高市新総裁誕生!政策期待と構造的逆風が交錯する新局面へ
投資情報部 鈴木 英之
2025/10/06
2025年10月4日、高市早苗氏が自民党新総裁に就任しました。
日本の政治と市場は大きな転換点を迎えました。石破内閣からの交代により、「リベラル・地方重視路線」から、「保守・国家戦略型」の政策へと構造的に転換するとみられ、東京株式市場はその変化を敏感に織り込み始めています。
市場の初期反応は明確なようです。10/6(月)午前の東京株式市場では日経平均が4万7,000円台に突入し、上げ幅は最大で2,000円を超えました。政策期待を背景に防衛、宇宙、通信インフラ、GX(グリーントランスフォーメーション)関連銘柄の多くが上昇。為替市場では円安が進行し、1ドル=149円台後半に突入。積極財政による国債増発観測から国内金利も高い水準を維持しています。
高市氏の政策は「危機管理投資」「経済安全保障」「積極財政」「技術主導型成長」が柱と考えられ、これらは市場に対して明確なテーマを提供しそうです。防衛強化では戦闘機・護衛艦・宇宙領域への投資が加速し、宇宙関連では小型衛星やデブリ(人工衛星等の残骸等)回収技術が政策実証の対象となるでしょう。通信インフラでは量子暗号通信や光ファイバー網の強靭化が進められ、GX分野では水素製造・送配電網更新・災害対応型インフラが注目されるでしょう。
一方で、こうした期待の裏には構造的な逆風も潜んでいると考えられます。まず、当面は総裁就任=首相交代ではないため、政策実行には国会構造の壁が立ちはだかるでしょう。自民党が少数与党であるため、当面は政策の実効性に不透明感がつきまといそうです。さらに、積極財政による国債増発は金利上昇圧力を強め、REITや不動産株、設備投資型企業には逆風となる面があります。グロース市場等の関連銘柄は期待先行で買われやすいとみられますが、流動性の薄さと業績との乖離が急落リスクを高めるでしょう。
加えて、地政学的リスクも無視できないとみられます。高市氏の対中強硬姿勢は、外交摩擦を引き起こす可能性があり、中国依存度の高い自動車、部品、消費財企業には警戒が必要だと思われます。インバウンド関連や中国展開比率の高い企業は、政治的摩擦による不買運動や需要減退の影響を受けやすい可能性があります。
このように、高市新総裁の誕生は東京市場にとって「政策期待によるテーマ株の上昇」と「構造的逆風による選別フェーズ」の両面をもたらすでしょう。投資家に求められるのは、単なるテーマ追随ではなく、政策実装のタイムライン、企業の実態、金利感応度、地政学リスクを踏まえた構造的な銘柄選別とみられます。
日経平均株価は当面強い勢いを持続した後は上下に激しく動く可能性があります。
10/3(金)までは、9/25(木)の取引時間中に付けた高値45,824円以下の水準で推移してきましたが、10/6(月)は同高値に対し窓を開けて上回った形ですので、当面の日経平均株価は新局面に入ったと考えられます。
日経平均株価の予想EPS(1株利益)は足元でやや上昇基調であり、10/3(金)時点では2,538円と計算されます。仮に当面この予想EPSが動かない場合、日経平均株価の予想PERは48,000円で18.9倍、49,000円で19.3倍、50,000円で19.7倍の計算です。割高感が極端に高まる印象はあまり出ないかもしれません。ただ、日経平均株価が50,760円まで上昇すると予想PERが20倍に乗る計算になる(10/3予想EPSでの計算)ことを、頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。
今後の焦点は、連立政権の枠組み、そして日銀の金融政策修正の有無となりそうです。為替・金利・株式の三位一体で市場が動く局面において、構造的な視点こそが真の勝ち筋を見極める鍵となるでしょう。
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