アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~マーベルテクノロジーなどAI半導体関連銘柄に注目~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~マーベルテクノロジーなどAI半導体関連銘柄に注目~

投資情報部 榮 聡

2025/06/30

先週の米国株式市場は、中東での停戦が実現・維持されたほか、早期利下げ期待が台頭し、また、AI半導体への物色が継続されて、S&P500指数は2月に付けた最高値を約4ヵ月ぶりに更新しました。今週の株価材料として、トランプ関税の動向、雇用指標、祝日による短縮取引の影響などが注目されます。

今回はAI半導体に対する物色気運が高まっていることから、マーベルテクノロジーグループ(MRVL)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)マイクロン テクノロジー(MU)エヌビディア(NVDA)ブロードコム(AVGO)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、6ヵ月)

約4ヵ月ぶりに最高値を更新しました。主要な株価指数が最高値を更新した場合には、3~4%程度上値を試す展開となることが多いため、今回もそのような動きが想定されます。ただし、関税の影響による景気減速、物価上昇の兆しがあるため、過度に楽観的になるのは控えたい局面と思われます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 6.2% 6.8% 17.8%
情報技術 4.7% 8.7% 22.3%
一般消費財・サービス 4.4% 3.0% 12.3%
S&P500 3.4% 4.4% 10.0%
金融 3.4% 2.2% 4.2%
資本財・サービス 3.4% 2.9% 12.0%
素材 2.3% 2.0% 2.5%
ヘルスケア 1.5% 1.2% -8.2%
公益事業 1.4% -0.3% 3.1%
生活必需品 0.3% -2.6% 0.0%
不動産 -0.8% -1.1% -1.6%
エネルギー -3.5% 5.4% -8.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
ナイキ 20.5%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ 12.1%
エヌビディア 9.7%
ボーイング 7.9%
ゴールドマン・サックス・グループ 7.8%
騰落率下位(5日) 騰落率
コノコフィリップス -4.8%
エクソンモービル -4.6%
アムジェン -4.2%
シェブロン -3.9%
ダウ -2.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で3.4%、ダウ平均は3.8%、ナスダック指数は4.2%の上昇でした。

中東での停戦が実現・維持されたほか、早期利下げ期待が台頭し、また、AI半導体への物色が継続されて、S&P500指数は2/19(水)に付けた最高値6,147.43ポイントを約4ヵ月ぶりに更新して6,173.07ポイントで引けました。

金融当局者の発言を受けて政策金利の引き下げ期待が台頭しました。パウエルFRB議長の議会証言では、利下げを行う前にインフレの動向を確認する必要があるとして、これまでの発言を踏襲しました。一方、FOMCの複数委員がデータ次第で7月の利下げが妥当になる可能性があると発言し、利下げ時期の前倒し期待が醸成されました。

経済指標では、1-3月期の実質GDP確報値で個人消費が改定値から下方修正され、5月個人消費支出物価指数は総合、コアとも前月から伸びが高まり、関税の影響による景気減速や物価上昇を示唆する形となりました。ただし、市場への影響は限定的でした。

物色面では、ここ数週間続いていたAI半導体銘柄に対する買いが継続したほか、銀行株の上昇も目立ちました。銀行株の上昇については、トランプ政権下での資本規制緩和期待、4-6月期決算の好調に対する期待、マクロ環境のリスク低減(関税への懸念後退、中東情勢の沈静化)などが背景になっているとみられます。

業種指数では、大手テクノロジー株の寄与が大きい、コミュニケーションサービス、情報技術、一般消費財・サービスが市場平均を上回って相場上昇をけん引しました。中東情勢の落ち着きからエネルギーが下落しました。個別銘柄で騰落率トップのナイキ B(NKE)は、6-8月期売上見通しが前年同期比「1桁台半ば」の減少率になるとしましたが、市場では想定したほど落ち込まず最悪期を脱したのではないかとの見方が強まりました。ヒルCEOは、「今後の回復に向けた明確な道筋が見えてきた」「ここから業績は改善していく。次の段階に進む時だ」と述べました。

