アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~業績好調のカーニバルなどクルーズ3社ほか~

投資情報部 榮 聡
2024/07/01
先週はこれまで相場上昇をけん引してきた半導体株に調整気運があったものの、他のテクノロジー大手にポジティブ材料が出て買われたことで、S&P500指数は小幅安にとどまりました。今週の株価材料として、6月雇用統計、FOMC議事要旨、パウエルFRB議長の発言、などが注目されます。
今週は先週に好決算を発表した銘柄およびその関連銘柄から、カーニバル(CCL)、ノルウェージャン クルーズ ライン(NCLH)、ロイヤル カリビアン クルーズ(RCL)、マイクロン テクノロジー(MU)、フェデックス(FDX)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

5,500ポイント手前でもみ合っています。6/28(金)には物価指標の落ち着きを受けて一時最高値を更新しましたが、利益確定売りに押し戻されました。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 2.7% | -1.4% | -4.0% |
コミュニケーションサービス | 1.3% | 4.7% | 7.5% |
不動産 | 0.7% | 1.3% | -1.1% |
一般消費財・サービス | 0.5% | 4.8% | 1.1% |
S&P500 | -0.1% | 3.5% | 4.1% |
金融 | -0.2% | -1.0% | -1.8% |
ヘルスケア | -0.4% | 1.8% | -0.5% |
情報技術 | -0.4% | 9.3% | 13.4% |
資本財・サービス | -0.6% | -1.0% | -2.5% |
生活必需品 | -0.7% | -0.5% | 1.5% |
公益事業 | -1.1% | -5.8% | 4.5% |
素材 | -1.1% | -3.3% | -4.7% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
フェデックス | 18.2% |
テスラ | 8.1% |
フォード・モーター | 5.9% |
シティグループ | 5.8% |
ユナイテッドヘルス・グループ | 5.5% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ナイキ | -22.4% |
クアルコム | -6.3% |
メルク | -5.3% |
RTX | -4.9% |
ビザ | -4.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.1%、ダウ平均は0.1%の下落、ナスダック指数は0.2%の上昇でした。
相場全体に上昇達成感があるとみられ、最高値近辺でのもみ合いに転じました。相場上昇をけん引してきた半導体には調整気運がある一方、アマゾンドットコム、テスラ、アルファベットやソフトウェア株など半導体以外のテクノロジー株が上昇しました。6/28(金)には5月の個人消費支出物価指数がインフレの鎮静を示したことで、再び最高値を更新しましたが、引けにかけて押し戻されました。
AI関連物色のデータポイントとして注目されたマイクロンテクノロジーの3-5月期決算は、AI関連がけん引して好調でしたが、市場の高い期待を満足させられませんでした。経済指標では、住宅関連指標に弱まりがみられました。また、1-3月期実質GDPの確報値は改定値から上方修正されたものの、個人消費は下方修正となっており、米国経済が鈍化しつつあることがうかがえます。
大統領候補によるTV討論会は、政策の失敗に対して精力的に攻めたトランプ氏に対してバイデン大統領は防戦気味で精彩を欠き、トランプ候補が勝ったとの見方が優勢となりました。
業種指数では、原油価格の反発が続いて「エネルギー」がトップ、「コミュニケーションサービス」は通信サービス、ネットメディアを含む幅広い銘柄が上昇しました。
個別株で上昇が目立ったテスラ(TSLA)は、足もとの業績は引き続き厳しいものの、中国製EVに対する関税引き上げの動きが米国からEU、カナダへ広がっていることが材料になっているとみられます。一方、下落が目立ったナイキ B(NKE)は、3-5月期の北米売上が市場予想を下回り、2025年5月期の売上は前年比一桁台半ばの減収、6-8月期は約10%の減収を見込んでいることが嫌気されました。新興メーカーとの競合激化が懸念されています。
今週の米国株式
S&P500指数の7月相場は、過去5年間にいずれもプラスを記録、平均で4.1%の上昇と株価が上がりやすい月だと言えます。ただ、今年の場合は予想PERの水準が高いため(2024年予想EPS基準で22.3倍、2025年予想EPS基準で19.7倍)、調整する可能性もあるとみられます。特に全勝となった過去5年間のケースでも、決算発表が本格化する月半ばまでは停滞する傾向がみられます(図表3)。
