | ・ユーロ圏景況感(5月) ・米実質GDP(1-3月期、改定値) ・米新規失業保険申請件数(5月25日までに終わる週) ・米中古住宅販売成約(4月) |
コストコホールセール |
31(金) | ・中国製造業・非製造業PMI(5月) ・米個人所得・個人支出(4月) ・米個人消費支出物価指数(4月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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