今週の米国株式市場

S&P500指数は非常に強い動きで、2月に付けた史上最高値を更新しました。株価上昇の背景として、以下が考えられます。

(1)市場の注目は、トランプ関税から今後出てくる減税策や規制緩和に移っている

(2)AI半導体の需要拡大が確認されたことから、テクノロジー株全般に対する市場の信頼が回復した

(3)「ディープシーク」ショックやトランプ関税ショックを受けて投資家は株式のポジションを落としたものの、相場が急激に戻ったことから、株式ポジション引き上げの動きがある

主要な株価指数が最高値を更新した場合には、3~4%程度上値を試す展開となること多く、今回もそのような動きが想定されます。ただし、関税の影響による景気減速、物価上昇の兆しがあるため、過度に楽観的になるのは控えたい局面でしょう。

今週の株価材料として、トランプ関税の動向、雇用指標、祝日による短縮取引の影響、などが注目されます。

上乗せ関税の一時停止措置の期限が7/9(水)に迫る中、期限延長の動きがあるか注目です。関税交渉を担当するベッセント財務長官は6/27(金)に米TVのインタビューで、18の重要な貿易相手国・地域と優先的に交渉を進めていると説明しました。このうち10~12の相手とは7/9(水)を念頭に合意を目指し、その後に別の20の貿易相手との交渉に移り、9/1(月)までに完了させる考えを示しています。

雇用市場は、最近発表された経済指標から鈍化トレンドが強まりつつある兆しがうかがえます。7/3(木)の6月非農業部門雇用者数も前月比+12.0万人と、過去3ヵ月平均の+13.5万人増からやや鈍化する予想です。また、このところ上振れ傾向がみられるチャレンジャー人員削減の6月分も要注意です。ただし、弱い雇用統計は中期的には要警戒ですが、短期的には7月の利下げを促進するとして、相場への影響はポジティブとなる可能性もあります。

今週は独立記念日の影響で、取引日数が3.5日に短縮されます。7/3(木)は半日取引で6月雇用統計、6月ISM非製造業景気指数、5月製造業受注といった重要指標を消化するため、値動きが荒くなる可能性に注意が必要でしょう。

経済指標では上記のほか、7/1(火)に米国の6月ISM製造業景気指数(前月の48.5から48.7に改善の予想)、7/3(木)に米国の5月製造業受注(前月比+8.1%の予想)、米国の6月ISM非製造業景気指数(前月の49.9から50.6に改善の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は本レポートの6/9(月)号に続いてAI半導体関連を取り上げます。

6/9(月)号で取り上げた銘柄のパフォーマンスは図表3の通りで、全銘柄が市場平均を上回って好調ですが、エヌビディアやブロードコムよりも、AMD、マイクロンテクノロジーなど出遅れ銘柄への物色が活発となっています。

また、6/17(火)にはマーベルテクノロジーがAI半導体に関する会社説明会を開催してポテンシャルが非常に大きいことが明かされて、市場の注目が集まっています。

これらを踏まえて、今回はマーベルテクノロジーグループ(MRVL)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、マイクロン テクノロジー(MU)、エヌビディア(NVDA)、ブロードコム(AVGO)を選んでご紹介いたします。

なお、マーベルテクノロジーについては、6/25(水)掲載の外国株投資戦略「AI半導体で急速に台頭するマーベルテクノロジー」に詳しく解説しています。ご参照ください。

図表3 AI半導体関連銘柄のパフォーマンス検証(6/9(月)号掲載銘柄)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(6/27)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートマーベルテクノロジーグループ(MRVL)77.16ドル27.6

【カスタムAI半導体に期待】

・カスタムAI半導体はブロードコムが10年以上の実績をもつのに比べて、同社は2023年から参入しており、かなり後発です。しかし、現在「カスタムXPU」と「カスタムXPUアタッチ」(XPUの周辺半導体)で18本のプロジェクトについて生産を行っているのに対して、パイプラインとして10以上の顧客に50本以上のプロジェクトが商談中で、プロジェクトの総売上は750億ドルに達する可能性があると明かされました。

・2-4月期の売上は76%を占めるデータセンター向けが前年同期比76%増となって全体も同63%増と急増しています。5-7月期売上ガイダンスは20億ドル±5%で、中央値は2-4月期比5.5%増、前年同期比57%増に相当します。

