アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~大統領選挙はリスクイベント通過で相場反発へ!?~
投資情報部 榮 聡
2024/11/05
先週は米金利が上昇基調となったほか、7-9月期決算は主要銘柄に株価下落で反応するものが多く、株価調整局面が続きました。今週の株価材料として、大統領選挙、FOMC、7-9月期決算発表、などが注目されます。
今週は先週に好決算を発表した銘柄から、アマゾン ドットコム(AMZN)、アルファベット A(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、コーニング(GLW)、ブッキング ホールディングス(BKNG)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
6週連続の上昇から、2週連続の下落となりました。分厚い「雲」が上昇トレンドとなっていることから、相場のトレンドは引き続き上と考えて良さそうです。大統領選挙で波乱となった場合も、「雲」上限の5,650ポイント辺りが下値支持になると期待されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は10/28(月)終値~11/4(月)終値によります)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 0.4% | -4.1% | 1.5% |
コミュニケーションサービス | -0.1% | -0.6% | 7.8% |
一般消費財・サービス | -0.3% | 1.2% | 13.7% |
生活必需品 | -1.1% | -1.1% | 1.5% |
ヘルスケア | -1.4% | -3.3% | -2.7% |
資本財・サービス | -1.4% | -1.3% | 8.9% |
素材 | -1.5% | -1.9% | 3.6% |
S&P500 | -1.9% | -0.7% | 6.8% |
金融 | -2.0% | 1.2% | 9.8% |
不動産 | -2.2% | -0.8% | 3.2% |
情報技術 | -3.3% | 0.0% | 8.9% |
公益事業 | -4.7% | -5.1% | 4.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
チャーター・コミュニケーションズ | 14.0% |
ブッキング・ホールディングス | 9.9% |
アルトリア・グループ | 7.2% |
アッヴィ | 5.7% |
コノコフィリップス | 5.4% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
---|---|
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -12.0% |
イーライリリー | -10.0% |
フォード・モーター | -8.9% |
テスラ | -7.5% |
ペイパル・ホールディングス | -6.5% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.4%、ダウ平均は0.1%、ナスダック指数は1.5%の下落でした。
S&P500指数は9月半ばから6週連続の上昇の後、2週連続の下落です。米金利が上昇基調となったほか、7-9月期決算は主要銘柄に株価下落で反応するものが多く、株価調整局面が続きました。
米10年国債利回りは、週間で4.2%台前半から4.3%台後半まで上昇しました。7-9月期実質GDPは予想を下回ったものの、個人消費は加速して基調の強さが確認されたほか、9月個人消費支出物価指数のコアが市場予想を上回ったことが寄与したとみられます。10月非農業部門雇用者数は1.2万人増にとどまりましたが、ハリケーンとストライキによる一時的な低下と捉えられました。
また、このところの米金利上昇には、大統領選挙でトランプ候補の優位が関係してるとの指摘もあります。同氏のもとではインフレは高くなりやすく、財政支出の拡大で国債が増発されるため、ハリス氏の場合よりも金利は上昇しやすいとの見方がされています。
大手テクノロジーの決算発表翌日の株価は、アルファベット+2.8%、アマゾン+6.2%、マイクロソフト-6.1%、メタプラットフォームズ-4.1%、アップル-1.3%でした。
業種指数では、原油価格上昇を受けてエネルギーのみ上昇です。一方、「連邦エネルギー規制委員会」が電力会社によるアマゾンのAIデータセンターに対する電力供給増契約を却下したことから、コンステレーション エナジー(CEG)、ビストラ(VST)など原子力発電で注目されていた銘柄に波及して、公益事業の下落が大きくなっています。また、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)の決算で10-12月期の売上見通しが市場予想を下回ったことが嫌気されて半導体株に波及、情報技術の下落が大きくなっています。
今週の米国株式市場
今週は大統領選挙のリスクイベントを消化して米国株市場は反発となる可能性が高いとみられます。
今週の株価材料として、大統領選挙、FOMC、7-9月期決算発表、などが注目されます。
大統領選挙は11/5(火)に投開票で、大勢の判明は日本時間11/6(水)のお昼ごろになる見込みです。ただし、激戦州は接戦が多いため、これより遅れる可能性もあります。
激戦州の支持率は図表3の通りで、トランプ氏がややリードと見られますが、いずれの州も支持率の差は統計の誤算の範囲内で、決定的な差はついていません。トランプ氏のほうが相場は上がりやすそうですが、ハリス氏でもリスクイベントの通過で上昇となることが期待できるでしょう。
