アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算発表を受けて業績見通しが上方修正された銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算発表を受けて業績見通しが上方修正された銘柄~

投資情報部 榮 聡

2024/08/19

先週は物価指標がインフレの落ち着きを示し、小売売上高が景気に対する懸念を和らげたことから、S&P500指数は2週連続の大陽線をつけました。今週の株価材料として、ジャクソンホール会議、FOMC議事要旨、7月住宅指標、などが注目されます。

今週は決算発表を受けて通期の予想EPSが上方修正された主要銘柄から、ウーバー テクノロジーズ(UBER)イーライ リリィ(LLY)アマゾン ドットコム(AMZN)GE エアロスペース(GE)ネットフリックス(NFLX)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

8/2(金)、8/5(月)の相場急落から順調に回復して、「雲」の上限を上に抜けました。このまま同上限が下値支持ラインとなるか、あるいは、同上限が上値抵抗ラインとなって押し戻されるか(上限を上へ抜けたのはちょっとしたズレが生じただけとの解釈)、微妙なところにみえます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 7.5% 0.4% 10.8%
一般消費財・サービス 5.2% -2.6% 1.2%
S&P500 3.9% 0.9% 4.7%
金融 3.2% 1.9% 3.1%
素材 2.2% 0.5% -1.6%
資本財・サービス 2.1% 1.6% 1.4%
ヘルスケア 1.9% 3.3% 4.5%
生活必需品 1.6% 3.0% 3.3%
コミュニケーションサービス 1.0% -0.8% 0.7%
公益事業 1.0% 5.8% 3.1%
エネルギー 0.9% -2.0% -4.1%
不動産 0.1% 3.2% 8.1%
騰落率上位(5日) 騰落率
スターバックス 26.3%
エヌビディア 18.9%
ナイキ 12.0%
ブロードコム 11.8%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ 10.6%
騰落率下位(5日) 騰落率
チャーター・コミュニケーションズ -3.0%
クラフト・ハインツ -1.8%
プロクター・アンド・ギャンブル -1.6%
サイモン・プロパティー・グループ -1.2%
アメリカン・タワー -1.2%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で3.9%、ダウ平均は2.9%、ナスダック指数は5.3%の大幅上昇でした。

物価指標がインフレの沈静を示し、小売売上高が市場予想を大きく上回ったことを受けて、株式市場は8/2(金)、8/5(月)の急落から順調な回復を続けました。一時市場で高まった米国経済のリセッション懸念は一旦終息したと考えてよさそうです。

経済指標では、7月生産者物価指数が前年比+2.2%と前月の同+2.7%から大幅に低下、消費者物価指数は同+2.9%と前月の同+3.0%から低下して、インフレの沈静を示しました。

また、新規失業保険申請件数が2週連続で低下しました。さらに、7月小売売上高が前月比+1.0%と市場予想の同+0.3%を大きく上回りました。自動車や家電など耐久消費財の伸びがけん引しており、内容もよかったと評価できるでしょう。

個別企業では、ホームセンター大手のホームデポは通期の既存店売上見通しを下方修正しましたが、CEOは「消費者はここ数年の住宅価格上昇によって金銭的な余裕をもっている」と消費環境について前向きなコメントをしました。ウェルマートは通期の売上見通しを上方修正して、同社の施策が奏功しているうえ、消費行動も堅調な見通しをもっていることがうかがわれました。

業種指数では、半導体株を中心とするテクノロジー株が上昇した「情報技術」、スターバックスやナイキの上昇が寄与した「一般消費財・サービス」がS&P500指数の上昇を上回りました。個別銘柄で上昇トップのスターバックス(SBUX)は、8/13(火)にCEOを現在のナラシムハン氏からチポトレメキシカングリル(CMG)の現CEOニコル氏に交代させると発表して+24.5%上昇しました。スターバックスの4-6月期決算では、北米の来客数が前年同期比6%減となり、株主には危機感が高まっていたとみられます。

今週の米国株式市場

7月半ばから8月初にかけての相場下落は、「バリュエーション調整」だったと総括できそうです。円キャリートレードの巻き戻しによって下落は一時的に「オーバーシュート」しましたが、「ファンダメンタルズの重要な変化を伴わない、バリュエーション調整」だったと言えそうです。

