アメリカNOW! ~好決算の2番手銘柄:KLA、HCAヘルスケア、GM、クアンタサービシーズほか~

投資情報部 榮 聡
2025/11/17
先週の米国株式市場は、政府閉鎖の解消が好感されたものの、テクノロジー株が不安定な中、複数の金融当局者から利下げに慎重な見解が示され、週後半に下落に転じました。今週の株価材料として、エヌビディアの決算発表、FOMC議事要旨、政府による経済指標発表が注目されます。
今回は過去3週の好決算銘柄として抽出したものから、時価総額が相対的に小さい2番手銘柄を中心に、KLA(KLAC)、HCA ヘルスケア(HCA)、ゼネラル モーターズ(GM)、クアンタ サービシーズ(PWR)、アイデックス ラボラトリーズ(IDXX)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)
11/7(金)に50日移動平均線から反発に転じたものの、11/14(金)には再び同移動平均線を試しました。市場参加者の強弱感が鋭く対立していると考えられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
| S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
| ヘルスケア | 3.9% | 5.9% | 11.5% |
| エネルギー | 2.5% | 6.4% | 7.7% |
| 素材 | 0.9% | -1.9% | -4.1% |
| 生活必需品 | 0.6% | -2.9% | -4.3% |
| 情報技術 | 0.5% | 1.8% | 7.8% |
| S&P500 | 0.1% | 1.1% | 4.4% |
| 金融 | -0.7% | 0.4% | 0.0% |
| コミュニケーションサービス | -0.8% | -1.0% | 4.5% |
| 資本財・サービス | -0.9% | 0.1% | 1.1% |
| 不動産 | -0.9% | -2.4% | -0.5% |
| 公益事業 | -1.2% | -3.3% | 3.7% |
| 一般消費財・サービス | -2.7% | 0.3% | 1.8% |
| 騰落率上位(5日) | 騰落率 |
| イーライリリー | 10.9% |
| シスコシステムズ | 9.8% |
| メルク | 7.7% |
| アッヴィ | 6.0% |
| アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 5.7% |
| 騰落率下位(5日) | 騰落率 |
| チャーター・コミュニケーションズ | -7.6% |
| オラクル | -6.9% |
| インテル | -6.8% |
| テスラ | -5.9% |
| ペイパル・ホールディングス | -5.1% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.1%、ダウ平均は0.3%の上昇、ナスダック指数は0.5%の下落となりました
11/12(水)に実現した政府閉鎖の解消に向けて週前半は上昇したものの、テクノロジー株に対する割高懸念がくすぶる中、金融当局者から利下げに慎重な発言が相次ぎ11/13(木)には大幅な反落となりました。
利下げ期待の後退については、政府閉鎖は解消されたものの発表が延期された経済指標の中には発表ができないものもあることから、12月FOMCでの政策判断を急ぐべきではないとの見方も影響しているようです。
テクノロジー株については、企業側からは強いAI需要と楽観的な売上見通しが一貫して発表される一方、市場参加者の中には「AI投資が過剰となっているのではないか、結果的に関連銘柄のバリュエーションが割高になっているのではないか」との見方があり、鋭く対立しています。
業種指数では、年初来の株価動向に出遅れ感があり、ディフェンシブでもあるヘルスケアや原油価格がもみ合いを続けているエネルギーなどが上昇しました。個別銘柄で上昇第2位のシスコ システムズ(CSCO)は、8-10月期決算を発表しAI関連の受注が急増していることが判明して好感されました。
今週の米国株式市場
ここ数ヵ月相場を押し上げてきた要因は、「利下げ期待」と「AI物色」と考えられますが、先々週から先週にかけて両要因とも後退し、相場の調整につながりました。4月下旬からの上昇相場は6ヵ月以上に及んでいることから、上昇一服となる可能性がありそうです。慎重な投資スタンスが望まれます。