11/7(木)に結果が発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)では、0.25%の利下げが予想されています。FedWatchによる市場予想は、11月FOMCでの利下げは99.5%、12月FOMCでは、年内2回の利下げが80%、年内1回の利下げが20%と市場の見方はかなり集約されています(日本時間11/5(火)午前9時半)。
7-9月期決算発表は、大手企業の決算発表はピークアウトしますが、引き続きパランティアテクノロジー、アームホールディングス、クアルコムなどテクノロジー株の物色に影響を及ぼす可能性のある企業の決算に注目です。
S&P500指数採用企業のEPS(発表済み企業の実績と発表予定企業の予想の混合)は、前年同期比5.1%増の予想です(FactSet社の集計、11/1(金)時点)です。前週の同3.6%増から明確な改善で、先週発表された決算が総じて好調だったことが確認できます。
経済指標では、11/5(火)に米国の10月ISM非製造業景気指数(前月の54.9から53.8に悪化の予想)、11/7(木)に中国の10月輸出(前年比+5.0%の予想、前月は同+2.4%)、輸入(前年比-1.8%%の予想、前月は同+0.3%)、11/8(金)に米国の11月ミシガン大学消費者信頼感(前月の70.5から71.0に改善の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は10/25(金)から10/31(木)までに7-9月期決算を発表して好調と考えられる銘柄を図表4にリストアップしました。ここから時価総額が大きい銘柄を中心に、アマゾン ドットコム(AMZN)、アルファベット A(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、コーニング(GLW)、ブッキング ホールディングス(BKNG) を選んでご紹介いたします。
図表3 大統領選挙激戦州の支持率調査(%、Real Clear Politics集計)
州名(選挙人数) | ハリス | トランプ | 差 |
ペンシルバニア州(19人) | 48.1 | 48.3 | 0.2 |
ジョージア州(16人) | 47.7 | 49.4 | 1.7 |
ノースカロライナ州(16人) | 47.3 | 48.8 | 1.5 |
ミシガン州(15人) | 48.4 | 47.8 | 0.6 |
アリゾナ州(11人) | 46.2 | 48.9 | 2.7 |
ウィスコンシン州(10人) | 48.6 | 48.2 | 0.4 |
ネバダ州(6人) | 47.5 | 48.5 | 1.0 |
注:日本時間11/5(火)午前9時半時点です。
※Real Clear PoliticsサイトのデータをもとにSBI証券が作成
図表4 先週の好決算銘柄(S&P500指数採用銘柄対象)
銘柄(コード) | 売上 予想比 (%) |
EPS 予想比 (%) |
売上 前年同期比 (%) |
EPS 前年同期比 (%) |
決算 発表日 |
アップル(AAPL) | 0.6 | 2.7 | 6.1 | 12.3 | 10月31日 |
アマゾン ドットコム(AMZN) | 1.0 | 25.2 | 11.0 | 44.4 | 10月31日 |
マスターカード A(MA) | 1.4 | 4.3 | 12.8 | 14.8 | 10月31日 |
ノルウェージャン クルーズ ライン(NCLH) | 1.3 | 5.6 | 10.7 | 30.3 | 10月31日 |
マイクロソフト(MSFT) | 1.7 | 6.2 | 16.0 | 10.4 | 10月30日 |
メタ プラットフォームズ A(META) | 0.8 | 14.8 | 18.9 | 37.4 | 10月30日 |
ブッキング ホールディングス(BKNG) | 4.7 | 8.6 | 8.9 | 16.0 | 10月30日 |
デイフォース(DAY) | 2.8 | 8.8 | 16.6 | 27.0 | 10月30日 |
クロロックス(CLX) | 7.4 | 34.7 | 27.1 | 279.6 | 10月30日 |
ガーミン(GRMN) | 10.6 | 38.5 | 24.2 | 41.1 | 10月30日 |
コグニザントテクノロジーソリューション A(CTSH) | 1.2 | 9.3 | 3.0 | 7.8 | 10月30日 |
アルファベット A(GOOGL) | 2.3 | 7.5 | 15.0 | 36.8 | 10月29日 |
コーニング(GLW) | 0.6 | 3.2 | 7.9 | 20.0 | 10月29日 |
FMC(FMC) | 2.7 | 29.9 | 8.5 | 56.8 | 10月29日 |
レイドス ホールディングス(LDOS) | 3.0 | 45.6 | 6.9 | 44.3 | 10月29日 |
ゼブラ テクノロジーズ A(ZBRA) | 2.9 | 7.4 | 31.3 | 301.2 | 10月29日 |
ウエイスト マネジメント(WM) | 1.8 | 4.2 | 7.9 | 20.3 | 10月28日 |
ケイデンス デザイン システムズ(CDNS) | 2.8 | 13.3 | 18.8 | 30.2 | 10月28日 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (11/4) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | アマゾン ドットコム(AMZN) | 195.78ドル | 28.4 | 【AWSの利益率が拡大】 ・7-9月期はクラウドサービスAWS部門の営業利益率が前年同期の30%から38%へ大幅に改善して、EPSは前年同期比44%増、市場予想を25%上回りました。北米部門売上が前年同期比9%増、海外部門売上が同11%増と、AWS以外も好調でした。 ・小売、クラウドサービス、広告への展開とともに、スピード、コンビニエンス、バリューに訴求する戦略によって、市場シェアの拡大とともに利益率の改善が期待されます。AWSの利益率はAIへの投資によって上下する可能性はありますが、中期的な拡大トレンドは変わらないと考えられます。 | |
