アメリカNOW! ~先週の好決算銘柄:パランティア、AMD、クアルコム、ロビンフッド、データドッグ~

投資情報部 榮 聡
2025/11/10
先週の米国株式市場は、米金融大手の経営陣が株式相場の調整の可能性に言及して高値警戒が強まり、また、企業の人員削減が急増しているとの指標が市場心理を悪化させて、株価は反落しました。今週の株価材料として、政府閉鎖の行方、年末商戦の見通し、7-9月期決算が注目されます。
今回は、先週好決算を発表した銘柄の中から、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、クアルコム(QCOM)、ロビンフッド マーケッツ A(HOOD)、データドッグ A(DDOG)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)
11/7(金)は安値が6,631ポイントまであり、50日移動平均線の6,670ポイントを一時下回りましたが、終値は同移動平均線を上回り6,728ポイントで引けました。調整一巡の可能性があるでしょう。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
| S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
| エネルギー | 1.5% | 4.9% | 5.6% |
| ヘルスケア | 1.3% | 2.7% | 12.3% |
| 不動産 | 1.0% | 1.8% | 0.5% |
| 生活必需品 | 0.8% | -1.6% | -5.6% |
| 金融 | 0.8% | 1.1% | 1.8% |
| 公益事業 | 0.7% | -0.6% | 4.1% |
| 素材 | 0.4% | -1.8% | -3.3% |
| 資本財・サービス | -1.1% | 2.2% | 1.7% |
| 一般消費財・サービス | -1.5% | 5.1% | 7.3% |
| S&P500 | -1.6% | 2.7% | 5.3% |
| コミュニケーションサービス | -1.7% | 3.5% | 7.6% |
| 情報技術 | -4.2% | 3.4% | 7.1% |
| 騰落率上位(5日) | 騰落率 |
| アムジェン | 7.3% |
| イーライリリー | 7.1% |
| フィリップ・モリス・インターナショナル | 6.3% |
| スターバックス | 5.8% |
| インテュイティブサージカル | 4.8% |
| 騰落率下位(5日) | 騰落率 |
| パランティア・テクノロジーズ | -11.2% |
| オラクル | -8.9% |
| アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -8.8% |
| セールスフォース | -7.9% |
| エマソン・エレクトリック | -7.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.6%、ダウ平均は1.2%、ナスダック指数は3.0%の下落となりました
11/4(火)に米大手金融の複数のトップから株式市場の割高感や調整の可能性に関するコメントが出て高値警戒感が強まったことから、AI関連などテクノロジー株に利食い売りがかさんで相場は下落基調となりました。また、週後半にはOpenAIが計画するデータセンターの巨額投資を誰がファイナンスするのかに注目が集まり、市場のセンチメントを悪化させました。
また、10月のチャレンジャー人員削減数が15.3万人と急増、10月分としては2003年以来の水準となって相場調整の気運を強めました。テクノロジーや倉庫分野の人員削減が多く、AI導入による影響が出てきたとされます。政府の雇用指標の発表が滞っている中、市場へのインパクトが大きくなりました。
一方、ADP雇用統計は前月比4.2万人増で、前月の同2.9万人減から改善して落ち着きの兆しがあり、また、ISM非製造業景気指数も前月から改善し、経済指標は悪化一方ではありませんでした。
企業決算は好調を持続しました。AI関連として注目されたパランティアテクノロジーズ、AMDとも市場予想を上回る好決算でした。しかし、株価の反応は低調でした。
業種指数では、年初来の株価出遅れが著しいエネルギーやディフェンシブ業種がプラスとなりました。AI関連銘柄などに利益確定売りが嵩んだ情報技術が4.2%と大幅に下落しました。個別銘柄でイーライ リリィ(LLY)は、肥満治療薬について価格を引き下げる一方で、メディケア(高齢者・障碍者向け医療保険制度)の適用対象に加えてもらうことをトランプ政権と合意しました。このディールは医薬品メーカーにプラスとの見方から株価は上昇しました。
今週の米国株式市場
