米国がくしゃみをしても日本は風邪をひかない!?その理由は?
投資情報部 淺井一郎/栗本 奈緒実
2023/04/11
経済再開・インバウンド関連が好調な東京市場!小売決算発表シーズン本格化
4月第1週(4/3~7)の日経平均は、前週末比523円17銭安(▲1.9%)と週足ベースで反落。
同期間(4/3~6、4/7は休場)の米国市場では、景気敏感株の下落をディフェンシブ株が下支えする形でNYダウは+0.6%、S&P500は▲0.1%となりました。特に、構成銘柄のほとんどがグロース株であるナスダックは▲1.1%と下げ幅が大きかったです。ナスダックは、3月月間での上昇率がNYダウの3倍超の大幅高となっていたため、4月第1週はその反動が下落要因となりました。
米国での景気敏感株安の影響により、日本でも電気機器などのハイテク株で下落が目立った格好です。また、日本では新年度入りとなり、週初4/3(月)に日銀短観が発表されました。大企業(製造業)は5期連続での景況感悪化となり、景気先行きに対しての企業の慎重な見方が示されました。
一方、非製造業は経済再開やインバウンドの追い風により高水準を維持しながらの小幅高となりました。日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(4/3~10・図表7)においても、非製造業優位の傾向が顕著です。首位の京成電鉄(9009)は、成田空港周辺と東京東部を地盤としており、コロナによる行動規制や水際対策は同業他社よりも業績に大きな打撃となりました。反面、業績・株価ともにこれから本格回復フェーズに入ることが期待された模様です。同社が筆頭株主であるオリエンタルランド(4661)も5位にランクインしています。東京ディズニーリゾートは4/15(土)から開園40周年となるアニバーサリーイヤーを迎えるため、業績拡大のための相乗効果も期待できます。他には、配当落ちの売りにより前週下落率トップで3社揃い踏みであった海運大手が反発。打って変わって、上昇率上位の2~4位に並んでいます。
小売企業の決算発表が本格的にスタートします。業績及び業績見通しで堅調さを示すことができれば、決算発表後に株価が一段高となる銘柄も複数ありそうです。
産業用ロボット大手の安川電機は4/7(金)に本決算を発表。今期(24.2期)業績見通しは前期比2%増との見通しを示しましたが、22.12-23.2期での受注減が嫌気され、4/10(月)は小幅反落となりました。足元での需要減速を示唆したとして、他グロース株も売られる展開です。ドラッグストア5社が4/10(月)に本決算を発表。値上げの影響で売上高は増収となりましたが、電気代等の高騰がコスト増となりました。
4月第2週の日経平均は、配当落ちで下落していた高配当株や内需株が押し上げる形で、上昇でのスタートとなっています。週内の米3月消費者物価指数(CPI)の発表を睨んでの動きが続くと予想されます。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(4/3~10)
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(4/3~10)
米国がくしゃみをしても日本は風邪をひかない!?その理由は?
4/11(火)に世界通貨基金(IMF)は、世界経済見通し(World Economic Outlook:WEO)を発表します。それに先立ち、IMFのゲオルギエバ専務理事は講演で、世界経済の回復力は弱く、今後5年間の世界経済成長率は平均3%未満と、1990年以降で最も低くなるとの見通しを示しました。ウクライナ戦争の長期化や、世界的なインフレとそれに対抗するべく多くの主要国で行われている金融引き締めの影響などにより、世界経済については不透明感が強まっています。
米国でも、このところ景気減速を示唆する弱い経済指標の発表が相次ぎ、景気減速懸念が強まっています。先週に発表された経済指標では、3月ISM製造業景況指数(3日発表)、3月ISM非製造業景況指数(5日発表)が、いずれも景気に先行する新規受注指数の低迷が顕著でした。また、先月にシリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻した際に高まった金融システムへの不安は一旦、緩和されたと見られますが、同銀行の破綻を機に、米国銀行は企業向け融資基準を一段と厳格化したとの指摘があります。そうなれば、米国景気の後退色は一段と強まることになるでしょう。
一方、先週の国内株式市場は、米国経済(ひいては世界経済)の減速懸念を手掛かりに、自動車などの景気敏感株を中心に重い値動きとなりました。かつて日米の経済的な関わり合いとして、「米国がくしゃみをすると、日本が風邪をひく」と言われてきましたが、先週は米国株に比べて日本株の下落が厳しく、その言葉を体現するような動きだったと思われます。現状の日本経済は、昔ほど米国向け輸出のウェイトが高くありません。しかし、日本企業による米国進出や、第3国を経由した米国向け輸出などを見ると、日本経済は依然として米国経済に大きく依存していると言えるでしょう。
そういった意味では、米国経済の先行き不透明感は、外需関連株などを中心に不安材料となりますが、その一方で現状の日本経済は、内需回復に対する期待が高まっています。4月5日の225の『ここがPOINT!』「いよいよ新年度入り!短観から見た有望投資テーマは?」でも指摘しましたが、宿泊・飲料サービスや個人向けサービスなど、インバウンド関連の業況改善が進んでいます。また、インバウンドに留まらず、国内の個人消費にも回復の兆しが強まっています。今年3月にかけて行われてきた春闘では、物価高の影響もありますが、これまでのところ賃金上昇率は約30年ぶりの高い伸びとなるなど、所得改善が期待されています。
そうした中、4/10(月)に発表された3月景気ウォッチャー調査や3月消費者態度指数は、いずれも前月比で改善しており、国内のマインド改善が進んでいることが示されました。また、今月末から始まるゴールデンウィークについて、JTBの調査によると、今年は国内旅行者数が2,450万人(前年比+53%、2019年比+2%)、平均費用は3.48万円となり、総旅行消費額はコロナ禍前の水準をほぼ回復するとの見通しが示されています。日本経済全体で見れば、内需が回復することで、米国がくしゃみをしても、日本経済は風邪をひかずにすむのではないかと考えられます。
図表9 景気ウォッチャー調査と消費者態度指数
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
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