アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~決算を受けて業績予想が上方修正されたアンフェノール、パランティア、ラムリサーチほか

投資情報部 榮 聡
2025/08/18
先週の米国株式市場は、利下げ期待の高まりが相場を押し上げたほか、週末の小売売上高も消費減速への懸念を和らげて最高値更新が続きました。今週の株価材料として、パウエルFRB議長の講演、FOMC議事要旨、大手小売企業の5-7月期決算などが注目されます。
今回は4-6月期決算発表を受けて業績予想が上方修正された銘柄から、アンフェノール A(APH)、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、ラムリサーチ(LRCX)、GEベルノバ(GEV)、アリスタ ネットワークス(ANET)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

FRBによる利下げに対する期待の高まりを受けて再び最高値を更新しました。AI半導体銘柄への物色は一服したものの、これまで売り込まれていた銘柄の上昇が相場上昇の原動力になったように見受けられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
ヘルスケア | 4.6% | 3.2% | 2.3% |
一般消費財・サービス | 2.5% | 2.8% | 6.0% |
コミュニケーションサービス | 2.1% | 7.8% | 15.4% |
素材 | 1.8% | 0.9% | 4.6% |
金融 | 1.2% | -0.3% | 1.6% |
S&P500 | 0.9% | 2.4% | 8.2% |
エネルギー | 0.5% | -0.8% | 0.1% |
不動産 | 0.2% | -1.3% | -1.6% |
情報技術 | -0.1% | 3.4% | 16.3% |
資本財・サービス | -0.3% | -0.8% | 4.7% |
生活必需品 | -0.8% | 1.2% | -0.6% |
公益事業 | -0.8% | 1.9% | 4.1% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
インテル | 23.1% |
ユナイテッドヘルス・グループ | 21.2% |
イーライリリー | 12.1% |
ダウ | 10.1% |
クアルコム | 7.0% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
シスコシステムズ | -7.8% |
ディア | -4.2% |
ウォルマート | -3.6% |
GEエレクトリック | -2.6% |
フィリップ・モリス・インターナショナル | -2.3% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.9%、ダウ平均は1.7%、ナスダック指数は0.8%の上昇でした。3指数とも最高値を更新しています。
利下げ期待が相場を押し上げました。7月消費者物価指数の伸びは市場予想を下回り(前年比+2.7%、市場予想同+2.8%)、また、ベッセント財務長官がFRBは9月に0.50%ポイントの利下げを行うのが妥当になる可能性があるとの、市場の利下げ期待が一気に高まりました。
一方、7月生産者物価指数は市場予想を大きく上回って上昇(前年比+3.3%、市場予想同+2.5%)、市場の利下げ期待を抑えましたが、9月FOMCでの利下げ予想は維持されました。
7月小売売上高は前月比+0.5%と市場予想と一致しました。5月、6月分と合わせて、小売売上高は鈍化傾向にあるものの、急減速を心配するような推移ではないと評価されたとみられます。
業種別では、パフォーマンスの劣後が目立っていたヘルスケアが主要銘柄の上昇により大きく上昇したのが目立ちました。個別株で上昇率トップのインテル(INTC)は、トランプ大統領とタンCEOの会談後に米政府がインテル株式の保有を検討しているとの報道があり、政権が目指す製造業の米国回帰で中心的役割を果たすのではとの期待が膨らみました。
また、年初来株価が大幅に下落している医療保険のユナイテッドヘルス グループ(UNH)は、バフェット氏が率いるバークシャーハサウェイのForm13F(機関投資家の株式保有状況開示)で、ポートフォリオに0.6%組み入れられていることが明らかとなって買いが集まりました。
今週の米国株式市場
ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演が市場のリスク要因として意識されそうです。FedWatchの政策金利予想では、85%の確率で9月の利下げを織り込んでいます(日本時間8/18(月)午前9時)。議長のコメントが従来と変わらず、「引き続きデータを見極める必要がある」といったものになると相場に冷や水を浴びせる可能性があります。
今週の株価材料として、パウエルFRB議長の講演、FOMC議事要旨、大手小売企業の5-7月期決算などが注目されます。
パウエルFRB議長は8/22(金)にジャクソンホール会議で講演を行います。市場が予想している9月利下げの可能性について、どのようなコメントがされるか注目です。ジャクソンホール会議はカンサスシティ連銀が主催する年次経済シンポジウムで、今年は8/21(木)から8/23(土)に開催されます。テーマは、「変容しつつある労働市場:人口動態、生産性、マクロ経済政策(Labor Markets in Transition: Demographics, Productivity, and Macroeconomic Policy)」です。
FOMC議事要旨(7月29日、30日開催分)では、市場が予想している9月FOMCでの利下げに対して障害になるような内容でないか、確認が必要でしょう。また、トランプ政権が次期FRB議長の人選を進めていることもあり、FOMC委員間の見解の割れ方も注目されるでしょう。
大手小売企業の5-7月期決算では、ウォルマート、ターゲット、ホームデポ、ロウズなどの発表が予定されています。7月小売売上高は消費の堅調を示唆しましたが、前回の2-4月期決算において企業からは先行きに対する警戒の声が聞かれたため、今回も注意が必要でしょう。
経済指標では、8/19(火)に米国の7月住宅着工件数(前月比-1.6%の予想)、同住宅建設許可件数(前月比-0.4%の予想)、8/21(木)に米国の7月中古住宅販売件数(前月比-0.4%の予想)、などが予定されています。
今週の5銘柄
今回は4-6月期決算の発表を受けて市場の業績予想が上方修正された銘柄をご紹介します。
【スクリーニング条件】(8/14(木)時点のデータ)
・S&P500指数採用銘柄で時価総額が500億ドル以上
・通期予想EPS修正率が4週、3ヵ月とも+5%以上
・来期予想EPS増加率が+10%以上
図表3に抽出された銘柄から、アンフェノール A(APH)、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、ラムリサーチ(LRCX)、GE ベルノバ(GEV)、アリスタ ネットワークス(ANET)を選んでご紹介いたします。いずれの銘柄も、AIデータセンターへの投資急増が業績好調の背景になっています。
図表3 4-6月期決算を受けて業績見通しが上方修正された銘柄のスクリーニング