一方、相場下落からの回復は順調ですが、S&P500指数の予想PER(2025年予想EPS基準)は再び20倍まで上昇しており、さらなる上値に対してはバリュエーションの高さが抑制要因になると考えられます。当面の見通しとしては、7月半ばの高値を奪回する可能性は低いとみておいたほうがよさそうです。

今週の株価材料として、ジャクソンホール会議(22日~24日、ワイオミング州)、FOMC議事要旨(7月30日、31日開催分)、7月住宅指標、などが注目されます。

ジャクソンホール会議は、カンザスシティー連邦準備銀行がワイオミング州のジャクソンホールで、毎年夏に開く金融・経済シンポジウムです。FRBは9月に利下げに転じるとみられており、今回の会議はその露払いの役割が見込まれています。8/23(金)にはパウエルFRB議長の講演が予定されており、米国経済に関する見方が注目されます。

前回FOMCの声明文では、雇用とインフレの両方の使命に対するリスクについて注視しているとされ、雇用への注目があがっていることが示唆されました。また、パウエルFRB議長の会見では、インフレ率の2%への低下について進展があったとして、9月会合で利下げを行う可能性に言及されました。

米長期金利の低下を受けて住宅ローン金利が低下しているため(図表3)、景気を下支える役割を担う要素として、住宅関連指標への市場の注目が高まりそうです。8/22(木)の7月中古住宅販売件数は前月比+1.0%の予想、8/23(金)の新築住宅販売件数は前月比+1.1%の予想です。

今週の5銘柄

今回は7月、8月に四半期決算を発表したS&P500指数採用銘柄から、決算発表を受けて通期の予想EPSが上方修正された主要銘柄をご紹介いたします。

【スクリーニング条件】

(1)通期の予想EPSが3%以上上方修正された

(2)来期の予想増収率・増益率がともに5%以上

(3)時価総額1,000億ドル以上

以上のスクリーニング条件を満たす銘柄を図表4にリストアップしました。ここから、ウーバー テクノロジーズ(UBER)、イーライ リリィ(LLY)、アマゾン ドットコム(AMZN)GE エアロスペース(GE)、ネットフリックス(NFLX)を選んでご紹介したします。

なお、アルファベットは業績動向、目標株価からの乖離率とも良好ですが、先週司法省が傘下グーグルの分割を含む選択肢を検討していると報じられたため、今回は避けました。

図表3 住宅ローン金利は1年ぶりの水準に低下

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 アナリストが業績予想を上方修正した銘柄(S&P500指数採用銘柄対象)

コード 銘柄名 予想EPS
修正率
(3ヵ月)
(%)
来期予想
売上増加率
(%)
来期予想
EPS増加率
(%)
目標株価
乖離率
(%)
UBER ウーバー・テクノロジーズ 19.8 15.9 88.0 21.4
LLY イーライリリー 15.3 25.0 36.0 5.3
PGR プログレッシブ 6.9 15.8 5.2 3.0
AMZN アマゾン・ドット・コム 5.1 10.9 16.6 29.2
GOOGL アルファベット 4.9 18.8 12.0 28.6
ISRG インテュイティブサージカル 4.9 16.0 15.2 0.7
KLAC KLA 4.8 10.7 13.2 9.3
GE ゼネラル・エレクトリック 4.5 12.6 22.8 15.7
ANET アリスタネットワークス 4.3 17.8 13.6 4.5
BSX ボストン・サイエンティフィック 3.3 10.9 13.3 14.7
SPGI S&Pグローバル 3.2 7.6 11.3 9.9
NFLX ネットフリックス 3.1 12.2 19.7 5.3

注:データは8/14(水)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/16)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートウーバー テクノロジーズ(UBER)72.04ドル54.2

【予約総額は実質的に加速を見込む】

・4-6月期の予約総額(チップを含まない顧客の支払額)は前年同期比19%増(為替変動により2%ポイント目減り)で、モビリティ(配車)が同23%増、デリバリー(宅配)が同16%増の内訳でした。マンスリー・アクティブ・ユーザーは、同14%増で市場予想を0.8%上回り堅調です。

・7-9月期の予約総額は前年同期比18~23%増(約4%ポイントの為替変動による目減りを想定)を見込みます。為替変動の影響を考慮すると、実質的に加速を見込んでいることになります。なお、4-6月期はEPSが市場予想を大きく上回りましたが、株式投資の評価益増加の影響を3.3億ドル含みます。

