アメリカNOW! ~目標株価からのマイナス乖離が大きい銘柄:エヌビディア、AMD、Tモバイルほか~

アメリカNOW! ~目標株価からのマイナス乖離が大きい銘柄:エヌビディア、AMD、Tモバイルほか~

投資情報部 榮 聡

2025/12/08

先週の米国株式市場は、年末商戦が堅調に推移していることに加え、ADP雇用統計が前月比マイナスとなって利下げ期待を強化して、強含みの展開となりました。今週の株価材料として、FOMC(連邦公開市場委員会)、オラクルとブロードコムの決算発表、米国政府主催のAIサミットが注目されます。

今回はアナリスト目標株価平均値に対して株価のマイナス乖離が大きい銘柄から、エヌビディア(NVDA)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)Tモバイル US(TMUS)アマゾン ドットコム(AMZN)ウーバー テクノロジーズ(UBER)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

先々週の力強い反発から、強含み展開に転じました。10/29(水)に付けた史上最高値6,920.34ドルまで0.7%に迫っています。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 1.4% 1.7% 5.3%
情報技術 1.4% 1.2% 9.5%
コミュニケーションサービス 0.8% 9.1% 9.9%
一般消費財・サービス 0.8% -0.1% 1.6%
金融 0.6% 1.6% 1.1%
資本財・サービス 0.5% 0.7% 2.3%
S&P500 0.3% 2.1% 5.8%
生活必需品 -1.4% 1.7% -2.2%
不動産 -1.5% -0.7% -1.6%
素材 -1.5% 2.0% -4.9%
ヘルスケア -2.7% 4.8% 11.3%
公益事業 -4.5% -3.9% 4.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
セールスフォース 13.0%
テキサス・インスツルメンツ 8.5%
アドビ 8.2%
パランティア・テクノロジーズ 7.9%
オラクル 7.7%
騰落率下位(5日) 騰落率
ネットフリックス -6.8%
フィリップ・モリス・インターナショナル -6.1%
イーライリリー -6.1%
デューク・エナジー -6.0%
CVSヘルス -5.9%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.3%、ダウ平均は0.5%、ナスダック指数は0.9%の上昇となりました。

年末商戦の山場となる11/28(金)のブラックフライデー、12/1(月)のサイバーマンデーとも市場予想を上回って、年末商戦は堅調との見方が強まりました。市場には警戒もあったとみられ、安心感が広がったようです。

11月ADP雇用統計が前月比3.2万人減、同1.0万人増の市場予想を下回って利下げ期待を強化する方向に働き、相場の支えになったとみられます。ADPのエコノミストは、「企業が消費者の慎重な姿勢と不確実なマクロ経済環境への対応を迫られ、最近の雇用は不安定になっている」とコメントしました。

AI関連の決算はまちまちでした。カスタムAI半導体で注目されるマーベルテクノロジー、データ管理ソフトウェアのモンゴDB、顧客関係管理ソフトウェアのセールスフォースは好決算が市場に好感されました。一方、データ管理ソフトウェアのスノーフレーク、企業向けサーバーのHPエンタープライズは市場の期待を満足させることができませんでした。

業種指数では、これまでテクノロジー株の利食いの影響を受けていた情報技術、コミュニケーションサービス、一般消費財・サービスなどが上位に揃いました。一方、ディフェンシブの公益事業が大幅に下落、ヘルスケアも下落しました。個別銘柄で上昇トップのセールスフォース(CRM)は、顧客企業によるAIツール「エージェントフォース」の導入が進み、11-1月期売上見通しが市場予想を上回ったことが好感されました。一方、下落トップのネットフリックス(NFLX)は、ストリーミングサービスの「HBOマックス」を擁するワーナー ブラザース ディスカバリー(WBD)を720億ドルで買収することに合意したと発表しました。

今週の米国株式市場

「利下げ期待」が復活し、テクノロジー株に対する利食いが一服、さらに、年末商戦も堅調となると、今週のオラクル決算でAI過剰投資懸念が再燃しない限り(筆者は再燃の可能性は低いとみています)、このまま上昇基調を維持して年末ラリーにつながる可能性が高そうです。

今週の株価材料として、FOMC(連邦公開市場委員会)、オラクルとブロードコムの決算発表、米国政府主催のAIサミットが注目されます。

12月FOMCの結果は、12/10(水)に発表されます。市場では88%の確率で利下げを織り込んでいます。一方、2026年1月のFOMCでは12月の利下げ後に据え置きの見方が優勢となっています(FedWatch、日本時間12/8(月)午前8時半)。

オラクルは12/10(水)、ブロードコムは12/11(木)に9-11月期決算を発表予定です。オラクルは市場のAI過剰投資懸念の矛先が向かっている企業のため、AI物色の妥当性に関して決着をつける決算となる可能性が注目されます。

ブロードコムは、アルファベットのAIアクセラレーター「TPU」の製造を担当しています。アルファベットがTPUを外販する可能性が取り沙汰されており、外販する場合にはかなりのシェアを獲得する可能性があるため注目です。

12/12(金)に予定されているAIサミットでは、米国が日本、韓国、英国、オーストラリアなどの8カ国を招いてAI技術に必要な鉱物資源や半導体に関して話し合います。

経済指標では、12/11(木)に米国の10月と11月の生産者物価指数、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回はアナリストの目標株価平均値に対して株価のマイナス乖離が大きい銘柄をご紹介いたします。

主要銘柄からなるS&P100指数採用銘柄を対象に、目標株価が過去4週、3ヵ月とも上方修正されているものについて、目標株価からのマイナス乖離が大きい銘柄を図表3に抽出しました。

