米国で金融緩和期待が後退。日本株への影響は?

米国で金融緩和期待が後退。日本株への影響は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/02/06

日経平均は36,000円の高値圏を維持。米経済の先行きに楽観ムード広がる

1月第5週(1/29-2/2)末の日経平均は、前週末比406円95銭高(+1.14%)と週足ベースで反発。36,000円の高値水準を維持した形です。米株の上昇に連れ高した他、日銀の金融政策正常化を睨み、銀行株などにも買いが入りました。さらに、36,000円を下値メドに押し目買い意欲も強かったです。

週半ばに開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)後の議長会見などを経て、FRB(米連邦準備制度理事会)による早期利下げ開始観測は前週から一段と後退。一服していた米債利回りが再び上昇しました。しかし、同期間の米国市場はNYダウが+1.4%、ナスダックが+1.1%と堅調でした。主力テック株の決算内容や見通しが好調となったことに加え、米1月雇用統計が想定以上に力強い結果となり、米経済の先行きに対する楽観ムードが相場を押し上げた格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(1/26~2/2・図表7)の首位は、アジアを中心に人気を博すオンラインゲーム大手のネクソン(3659)でした。中国当局が同社の人気作品に関連するゲームタイトルを新規承認したことが材料視されたもようです。他は、10‐12月期決算発表で内容や見通し、株主還元意欲が好感された企業が多く並びました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(1/26~2/2・図表8)の首位は、あおぞら銀行(8304)で33%超の大幅安でした。1日(木)の10‐12月期決算発表では、米商業用不動産向けローンで引当金などを計上し、280億円の最終赤字となる見通しを発表(従来予想:24.3期は240億円の最終黒字)。15年ぶりの赤字転落となり、1株あたりの年間配当額も従来予想から半分(3Qおよび4Qの四半期配当は無配)となる予定です。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(1/26~2/2)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(1/26~2/2)

米国で金融緩和期待が後退。日本株への影響は?

2/5(月)の米国市場では、10年国債利回りが前日比+0.14%の4.16%と大幅に上昇しました。これを受けて、株式市場ではNYダウ(前日比▲0.70%)、S&P500(同▲0.31%)、NASDAQ総合指数(同▲0.20%)の主要3指数が揃って下落しました。もっとも、これまで連日のように史上最高値を更新してきたNYダウやS&P500から見れば、この日の下げは上昇一服といった程度でした。更に、金利上昇に弱い成長株(グロース株)の割合が大きいNASDAQ総合指数についても、小幅な下落に留まっており、金利上昇の影響は限定的だったと言えるでしょう。

金利上昇の影響が限定的である背景には、米国がマクロ(経済)とミクロ(企業業績)の両面から見て堅調に推移していることが挙げられます。マクロ面では、例えば2/2(金)に発表された1月雇用統計で非農業部門雇用者数(速報値)が前月比+35.3万人と市場予想(同+18.0万人)を大きく上回り、かつ23年12月(改定値)の同+33.3万人に続いて高い伸びとなりました。米国経済の減速観測を後退させる力強い回復となりました。

一方、ミクロ面では、足元で23年10-12月期決算発表シーズンが続いています。リフィニティブの調査によると、主要企業(S&P500採用企業)の10-12月期の予想増益率は、決算発表シーズンが始まる前の1/1時点で前年同期比+4.7%でしたが、直近(2/2)では同+7.8%へ上方修正されています。これは、事前のアナリスト予想に対し、実際に発表された企業の決算が上振れ傾向にあることを示しており、企業業績が堅調に推移していることがうかがえます。

現状の米国株式市場の上昇基調が始まったのは、昨年の11月初旬の頃でした。この頃の米国株式市場は、FRBが、2024年に向けて大幅な利下げへ転じるとの期待が背景にありました。今年に入ってからは、行き過ぎた利下げ期待は一服しました一方、堅調な米国経済が米国株式市場を押し上げていると言われています。そしてこうした米国株の堅調が、日本株にとってもプラスに働いていると見られます。

つまり、現状は米国経済の堅調が米国株式市場にとってプラスとなっていますが、これがいつまでも続く訳ではないと考えられます。その理由は、堅調な米国経済は、(昨年の株価上昇のきっかけになった)大幅利下げの可能性の低下につながるためです。現状、市場では2024年に5~6回の利下げが予想されており、更に一部では次回(3月開催)のFOMC(連邦公開市場委員会)で利下げが開始されるとの見方もあります。これは昨年12月にFRBが示した政策金利見通し(ドット・チャート)で示された、年3回(0.25%×3回)の利下げ見通しと、依然として乖離した状況にあります。

そうした中、パウエルFRB議長は2/4に出演したテレビ番組の中で、前述した昨年12月時点の経済・金利見通しが概ね維持されているとし、更に3月からの利下げ開始についても「可能性は高くない」との見解を示すなど、市場の緩和期待を強くけん制しました。これまでの米国株式市場は、ミクロ、マクロの堅調さを手掛かりに上昇してきました。しかし、今後は金融緩和期待が後退することによる金利上昇が、米国株の足かせになることを想定する必要がありそうです。

図表9  政策金利(FF金利誘導目標)の予想

そうしたタイミングで日本株はどのように動くと考えられるのでしょうか。米国株の下落がきつくなれば、その動きが日本株売りにつながっても不思議ではないでしょう。特に米国でグロース株売りの動きが強まれば、日経平均の上昇をけん引してきたハイテクなどの値がさ株の上昇基調に陰りが出てくる可能性もあります。ただ、その一方で米金融緩和観測の後退により米金利が上昇すれば、日米の金利差拡大を通じて円安・ドル高傾向が強まる可能性があります。そうなれば、自動車などの輸出株にとって追い風となるでしょう。

図表10 円相場と日米金利差 

そもそも米国の金融緩和観測の後退は米経済が堅調であることの裏返しであり、日本株にとってプラスの面が強いとみられます。1月の日経平均は、海外投資家が主導する相場上昇でやや過熱感が見られましたが、現状はこうした過熱感が一巡し、上値の重さも緩和してきているようです。総じてみれば、米国株の上昇に陰りが見られても、輸出株の上昇が期待される日本株は相対的に堅調な展開が期待できるでしょう。

図表11 日経平均と5週移動平均乖離

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