一方、低調な雇用指標が出ることで「利下げ期待」が再び強まる可能性や、今週のエヌビディア決算発表を受けて再び「AI物色」が強まる可能性もあります。株式ポジションを強気、弱気どちらかに決定的に傾けるのは時期尚早かもしれません。
今週の株価材料として、エヌビディアの決算発表、FOMC議事要旨、政府による経済指標発表が注目されます。
エヌビディア決算は、11/19(水)引け後に発表予定です。「AI銘柄は割高ではないか」との見方もある中、AI銘柄物色の成否を決定付ける可能性のある決算として注目されます。8-10月期決算は、売上が550億ドル(前年同期比57%増、前四半期は同56%増)、EPSは1.25ドル(前年同期比60%増、前四半期は同45%増)と高成長が続く見通しです。
決算の注目点として、①GTCで「AI半導体売上は今後5四半期で5,000億ドルの軌道にある」とのコメントの詳細が説明されるか、②中国向けのAI半導体販売はどうなるのか(現在、米政府による規制で止まっています)、③AMDのAI半導体市場での台頭についてコメントがあるか、④市場で気にされているベンダーファイナンスに対する見解、などがあげられます。
10/28(火)、10/29(水)開催のFOMC議事要旨が11/19(水)午後に公表されます。このところ、複数の金融当局者による利下げに慎重になるべきとの発言を受けて12月FOMCでの利下げ期待が後退して、11/13(木)の株価下落の要因になりました。FOMCメンバー間で意見が分かれている印象で、これを確かめるものになりそうです。
政府閉鎖が解消したことで、発表が遅れていた経済指標が発表されます。9月雇用統計は11/20(木)に発表予定です。その後10月雇用統計も発表される見込みですが、家計調査による失業率はデータがないため、発表されません。その他の重要経済指標がどのようなタイミングで発表されるか、または、もう発表はないのか、明らかになっていくとみられます。
経済指標では、11/18(火)にADP週次雇用統計(11月1日に終わる週までの4週間、市場予想なし)、11/20(木)に米国の10月中古住宅販売件数(前月比+1.0%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は過去3週に好決算銘柄として「先週の好決算銘柄」の表に抽出した銘柄のうち、「今週の5銘柄」に採用してこなかった時価総額が相対的に小さい2番手銘柄を中心に、KLA(KLAC)、HCA ヘルスケア(HCA)、ゼネラル モーターズ(GM)、クアンタ サービシーズ(PWR)、アイデックス ラボラトリーズ(IDXX)を選んでご紹介いたします。
図表3 好決算の2番手銘柄(当レポートの10/27(月)、11/4(火)、11/10(月)各号に抽出した好決算銘柄より選定、時価総額順)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標
注:予想PERは今期予想EPSに基づいて計算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
| 取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (11/14) |
予想PER (倍) |
ポイント |
| 買付 | KLA(KLAC) | 1,134.32ドル | 31.6 | 【半導体検査装置大手】 ・半導体検査装置で世界最大級であり、検査・計測装置が売上の9割を占めます。AIデータセンター向けなどで高性能半導体に対する需要が急増する中、同社の検査機器・計測機器に対する需要が拡大しています。 ・7-9月期決算は、売上・EPSとも市場予想を上回り好調でしたが、通期のガイダンスを引き上げるには至りませんでした。10-12月期の売上ガイダンス中央値は、中国向け販売規制の影響を受け、前年同期比5%増まで鈍化する見通しです。 | |
| 買付 | HCA ヘルスケア(HCA) | 472.65ドル | 15.9 | 【世界最大の病院チェーン】 ・世界最大の病院チェーン。フロリダなど米20州と英国で190病院のほか、手術センターや救急治療室など約2400の外来診療施設を運営しています。 ・7-9月期は既存施設での入院患者数が2.1%増加し、利益の大幅な増加につながりました。通期の売上見通しを引き上げています。CEOは、医療へのアクセス拡大、先進技術への投資、従業員の訓練に引き続き取り組んでいると述べました。 | |
