2024年の投資戦略を考える 金利低下局面での好成績ファンドは?

2024年の投資戦略を考える 金利低下局面での好成績ファンドは?

投資情報部 川上雅人

2023/12/25

金利低下に転じた11月の1ヵ月リターンに注目! 好成績ファンドは?

卯年で日経平均株価が大きく跳ねた2023年も最終週となりました。今回の「ファンド情報プラス」は2023年最終号となります。

2023年の1月からスタートした「ファンド情報プラス」をご覧いただきまして、誠にありがとうございます。

四半期毎に閲覧数が多かったコラムのタイトルと掲載日をご紹介しますと、以下となっています。

 米国株式 vs 全世界株式 2023年を考える (2023/1/24)

 オルカン純資産総額1兆円! オルカンに勝ち続けている好成績ファンドは? (2023/4/24)

 最高値更新のインド株式 インデックスを上回るインド株式ファンドは? (2023/7/10)

 新NISA つみたて投資枠 オルカンを上回る注目のインデックスファンドは? (2023/11/13)

「ファンド情報プラス」のバックナンバーはこちらをご参照ください。

2024年も投資信託の参考情報として引き続きご高覧いただければ幸いです。

さて最終回となる今回は、2024年の投資戦略を考える上で、米国市場で起こっている11月からの動き、変化に注目します。11月からは将来の利下げ期待が高まったことによる米長期金利の低下などを受けて世界的な株価上昇となりました(図表1)。

2023年の米国株式市場は、年前半はマグニフィセント・セブンと称される米国主要テクノロジー企業7社(大型成長株)を中心とした上昇で、ナスダック100が好調でした。11月以降は、金利低下や業績拡大期待などから出遅れていた小型株の指数であるラッセル2000への物色が強まってきました。ナスダック100やS&P500と比べて、出遅れていた大型割安株の中心の指数といえるNYダウの上昇も目立ってきており、米国株式市場は大型株から小型株、成長株から割安株まで幅広く物色される好循環といえるマーケットになってきたと考えられます。

こうした中で、11月の投資信託(ファンド)のパフォーマンスに着目します。ファンドを評価する際は、1ヵ月や3ヵ月といった短い期間では評価すべきではないといえますが、マーケットの転換点においては短期的なパフォーマンスやランキングの変化にも注目すべきだと考えます。

米金利低下局面(11月単月)での好成績ファンド(SBI証券取扱いの成長投資枠対象)のランキングは図表2となっています。非接触型ビジネス関連株式やフィンテック株式、欧州リート、サイバーセキュリティ株式、ロボティクス株式、AI関連株式のファンドが上位となりました。これらのファンドの中身を確認します。

図表1 米国株価指数のパフォーマンス比較  (2022年12月末~2023年12月20日 2022年12月末=100)

※QUICKデータをもとにSBI証券作成

図表2 金利低下局面の11月単月 好成績ファンドの特徴と運用成績

順位 ファンド名 特徴
(投資対象)
1ヵ月
リターン
1年
リターン
3年
リターン
(年率)
ファンド
レーティング
1 デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(愛称:ゼロ・コンタクト) 今後成長が期待されるゼロ・コンタクト・ビジネス(非接触型ビジネス)関連企業の株式 31.96% 61.45% -14.78%
2 グローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり) 世界の株式の中から主にフィンテック関連企業の株式に投資(為替ヘッジあり) 30.09% 35.50% -25.03%
3 グローバル・フィンテック株式ファンド 世界の株式の中から主にフィンテック関連企業の株式に投資 28.56% 53.26% -12.89%
4 eMAXIS 欧州リートインデックス 欧州各国の不動産投資信託証券に投資を行うインデックスファンド 17.72% 12.17% 6.58%
5 インベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(愛称:世カエル) 日本を含む世界各国のブロックチェーン関連株式に投資を行うインデックスファンド 17.32% 31.44% 6.45%
6 たわらノーロード フォーカス フィンテック 国内外のフィンテック関連企業の株式に投資を行うインデックスファンド 17.11% 24.36% -1.48%
7 サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジあり) 日本を含む世界のサイバーセキュリティ関連企業の株式に投資 16.38% 27.47% 0.09% ★★★
8 iTrustロボ 主に世界のロボティクス関連企業の株式に投資 16.36% 44.55% 16.91% ★★★★
9 eMAXIS Neo フィンテック 日本を含む世界各国のフィンテック関連企業の株式等に投資を行うインデックスファンド 16.01% 34.24% 0.42%
10 ニッセイ AI関連株式ファンド(為替ヘッジあり)(愛称:AI革命(為替ヘッジあり)) 日本を含む世界各国の株式の中から、主にAI(人工知能)関連企業の株式に投資 15.95% 30.30% -2.87% ★★★
参考 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 日本を含む全世界株式インデックスファンド 7.41% 20.99% 18.32% ★★★★

※ウエルスアドバイザー(WA)のファンド検索をもとにSBI証券作成、ファンドレーティングはWAの総合レーティング
※新NISA・成長投資枠対象のSBI証券取り扱いファンド(インターネットコース)の1ヵ月リターンランキング(2023年11月末基準)
※同一マザーファンドへ投資していて決算頻度が異なるファンドは1本としてカウント、為替ヘッジあり/為替ヘッジなしのファンドは別カウント
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

金利低下局面での好成績ファンドの特徴は?