買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)143.81ドル36.5

【AI半導体に参入】

・2024年後半からAI半導体に参入しています。AI関連のソフトウェア群で10年以上の蓄積をもつエヌビディアとの競争力格差は大きいものの、エヌビディアのライバル企業を育ててエヌビディアの市場独占を阻止したいマイクロソフトなどハイパースケーラーの支援もあり、ある程度のシェアを獲得できるとみられます。

・1-3月期決算ではCPU、GPUとも伸びてデータセンター部門売上が前年同期比57%増とけん引して好調となり、4-6月期売上ガイダンスとも市場予想を上回りました。ただ、AI半導体の対中規制の影響で2025年12月期の売上は15億ドル下押しされる見込みとしました。

買付チャートマイクロン テクノロジー(MU)124.76ドル10.5

【広帯域メモリ(HBM)の需要拡大に期待】

・生成AIの計算では、従来型AIよりも大量のデータを参照しながら行うため、データを一時的に保持するためのDRAMの需要が拡大しています。とくにプロセッサーとのデータのやり取り速度が速いHBM(高帯域幅メモリ)と呼ばれるDRAMが売上増をけん引しています。

・6/25(水)発表の3-5月期決算では、AI関連売上の好調を背景に実績・6-8月期ガイダンスともに、売上・調整後EPSが市場予想を上回りました。売上ガイダンスは市場予想の98.9億ドルに対して104~110億ドルと大きく上回っています。

買付チャートエヌビディア(NVDA)157.75ドル36.5

【AI半導体需要は強い】

・AI計算にGPU(画像処理半導体)が適していることにいち早く気付き、また、GPUをコンピュータとして使うためのソフトウェアへの投資を行ってきたことから、需要が急増するAIコンピュータの分野で支配的地位を確立しています。

・5-7月期の売上ガイダンスの中央値450億ドルは市場予想を下回りましたが、中国売上は対中規制により80億ドルの喪失になるとしたことから、他地域のAI半導体需要の強いことが暗に示唆されました。フアンCEOは強い需要の背景として、「推論」(AIが予測や結論を導き出すプロセス)の計算需要が急増していることをあげました。

買付チャートブロードコム(AVGO)269.35ドル40.6

【AI関連売上が業績をけん引】

・特定顧客向けのAIアクセラレーター(エヌビディアのGPUと同様の働きをする半導体)や生成AIの計算量が巨大化したことでデータセンター内外で使用されるネットワーキング半導体の需要拡大が期待されます。

・2-4月期決算では売上が前年同期比20%増(半導体ソリューションが同17%増、インフラストラクチャー・ソフトウェアが同25%増)、調整後EPSが同44%増と好調でした。AI関連売上は前年同期比46%増の44億ドルで、半導体ソリューションの52%を占めました。5-7月期のガイダンスでは売上が約158億ドル(前年同期比21%増相当)で、AI関連売上は51億ドルへ加速する見通しです。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マーベルテクノロジー、エヌビディアが2026年1月期、マイクロンテクノロジーが2026年8月期、ブロードコムが2025年10月期、アドバンストマイクロデバイセズが2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
30(月) ・日銀短観(4-6月期)
・アトランタ連銀ボスティック総裁が講演
・シカゴ連銀グールズビー総裁が討論に参加
 
7月
1(火)
・米ISM製造業景気指数(6月)
・米求人労働異動調査(5月)
・パウエルFRB議長がパネル討論に参加
コンステレーションブランズ
2(水) ・チャレンジャー人員削減(6月)
・ADP雇用統計(6月)
 
3(木) ・米市場半日休場(独立記念日 前日)
・米雇用統計(6月)
・米貿易統計(5月)
・米新規失業保険申請件数(6月28日に終わる週)
・米製造業受注(5月)
・米ISM非製造業景気指数(6月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁が講演
 
4(金) ・米市場休場(独立記念日)  
7(月) ・米NFIB中小企業楽観指数(6月)  
8(火) ・NY連銀1年インフレ期待(6月)
・米消費者信用残高(5月)
・3年国債入札
 
9(水) ・日本工作機械受注(6月)
・FOMC議事要旨(6月17日、18日開催分)
・10年国債入札
 
10(木) ・米新規失業保険申請件数(7月5日に終わる週)
・サンフランシスコ連銀デイリー総裁が講演
・30年国債入札
コナグラブランズ
11(金)  

デルタ航空(E)

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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