| 買付 | ゼネラル モーターズ(GM) | 70.52ドル | 6.2 | 【米自動車大手】 ・7-9月期決算は、関税コストの削減やEV事業の赤字抑制が効いて市場予想を大きく上回る決算となりました。市場は同決算を好感して株価は発表翌日に15%上昇して史上最高値を更新、その後も上昇基調です。 ・トランプ政権による排気ガス規制の撤廃を受け、利益率が高い大型SUVやピックアップトラックに車種構成をシフトできるほか、関税の影響を受けている利益率の低い韓国からの輸入車を減らすことで収益の改善が見込まれることが注目されています。 | |
| 買付 | クアンタ サービシーズ(PWR) | 429.30ドル | 34.9 | 【電力設備工事大手】 ・電力・通信向け送配電ネットワーク設備工事の北米最大手。AIデータセンターへの投資拡大を受けて電力インフラ需要が強く、業績は好調です。9月末の受注残392億ドルで過去最高を記録しました。 ・7-9月期の売上は前年同期比18%増、EPSは同22%増と伸びて、市場予想も上回りました。業績好調を受け、通期の業績見通しを売上・EPSとも引き上げました。 | |
| 買付 | アイデックス ラボラトリーズ(IDXX) | 689.93ドル | 47.8 | 【コンパニオンアニマル向け検査製品】 ・獣医療関係者向けの臨床検査製品メーカー。犬や猫などコンパニオンアニマル向けで売上や営業利益の約9割を占めます。新製品の細胞分析装置「inVue Dx」の展開が注目されています。 ・7-9月期のコンパニオンアニマル向け売上のオーガニック成長率は前年同期比12%増で、市場予想の同9%増を上回りました。業績好調を受けて通期の売上ガイダンスを引き上げています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、KLAは2026年6月期、その他は2026年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
| 経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
| 17(月) | ・NY連銀ウィリアムズ総裁のあいさつ ・ジェファーソンFRB副議長の講演 ・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁の講演 |
|
| 18(火) | ・日本機械受注(9月) ・ADP週次雇用統計(11月1日に終わる週までの4週間) ・米NAHB住宅市場指数(11月) |
ホームデポ、メドトロニック |
| 19(水) | ・FOMC議事要旨 ・米20年国債入札 ・NY連銀ウィリアムズ総裁のあいさつ |
エヌビディア、ターゲット、ロウズ |
| 20(木) | ・米S&Pグローバル日本製造業PMI(11月) ・米新規失業保険申請件数(11月15日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月) ・米中古住宅販売件数(10月) ・クリーブランド連銀ハマック総裁のあいさつ ・シカゴ連銀グールズビー総裁の講演 |
ウォルマート、ロスストアーズ |
| 21(金) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(11月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(11月) ・ミシガン大学消費者信頼感指数(11月、確報値) ・NY連銀ウィリアムズ総裁の講演 ・ダラス連銀ローガン総裁の講演 |
|
| 24(月) | ・ドイツIFO企業景況感(11月) ・シカゴ連銀全米活動指数(10月) ・米2年国債入札 |
|
| 25(火) | ・EU27ヵ国新車登録台数(6月) ・S&Pコタリティ住宅価格指数(9月) ・コンファレンスボード消費者信頼感指数(11月) ・中古住宅販売成約(10月) ・米5年債入札 |
アナログデバイセズ、デルテクノロジーズ |
| 26(水) | ・米新規失業保険申請件数(11月22日に終わる週) ・米実質GDP(7-9月期、改定値) ・米耐久財受注(10月) ・米個人所得・個人支出(10月) ・米個人消費支出物価指数(10月) ・米新築住宅販売件数(10月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
|
| 27(木) | ・米市場休場(感謝祭) | |
| 28(金) | ・米市場半日休場(感謝祭 翌日) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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