今週の株価材料として、6月雇用統計、FOMC議事要旨、パウエルFRB議長の発言、などが注目されます。
5月の非農業部門雇用者数は前月比27.2万人増と強かったものの、他の雇用関連指標が弱まる傾向であったため、数字のままには織り込まれなかったとみられます。それが正しかったのか答合わせになります。6月非農業部門雇用者数は前月比19.0万人増の予想です。
6月FOMCでは、メンバーによる年末の政策金利見通しが、年内3回の利下げから同1回の利下げ相当に引き上げられました。ただ、このような変化は市場に織り込まれていたとみられ、市場へのインパクトは限定的でした。議事要旨の公表で、このような市場の判断が変わるか注目です。
なお、FOMC議事要旨は7/3(水)の米東部時間14時に発表されます。同日米市場の取引は13時までのため、市場への織り込みは7/5(金)に繰り越されます。
7/2(火)に欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムで、パウエルFRB議長の発言が予定されています。前回FOMC後の記者会見(6/12(水))では、政策金利の見通しについて「現時点で政策を緩和し始めることを正当化するような自信を持っているとは考えていない」と発言しています。
経済指標では上記のほか、7/1(月)に米国の6月ISM製造業景気指数(前月の48.7から49.1に改善の予想)、7/3(水)に米国の6月ADP雇用統計(前月比15.8万人増の予想)、米国の5月製造業受注(前月比+0.3%の予想)、米国の6月ISM非製造業景気指数(前月の53.8から52.5に悪化の予想)、7/5(金)に米国の6月非農業部門雇用者数(前月比19.0万人増の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今週は先週に好決算を発表した銘柄およびその関連銘柄からご紹介いたします。
まず、カーニバル(CCL)、ノルウェージャン クルーズ ライン(NCLH)、ロイヤル カリビアン クルーズ(RCL)のクルーズの3社は、カーニバルが「予約の好調は2025年まで続く見通し」として、業界全体に業況は明るいとの見方が強まりました。
6/26(水)掲載の外国株式特集レポート「中長期の成長市場として注目のクルーズ業界!足もとの株価も好調!」もご覧ください。
マイクロン テクノロジー(MU)は決算発表を受けて株価が下落となったものの、これまでに他の半導体各社の好決算を受けて株価が上がっていたことが主因とみられ、同社の決算自体は良好でした。
フェデックス(FDX)は、業界環境は厳しいものの、コスト削減策が奏功しています。
図表3 過去5年の7月相場は負け知らずだが・・・(S&P500指数の日足を指数化)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (6/28) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | カーニバル(CCL) | 18.72ドル | 16.6 | 【2025年も需要好調を見込む】 ・クルーズの世界最大手。主力の「カーニバル」のほか、「プリンセス」「コスタ」(欧州)、「AIDA」(ドイツ)、高級ラインの「シーボーン」「キュナード」(「クイーン・エリザベス」が有名)、などのブランドを展開します。2023年度末に92隻を保有、2024年度から2027年度にかけて4隻の納入を受ける予定です。 ・3-5月期決算は、売上が前年同期比18%増、調整後EPSは前年同期の0.32ドルの赤字から0.11ドルの黒字に転換しました。「2024年中の予約状況は、稼働率、価格動向とも過去最高」、「さらに、2025年は稼働率、価格動向とも2024年を上回ると見込まれる」とコメントしています。2024年11月期のガイダンスは、ネットイールドを従来の前年比9.5%増から同10.5%に引き上げました。 | |
買付 | ノルウェージャン クルーズ ライン(NCLH) | 18.79ドル | 13.4 | 【回復基調続く】 ・大手クルーズ会社の一角。「ノルウェージャン」のほか、高級な「オーシャニア」「リージェント・セブンシーズ」の3つのブランドを展開します。2023年末に32隻を保有し、2025年から2036年の間に13隻が引き渡しの予定です。2026年にかけての業績目標として、調整後EBITDAマージン約39%、調整後EPSは約2.45ドル(2024年から年平均成長率30%以上)、ネットレバレッジ4倍台半ば、調整後ROIC(投下資本利益率)12%をかかげています。 ・1-3月期の売上は前年同期比20%増、調整後EPSは前年同期の0.30ドルの赤字から0.12ドルの黒字に転換しました。予約状況については、歴史的な強さであるとコメントしています。 | |