11/7(金)のS&P500指数は安値が6,631ポイントまであり、50日移動平均線の6,670ポイントを一時下回りましたが、終値は同移動平均線を上回って6,728ポイントで引けました。調整一巡の可能性があるでしょう。トランプ大統領の対中発言を受けて大幅安となった10/10(金)の急落場面でも50日移動平均線が下値支持ラインとなりました。
相場を押し上げてきたAI関連銘柄については、利食いが先行していますが、決算内容は市場予想を上回って良いものが多く、再び物色の中心になるとみられます。
今週の株価材料として、政府閉鎖の行方、年末商戦の見通し、7-9月期決算が注目されます。
10月初から始まった政府閉鎖は過去最長を記録しており、各方面への影響が懸念されています。先週ニューヨーク市長選挙、バージニア州とニュージャージー州の州知事選挙とも民主党候補が勝利して、トランプ大統領は政府閉鎖の影響もあると吐露しました。解消に向けて動くか注目されます。
11/28(金)にブラックフライデーを控えて年末商戦に関する市場の見通しコメントが注目されるでしょう。年初来の株式相場上昇による資産効果が期待される一方、雇用市場の鈍化、トランプ関税の影響、政府閉鎖など懸念要因も多くなっています。
7-9月期決算はピークアウトして終盤に差し掛かっています。リゲッティコンピューティング、コアウィーブ、オクロ、サークルインターネット、ウォルトディズニー、アプライドマテリアルズなどの発表が予定されています。S&P500指数採用企業のEPS(発表済み企業と未発表企業の予想の混合)は91%の企業が発表を終えた段階で前年同期比13.1%増と高い伸びを示しています。
経済指標では、11/13(木)に中国の10月鉱工業生産(前年比+5.5%の予想、前月は同+6.5%)・小売売上高(前年比+2.8%の予想、前月は同+3.0%)、米国の10月消費者物価指数(総合指数は前年比+3.0%の予想、前月は同+3.0%、コア指数は同3.0%の予想、前月は同+3.0%)、11/14(金)に米国の10月小売売上高(前月比-0.2%の予想)、10月生産者物価指数(総合指数は前年比+2.5%の予想、コア指数は同+2.6%の予想)などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週に好決算を発表したと判断される銘柄を時価総額が大きい順で図表3に抽出しました。ここから時価総額が大きい銘柄を中心に、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、クアルコム(QCOM)、ロビンフッド マーケッツ A(HOOD)、データドッグ A(DDOG)を選んでご紹介いたします。
図表3 先週の好決算銘柄(10/31(金)~11/6(木)発表分、時価総額順)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
| 取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (11/7) |
予想PER (倍) |
ポイント |
| 買付 | パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 177.93ドル | 176.2 | 【アナリストの目標株価が引き上げられた】 ・7-9月期は政府・⺠間向け共に市場予想を上回る売上を記録、好調が続きました。依然として好調なAI需要を背景に、⽶国の⺠間向けは売上⾼が同121%増、調整後営業利益率は過去最⾼の51%に達しました。また、2025年の売上⾼⾒通しを41.4〜41.5億ドルから43.9〜44.0億ドルに引き上げました。 ・導入⽀援サービスを行う提携企業のCEOは、「企業にとってAIサービスの導⼊が必須要件となっており、取り込めない企業は後れを取るだろう」との⾒⽅を示しています。7-9月期の好調な決算を受けてアナリストの目標株価は190.64ドルまで引き上げられました(11/7(金)時点)。 | |
| 買付 | アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD) | 233.54ドル | 35.5 | 【来年、再来年とAI半導体が伸びる】 ・7-9月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回って好調でした。部門別売上は、データセンターが前年同期比22%増、クライアントは同46%増、ゲームはゲーム機向けが伸びて同181%増、組み込みは同8%減でした。組み込みを除く3部門が市場予想を上回りました。10-12月期の売上ガイダンスは中央値を96億ドル(前年同期比25%増)として、市場予想を上回りました。 ・2025年10月にはOpenAIおよびオラクルと大型のAI半導体供給契約を締結しており、2026年、2027年の売上拡大をけん引すると期待されます。 | |
