アメリカNOW! 今週の5銘柄~景気刺激策で注目の中国関連をご紹介~

アメリカNOW! 今週の5銘柄~景気刺激策で注目の中国関連をご紹介~

投資情報部 榮 聡

2024/09/30

先週は概ね堅調な経済指標、中国の景気刺激策、マイクロンテクノロジーの決算などを受けて、高値警戒がある中でも史上最高値圏が維持されました。今週の株価材料として、9月雇用統計、9月ISM製造業景気指数、パウエルFRB議長の講演、などが注目されます。

今週は当局による景気刺激策を受けて株価が反発している中国関連銘柄から、iシェアーズ 中国大型株 ETF(FXI)ウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーF(CXSE)アリババ グループADR(BABA)JD ドットコム ADR(JD)トリップドットコム グループ ADR(TCOM)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

3日連続の「陰線」(始値より終値が低い形)となっており、市場の高値警戒が表れているとみられます。8月、9月とISM製造業景気指数、雇用統計の発表を控えて調整したことを踏まえると、10月初週も調整を警戒しておいたほうが良さそうです。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
素材 3.4% 3.0% 9.9%
一般消費財・サービス 1.8% 7.3% 7.9%
資本財・サービス 1.6% 2.8% 10.6%
情報技術 1.1% 1.9% 0.9%
公益事業 1.0% 6.0% 18.0%
コミュニケーションサービス 1.0% 3.7% 0.6%
S&P500 0.6% 1.6% 5.1%
生活必需品 0.1% 0.5% 8.2%
不動産 -0.2% 2.0% 15.4%
金融 -0.5% -1.0% 9.9%
エネルギー -0.8% -3.6% -3.9%
ヘルスケア -1.1% -2.4% 5.0%
騰落率上位(5日) 騰落率
インテル 9.5%
テスラ 9.3%
CVSヘルス 6.7%
ダウ 6.5%
キャタピラー 6.0%
騰落率下位(5日) 騰落率
ゼネラル・モーターズ -4.9%
イーライリリー -4.7%
コノコフィリップス -4.7%
アムジェン -4.4%
ビザ -3.4%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.6%、ダウ平均は0.6%、ナスダック指数は1.0%の上昇でした。

S&P500指数は9月FOMC翌日9/19(木)に最高値を更新、高値警戒から9/20(金)には押す場面がありましたが、先週も利食い売りをこなして高値圏を維持しています。

9月コンファレンスボード消費者信頼感は前月から大きく悪化して先行きの消費減速を示唆しました。一方、S&Pグローバルの9月米国PMIは製造業の低迷が続きますが、非製造業は好調を維持しました。9月の個人消費支出物価指数はインフレ沈静のトレンドが維持され、利下げ継続の期待に安心感が広がりました。

9/24(火)には中国当局が、「金融緩和」「不動産支援」「市場支援」を発表して、相場の押し上げ要因になりました。また、マイクロンテクノロジーがAIコンピュータ向け製品の好調を背景に市場予想を上回る9-11月期売上見通しを9/25(水)に発表して、テクノロジー株の物色を刺激しました。

業種指数では、中国の景気対策の影響で「素材」の上昇が大きく、「一般消費財・サービス」「資本財・サービス」も騰落率上位となりました。一方、ディフェンシブのヘルスケア、サウジアラビアの増産意向で下落した原油価格を受けて「エネルギー」が騰落率下位となりました。個別で上昇率トップのインテル(INTC)は、半導体受託製造部門の分離方針を発表してから株価は反発基調となっており、先週は各方面から事業買収の話が出たことで株価が刺激されました。

今週の米国株式市場

8月、9月とISM製造業景気指数、雇用統計の発表を控えて調整したことを踏まえると、10月初週も調整を警戒しておいたほうがよいでしょう。また、イスラエル軍によるヒズボラ攻撃がエスカレートしているため、中東の軍事的緊張の高まりが市場で意識される可能性にも注意が必要でしょう。

今週の株価材料として、9月雇用統計、9月ISM製造業景気指数、パウエルFRB議長の講演、などが注目されます。

10/4(金)に発表予定の9月雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比14.6万人増の予想、失業率は前月と変わらずの4.2%の予想です。雇用市場の緩やかな減速を示す見込みです。

10/1(火)に発表予定の米国9月ISM製造業景気指数は前月の47.2から47.6に改善の予想です。ここ半年低下基調となっているため、相場にネガティブにならないためには改善が必要とみられます。

9/30(月)にパウエルFRB議長が全米企業エコノミスト協会(NABE)で経済の見通しについて講演予定です。9月FOMCで0.50%の利下げを行った後、どのような経済見通しの下で今後の利下げペースについてどのようなコメントが出るか注目されます。

経済指標では上記のほかに、10/1(火)に日本の7-9月期大企業製造業DI(前回の13から12に悪化の予想)、10/2(水)に米国の9月ADP雇用統計(前月比12.5万人増の予想)、10/3(木)に米国の8月製造業受注(前月比+0.1%の予想)、米国の9月ISM非製造業景気指数(前月の51.5から51.6に改善の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は当局による景気刺激策を受けて株価が反発している中国関連銘柄をご紹介いたします。

中国当局は、9/24(火)に以下のような景気刺激策を発表、また、9/26(木)には中国共産党中央政治局が2024年の経済成長目標達成に向け「必要な財政支出」を実施する方針を示したことから、図表3の通り中国関連株は急騰して市場の注目を集めています。