買付 | ロイヤル カリビアン クルーズ(RCL) | 159.43ドル | 14.5 | 【同業に先駆けて業績を回復させた】 ・世界2位のクルーズ会社。手頃な「ロイヤル・カリビアン」から高級な「セレブリティ・クルーズ」まで幅広いブランドを展開します。2023年度末に65隻を保有し、8隻を発注しています。 ・1-3月期の売上は前年同期比29%増、調整後EPSは前年同期の0.23ドルの赤字から1.77ドルの黒字に転換しました。クルーズに対する強い需要を背景にロードファクター(宿泊ベッドの利用率)が107%、ネットイールドが同20%増と好調でした。通期ネットイールドのガイダンスを従来予想の前年比5.25~7.25%増から同9.0~10.0%増に引き上げています。予約動向については、「需要、価格環境とも引き続き非常に強い」とコメントしています。 | |
買付 | マイクロン テクノロジー(MU) | 131.53ドル | 14.3 | 【AI関連が業績をけん引】 ・半導体メモリ-の米大手です。テクノロジー別の売上構成比は、DRAMが71%、NAND27%、その他2%です。大規模言語モデルのAI計算を処理するためにデータ量が拡大して、これに対応するたに高性能のDRAMに対する需要が拡大しています。 ・3-5月期は売上高が前年比82%増の68億ドル、EPSは同黒字転換の0.62ドルで市場予想を共に上回りました。同社CEOは「好採算のHBM(データをやり取りする速度が早いDRAM)で市場シェアが拡大している」とコメント。HBMについては24年と25年分は完売しており、25年8月期に売上高が数十億ドルに達するとの見方を示しました。 | |
買付 | フェデックス(FDX) | 299.84ドル | 14.4 | 【大胆なコスト削減が奏功】 ・世界最大級の航空貨物輸送会社。220以上の国と地域、650以上の空港で事業を展開します。2024年5月期の売上構成比は、エキスプレス(航空貨物輸送)が48%、グラウンド(小包の陸上配送)が41%、フレイト(小包より大きい荷物の取り扱い)が11%です。 ・3-5月期のEPSが市場予想を上回り、2025年5月期のEPSガイダンスも20.00~22.00ドルで、中央値は市場予想の20.85ドルを上回りました。人員削減を含む大胆なコスト削減策が奏功しています。2025年5月期に25億ドルの自社株買いを行う予定です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、カーニバルが2024年11月期、マイクロンテクノロジーが2025年8月期、フェデックスが2025年5月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算 | |
7月 1(月) |
・日銀短観(4-6月期) ・ISM製造業景気指数(6月) |
|
2(火) | ・米求人労働異動調査(5月) ・米ワーズ自動車販売台数(6月) ・パウエルFRB議長が講演(ポルトガル) |
|
3(水) | ・米国市場短縮取引(米東部時間13時終了) ・米ADP雇用統計(6月) ・米貿易統計(5月) ・米新規失業保険申請件数(6月29日に終わる週) ・米製造業受注(5月) ・米ISM非製造業景気指数(6月) ・FOMC議事要旨(6月11日、12日開催) |
|
4(木) | ・米国市場休場(独立記念日) | |
5(金) | ・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁が講演 ・米雇用統計(6月) |
|
8(月) | ・NY連銀1年インフレ期待(6月) ・米消費者信用残高(5月) |
|
9(火) | ・パウエルFRB議長が議会証言(上院銀行委員会) ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) ・3年国債入札 |
|
10(水) | ・10年国債入札 ・クックFRB理事が講演 |
|
11(木) | ・日本機械受注(5月) ・米消費者物価指数(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月6日に終わる週) ・アトランタ連銀ボスティック総裁がQ&Aセッションに参加 ・30年国債入札 |
ペプシコ |
12(金) | ・中国貿易統計(6月) ・米生産者物価指数(6月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(6月、速報値) |
JPモルガンチェース、シティグループ、ウェルズファーゴ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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