1位のデジタル・トランスフォーメーション株式ファンド(愛称:ゼロ・コンタクト)は、今後成長が期待されるゼロ・コンタクト・ビジネス(非接触型ビジネス)関連企業の株式に投資しており、イノベーションにフォーカスした調査に強みを持つ米アーク社からの投資助言を活用しています。オンラインサービス、非接触型決済、リモートワーク、ストリーミングメディアなどといった投資カテゴリーに属する企業に投資しており、組入上位銘柄は暗号資産に関連するサービスを提供しているコインベース・グローバル、テレビ番組や映画のストリーミング・サービスを提供するロク、eコマース会社のショッピファイなどとなっています(※)。組入銘柄数は41銘柄で約9割が北米株式です。直近3年での低迷を反映してレーティングは1ツ星と最下位にありますが、1年リターンは61.45%と好成績です。

2位と3位はグローバル・フィンテック株式ファンド(為替ヘッジあり)グローバル・フィンテック株式ファンドとなりました。1ヵ月では円高ドル安を反映し、為替ヘッジありの方が上位となりました。世界のフィンテック関連企業の株式に投資しており、こちらもアーク社の調査力を活用しています。組入上位銘柄は、コインベース・グローバル、金融サービス・ソフトウエア企業のブロック(旧社名:スクエア)、コマース・プラットフォームを提供するカナダの会社・ショッピファイなどとなっており、組入銘柄数は41銘柄で約8割が北米株式です(※)。フィンテック株式のため、業種別では金融サービスの構成比が約4割と高くなっています。1位のファンド同様にファンドレーティングは1ツ星ですが、1年リターンは好調となっています。

4位のeMAXIS 欧州リートインデックスは欧州各国の不動産投資信託証券に投資を行っているインデックスファンドで、国別ではイギリスが57.5%、フランスが20.7%、ベルギーが13.0%などとなっています(※)。欧州リートは、年前半に金利上昇や景気減速懸念などから下落しましたが、11月以降は米金利低下に連れて欧州の金利も低下したことから急回復しています。長期では同じカテゴリーに属する北米リートとの比較からファンドレーティングは最下位となっています。

5位のインベスコ 世界ブロックチェーン株式ファンド(愛称:世カエル)は、ブロックチェーン株式の指数であるインシェアーズ・ブロックチェーン・グローバル・エクイティ・インデックスへ連動する投資成果をめざすファンドです。上位組入銘柄は再生可能エネルギーによるビットコインのマイニング企業・クリーンスパーク、ソフトウェア企業のマイクロストラテジー、コインベース・グローバルなどとなっています(※)。米国が約5割ですが次に多いのは日本で約2割となっています。1~3位のファンドと同様の理由でファンドレーティングは1ツ星ですが、1年リターンは巻き返しています。

6位のたわらノーロード フォーカス フィンテックはフィンテック関連企業の株価指数であるSolactive FinTech Indexに連動する投資成果をめざすファンドです。組入上位銘柄はコインベース・グローバル、グローバル決済プラットフォームを提供するオランダのアディエン、P2P(ピア・ツー・ピア)の損害保険会社・レモネードなどとなっており、米国が約7割です(※)。3位のフィンテック株式ファンドよりも1年リターンは劣後していますが、3年リターンでは下落が限定的です。

7位のサイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジあり)は、日本を含む世界のサイバーセキュリティ関連企業の株式に投資しており、組入上位銘柄はクラウドストライク・ホールディングス、ゼットスケーラー、パロアルトネットワークスなどとなっており、組入銘柄数は42銘柄で米国が約9割です(※)。個人・企業・国のサイバーセキュリティへの関心やテクノロジーの発展に伴う長期的な需要を背景に1年リターンは好調です。1ヵ月では円高ドル安により為替ヘッジありの方が上位となっています。

8位のiTrustロボは、世界のロボティクス関連企業の株式に投資しており、組入上位銘柄はアルファベット、セールスフォース、ドイツのシーメンスなどとなっています(※)。組入銘柄数は32銘柄で、業種別では半導体が46%、ソフトウェアが29%など、地域別では北米65%、欧州20%、日本9%などとなっています。レーティングは4ツ星となっており、3年でもまずまずの好成績でかつ1年でも好成績というバランスの取れたファンドといえます。

9位は6位と同じく、フィンテック株式のインデックスファンドとなりました。10位はAI関連株式ファンドが入りました。AI関連株式ファンドについては、「生成AI」は初期段階?! AI関連ファンドの特徴と投資戦略は?のコラムをご参照ください。

11月好成績ファンドの上位は一部のファンドを除き、1年リターンでもオルカン(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー))を上回る好成績となっています。3年ではまだ苦戦しているファンドもありますが、金利低下による業績拡大期待などで有望テーマを持つ小型成長株が選好される投資環境が続くなら、11月好成績ファンドの巻き返しが継続することも期待されます。

また、米国の金利低下による円高ドル安が予想される場合は、主に内外の短期金利差に相当する為替ヘッジコストを負担することになりますが、為替ヘッジありのファンドを一時的に活用することも有効と考えます。

(※)個別銘柄の取引を推奨するものではありません。組入銘柄の情報および資産構成比は2023年11月末基準。

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