アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~イーライリリィ、ウーバーテクノロジーほか好決算銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~イーライリリィ、ウーバーテクノロジーほか好決算銘柄~

投資情報部 榮 聡

2024/08/13

先週の週初は景気後退懸念と円キャリートレードの巻き戻しで急落しましたが、新規失業保険申請件数が前週から減少となったことで景気後退懸念が後退、S&P500指数は週足ではほぼ横ばいとなりました。今週の株価材料として、7月小売売上高と大手小売の決算、7月物価指標、7月住宅指標、などが注目されます。

今週は8/2(金)~8/8(木)に四半期決算を発表した銘柄から、イーライ リリィ(LLY)ウーバー テクノロジーズ(UBER)フォーティネット(FTNT)ゾエティス(ZTS)エクソン モービル(XOM)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

8/5(月)に「雲」を大きく下抜けて、今回の調整は「バリュエーション調整」にとどまらないのではないかとの懸念が台頭しました。しかし、これは円キャリートレードの巻き戻しに伴う特殊な動きと考えれば、いまのところ「バリュエーション調整」の範囲に収まっているとの解釈が可能でしょう。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は8/5(月)終値~8/12(月)終値によります。)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 4.6% -10.6% 7.0%
エネルギー 3.8% -0.4% -3.7%
コミュニケーションサービス 3.6% -5.2% 0.8%
S&P500 3.0% -4.8% 2.3%
金融 3.0% -0.6% 0.7%
資本財・サービス 2.5% -0.4% -1.6%
不動産 2.2% 3.8% 10.0%
公益事業 2.0% 3.4% 3.5%
一般消費財・サービス 1.8% -10.3% -4.2%
ヘルスケア 1.7% 0.6% 4.0%
生活必需品 1.2% 1.8% 1.9%
素材 0.2% -2.6% -3.9%
騰落率上位(5日) 騰落率
イーライリリー 14.1%
エヌビディア 8.5%
メタ・プラットフォームズ 8.5%
コストコホールセール 7.7%
ゼネラル・モーターズ 7.6%
騰落率下位(5日) 騰落率
ファイザー -4.3%
インテル -3.7%
チャーター・コミュニケーションズ -3.5%
CVSヘルス -3.5%
エマソン・エレクトリック -3.1%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.40ポイント、ダウ平均は0.6%、ナスダック指数は0.2%の下落でした。

8/5(月)にS&P500指数は3.0%急落、その後回復しつつありますが、100日移動平均線が上値抵抗ラインとして意識される動きとなっています。

8/5(月)の相場急落は、同日に日経平均が12%下落したことが波及したとの見方があります。投資資金を金利の低い円で調達して他の金融資産に投資する手法である「円キャリートレード」の巻き戻しが世界の資産価格の下落に影響を与えているとする見方です。

日本銀行の政策金利引き上げによって上昇しつつあった円の対ドルレートが、米国の弱い経済指標によって上昇が加速、これが円キャリートレードのポジション解消を促して、株式市場の急落に影響を与えたとされます。

個別銘柄では、データセンターのサーバーシステムを供給するスーパーマイクロコンピュータの決算は4-6月期実績EPSが予想を大幅に下回って嫌気されましたが、2025年6月期の売上ガイダンスを260~300億ドル(前年比74~101%増)として、AI関連銘柄へのインプリケーションは悪くないと考えられます。

経済指標では、新規失業保険申請件数が前週から低下、市場予想を下回ったことで、景気後退懸念が後退しました。同指標は先週に景気後退懸念が強まった一因となっていました。

業種指数(8/5(月)終値~8/12(月)終値によります)では、テクノロジー株の寄与が大きい「情報技術」「コミュニケーションサービス」のほか、中東情勢の緊迫化による原油価格上昇を受けた「エネルギー」が市場平均以上に上昇しました。

今週の米国株式市場

米国株式市場は現在、(1)バリュエーション調整なのか、(2)ファンダメンタルズの変化を伴った下落相場になるのかの岐路にあるとみられます。(1)の場合は、先週までに調整を完了して、年末にかけて徐々に戻っていくシナリオで、これが筆者の考えるメイン・シナリオです。