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (8/15) |
予想PER (倍) |
ポイント |
買付 | アンフェノール A(APH) | 109.21ドル | 36.0 | 【AIデータセンターの投資から恩恵】 ・電子部品のコネクタ業界でTEコネクティビティと並ぶ大手です。世界のコネクタ業界は、両社が圧倒的に大きく、収益の安定要因になっているとみられます。 ・AIデータセンター投資拡大を受けて4-6月期に売上の36%を占める「ITデータコム」売上が前年同期比2.3倍に拡大しました。売上は前年同期比56%増となりましたが、このうちオーガニック成長率が41%ポイントを占めます。TEコネクティビティの業績も好調で、光ファイバーのコーニングの業績好調も光コネクタの伸びがけん引しています。 | |
買付 | パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 177.17ドル | 272.6 | 【AI関連売上が伸びる】 ・ビッグデータを取り扱いやすくするソフトウェアを提供、売上構成比は政府向けが55%、民間企業向けが45%です(2024年12月期)。 ・企業がAIを業務に使うときにはAIモデルを自社のデータで「訓練」することが多く、このため、AI関連の売上が急増しています。また、政府向けでは防衛関連が伸びています。4-6月期決算は、売上が前年同期比48%増、EPSが同102%増で、それぞれ市場予想を7%、15%上回って好調です。アナリストの目標株価を上回っているものの、株価は上昇基調を維持しています。 | |
買付 | ラムリサーチ(LRCX) | 99.51ドル | 22.3 | 【半導体製造装置で例外的に好調】 ・半導体製造装置でASML、アプライドマテリアルズに次ぐ世界3位の会社(2024年度)で、エッチング装置や成膜装置に強いのが特徴です。 ・4-6月期の売上は前年同期比34%増、EPSは同63%増で、それぞれ市場予想を3%、10%上回りました。AI関連の市場拡大により、ゲート・オール・アラウンド(GAA)構造への投資、先進パッケージング、HBM(高帯域幅メモリ)などの需要が拡大しています。半導体製造装置業界の4-6月期決算は不振なものも見られますが、同社は例外と言えそうです。 | |
買付 | GE ベルノバ(GEV) | 621.91ドル | 79.6 | 【発電機の受注が急増】 ・旧GEの分社化により2024年に誕生した世界有数の発電設備メーカーで、発電機、風力発電、送配電・変電設備などを手掛けます。 ・4-6月期決算は売上が前年同期比11%増、調整後EPSは同61%減、それぞれ市場予想を4%、14%上回りました。発電機の受注が前年同期比44%増と極めて好調で、通期の業績見通しを引き上げました。AIデータセンター投資の拡大が電力需要の拡大見通しにつながり、発電機への需要を刺激しているとみられます。 | |
買付 | アリスタ ネットワークス(ANET) | 137.30ドル | 48.9 | 【データセンター向けネットワーク機器の会社】 ・データセンター向けのネットワーク機器および関連ソフトウェアを手がけています。「EOS」が基幹システムで、IT大手、金融、政府機関などが顧客です。 ・4-6月期決算は売上が前年同期比30%増、EPSが同39%増で、それぞれ市場予想を5%、12%上回りました。800ギガビット、1.6テラビットのスイッチへのアップグレードの波が続いているうえ、ハイパースケーラーによるAIデータセンター投資からも恩恵を受けて予想を上回る売上拡大が続いています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ラムリサーチが2026年6月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
18(月) | ・米NAHB住宅市場指数(8月) | メドトロニック、パロアルトネットワークス |
19(火) | ・米住宅着工・建設許可件数(7月) | ホームデポ、アナログデバイセズ |
20(水) | ・FRBウォラー理事が講演 ・FOMC議事要旨(7月29日、30日開催分) ・アトランタ連銀ボスティック総裁が講演 ・米20年国債入札 |
ウォルマート、ターゲット、ロウズ |
21(木) | ・米新規失業保険申請件数(8月16日に終わる週) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(8月) ・米中古住宅販売件数(7月) ・ジャクソンホール会議(23日まで) |
|
22(金) | ・パウエルFRB議長の講演(ジャクソンホール会議) | |
25(月) | ・米シカゴ連銀全米活動指数(7月) ・米新築住宅販売件数(7月) |
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26(火) | ・米耐久財受注(7月) ・S&PコアロジックCS住宅価格(6月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感指数(8月) ・リッチモンド連銀バーキン総裁が講演 ・米2年国債入札 |
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27(水) | ・米5年国債入札 | エヌビディア、クラウドストライクホールディングス |
28(木) | ・米実質GDP(4-6月期、改定値) ・米新規失業保険申請件数(8月23日に終わる週) ・米中古住宅販売成約(7月) ・FRBウォラー理事が講演 ・米7年国債入札 |
デルテクノロジーズ、ダラーゼネラル、アルタビューティ |
29(金) | ・米個人所得・個人支出(7月) ・米個人消費支出物価指数(7月) ・米ミシガン大学消費者信頼感指数(8月、確報値) |
ルルレモンアスレティカ(E) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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