「停戦」だけではない、日経平均株価への援軍は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2025/06/24
中東情勢を巡る懸念を横目に上昇
6月第3週(6/16~6/20)の日経平均株価は、前週末比568円98銭高(+1.5%)と続伸しました。中東情勢の緊迫感が続く中、日経平均株価は週半ばにかけて3日連続で上昇し、1,000円以上の上昇を記録しました。市場では、中国などの海外投資家による買いが入ったとの声が聞かれます。6月第2週までの投資部門別売買動向(現物・先物)では、海外投資家が11週連続で買い越ししており、東京株式市場をけん引している模様です。
週内には、日本と米国で中央銀行の会合が開催されました。日銀は政策金利の据え置きと国債買い入れの減額ペースの緩和を決定しました。FOMC(連邦公開市場委員会)でも政策金利の据え置きが決定されました。四半期に一度示される政策金利見通し(ドットチャート)では、年内利下げなしを見込む委員の数が4人から7人に増えたものの、年内2回の利下げ予想という中央値は維持されました。日本と米国の中央銀行会合は無難に通過し、株式市場を大きく動かす材料にはなりませんでした。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/16~6/20・図表7)の首位は、半導体検査装置のアドバンテスト(6857)です。世界的にAI関連の半導体株に見直し買いが入っている中、高性能半導体のテスト装置需要の増加で業績拡大が期待される同社株も注目されました。3位のソフトバンクグループ(9984)は、巨額AI投資を行うスターゲート計画に参画しており、同社もAI関連株として買われました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/16~6/20・図表8)の首位は、前週に騰落率首位だった住友ファーマ(4506)です。国内大手証券会社による投資判断と目標株価の引き上げを背景に、前週は30%以上の大幅高となっていたため、反動売りが発生しました。また、2位に第一三共(4568)、8位に中外製薬(4519)と、同業の医薬品銘柄が並びました。ハイテク株が上昇をけん引していた反面、ディフェンシブセクターは物色対象となりにくく、同期間のTOPIXセクター別業種では医薬品が騰落率▲2.84%と最下位でした。
6月第4週(6/23~6/27)には入り、6/23(月)の日経平均株価は、売り先行でスタートしました。6/21(土)にトランプ米大統領が、イランの核施設3カ所を「完全かつ徹底的に破壊した」と発表し、地政学リスクの悪化懸念が拡大しました。6/23(月)の前場、日経平均株価は一時376円超安となる場面もありましたが、その後、イランの報復措置として恐れられている「世界のエネルギーの喉元」ホルムズ海峡の封鎖は実行されないとの見方が広がり、安心感から大引けにかけて下げ幅が縮小しました。
なお、日本時間6/24(火)に、トランプ米大統領がイスラエルとイランが停戦で合意したと、SNSで発表しました。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/13~6/20)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/13~6/20)

「停戦」だけではない、日経平均株価への援軍は?
イスラエルとイランが停戦合意に達したことは、約12日間続いた紛争の後に実現しました。トランプ米大統領が発表したこの停戦合意は、カタールの仲介によって実現したもので、停戦は段階的に進行します。まずイランが停戦を開始し、その12時間後にイスラエルが停戦を開始する予定です。停戦が完全に実施されるまでには約24時間かかる見込みです。
この停戦合意は重要な一歩とみられます。ただ戦争が完全に終わるかどうかはまだ不透明な部分もあります。イスラエルとイランの間には深い対立があり、停戦が長期的な平和に繋がるかどうかは今後の展開次第です。投資家としては、停戦が市場に与える影響に注意する必要があります。停戦発表後、原油価格や金価格が一時的に変動する可能性があり、地政学的リスクが依然として高い状態が続くことも予想されます。
中東地域の安定性がエネルギー市場に大きな影響を与えるため、原油価格の動向に注目することが重要です。短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けることが推奨されます。日経平均株価は38,500円前後の節目を突破するケースが増えており、今後は39,000円を超えて推移できるか否かがポイントです。この停戦合意が長期的な平和に繋がることを願いつつ、冷静に市場の動向を見守ることが求められます。
図表9はVIX指数の推移を示しています。米S&P500指数の今後30日間の予想変動率を示し、数字が「20」を超え、その数字が大きくなるほど、投資家が「市場が不安定で、投資家が恐れていること」を示しています。足元では確かに「20」前後を推移していましたが、本年4月頃に比べると低水準をでした。市場は今回の戦争に対し冷静を保っていたことが見て取れます。
図表9 VIX指数(恐怖指数)の推移

日経平均株価が底堅い理由の一つは、市場が中東の紛争を冷静に見ていることです。もう一つは、日本株独自の背景があると考えられます。
図表10は日経平均株価(週足)と、投資部門別売買動向(日本取引所)を示しています。6月第2週(6/9~6/13)には、海外投資家が東証で997億円の買い越しとなり、これで11週連続の買い越しとなりました。東京株式市場で海外投資家の買い越しが10週間を超えるのは珍しく、前回は2013年6月第2週までの12週間でした。
海外投資家の継続的な買いの背景には、「変わりつつある日本企業」の存在があるかもしれません。6月第4週は株主総会が佳境を迎える週であり、25.3期を決算とする東証上場2,242社のうち82%の会社がこの週に総会を迎える予定です。ピークは6/26(23.6%)、6/27(25.2%)となっています(日本取引所公表データ)。
2024年6月の株主総会では、株主提案数が過去最高となり、アクティビスト投資家等の株主提案数も高水準でした。2025年も株主提案数が高水準を維持するかが注目されます。
株主提案の多くは否決されることが多いですが、投資家と企業の交渉が増えることで、上場企業に変化が起きていることは確かです。東証がPBR1倍割れ企業の多さを問題提起し、資本政策や親子上場等への対応を促し始めたことで、自社株買いやMBO(経営陣による買収)を含むTOB(公開買い付け)、「敵対」を含む企業買収が普通に行われるようになりました。
配当政策についても、単に一定の配当性向を目指すにとどまらず、株主資本配当率(DOE)に目標を置いたり、累進配当(配当を現状維持または増配を維持)を目指す企業が増えています。これらを背景に、投資部門別売買動向では「事業法人」がほぼ恒常的に買い越しとなっています。
日経平均株価の底堅さの背景には、このように「変わりつつある日本企業」への海外投資家等の評価が高まっている可能性が指摘されます。
図表10 海外投資家売買動向と日経平均株価

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