買付 | アルファベット A(GOOGL) | 169.24ドル | 18.3 | 【クラウドサービスが好調】 ・7-9月期決算はクラウドサービス収入が前年同期比35%増と市場予想を大きく上回ったほか、同10%増の広告収入も市場予想を上回って堅調でした。クラウドサービスの営業利益率は17%まで上昇、YouTubeのサブスクリプションを含む事業群の売上も同28%増と順調です。 ・AIの分野では、自社で企画したAI半導体「TPU」(製造はブロードコムに依頼)を擁することから、AI投資と利益のバランスを取る上で他のIT大手に比べて優位性があると考えられます。 | |
買付 | マイクロソフト(MSFT) | 408.46ドル | 31.1 | 【クラウドがけん引して好調】 ・7-9月期決算は、主要部門がいずれも堅調で、市場予想を上回る好決算でした。インテリジェント・クラウド部門の売上は前年同期比21%増と全体をけん引しました。アジュールおよびその他クラウドサービスは前年同期比29%増で、AIサービスが押し上げています。 ・一方、10-12月期ガイダンスは、インテリジェント・クラウドの売上を前年同期比18~19%増、アジュールおよびその他クラウドサービスを同28~29%増(為替の影響を除くベース)と7-9月期からやや鈍化の見通しを示しました。ただ、見通しは保守的に出しているに過ぎない可能性もあり、好調持続と捉えてよいとみられます。 | |
買付 | コーニング(GLW) | 47.02ドル | 20.4 | 【生成AI関連が業績をけん引】 ・7-9月期業績は、生成AIデータセンターで使われるコネクティビティ製品が伸びて市場予想を上回る増収・増益でした。4-6月期との比較でも、売上が4%、調整後EPSが15%伸びています。コネクティビティ製品を含む、オプティカル・コミュニケーション部門は売上が前年同期比36%増、純利益が同92%増でした。 ・ディスプレイテクノロジーズ部門の売上は前年同期比4%増、スペシャルティ・プロダクツ部門は同3%減と、オプティカル・コミュニケーション部門の伸びを相殺するような状況にっはなっていません。 | |
買付 | ブッキング ホールディングス(BKNG) | 4776.46ドル | 22.8 | 【欧州市場が好調】 ・旅行関連予約サイトの大手で、世界的な企業買収を繰り返し、傘下には「ブッキングドットコム」「アゴダ」「Priceline.com」「KAYAK」「オープンテーブル」などを収めています。 ・7-9月期の売上は前年同期比9%増と4-6月期の同7%増から加速の形となり、市場予想を5%ポイントも上回りました。基調はパンデミックによる落ち込みの反動増から徐々に減速しつつあるとみられますが、引き続き堅調となっています。特に欧州市場の好調が想定以上となっているようです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マイクロソフトが2025年6月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
4(月) | ・米製造業受注(9月) ・3年国債入札 |
パランティアテクノロジーズ、マリオットインターナショナル コンステレーションエナジー、NXPセミコンダクターズ |
5(火) | ・米大統領選挙投票日 ・米貿易統計(9月) ・米ISM非製造業景気指数(10月) ・10年国債入札 |
|
6(水) | ・30年国債入札 | アームホールディングス、クアルコム |
7(木) | ・中国貿易統計(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月2日に終わる週) ・米FOMC政策金利 |
エコペトロル、ワーナーブラザーズディスカバリー マラホールディングス、ブラジル石油公社 リビアンオートモーティブ、ソルベンタム ユニティソフトウェア、エアビーアンドビー アリスタネットワークス、ビストラコープ |
8(金) | ・米ミシガン大学消費者信頼感(11月、速報値) | |
11(月) | ||
12(火) | ・日本工作機械受注(10月) ・米NFIB中小企業楽観指数(10月) ・NY連銀1年インフレ期待(10月) ・シニアローンオフィサーサーベイ |
ホームデポ |
13(水) | ・米消費者物価指数(10月) | シスコシステムズ |
14(木) | ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、速報値) ・米生産者物価指数(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月9日に終わる週) |
ウォルトディズニー、アプライドマテリアルズ |
15(金) | ・日本実質GDP(7-9月期、速報値) ・中国鉱工業生産・小売売上高(10月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(11月) ・米小売売上高(10月) ・米鉱工業生産(10月) |
ロスストアーズ、パロアルトネットワークス |
8(金) | ・米ミシガン大学消費者信頼感(11月、速報値) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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