アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~ビットコイン関連ほか「トランプトレード」で買われた銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~ビットコイン関連ほか「トランプトレード」で買われた銘柄~

投資情報部 榮 聡

2024/12/02

先週は財務長官に金融市場に精通している人物が指名されたことが金利低下につながって株式は2週連続の上昇となり、S&P500指数は最高値を更新しました。今週の株価材料として、年末商戦の動向、金融当局者の発言、11月雇用統計、などが注目されます。

今週はトランプ氏が大統領当選後に上昇した銘柄から、マイクロストラテジー A(MSTR)マラ ホールディングス(MARA)コインベース グローバル A(COIN)クリーンスパーク(CLSK)テキサス パシフィック ランド トラスト(TPL)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「トランプラリー」による上昇分に対する半値押し、一目均衡表の「基準線」「転換線」から反発となりました。押し幅の「倍返し」(6,130ポイント辺りが計算できます)となるか注目です。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は11/21(木)終値~11/29(金)終値によります。)

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
一般消費財・サービス 3.5% 10.6% 19.3%
不動産 2.8% 5.1% 3.2%
生活必需品 2.5% 4.6% 2.1%
資本財・サービス 2.3% 7.2% 9.3%
金融 2.2% 10.0% 12.2%
ヘルスケア 2.2% -0.5% -6.3%
S&P500 1.4% 5.3% 6.8%
素材 1.2% 1.6% 0.2%
コミュニケーションサービス 1.2% 3.2% 9.7%
公益事業 1.0% 5.5% 8.6%
情報技術 0.0% 3.9% 6.1%
エネルギー -1.9% 7.1% 4.1%
騰落率上位(5日) 騰落率
ターゲット 8.8%
ボーイング 8.4%
アッヴィ 6.5%
ディア 6.5%
イーライリリー 6.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
エヌビディア -5.7%
オラクル -3.9%
エクソンモービル -3.3%
コノコフィリップス -3.2%
モルガン・スタンレー -2.5%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.1%、ダウ平均は1.4%、ナスダック指数は1.1%の上昇でした。S&P500指数とダウ平均は最高値を更新しています。

相場を抑える要因となっていた米10年国債利回りがもみ合いから低下に転じて株価を押し上げました。財務長官にヘッジファンドマネージャーのベッセント氏が指名され、市場では財政規律の重視と関税の引き上げペース緩和が期待されて、金利の低下方向に作用したとみられます。

一方、トランプ次期大統領がSNSで、中国からのほぼ全ての輸入品に対して追加で10%の関税をかけ、メキシコ、カナダについても25%の関税をかけるとしました。本来金利上昇に寄与する材料ですが、サプライズとなったメキシコ、カナダの関税は交渉の材料との見方もあり、影響は限定的だったとみられます。

中東ではイスラエルがレバノンのヒズボラと停戦合意に至り、地政学リスクには一部緩和の兆しがあり、これも株価を押し上げる要因になったとみられます。

業種指数では、年末商戦への期待から「一般消費財・サービス」がトップで、金利低下が恩恵となる「不動産」、ターゲットの反発を受けた「生活必需品」なども上位となりました。一方、原油価格が反落して「エネルギー」がマイナス、エヌビディアの下落がけん引して「情報技術」も低調でした。個別で最も下落したエヌビディア(NVDA)は、決算発表前日の11/20(水)終値146.67ドル、11/27(水)に安値の131.80ドルをつけ、11/29(金)は138.25ドルで引けています。

今週の米国株式市場

10-12月は株価が上昇しやすいアノマリーがあることから、堅調となりやすいでしょう。テクニカル的には「トランプラリー」の半値押しから反発して高値を更新していることから、押し幅の「倍返し」である6,130ポイント辺りが当面の目途となりそうです。

トランプ次期政権の主要人事が出揃い、重要イベントを通過しました。2017年の1次政権では閣僚の辞任が相次いで市場は気をもみましたが、今回は忠誠心が高く、トランプ氏の考え方を理解したうえで引き受けている人が多いため、上院による承認をクリアできれば、政権人事は安定すると期待されます。

今週の株価材料として、年末商戦の動向、金融当局者の発言、11月雇用統計、などが注目されます。

ブラックフライデー、サイバーマンデーなどの結果が判明します。全米小売業協会(NRF)は、年末商戦の小売売上高(11月、12月の合計)が前年同期比2.5~3.5%増と見込んでいます。商務省による小売売上高などの動向からは、堅調な消費を示唆する数字が出てくると期待されます。

今週はFOMCの“ブラックアウト”期間の前に当たることから、金融当局者の発言が多数予定されています。FOMC議事要旨では、「政策金利は時間をかけた引き下げが適切」とされましたが、その後の経済指標を受けて変化がみられるか注目です。12/4(水)にはパウエルFRB議長の発言も予定されています。