一方、(2)は先々週後半に俄かに高まった「米国経済のリセッション入り」懸念を背景に調整局面がまだ続くというシナリオになります。米景気に対する懸念は、先週の新規失業保険申請件数が予想を下回ったことで一旦後退しましたが、依然として燻っていると考えられます。

特に今週の7月小売売上高は重要と考えられ、これが悪いと再び景気後退懸念が浮上するでしょうし、無難に通過できれば、当面その懸念は沈静化するとみられます。

今週の株価材料として、7月小売売上高と大手小売の決算、7月物価指標、7月住宅指標、などが注目されます。

米国経済の減速の程度が市場の注目を集めているため、小売売上高と大手小売の5-7月期決算(ウォルマート、ホームデポなど)で、動向を推し量ることになりそうです。8/15(木)の7月小売売上高は、前月比+0.4%の予想です。

7月物価指標については、市場の目が景気動向に向いているので、通常より重視はされていないとみられます。全体としてインフレの沈静を示唆すると見込まれます。

8/13(火)の米国7月生産者物価指数は、総合指数が前年比+2.3%の予想(前月は同+2.6%)、コア指数は前年比+2.6%の予想(前月は同+3.0%)です。8/14(水)の米国7月消費者物価指数は、総合指数が前年比+3.0%の予想(前月は同+3.0%)、コア指数は前年比+3.2%の予想(前月は同+3.3%)です。

米長期金利の低下を受けて住宅ローン金利が低下しているため、景気を下支える役割を担う要素として、住宅指標への市場の注目が高まりそうです。ただし、8/16(金)に発表予定の米国の7月住宅着工件数(前月比-1.3%の予想)、住宅建設許可件数(前月比-1.5%の予想)では、金利低下の効果は表面化しない見込みです。

経済指標では上記のほか、8/15(木)に中国の7月鉱工業生産(前年比+5.2%の予想、前月は同+5.3%)、同7月小売売上高(前年比+2.6%の予想、前月は同+2.0%)、8/16(金)に米国の8月ミシガン大学消費者信頼感(前月の66.4から66.9に改善の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今週は8/2(金)~8/8(木)に四半期決算を発表した銘柄から、イーライ リリィ(LLY)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)、フォーティネット(FTNT)、ゾエティス(ZTS)、エクソン モービル(XOM)を選んで今週の5銘柄といたします。

市場予想を上回る好決算で株価の反応も悪くなかったものになります。図表4に決算概要をリストアップしました。

図表3 緩やかな減速が続いている米小売売上高(前年比)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 取り上げた銘柄の4-6月期決算概況(8/2(金)~8/8(木)に四半期決算を発表したS&P500指数採用銘柄より)

銘柄(コード) 売上
予想比
(%)
EPS
予想比
(%)
売上
前年同期比
(%)
EPS
前年同期比
(%)
イーライ リリィ(LLY) 13.2 50.2 36.0 85.8
ウーバー テクノロジーズ(UBER) 1.1 48.9 15.9 161.1
フォーティネット(FTNT) 2.2 39.7 11.0 50.0
ゾエティス(ZTS) 2.0 4.7 8.3 10.6
エクソン モービル(XOM) 6.1 5.7 12.2 10.3

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/12)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートイーライ リリィ(LLY)884.38ドル56.0

【予想を大幅に上回る好決算】

・4-6月期は肥満治療薬「ゼップバウンド」、糖尿病治療薬「マンジャロ」、がん治療薬「ベージニオ」などの販売増で売上が前年同期比36%増(数量が同27%増、価格が同10%増)と1-3月期の同26%増から加速、調整後EPSは同86%増と好調でした。

・通期の売上を454~466億ドルへレンジを30億ドル引き上げています。売上拡大の制約となっていた生産能力を引き上げたことで、米国での販売経路の動きと製品在庫レベルの改善が業績に貢献しました。アナリストによる目標株価平均は、978.12ドルに引き上げられています。

