S&P500 vs オール・カントリー 2023年を考える

S&P500 vs オール・カントリー 2023年を考える

投資情報部 川上雅人

2023/01/24

米国株式 vs 全世界株式 苦戦した2022年 一括投資と積立投資では?

今回はつみたてNISAで人気のインデックスファンド、米国株式(S&P500)と全世界株式(オール・カントリー)の運用実績を振り返ります。
比較可能期間が長いeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下、米国株式)とeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(以下、全世界株式)のデータを確認します。
2019年以降の暦年ベースでのリターン(図表1)および4年間の値動きの比較(図表2)は以下となっています。

2019年から2021年までの3年間は2ファンドともに好調でしたが、2022年はともに苦戦しました。2022年は円安ドル高により為替要因ではプラスとなったものの、株式の下落が大きかったことが影響しました。2022年のS&P500指数(配当なし)のリターンは19.4%の下落となりました。
2021年までは米国株式が優位の展開でしたが、2022年については米国以外の株式の下落が小さかったことから、全世界株式の方がわずかに優位となりました。

ともにマイナスリターンとなった2022年について、毎月積立と毎日積立を行ったケースで投資成果を計測しました(図表3)。なお、積立投資の購入口数は四捨五入による概算であることや、申込不可日も考慮していないことから実際の取引とは異なります。
2022年は積立投資が一括投資より優位となりました。また、毎月積立と毎日積立の比較では毎日積立が優位という結果となりました。
一括投資と積立投資の比較では積立投資が必ず優位になるとは限りません。途中に上昇してから下落するような局面(図表4・ケース②を参照)では、積立投資は高い基準価額で買う期間が長くなるために一括投資の方が優位になります。

次に米国株式と全世界株式のファンドの中身を比較します(図表5)。

米国株式は米国が100%となっていますが、全世界株式は日本を含む先進国株式と新興国株式が投資対象です。米国の比率は58.5%(2022年12月末)になっています。全世界株式は米国株式以外に約4割投資していますが、値動きは米国株式に類似しています。2022年の日次の基準価額から算出した相関係数(1に近づくと相関が高い)は0.968とかなり高い相関を示しています。
米国株式と全世界株式は、相関がかなり高いことから、2つのファンドを併せ持つことはあまり意味がなく、値動きの異なる資産(例えば、国内株式、国内リート、先進国債券、金など)に分散投資するのが有効といえます。
ファンドの選び方としては、米国企業の成長を期待するなら米国株式を、欧州株式や新興国株式への分散投資や米ドル以外の外国通貨に分散投資したいなら、全世界株式を選択するのが良いといえます。

ここからはクイズを交えて、ファンド選びの参考となる米国株式と全世界株式のデータや特徴をチェックします。

Q1:米国株式と全世界株式、リスクが小さいのはどっち?

A1:リスク(値動きのブレ幅)は標準偏差を確認します。1年・3年ともに全世界株式の方が低くなっています(図表6)。標準偏差とはリターンの分布の広がりがどの程度の大きさかを表す指標であり、1年のリターンがどれくらいブレそうかということを示すものです。過去の実績になりますがリスクを抑えた運用なら全世界株式です。

Q2:米国株式と全世界株式、運用効率が高いのはどっち?

A2:運用効率はシャープレシオ(=(リターン-安全資産利子率)÷標準偏差(リスク))を確認します。シャープレシオは金融商品の投資効率性を評価する際に使用する代表的な指標のひとつです。運用で取ったリスクに見合うリターンを上げたかどうかを測る指標で、リスク1単位あたりの超過リターンを計測し、この数値が大きいほど投資効率が高いことを示します。全世界株式の標準偏差(リスク)は低くなっていましたが、米国株式のリターンが高かったことから、米国株式の方が運用効率は高くなっています(図表6)。

Q3:全世界株式は何ヵ国に投資している?

A3:全世界株式(オール・カントリー)は先進国(日本を含む)に23ヵ国、新興国に24ヵ国に投資しています。合計47ヵ国です。
ちなみに、2026年に開催されるFIFAワールドカップ(米国・カナダ・メキシコの共同開催)は、2022年(参加32ヵ国)の1.5倍となる48ヵ国が参加予定です。2026FIFAワールドカップの参加国とほぼ同数の国が投資対象となっている全世界株式に投資して3年半後の開催を待つというのも良いかもしれません。

Q4:米国株式(S&P500)にはREIT(不動産投資信託)が入っている?

A4:REITが入っています。
直近の運用報告書(2022年4月25日決算)では28銘柄、構成比で2.5%となっており、S&P500指数にはREITが含まれています。なお、全世界株式でも同様にわずかにREITが組入れられています。MSCIジャパン・インデックス、MSCIコクサイ・インデックス、MSCIエマージング・マーケット・インデックスにも、それぞれREITが含まれています。

図表1 米国株式 vs 全世界株式 暦年リターンの比較

  2019 2020 2021 2022
米国株式 30.5% 10.3% 44.5% -6.1%
全世界株式 26.8% 9.0% 32.7% -5.6%
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※米国株式はeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、全世界株式はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表2 米国株式 vs 全世界株式 比較チャート (2018/12/28~2022/12/30 2018/12/28=100)

※米国株式はeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、全世界株式はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表3 2022年の一括投資と積立投資(毎月・毎日)のリターン比較

  一括投資 毎月積立 毎日積立
米国株式 -6.1% -4.4% -4.0%
全世界株式 -5.6% -3.3% -3.0%
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※一括投資はファンドの騰落率、毎月積立は月初第2営業日で計算、毎日積立は2022年の基準価額算出日(244日)全てで購入したとして計算(申込不可日を考慮せず)
※QUICKデータをもとにSBI証券が作成