11月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比20.0万人増と予想されています。10月はハリケーンやボーイングのストライキの影響を受けて前月比1.2万人増と小さい数字となりましたが、今回はその反動が出る可能性があるため、引き続き基調は掴みづらい状況となりそうです。

経済指標では上記のほか、12/2(月)に米国の11月ISM製造業景気指数(前月の46.5から47.6に改善の予想)、12/4(水)に米国の11月ADP雇用統計(前月比15.8万増の予想)、米国の10月製造業受注(前月比+0.4%の予想)、米国の11月ISM非製造業景気指数(前月の56.0から55.5に悪化の予想)、12/6(金)に米国の11月ミシガン大学消費者信頼感(前月の71.8から73.3に改善の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は「トランプトレード」として買われたと考えられる、ビットコイン関連のマイクロストラテジー A(MSTR)、マラ ホールディングス(MARA)、コインベース グローバル A(COIN)、クリーンスパーク(CLSK)S&P500指数採用銘柄の上昇上位からテキサス パシフィック ランド トラスト(TPL)を選んでご紹介いたします。

トランプ次期政権下で暗号資産が注目される理由としては、(1)トランプ氏はビットコインカンファレンス「Bitcoin 2024」で基調講演を行った(7月31日)、(2)ホワイトハウス内に暗号資産に特化した役職新設を検討中とBloombergが報じた(11月21日)、(3)暗号資産の規制を志向していたSEC委員長のゲンスラー氏が辞任を表明した(11月21日)、などがあげられます。

ビットコインの価格は、トランプ氏の勝利を受けて1ビットコイン当たり7万ドルから10万ドル近くまで上昇、これを受けてビットコイン関連銘柄は急騰、「トランプトレード」として買われた最も目立つ銘柄群となりました。11/4(月)~11/27(水)の騰落率は、マイクロストラテジーが74.4%、マラ ホールディングスが73.7%、コインベース グローバルが67.0%、クリーンスパークが41.4%でした。

一方、S&P500指数採用銘柄では、図表3に抽出した銘柄が上昇上位です。このうち、3位のテスラ、4位のテキサス パシフィック ランド トラストなどが「トランプトレード」として買われたとみられます。テスラは良く知られていますので、今回はパシフィック ランド トラストを選んでご紹介いたします。同社は業績予想数字が2023年12月期は売上が632百万ドル、純利益が406百万ドル、EPSが17.60ドルと高収益企業です。

そのほかの銘柄は、好決算を発表したものやコーポレートアクションが好感されたケースが多くランクインしています。

図表3 11/4(月)~11/27(水)の株価騰落上位(S&P500指数採用銘柄)

順位 株価
騰落
(%)
銘柄名(コード) 事業内容 時価総額
(億ドル)
1 59.5 パランティア テクノロジーズ A(PLTR) ビッグデータ扱うソフトウェア 1,504
2 47.1 アクソン エンタープライズ(AXON) 警察向け装備品 484
3 37.1 テスラ(TSLA) 電気自動車(EV)大手 10,686
4 35.5 テキサス パシフィック ランド トラスト(TPL) パーミアン盆地の地主 376
5 34.7 スーパー マイクロ コンピューター(SMCI) AIサーバーの製造 205
6 33.5 ビストラ(VST) 原子力の比率が高い電力 526
7 29.8 EPAMシステムズ(EPAM) デジタルトランスフォーメーション 139
8 27.1 ワーナー ブラザース ディスカバリー(WBD) メディア大手 255
9 25.5 タペストリー(TPR) ブランドハウス「Coach」「Kate space」 142
10 24.7 ユナイテッド エアラインズ(UAL) 航空大手 317

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 今週の5銘柄の投資指標

銘柄名(コード) 株価
(11/27)
(ドル)
予想PER
(倍)
今期予想
売上
(百万ドル)
今期予想
ESP
(百万ドル)
時価総額
(億ドル)
マイクロストラテジー A(MSTR) 388.84 - 467.38 -3.07 896
マラ ホールディングス(MARA) 26.92 324.34 623.33 0.08 87
コインベース グローバル A(COIN) 310.98 57.46 5539.48 5.41 780
クリーンスパーク(CLSK) 13.86 - 384.57 -0.46 36
テキサス パシフィック ランド トラスト(TPL) 1636.69 - - - 376

注:テキサスパシフィックランドトラストの業績予想データは、現在構築中のようです。
※BloombergデータをもとにSBI証券作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(11/29)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートマイクロストラテジー A(MSTR)387.47ドル-

