短観が示唆!?日経平均をリードする有望業種は?

短観が示唆!?日経平均をリードする有望業種は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/07/02

日経平均は反発。ついに、ボックス圏を上放れ!

6月第4週(6/24-6/28)の日経平均は、前週末比986円61銭高(+2.56%)となり、週足ベースで反発。約2ヵ月続いていた38,000円~39,000円のボックス圏での株価推移をようやく上抜けた格好です。

東京株式市場全体的に堅調となる中、バリューセクターの上昇が目立った展開です。特に、日銀による次会合での追加利上げ観測の高まりを背景に、保険業や銀行業などが上昇をけん引しました。日米金利差が意識され、日本当局による口先介入の効果もなく、ドル円は1ドル160円を突破。約38年ぶりの円安ドル高水準となり、円安恩恵期待銘柄である輸送用機器も上昇し、相場全体を押し上げました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/21~6/28・図表7)の首位は、IHI(7013)でした。世界的な地政学リスクの高まりを背景に、他の防衛関連銘柄である三菱重工業(7011)や川崎重工業(7012)も堅調なパフォーマンスとなりました。また、前述したよう、円安ドル高が約38年ぶりの水準となったことで、日銀の金融政策正常化が加速するとの見方が拡大。銀行業や保険業などが上昇し、金融業から4銘柄ランクインしています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/21~6/28・図表8)は、押しなべて大きな悪材料を発表した銘柄もなく、足元の上昇一服から利益確定等で売られたとみられる銘柄がほとんどです。2期連続で各利益項目が赤字となり、継続企業の前提が発生中のシャープ(6753)は7位にランクイン。株主総会の前日、26日(水)に社長交代を発表。この度交代となった前社長時代は、提携関係を結ぶ鴻海精密工業との溝が深まったと指摘する声が市場で報じられています。8位のトラック大手日野自動車(7205)は、外資系大手証券会社が投資判断と目標株価を引き下げました。米国部品事業の工場撤退が全体の営業利益回復にも重しとなると指摘されています。

7月第1週(7/1-7/5)の日経平均は小幅高でスタート。一時は40,000円に迫る場面もあったものの、その後は利益確定売りなどから下げに転じました。週内最終営業日には、重要指標である米6月雇用統計の発表を控え、警戒ムードも漂っています。米国では討論会の後、トランプ元大統領が再選するとの見方が広がり、財政赤字の拡大やインフレ率の上昇懸念が強まっている状態です。7/2(火)にはドル円が一時、1ドル161円73銭を付けるなど、日本にも大きな影響を及ぼしていると言えるでしょう。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/21~6/28)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/21~6/28)

短観が示唆!?日経平均をリードする有望業種は?

今週から2024年の株式市場は後半戦がスタートしました。そして株式市場の材料として先陣をきって日銀から7/1(月)に発表されたのが全国企業短期経済観測調査(日銀短観、6月調査)です。

まず、同統計で大企業・製造業の景況感を示す業況判断DIは+13と前回調査(3月調査)比で2pt上昇し、2022年3月調査以来の高水準を回復しました。自動車では認証不正問題の影響で多少、景況感の悪化が確認されましたが、製造業全体としては円安による輸出改善や、コストアップの影響を価格に転嫁する動きが浸透したこと等を背景に景況感が改善しました。一方、先行き判断DIは+14と現状判断DI比でプラスと更なる景況感の改善が見込まれています。

大企業・非製造業の業況判断DIは+33と前回調査比で1pt低下しました。コストアップによる値上げで顧客の購入点数が減少したことや、人件費高騰などが影響したと見られます。もっとも、前回調査の先行き判断DI(+27)に対し、今回調査の業況判断DIは上振れして着地しており、景況感の悪化は限定的だったと言えるでしょう。一方、今回調査の先行き判断DIは+27と、業況判断DI比で▲6ptの大幅悪化が見込まれています。ただし、大企業・非製造業の景況感は、保守的な先行き判断DIに対し、次回調査の現状判断DIは上振れする傾向があるため、想定ほど景況感が悪化しない可能性があり、過度に悲観する必要はないと考えられます。

続いて企業の設備投資計画について見てみましょう。図表9は大企業の年度別設備投資計画の変遷を見たグラフです。2024年度設備投資計画(金額)については、大企業・製造業が前回調査から5.9%上方修正され+18.5%へ、大企業・非製造業が同6.0%上方修正され+7.0%へ、それぞれ上方修正されました。円安進展などを背景に国内回帰の動きが続く中、成長産業である半導体分野ではAI(人工知能)向けを含めた投資が拡大。また、人手不足を補う省人化投資が、製造業、非製造を問わず拡大しています。当面は民間設備投資の拡大が国内経済の回復を主導していくことが期待されます。

図表9 大企業の年度別設備投資計画の変遷

一方、7月は3月期決算企業にとって24年4-6月期(第1四半期)決算発表シーズンが始まる月です。今年4月から5月にかけて行われた本決算発表では、企業が示した2025年3月期業績予想について、事前のアナリスト予想を大きく下回るなど、例年以上に保守的(とみられる)な予想が示されました。もっとも、それだけに今後は企業の業績予想が上方修正されるのでは、との期待は高まりやすいと考えられます。特に現状は円相場が歴史的な円安で推移していることもあり、輸出企業を中心に業績の上振れが期待されます。

ただ、今回の決算発表シーズンでは企業の業績上方修正の動きは限定的に留まる可能性があります。図表10は企業の年度別経常利益計画の変遷を見たグラフです。大企業・製造業の2024年度経常利益計画は、前回(3月調査)の前期比▲4.0%から▲8.8%へ、非製造業が同▲3.4%から▲8.5%へ下方修正されました。ただし、この点については前回から今回の調査にかけて、23年度の経常利益額の水準が上振れしたことが影響していると見られます。したがって、24年度経常利益の伸び率が下方修正されたものの、必ずしも24年度経常利益額が下方修正されたことを意味している訳ではないと思われます。とは言え、やはりこれから始まる4-6月期決算発表で業績予想の上方修正の動きが広がるとは考えにくいです。日銀短観の例年のパターンを見ると、9月調査、つまり中間期決算発表のタイミングで業績上方修正の動きが広がると見られます。今回の決算発表シーズンで企業は依然として保守的なスタンスを維持する可能性が考えられます。

図表10 大企業の年度別経常利益計画の変遷

もっとも、すべての業種で業績上方修正が期待できないわけではないでしょう。図表11では大企業の製造業、非製造業における主要業種において業況判断の変化を表しました。第1象限は、前回調査の先行き判断DIに対して今回調査の業況判断DIが上振れ、更に先行きについても改善が見込まれる業種です。第4象限は業況判断DIこそ悪化したものの、先行き判断DIは改善が見込まれる業種となります。ここに位置しているのは、コストアップの影響を価格に転嫁する動きが進展した素材(非鉄、化学、鉄鋼など)や、設備投資関連(汎用機械)などです。4-6月期決算発表シーズンにおいて、これらの業種については、業績予想の上方修正に至らずとも、決算発表時に景況感について楽観的な見通しがアナウンスされる可能性があると考えられます。

図表11 業種別 業況判断DI

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