図表4 積立投資 vs 一括投資 基準価額の推移による運用成果のイメージ

図表5 米国株式 vs 全世界株式 ファンド比較

  eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
ベンチマーク S&P500指数(配当込・円ベース) MSCI オールカントリー ワールド・インデックス
(配当込・円ベース)
投資対象
(インデックス)
米国株式
(S&P500指数)
日本を含む先進国株式と新興国株式
(MSCIジャパン・インデックス)
(MSCIコクサイ・インデックス)
(MSCIエマージング・マーケット・インデックス)
国別構成比 米国 100% 米国 58.5%
日本 5.5%
イギリス 3.8%
カナダ 3.0%
フランス 2.9%
スイス 2.5%
ドイツ 2.0%
ケイマン諸島 1.7%
オーストラリア 1.9%
インド 1.6% など
(新興国 11.2%)
上位組入銘柄と構成比 アップル 5.8%
マイクロソフト 5.4%
アルファベット 3.0%
アマゾン・ドット・コム 2.2%
バークシャー・ハサウェイ 1.7%
ユナイテッド・ヘルス 1.5%
ジョンソン・エンド・ジョンソン 1.4%
エクソン・モービル 1.3%
JPモルガン・チェース 1.2%
アップル 3.6%
マイクロソフト 2.9%
アルファベット 1.7%
アマゾン・ドット・コム 1.3%
ユナイテッド・ヘルス 0.8%
ジョンソン・エンド・ジョンソン 0.8%
エクソン・モービル 0.8%
バークシャー・ハサウェイ 0.7%
JPモルガン・チェース 0.7%
組入銘柄数 503銘柄 2832銘柄
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※各ファンドの月次レポートをもとにSBI証券作成(データは2022年12月末基準)

図表6 米国株式 vs 全世界株式 パフォーマンス比較

  eMAXIS Slim 米国株式
(S&P500)
eMAXIS Slim 全世界株式
(オール・カントリー)
1年リターン -6.09% -5.58%
3年リターン(年率) 14.40% 10.94%
1年標準偏差 21.28 17.92
3年標準偏差(年率) 19.46 18.53
1年シャープレシオ -0.29 -0.31
3年シャープレシオ 0.74 0.59
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※データはSBI証券ホームページより抜粋(2022年12月末基準)

長期の運用実績と積立投資のポイント

ここからは米国株式と全世界株式の長期のパフォーマンスを確認します(図表7)。

インデックスデータで見ると比較可能な1999年からの暦年では、米国株式は2007年と2008年の2年連続マイナス以外は、マイナスとなった年の翌年はプラスリターンです(図表8)。全世界株式も2000年から2002年の3年連続マイナス、2010年と2011年の2年連続マイナスを除くと、マイナスとなった年の翌年はプラスリターンです。2023年はどう動くのか予想は難しいですが、過去24年の実績からは米国株式は2年連続して下げる確率は低いといえます。
(ファンドの基準価額とインデックスのデータは、株式や為替レートの評価時点が違うことからパフォーマンスは異なります。)

2023年については、前半は米国や欧州で景気後退が見込まれることから株式市場が不安定な状況となって下落し、年後半については米政策金利の引き下げ予想などから株式市場は上昇するという見方もあります。このケースにおいては、ファンドの値動きは先程の図表4・ケース①となる可能性もあり、その場合は積立投資が優位になるといえます。
世界経済の成長によって長期で右肩上がりの資産に投資しているという前提であれば、下落局面は安く買えるチャンスといえますので、積立投資を継続することが重要です。加えて、資金に余裕があれば下がった時に買い増すことが収益を高めるためには有効といえます。
株式市場の下落局面では、このまま下がり続けてしまうのかと不安になってしまいますが、長期のデータにあるように何度も図表4・ケース①のような下落を経験しています。2022年から続いている下落局面は、時間を味方にして図表4・ケース①(U字型の価格推移)になることをイメージして、2023年も積立投資を継続していくのが肝要といえます。

図表9で米国株式(S&P500)と全世界株式のインデックスファンドを一覧にしました。2022年の12月の販売金額上位10ファンドの中から6ファンドとしています。
S&P500インデックスファンドは運用実績にほとんど差はありません。全世界株式インデックスファンドについても運用実績に大きな差はありませんが、対象インデックスが異なりますので、各ファンドの運用方針をご確認ください。

図表7 米国株式 vs 全世界株式 長期パフォーマンス比較 (1998年末~2022年末(年末値)1998年末=100)

※米国株式はS&P500(配当込み・円ベース)、全世界株式はMSCI オールカントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円ベース)
※BloombergデータをもとにSBI証券作成

図表8 米国株式 vs 全世界株式 暦年リターン(1999年~2022年)

※米国株式はS&P500(配当込み・円ベース)、全世界株式はMSCI オールカントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円ベース)
※BloombergデータをもとにSBI証券作成

図表9 主な米国株式と全世界株式のファンド一覧

分類 ファンド名 6ヵ月リターン 1年リターン 3年リターン
(年率)
米国株式 SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・S&P500) -1.41% -6.11% 14.27%
全世界株式 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) -1.34% -5.58% 10.94%
米国株式 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) -1.45% -6.09% 14.40%
全世界株式 SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・全世界株式) -1.10% - -
全世界株式 eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本) -1.49% -5.64% 11.31%
全世界株式 SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま(全世界株式)) -0.91% -5.24% 10.65%

※SBI証券での2022年12月の販売金額上位10ファンドの中から米国株式(S&P500)と全世界株式の計6本を販売金額上位順に表示
※SBI・V・全世界株式インデックス・ファンドは2022年1月31日設定のため1年リターンおよび3年リターンのデータはなし
※データはSBI証券ホームページより抜粋(2022年12月末基準)

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