<<中国の景気刺激策>>

【金融緩和】

・預金準備率引き下げ / 7日物オペ金利引き下げ

・MLF金利(中期貸出ファシリティ金利)引き下げ / LPR(最優遇貸出金利)引き下げ

【不動産対策】

・住宅頭金比率引き下げ / 既存住宅ローン金利引き下げ

・主要銀行の資本増強

【市場支援】

・政府系ファンドの投資拡大

・PBR1倍割れ企業に改善計画

・上場企業のM&A促進

・人民銀行が、自社株買い資金枠3000億元、株式など担保の5000億元資金枠を設定

中国の「景気刺激策」にはこれまで何回も裏切られているため、市場には懐疑的な見方も多いとみられます。一方、今回の対策では、市場支援で「PBR1倍割れ企業に改善計画」「上場企業のM&A促進」など、かなり踏み込んだものがみられます。米国株式のバリュエーション上昇が気にされる中、世界的に出遅れ物色の流れがあるとみられるため、意外高の可能性もあるとみられます。

そこで、中国株に投資するETFのiシェアーズ 中国大型株 ETFFXIウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーファンド(CXSE)、個別銘柄で米国に上場するアリババ グループADR(BABA)JD ドットコム ADR(JD)、トリップドットコム グループ ADR(TCOM)を選んでご紹介いたします。

個別銘柄については、図表4にリストアップしたテクノロジー株中心の主要銘柄(米国上場の中国ADR銘柄の時価総額上位と、比較のために香港単独上場のテンセントをリストアップしています)から、業績動向が堅調なものを選んでいます。

図表3 米国上場の中国株指数(Golden Dragon China Index)(週足、2年)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 中国主要銘柄の投資指標(米国上場の中国ADR銘柄+香港上場のテンセント)

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(9/27)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートiシェアーズ 中国大型株 ETF32.17ドル-

【中国の大型株ETF】

・ブラックロックが提供する中国株のETFで、香港証券取引所で取引されている中国の大型および中型株式で構成される指数と同等の投資成果を目指しています。9/27(金)の純資産額は47.1億ドルです。

・組み入れ上位銘柄は、アリババグループ(09988)が9.1%、美団W(03690) が9.1%、テンセント(00700)が8.7%などとなっています。

買付チャートウィズダムツリー 中国株ニューエコノミーファンド32.55ドル-

【中国のニューエコノミーETF】

・ウィズダムツリーが提供する中国株のETFです。中国政府による株式保有率が20%未満の中国株へのエクスポージャーの提供を目指します。9/27(金)の純資産額は4.1億ドルです。

・組み入れ上位銘柄は、テンセント(00700)が13.2%、アリババグループ(09988)が11.1%、PDD ホールディングス ADR(PDD)が5.2%などとなっています。

買付チャートアリババ グループ ADR(BABA)107.33ドル11.7

【中国のeコマース最大手】

・中国のeコマース最⼤手。CtoCの「タオバオ」やBtoCの「Tモール」を運営。このほか、クラウドサービス、宅配、海外eコマースなどを展開します。

・9月からテンセントのWeChat Payを「タオバオ」に組み込んだほか、10月半ばよりJDドットコムと配送と決済で提携することが決まり、2025年にかけてピン多多に対してeコマースで市場シェアを拡大すると見込まれています。

買付チャートJD ドットコム ADR(JD)39.90ドル10.7

【中国のeコマースで2位】

・中国のeコマースでアリババに次ぐ2位の地位を占める会社です。業界トップと言われる独自の物流網をもつことを強みとしており、同部門が利益の拡大をけん引しています。

・小売分野で扱う商品・サービスの幅を広げていることに加え、物流事業のさらなる強化によって業績の拡大が続くと期待されます。

買付チャートトリップドットコム グループ ADR(TCOM)61.32ドル17.8

【オンライン旅行予約大手】

・中国のオンライン旅行予約の最大手企業です。2023年12月の売上構成比は、交通機関チケット41%、ホテル予約39%、パッケージツアー7%、ビジネス出張5%、その他8%となっています。

・中国の景気が減速していることから、旅行支出は影響を受けやすく、事業環境は向かい風が吹いています。一方、旅行予約に占めるオンラインのシェア拡大やビジネス出張でのシェア拡大によって中長期では15~20%の売上拡大を目指しています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アリババグループが2025年3月期、JDドットコム、トリップドットコムグループが2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
30(月) ・日本鉱工業生産(8月)
・中国製造業・非製造業PMI(9月)
・中国財新製造業PMI(9月)
・パウエルFRB議長が経済団体で講演
カーニバル
10月
1(火)
・日銀短観(7-9月期)
・米建設支出(8月)
・米求人労働異動調査(8月)
・米ISM製造業景気指数(9月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁があいさつ
ナイキ
2(水) ・米ADP雇用統計(9月)
・セントルイス連銀ムサレム総裁があいさつ
・ボウマンFRB理事が講演
 
3(木) ・米チャレンジャー人員削減数(9月)
・米新規失業保険申請件数(9月28日に終わる週)
・米製造業受注(8月)
・米ISM非製造業景気指数(9月)
・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁とアトランタ連銀ボスティック総裁が意見交換
 
4(金) ・米雇用統計(9月)  
7(月) ・米消費者信用残高(8月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁があいさつ
 
8(火) ・NFIB中小企業楽観指数(9月)
・米貿易統計(8月)
・3年国債入札
ペプシコ
9(水) ・FOMC議事要旨(9月17日、18日開催分)
・10年国債入札
 
10(木) ・米消費者物価指数(9月)
・30年国債入札
 
11(金) ・米生産者物価指数(9月)
・ミシガン大学消費者信頼感(10月、速報値)
JPモルガンチェース、ウェルズファーゴ

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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