アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~パランティア、リフト、クアルコム、ビストラ、アリスタ~
投資情報部 榮 聡
2024/11/11
先週は大統領選挙でのトランプ候補圧勝を受けて2016年の「トランプラリー」の再現となり、主要3指数とも最高値更新に進みました。今週の株価材料として、トランプ次期大統領の政策、物価指標、テクノロジー株の物色、などが注目されます。
今週は先週に好決算を発表した銘柄から、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、リフト A(LYFT)、クアルコム(QCOM)、ビストラ(VST)、アリスタ ネットワークス(ANET)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
「トランプラリー」でS&P500指数は一時6,000ポイントの大台を超えました。大統領選挙後は株価が上昇しやすい傾向がありますので、当面、上値を試す展開が想定されます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
一般消費財・サービス | 7.6% | 10.5% | 24.4% |
エネルギー | 6.2% | 0.5% | 4.6% |
資本財・サービス | 5.9% | 2.6% | 14.2% |
金融 | 5.5% | 5.7% | 16.1% |
情報技術 | 5.4% | 3.0% | 15.2% |
S&P500 | 4.7% | 3.1% | 12.2% |
コミュニケーションサービス | 3.7% | 5.5% | 12.0% |
不動産 | 2.7% | 1.0% | 4.9% |
ヘルスケア | 1.6% | -2.6% | 0.1% |
素材 | 1.5% | -1.9% | 6.4% |
生活必需品 | 1.2% | -0.5% | 2.7% |
公益事業 | 1.2% | -0.2% | 7.5% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
テスラ | 29.0% |
エマソン・エレクトリック | 17.3% |
ゴールドマン・サックス・グループ | 13.5% |
キャピタル・ワン・ファイナンシャル | 13.0% |
インテル | 12.9% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ダウ | -5.1% |
ファイザー | -4.9% |
アメリカン・タワー | -4.5% |
フィリップ・モリス・インターナショナル | -3.4% |
モンデリーズ・インターナショナル | -3.4% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で4.7%、ダウ平均は4.6%、ナスダック指数は5.7%の大幅上昇となり、3指数とも最高値を更新しています。
大統領選挙はトランプ氏の圧勝(獲得選挙人数はトランプ氏312人、ハリス氏226人)となり、2016年の「トランプラリー」再現となりました。重要なリスクイベントを通過したという安心感に加え、市場の一部で懸念されていた決着時期のズレ込みや選挙結果に対する暴動も起こらなかったことが相場を押し上げたと考えられます。
トランプ氏が次期大統領に決まったことは株式相場に対して、法人減税は「+」、規制緩和 は「+」、金利動向(関税引き上げや積極財政などの政策による金利上昇)は「-」、リスクプレミアム(発言の予測不能性によるリスクプレミアムの上昇)は「-」の作用が見込まれます。
「+」と「-」の両面ありますが、当面は、法人減税、規制緩和などポジティブな側面がより意識されそうです。11月FOMCでは市場予想通り0.25%の利下げが実施されました。今後の利下げついてはデータ次第として、無難に通過しました。
業種指数では、テスラの大幅上昇が効いた一般消費財・サービス、このところの株価下落に対して押し目買いが入ったエネルギー、トランプ次期大統領の政策が意識されたとみられる資本財・サービスや金融などの上昇が大きくなりました。3割近い上昇となったテスラ(TSLA)は、同社CEOのマスク氏が大統領選挙でトランプ氏を支援してきました。次期政権でも重要なポジションを担う可能性があることから、同氏が経営する会社が恩恵を受けるのではとの期待があるようです。
今週の米国株式市場
大統領選挙後は株価が上昇しやすい傾向があります。図表3の通り、2000年の「ITバブル崩壊」、2008年の「リーマンショック」のケースを例外として、特段のマイナス材料がなければ、大統領選挙の後は上昇基調となっています。
今年は選挙前にS&P500指数が年初来20%以上の上昇となっているため、通例ほど上昇幅は大きくない可能性はありそうです。しかし、当面は、トランプ次期大統領の政策が極端に過激にならなければ、上値を試す動きが続きそうです。
今週の株価材料として、トランプ次期大統領の政策、物価指標、テクノロジー株の物色、などが注目されます。