| 買付 | クアルコム(QCOM) | 170.89ドル | 14.1 | 【主要事業のモメンタムは強い】 ・7-9月期および10-12月期の見通しにおいて、主要指標すべてで予想を上回りました。アップル向けの市場シェア拡大とフラッグシップ端末構成の改善、AI用PCの立ち上がり、堅調なアンドロイド端末の投入、そしてIoT分野の総合的な強さを反映しています。 ・上記のような事業の強さから、10-12月期からアップルがモデムチップをクアルコム製から自社製にシフトすることによるシェア喪失の影響を和らげることができると期待されています。 | |
| 買付 | ロビンフッド マーケッツ A(HOOD) | 130.36ドル | 53.4 | 【対象市場の拡大で成長】 ・米国のネット証券で、利便性の⾼いUI/UXが人気です。対象市場の拡大による成長が期待されています。銀⾏機能サービスを⼀部限定で開始したことを公表し、⾦利収入の底上げへの期待が⾼まっています。 ・7-9月期は株式とオプションの取引量が過去最⾼を記録、暗号資産の取引収益は前年比4倍となったほか、⾦利収入や有料会員数の増加等も寄与し、全セグメントが堅調に推移しました。 | |
| 買付 | データドッグ A(DDOG) | 191.24ドル | 79.0 | 【AI関連の需要が好調】 ・クラウド開発者やIT運用者向けの監視・分析・セキュリティ関連プラットフォームを提供します。7-9月期の売上は過去2年以上で最も高い前年同期比28%増となり、市場予想を4%上回って好調でした。10-12月期の売上ガイダンスも前年同期比24%増として、好調が持続する見込みです。 ・AIインフラの増加やAIアプリケーションの開発によって同社ソフトウェアに対する需要が拡大しているとみられ、また、AIエージェントの導入がさらに需要を刺激すると期待されます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、クアルコムは2026年9月期、その他は2026年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
| 経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
| 10(月) | ・米3年国債入札 | リゲッティコンピューティング、コアウィーブ |
| 11(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(10月) | オクロ |
| 12(水) | ・日本工作機械受注(10月) ・米10年国債入札 ・フィラデルフィア連銀ポールソン総裁の講演 ・アトランタ連銀ボスティック総裁の講演 |
サークルインターネット |
| 13(木) | ・中国鉱工業生産・小売売上高(10月) ・米新規失業保険申請件数(11月8日に終わる週) ・米消費者物価指数(10月) ・米30年国債入札 ・セントルイス連銀ムサレム総裁の講演 |
ウォルトディズニー、エコペトロル アプライドマテリアルズ、シスコシステムズ(E) |
| 14(金) | ・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、改定値) ・米小売売上高(10月) ・米生産者物価指数(10月) ・カンザスシティ連銀シュミッド総裁の講演 |
|
| 17(月) | ||
| 18(火) | ・日本機械受注(9月) ・米鉱工業生産(10火) ・米NAHB住宅市場指数(11月) |
ホームデポ、メドトロニック |
| 19(水) | ・米住宅着工・建設許可件数(10月) ・FOMC議事要旨 ・米20年国債入札 |
エヌビディア、ターゲット、ロウズ |
| 20(木) | ・米S&Pグローバル日本製造業PMI(11月) ・米新規失業保険申請件数(11月15日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月) ・米中古住宅販売件数(10月) ・シカゴ連銀グールズビー総裁の講演 |
|
| 21(金) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(11月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(11月) ・ミシガン大学消費者信頼感指数(11月、確報値) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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