買付チャートイーライ リリィ(LLY)922.12ドル57.0

【予想を大幅に上回る好決算】

・4-6月期は肥満治療薬「ゼップバウンド」、糖尿病治療薬「マンジャロ」、がん治療薬「ベージニオ」などの販売増で売上が前年同期比36%増(数量が同27%増、価格が同10%増)と1-3月期の同26%増から加速、調整後EPSは同86%増と好調でした。

・通期の売上を454~466億ドルへレンジを30億ドル引き上げています。売上拡大の制約となっていた生産能力を引き上げたことで、米国での販売経路の動きと製品在庫レベルの改善が業績に貢献しました。アナリストによる目標株価平均は、990.27ドルに引き上げられています。

買付チャートアマゾン ドットコム(AMZN)177.06ドル30.7

【AWS事業が好調】

・7-9月期ガイダンスの売上・営業利益とも市場予想を下回って、株価はこれを嫌気して決算後に大きく下落しました。しかし、同社の利益成長をけん引しているAWS(クラウドサービス事業)の4-6月期は売上・営業利益とも市場予想を上回って好調でした。これが評価された結果、2024年12月期の利益予想は上方修正されたとみられます。

・4-6月期のAWS売上は前年同期比19%増と、1-3月期の同17%増から加速しました。営業利益は前年同期比74%増で、市場予想を11%上回りました。アナリスト目標株価平均値との乖離が大きくなっていることも注目できます。

買付チャートGE エアロスペース(GE)169.42ドル40.1

【航空機エンジンのメンテナンス事業が好調】

・同社は旧GE(ゼネラルエレクトリック)が、ヘルスケア事業、エネルギー事業を分離して、航空宇宙事業にフォーカスした会社となっています。4-6月期決算は、売上が市場予想を3%下回ったものの、EPSは市場予想を22%上回ったことを受けて通期のEPS予想が上方修正されました。4-6月期の売上は前年同期比4%増、調整後EPSは同62%増で、受注は同18%増(民間航空機エンジン&サービスが同38%増、防衛&推進テクノロジーが同25%減)でした。

・業績好調をけん引しているのは、航空機エンジンのメンテナンス事業です。ボーイングの旅客機生産が停滞している影響が出ているとみられ、このような事業環境はしばらく続く可能性が高そうです。

買付チャートネットフリックス(NFLX)674.07ドル35.0

【好調な業績拡大】

・4-6月期決算は売上が前年同期比17%増、EPSは同48%増と好調でした。新規加入者数は805万件と、市場予想の487万件を大幅に上回りました。共有アカウント対策の強化と広告付プランの導入効果が引き続き奏功しているとみられます。

・7-9月期の売上見通しが市場予想を下回り、新規加入者数は鈍化見込みとしたことが嫌気されて決算後に株価は下落しました。しかし、高い成長が続いていることが評価されて株価は戻りつつあります。7-9月期の売上は前年同期比14%増、EPSは同37%増のガイダンスです。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
19(月) ・日本機械受注(6月)
・民主党大会(シカゴ、22日まで)
 
20(火)   ロウズ、メドトロニック
21(水) ・FOMC議事要旨(7月30日、31日開催分) ターゲット、ズームビデオコミュニケーションズ
22(木) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(8月)
・シカゴ連銀全米活動指数(7月)
・米新規失業保険申請件数(8月17日に終わる週)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(8月)
・米中古住宅販売件数(7月)
・ジャクソンホール会議(22日~24日、ワイオミング州)
インチュイト
23(金) ・米新築住宅販売件数(7月)
・パウエルFRB議長の講演(ジャクソンホール会議)
 
26(月) ・米耐久財受注(7月)  
27(火) ・S&PコアロジックCS住宅価格(6月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(8月)
・2年国債入札
 
28(水) ・アトランタ連銀のボスティック総裁が講演
・5年国債入札
エヌビディア、セールスフォース
クラウドストライクホールディングス
29(木) ・EU27ヵ国新車登録台数(7月)
・ユーロ圏景況感(8月)
・米実質GDP(4-6月期、改定値)
・米新規失業保険申請件数(8月24日に終わる週)
・米中古住宅販売制約(7月)
・7年国債入札
・アトランタ連銀のボスティック総裁が講演
ニオ
30(金) ・日本鉱工業生産(7月)
・米個人所得・個人支出(7月)
・米個人消費支出物価指数(7月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(8月、確報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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