トランプ次期大統領の政策に関する発言や閣僚人事の行方に注目が集まりそうです。上院・下院とも共和党が過半を占める「トリプルレッド」となって政策が通りやすい環境と考えられます。過激な政策に関する発言がないか、また、過激な政策につながるような人選にならないか注視する必要がありそうです。現時点で、主席補佐官には女性として初となる、スーザン・ワイルズ氏の起用が発表されています。
11/13(水)発表の10月消費者物価指数は総合指数が前年比+2.6%の予想(前月は同+2.4%)、コア指数は前年比3.3%の予想(前月は同+3.3%)、11/14(木)の10月生産者物価指数は総合指数が同+2.3%の予想(前月は同+1.8%)、コア指数は同+3.0%の予想(前月は同+2.8%の予想)です。
総合指数はいずれも前月から上昇加速の予想です。トランプ氏の政策は関税引き上げや移民排斥などによってインフレを押し上げやすいため、物価の下がりにくさが意識されて相場へマイナスの影響が出る可能性に注意が必要でしょう。
先週は週初のパランティアテクノロジーの好決算がAI関連の物色にポジティブな影響を及ぼし、また、クアルコムやリフトの決算がテクノロジー株に対する物色を後押しした流れがありました。この流れが、来週11/20(水)の引け後に予定されているエヌビディアの8-10月期決算発表まで継続するか注目されます。
経済指標では、11/15(金)に日本の7-9月期実質GDP(前期比年率+0.7%の予想)、中国の10月鉱工業生産(前年比+5.6%の予想、前月は同+5.4%)、同小売売上高(前年比+3.8%の予想、前月は同+3.2%)、米国の10月小売売上高(前月比+0.3%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は11/1(金)から11/7(木)までに7-9月期決算を発表して好調と考えられる銘柄を図表4にリストアップしました。ここからパランティア テクノロジーズ A(PLTR)、リフト A(LYFT)、クアルコム(QCOM)、ビストラ(VST)、アリスタ ネットワークス(ANET)を選んでご紹介いたします。
図表3 大統領選挙前後の株価推移
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 先週の好決算銘柄(S&P500指数採用銘柄対象)
銘柄(コード) | 売上 予想比 (%) |
EPS 予想比 (%) |
売上 前年同期比 (%) |
EPS 前年同期比 (%) |
決算 発表日 |
アリスタ ネットワークス(ANET) | 3.4 | 15.2 | 20.0 | 31.2 | 11月7日 |
リフト A(LYFT) | 5.5 | 44.6 | 31.5 | 700.0 | 11月7日 |
ビストラ(VST) | 37.9 | 314.2 | 53.9 | 243.4 | 11月7日 |
クアルコム(QCOM) | 3.4 | 5.2 | 18.2 | 33.2 | 11月6日 |
エマソン エレクトリック(EMR) | 1.7 | 0.6 | 12.9 | 14.7 | 11月5日 |
パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 3.1 | 11.0 | 30.0 | 42.9 | 11月4日 |
ゾエティス(ZTS) | 4.2 | 9.0 | 11.0 | 16.2 | 11月4日 |
注:リフトはS&P500指数に含まれませんが、好調が特に目立っていたため、取り上げています。
※BloombergデータをもとにSBI証券作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (11/8) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 58.39ドル | 126.9 | 【AI向けに需要拡大】 ・ビッグデータ分析のソフトウェア企業です。7-9月期決算は、米国を中心とした生成AI向けの需要拡大を背景に、政府向け売上が前年同期比33%増、民間企業向けも同27%増と、双方とも堅調でした。 ・米政府向けの好調は、国防支出の増加が寄与したとみられます。最近IT業界では国防関連の受注が目立っており、好調が継続する可能性がありそうです。業績堅調を受け、通期の売上見通しの引き上げました。 | |
買付 | リフト A(LYFT) | 17.78ドル | 19.5 | 【通勤客を取り込んで好調】 ・配車サービスの大手。7-9月期実績が市場予想を上回ったほか、10-12月期と通期の好調な利益見通しを発表しました。同社の新機能「プライス・ロック」によって通勤客をより多く獲得していることが示唆されました。 ・「プライス・ロック」は30日間有効のパスを購入すると、通勤ラッシュに重なる時間帯に料金上昇を回避し通常時間の料金で利用できるようになるものです。 | |
買付 | クアルコム(QCOM) | 170.91ドル | 15.3 | 【スマホ市場に明るい兆し】 ・スマホ向け半導体の大手で、中国製のハイエンドスマホに多く採用されています。スマホ業界に明るさが見えるとして、10-12月期売上見通しを105億-113億ドル(前年同期比6~14%相当)とし、市場予想の105億ドルを上回りました。 ・売上の伸び率は7-9月期から鈍化の見通しですが、2023年10-12月期から市場の回復が始まっているためです。なお、11/19(火)に、IoTや自動車分野への製品多角化に関する投資家説明会が予定されています。 | |