【ビットコインを大量に保有】
ビジネス・インテリジェンス(BI)ベンダーとしてソフトウェア事業を行いながら、世界最大のビットコイン保有会社です。法定通貨に対するインフレヘッジの一環として、2020年からビットコインの購入をスタート、ソフトウェア事業や転換社債の発行等で得た資金を、ビットコインの調達に充てています。ビットコインの追加購入ため、25年から27年の3年間で、420億ドル(日本円で約6.5兆円)の資⾦調達計画を発表しました。現在290億ドル以上の保有があるとみられています(11/19時点)。

買付チャートマラ ホールディングス(MARA)27.42ドル330.4

【暗号資産のマイニング会社】
ビットコインマイニングの大手で、従業員数は60人です(23.12期末)。2010年の設立当初は、ウラン等の鉱物の調査事業を⼿掛ける企業でした。その後、不動産投資事業、IPライセンス事業と業態転換を次々と続け、2017年のGlobal BitVentures, Inc.(GBV)との合併契約締結を契機にマイニング事業に参入。2018年にGBVとの合併は解消するも、米国を中心にマイニング施設を11拠点まで拡大。経営戦略に、長期投資としてビットコインの生産・保有を⾏うことを掲げています。

買付チャートコインベース グローバル A(COIN)296.20ドル54.7

【暗号資産の取引所運営】
暗号資産の取引プラットフォームを運営する会社です。100ヵ国超で展開、自社アプリを通じてビットコインやイーサリアムなどの取引を仲介しています。7-9月期取引高は、顧客別では機関投資家が82%、個人が18%、資産別では、ビットコインが37%、イーサリアムが17%、UST(米ドルに固定されたステーブルコイン)が15%、その他の暗号資産が33%となっています。業績は7四半期連続で調整後EBITDA(利払い、税金、償却前利益)がプラスとなっています。

買付チャートクリーンスパーク(CLSK)14.35ドル-

【暗号資産マイニングの会社】
ネバタ州ヘンダーソンに本社を置くビットコインのマイニング(採掘)が主業の会社です。以前は「Stratean Inc.(ストラテアン)」という名称で、再生エネルギー事業も手掛けていました(2022年に撤退)。2020年、ATL Data Centers LLC(ALT)の買収を契機に、マイニング事業に参⼊。低炭素エネルギー源(クリーンエネルギー)を活用し、環境への影響を最小限に抑えることを目指しています。

買付チャートテキサス パシフィック ランド トラスト(TPL)1600.09ドル-

【パーミアン盆地の地主】
ウェストテキサスに約87万エーカーの土地を所有するテキサス州の地主で、所有権の大部分はパーミアン盆地に集中します。石油・ガスのロイヤリティ、土地の使用料、インフラ建設用材料の販売、塩水処理、および主に炭化水素の処理や市場への輸送を行う中流のインフラプロジェクトや処理施設など、さまざまな土地利用に関連する収益を得ます。トランプ次期大統領は、シェールオイルの増産を明言していることから、恩恵が期待されます。11/26(火)より、買収されたマラソンオイルに替わってS&P500指数に採用されています。

注1:テキサス パシフィック ランド トラスト(TPL)は、Bloombergが業績予想データを構築中のため、予想PERが計算できません。
注2:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、クリーンスパークが2025年9月期、その他は2025年12月期です。※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
12月
2(月)
・財新中国製造業PMI(11月)
・米ISM製造業景気指数(11月)
・ウォラーFRB理事の講演
・NY連銀ウィリアムズ総裁の講演
 
3(火) ・米求人労働異動調査(10月)
・クーグラーFRB理事の講演
・シカゴ連銀グールズビー総裁の講演
セールスフォース
4(水) ・米ADP雇用統計(11月)
・米製造業受注(10月)
・米ISM非製造業景気指数(11月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
・セントルイス連銀ムサレム総裁のあいさつ
・パウエルFRB議長が討論に参加
シノプシス、ダラーツリー
5(木) ・米チャレンジャー人員削減数(11月)
・米貿易統計(10月)
・米新規失業保険申請件数(11月30日に終わる週)
アルタビューティ、ダラーゼネラルル
ヒューレットパッカードエンタープライズ
ルレモンアスレティカ
6(金) ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、確報値)
・米雇用統計(11月)
・ミシガン大学消費者信頼感(12月、速報値)
・ボウマンFRB理事の講演
・シカゴ連銀グールズビー総裁が炉辺談話に参加
・クリーブランド連銀ハマック総裁の講演
・サンフランシスコ連銀デイリー総裁が討論に参加
 
9(月) ・NY連銀1年インフレ期待(11月) シースリーエーアイ
10(火) ・3年国債入札  
11(水) ・米消費者物価指数(11月)
・10年国債入札
アドビ、オラクル(E)、メーシーズ
12(木) ・米生産者物価指数(11月)
・新規失業保険申請件数(12月7日に終わる週)
・30年国債入札
ブロードコム、コストコホールセール
13(金) ・米輸入物価指数(11月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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