業績好調を受けてアナリストが目標株価を上方修正したものの、直近に懸念材料が出て株価が抑えられている銘柄が多い印象です。

なお、「目標株価が過去4週、3ヵ月とも上方修正されている」というスクリーニング条件をはずした場合、最もマイナス乖離が大きいのはオラクル(ORCL)の-39.7%です。その意味でも今週の同社決算発表は注目されます。

エヌビディア(NVDA)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)Tモバイル US(TMUS)、アマゾン ドットコム(AMZN)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)をご紹介いたします。

図表3 アナリスト目標株価平均値からのマイナス乖離が大きい銘柄(S&P100指数採用銘柄対象)

注:データは12/3(水)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 今週の5銘柄の投資指標

注:予想PERは今期予想EPSに基づいて計算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(12/5)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)182.41ドル23.7

【AI半導体での競合が強まる】 

・これまでAI半導体市場で80%以上の市場シェアを持つとされ、特にアルファベットによる自家消費の部分を除くとほぼ市場を独占してきました。しかし、AMDがOpenAI、オラクルと大型契約を締結したことで、市場シェアは一定程度低下すると見込まれ、初めて本格的な競争に直面する状況です。

・また、アルファベットはこれまで自家消費にとどめていたカスタムAI半導体の「TPU」を外販する可能性があると報じられました。AI半導体市場での競合が強まる可能性があり、今後の動向を注視していく必要があります。このような形で懸念材料が出てきましたが、来期基準の予想PERは20倍台前半まで低下しており、割安感が強くなっているとみられます。

買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)217.97ドル33.5

【AI半導体で大型受注】

・汎用のAI半導体市場に2023年10-12月期に参入して現在数%の市場シェアを保有していると見られています。2025年10月にはオラクル、OpenAIやオラクルとの大型AI半導体供給契約を締結しています。2025年12月期の66億ドルから、2026年12月期に121億ドル、2027年12月期に308億ドルと、急拡大が予想されています。

・一方、OpenAIやオラクルとの契約は、OpenAIが赤字企業であること、オラクルが巨額の負債発行で投資を賄うことから、AIの過剰投資に関する懸念の矛先が向かい、同社株は足元で急反落しています。

買付チャートTモバイル US(TMUS)209.63ドル17.8

【足元の減益が要因か】

・前年度下期は加入者の増加や解約率の低下を受けて業績が非常に好調でした。しかし、その反動が出て今年の7-9月期、10-12月期と連続で減益となる見通しです。これが印象を悪くしていると見られ、株価を抑制していると見られます。

・2026年12月期の業績は、7%増収、17%増益と増収増益基調に戻ると予想されています。ネットワークのキャパシティ追加と人口カバーの拡大によって、顧客獲得を料金引き下げに頼る必要のないことが業績好調につながっています。今年11月に着任した新任のCEOは、豊富な周波数帯のポートフォリオを利用して5Gのリードを拡大すると期待されています。

買付チャートアマゾン ドットコム(AMZN)229.53ドル24.3

【好決算に株価の反応が鈍い】

・7-9月期の営業利益は前年同期比横ばいにとどまりましたが、FTCへの25億ドルの罰金を除くと14%増の計算で、AWSの売上は前年同期比20%増で4-6月期の同17%増から加速、市場予想も2%上回って好調でした。この結果を受けて通期のEPSは5%、目標株価は13%引き上げられましたが、株価はほぼ横ばい圏で推移しています。

・AWSをけん引しているのは、独自開発のAIアクセラレーター「Trainium2」によるAI計算サービスで、同事業は4-6月期から150%増えて数十億ドルの事業になっているとのコメントがあり、注目されます。

買付チャートウーバー テクノロジーズ(UBER)91.32ドル22.2

【成長性に比べて割安の可能性】 

・7-9月期決算では、本業のもうけを示すEBITDA(利払い、税金、償却前利益)が市場予想を下回ったことが嫌気され、その後の株価は低調に推移しています。ただ、売上成長率は2026年16%、2027年15%が予想されており、来期予想EPS基準の予想PER22倍台は割安となっている可能性があるでしょう。

・同社はグーグル傘下のWaymoと提携してロボタクシーの事業を米国10都市で展開、また、テスラともロボタクシーで提携しています。目先は利益率を抑える可能性があるものの、中期的な成長を支える要因として注目されます。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアは2027年1月期、その他は2026年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
8(月) ・NY連銀1年インフレ期待(11月)
・米3年国債入札
 
9(火) ・米NFIB中小企業楽観指数(11月)
・米求人労働異動調査(10月)
・米10年国債入札
オートゾーン
10(水) ・FOMC政策金利 オラクル、アドビ
11(木) ・米新規失業保険申請件数(12月6日に終わる週)
・米30年国債入札
ブロードコム、コストコホールセール
ルルレモンアスレティカ
12(金) ・米国政府主催のAIサミット
・フィラデルフィア連銀ポールソン総裁の講演
・クリーブランド連銀ハマック総裁の講演
 
15(月) ・NY連銀製造業景気指数(12月)
・米NAHB住宅市場指数(12月)
 
16(火) ・米雇用統計(11月)
・米S&Pグローバル製造業PMI(12月)
 
17(水) ・米20年国債入札  
18(木) ・米新規失業保険申請件数(12月13日に終わる週)
・米消費者物価指数(11月)
マイクロンテクノロジーナイキ、フェデックス
19(金) ・米中古住宅販売指数(11月)
・米ミシガン大学消費者信頼感指数(12月、確報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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