買付 | ビストラ(VST) | 141.90ドル | 20.9 | 【原子力発電で注目】 ・原子力発電の構成比が高いとして注目されている電力企業です。大幅な売上の伸びは同業のエナジー・ハーバーを2024年3月に買収したためです。業績好調を受けて通期の調整後EBITDA見通しを引き上げました。 ・ハイパースケーラー(クラウドサービスを提供するIT大手)と原子力発電所のアップグレードに関して話をしているとコメントしたことも好感されているようです。 | |
買付 | アリスタ ネットワークス(ANET) | 400.45ドル | 41.0 | 【データセンター投資で恩恵】 ・データセンター向けのネットワーク機器や関連ソフトウェアを手掛ける会社です。主な顧客はマイクロソフト、メタなどのIT大手です。10-12月期の売上ガイダンスを前年同期比15~17%増として市場予想の同18%増を下回りましたが、データセンター投資拡大による好事業環境は当面続きそうです。 ・7-9月期決算は、データセンター投資拡大の恩恵を受けて売上は前年同期比20%増、EPSは同31%増、市場予想をそれぞれ3%、15%上回って好調でした。12/4(水)に1対4の株式分割の予定です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、クアルコムが2025年9月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
11(月) | ||
12(火) | ・日本工作機械受注(10月) ・米NFIB中小企業楽観指数(10月) ・NY連銀1年インフレ期待(10月) ・シニアローンオフィサーサーベイ ・FRBウォラー理事の講演 ・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁の講演 |
マラホールディングス、ホームデポ |
13(水) | ・米消費者物価指数(10月) ・ダラス連銀ローガン総裁の講演 ・セントルイス連銀ムサレム総裁の講演 ・カンザスシティ連銀シュミット総裁の講演 |
エコペトロル、シスコシステムズ |
14(木) | ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、速報値) ・米生産者物価指数(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月9日に終わる週) ・パウエルFRB議長の講演 ・NY連銀ウィリアムズ総裁の講演 |
ウォルトディズニー、アプライドマテリアルズ |
15(金) | ・日本実質GDP(7-9月期、速報値) ・中国鉱工業生産・小売売上高(10月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(11月) ・米小売売上高(10月) ・米鉱工業生産(10月) |
|
18(月) | ・日本機械受注(9月) ・米NAHB住宅市場指数(11月) |
|
19(火) | ・米住宅着工・建設許可件数(7月) | ロウズ、メドトロニック、ウォルマート |
20(水) | ・20年国債入札 | エヌビディア、パロアルトネットワークス ターゲット、TJX |
21(木) | ・EU27ヵ国新車登録台数(10月) ・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月) ・米新規失業保険申請件数(11月16日に終わる週) ・米中古住宅販売件数(10月) |
ロスストアーズ |
22(金) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(11月) ・S&Pグローバル米製造業PMI(11月) ・ミシガン大学消費者信頼感(11月、確報値) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
新着記事(2024/11/11)
投資信託
NISA 成長投資枠 10年リターンランキング! 優良ファンドの探し方は?
年末が近づき2025年のNISA・成長投資枠をどう使うかを検討する時期となってきました。 成長投資枠を使って投資信託(ファンド)に投資する場合は、つみたて投資枠で投資してるファンドを選ぶのも1つの方法ではありますが、ポートフォリオ全体でよ...
投資情報部 川上雅人
2024/11/11
外国株式
1分でチェック!今週の米国株式「今週はパウエルFRB議長講演と小売売上高が最大の注目ポイントに」
先週の米国株は大統領選の結果を受けてリスクオンを強める展開となりました。大接戦で結果判明まで時間がかかる可能性があるとの一部予想に反して、早期にトランプ前大統領の勝利が決定したことや上院選で共和党が多数派を占めたことを背景に、トランプラリー...
投資情報部 齊木 良
2024/11/11
免責事項・注意事項
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。