新NISAで史上最高値更新が視野に!?その理由は?

新NISAで史上最高値更新が視野に!?その理由は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/01/09

2024年の日経平均、バブル後高値を更新!

「令和6年能登半島地震」(以下「能登半島地震」)により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々へ心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

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年末年始(12/25-1/5)の日経平均は、12月第3週末比208円37銭高(+0.63%)。2023年につけたバブル後高値水準を維持したまま、2024年を迎えました。年末の閑散相場を通過し、1/9(火)には、バブル崩壊後高値を33年10ヵ月ぶりに上回るなど、好調なスタートを切っています。

株式市場の先行きを占う上での大きな鍵が、米政策金利の動向です。堅調な米労働指標の発表等を受け、金利先物市場では、FRBによる早期利下げ開始観測は後退しています(市場が織り込む3月に利下げが開始される確率、12/29:88.5%→1/9:61.1%)。一方で、足元の米インフレ指標の伸び鈍化や、長期的には労働市場が徐々に冷え込んでくるとの見方を変えるまでには至っていません。引き続き、米経済の軟着陸とFRBによる早期利下げ開始期待が、相場の押し上げ材料となっている格好です。また、東京市場では、新NISAがスタート。個人投資家による新規マネーの流入も寄与していると想定されます。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(12/22~1/5・図表7)の首位は、神戸製鋼所(5406)です。11月末に500億円分の転換社債の発行を発表した等で安値に沈んでいましたが、割安感から買い戻されたもようです。予想配当利回りが4.6%を超える高配当株であることも選好された要因とみられます。2位は、楽天グループ(4755)で、大手証券会社による目標株価の引き上げや、モバイルの加入者増加が好感されました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(12/22~1/5・図表8)の首位は、トレンドマイクロ(4704)です。11月に大規模な株主還元(23.12期は特別配当実施も発表)発表以降、連騰した反動で、権利落ち日(12/28)に大きく売られました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(12/22~1/5)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(12/22~1/5)

新NISAで史上最高値更新が視野に!?その理由は?

昨年末(2023年末)の日経平均は、前年比+28.2%の33,464円と2年ぶりに上昇し、アベノミクスへの期待が相場を押し上げた2013年(+56.7%)以来の高い上昇率となりました。

昨年は海外投資家による日本株買いの動きが強まる中、7/3に約33年ぶりの高値となる33,753円へ上昇しました。年末にかけて再度、上値抜けをトライする場面も見られたものの、結局、終値で7月高値を更新することは出来ず、高値更新は2024年へ持ち越しとなりました。

図表9 日経平均株価(年足)と年間騰落率

日本株の需給状況を見るべく、投資部門別売買動向に注目してみます(図表10、データは23年12月第3週まで)。昨年、海外投資家は日本株を6兆円超買い越しました。4月に来日した米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本株の買い増しを検討していると伝わったこともあり、海外投資家による日本株物色の動きが注目されました。4月から6月にかけては、海外投資家による旺盛な日本株買いが、日経平均の上昇をけん引してきました。

日本株については、昨今の円安進展も相まって依然として割安な水準と言えます。また、東証が低PBR企業に改善を指導していることもあり、日本企業としても株主還元の強化や、M&Aなど企業価値を高めるための取り組みについても継続することが予想されます。こうした動きもあって、海外投資家が割安な日本株を物色する動きは、今年も継続することが予想されます。

一方、個人投資家は昨年、日本株を3兆円近く売り越しました。個人投資家は、株式市場の動きに対し逆張りに動くと言われており、その傾向通りとなりました。今年の株式市場については、海外投資家による買いが期待できるなか、過去の傾向に沿えば個人投資家は今年も売り主体と言えます。しかし、後述する新制度が、個人投資家の売買動向を変える可能性があります。

図表10 日経平均株価と投資部門別売買

その新制度とは、新NISA(少額投資非課税制度)です。この制度の詳細については既に様々な媒体で紹介されているため割愛しますが、簡単に説明すると、非課税対象となるつみたて投資枠が年間最大120万円(旧つみたてNISAから年間投資枠3倍)、成長投資枠が年間240万円(旧一般NISAから年間投資枠2倍)、あわせて最大で1,800万円が非課税枠として運用できる制度となります。長期投資を行うのに適した制度と言われており、投資信託(投信)や個別株式への投資を通じ、個人投資家からのマネー流入が期待されています。

また、政府が22年11月に決定した資産所得倍増プランによると、22年6月からの5年間でNISA口座数3,400万口座、投資額56兆円と、それぞれ倍増する計画を掲げています。同プランに沿うと、24年以降に年間で5.5兆円ペースの投資拡大(日本株+海外株など)が想定されますが、このうち、どの程度が日本株に流入すると考えられるのでしょうか。

まず、投信を経由した流入額を推計してみます。Quick社の集計によると昨年の投信の資金流入(ETFを除く追加型投信)は全体で6.76兆円。このうち、日本株は8,170億円でシェアは12.1%程度にとどまりました。しかし、年後半(7-12月)に限れば、全体が4.6兆円の流入に対し、日本株は8,280億円とシェア18.0%に達しており、新NISA導入を控えて日本株への関心が高まっていることがうかがえます。この勢いをそのままとし、更に海外株投信の一部にも日本株が組み込まれていることを考慮すると、投信を経由して概ね2割程度の資金流入が期待できるでしょう。

また、新NISAのうち、投信の買い付け額と成長投資枠を通じた個別株(ETF含む)の買い付け額を、1対1になると仮定します。この場合、投信経由については前述のとおり概ね2割程度が日本株に流入。個別株を経由した買い付けのうち6割が日本株だとすると、新NISA全体で4割(=【投信:1×2割】+【個別株:1×6割】)が日本株に流入することになります。個別株の8割が日本株の買い付けとなれば新NISA全体で5割(=【投信:1×2割】+【個別株:1×8割】)となります。外国株への関心も高まっている中で日本株の買い付け8割は少々、高いように思われるかもしれませんが、個人投資家においてキャッシュフローが期待できる高配当の日本株へのニーズが高まっていることを考慮すると十分に達成可能ではないかと思われます。

以上を踏まえると、NISA全体の買い付け額が年5.5兆円となれば、2.20兆円から2.75兆円の流入が期待できるでしょう。

そして金融庁のデータによると、年代別で見たNISA口座の利用状況は、20代や30代など若い世代の活用が目立ちます。一時期話題になった老後2,000万円問題もあり、早いうちから資産形成を行うことに対する意識が芽生えていることも、若年層のNISA利用が増えている一因にあると考えられます。

こうした世代は、90年のバブル崩壊や00年のITバブル崩壊、08年のリーマン・ショックなど、大幅な株価下落局面を経験したことが殆どないと思われます。株安に対する過度な警戒心が薄く、「株価は上がったら、その後下がる」との認識が強いこれまでの個人投資家(これが相場に対し逆張り的な動きをする一因と見られます)と一線を画す存在なのかもしれません。このような若い世代を中心に、株式に対し順張り的な傾向が強まれば、海外投資家の買いも加わって、日経平均は史上最高値(38,915円)への到達が視界に入ってくるかもしれません。

図表11 図表11 NISA口座数、累計買付額

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