買付チャートウーバー テクノロジーズ(UBER)69.26ドル52.1

【予約総額は実質的に加速を見込む】

・4-6月期の予約総額(チップを含まない)は前年同期比19%増(為替変動により2%ポイント目減り)で、モビリティ(配車)が同23%増、デリバリー(宅配)が同16%増の内訳でした。マンスリー・アクティブ・ユーザーは、同14%増で市場予想を0.8%上回り堅調です。

・7-9月期の予約総額は前年同期比18~23%増(約4%ポイントの為替変動による目減りを想定)を見込みます。為替変動の影響を考慮すると、実質的に加速を見込んでいることになります。なお、4-6月期はEPSが市場予想を大きく上回りましたが、株式投資の評価益増加の影響を3.3億ドル含みます。

買付チャートフォーティネット(FTNT)70.36ドル34.5

【利益率が大幅に改善中】

・企業向けにネットワークセキュリティ機器を販売するサイバーセキュリティの会社です。自社でプロセッサーからOSまで開発する「統合脅威管理(UTM)」に強みがあります。

・4-6月期は調整後営業利益率が前年同期から8.2%ポイント改善して、EPSは市場予想を大きく上回りました。売上に占めるソフトウェアの構成要素が高まることで利益率が改善しているようです。通期ガイダンスの売上を57.45~58.45億ドルから58.00~59.00億ドルへ、調整後EPSを1.73~1.79ドルから2.00~2.04ドルへ引き上げました。

買付チャートゾエティス(ZTS)183.81ドル31.7

【ペット向けの医薬品が好調】

・世界トップ級の動物向け医薬品メーカー。4-6月期売上は報告ベースで前年同期比8%増ですが、為替変動の影響を除くと同11%増でした。分野別売上は、コンパニオンアニマル(ペット)が同11%増、家畜が同3%増と、ペット向けがけん引します。

・業績好調を受けて通期の売上ガイダンスを、前年比9~11%増、為替変動の影響を除くベースで同13.5~15.5%増に引き上げました。米国ではパンデミック時にペットを飼う人が増えましたが、ベース市場が拡大した好影響が持続しているようです。

買付チャートエクソン モービル(XOM)119.00ドル13.6

【原油生産が好調】

・4-6月期の業績が市場予想を上回ったのは、原油生産量が市場予想を3.6%上回ったことが主因とみられます。ガイアナ(南米の国)およびパーミアン盆地での生産好調が寄与しました。また、パイオニアナチュラルリソーシズを2024年5月に買収して、原油生産量は1-3月期から15%増えました。

・生産好調による好業績のため、市場の期待は持続しやすいと考えられます。43億ドルの配当と52億ドルの自社株買いを実施、合計95億ドルの株主還元を行いました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
12(月) ・NY連銀1年インフレ期待(1月)  
13(火) ・ドイツZEW景気指数(8月)
・米生産者物価指数(7月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁の講演
ホームデポ、エコペトロール
14(水) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、改定値)
・米消費者物価指数(7月)
シスコシステムズ
15(木) ・日本実質GDP(4-6月期、改定値)
・中国ローンプライムレート
・中国鉱工業生産、小売売上高(7月)
・NY連銀製造業景気指数(8月)
・米小売売上高(7月)
・米新規失業保険申請件数(8月10日に終わる週)
・米鉱工業生産(7月)
・米NAHB住宅市場指数(8月)
・セントルイス連銀ムサレム総裁の講演
・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁の講演
ウォルマート、ディア
16(金) ・米住宅着工・建設許可件数(7月)
・ミシガン大学消費者信頼感(8月、速報値)
・シカゴ連銀グールズビー総裁が炉端談話
 
19(月) ・日本機械受注(6月)
・民主党大会(シカゴ、22日まで)
 
20(火)   ロウズ、メドトロニック
21(水) ・FOMC議事要旨(7月30日、31日開催分) ターゲット、ズームビデオコミュニケーションズ
22(木) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(8月)
・シカゴ連銀全米活動指数(7月)
・米新規失業保険申請件数(8月17日に終わる週)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(8月)
・米中古住宅販売件数(7月)
・ジャクソンホール会議(22日~24日、ワイオミング州)
インチュイト
23(金) ・米新築住宅販売件数(7月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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