日経平均株価は「自社株買い」がけん引して上昇!?

日経平均株価は「自社株買い」がけん引して上昇!?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/05/21

日経平均は39,000円台を回復。米株は史上最高値を更新!エヌビディアの決算発表に注目集まる

5月第3週(5/13-5/17)の日経平均は、前週末比558円27銭高(+1.46%)となり、週足ベースで反発。米国株式市場の上昇に連れ高となりました。

同期間、米主要株価3指数は史上最高値を更新。堅調な企業決算やTSMCの好調な月次売上、リスクオンムードを前週から引き継ぎました。加えて、米インフレ指標の伸び鈍化や経済指標の弱含みが、FRBによる年内利下げ開始期待へとつながり、相場を押し上げた形です。FRBメンバー達からは市場のハト派期待をけん制するような声が相次ぎましたが、株価は高値圏を維持しています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/10~5/17・図表7)の首位は、三越伊勢丹ホールディングス(3099)でした。14日(火)の決算発表では、インバウンド需要を背景とした堅調な業績見通しや、発行済み株式数の2.3%にあたる大規模な自社株買いを発表しました。他にランクインした銘柄は、期中の決算内容や業績見通しだけでなく、資本政策の改善が好感されたとみられる銘柄も多数でした。アナリストによる目標株価や投資判断の引き上げが行われた銘柄も複数あります。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/10~5/17・図表8)の首位は、住友ファーマ(4506)でした。主力製品の特許切れの影響で、24.3期は最終赤字が▲3,149億円まで拡大(23.3期は▲745億円)。25.3期は同▲160億円となる見通しを示し、26.3期に黒字化を目指してゆくと会社側は述べています。他にも決算内容での業績や見通しが嫌気された銘柄が多かったようです。2位の清水建設(1803)はコスト高等を背景に、24.3期の営業損益は▲246億円と上場来初の営業赤字となりました。

5月第4週(5/20-5/24)はAI向け半導体の代表格であるエヌビディア(NVDA)が、現地時間22日(水)に決算発表を実施予定です。日米株式市場の年初からの急上昇の立役者である同社の動向に注目が集まっています。

(ご参照▸外国株式特集レポート『どうなる来週のエヌビディア決算!?「データポイント」を整理して備える』)

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/10~5/17)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/10~5/17)

日経平均株価は「自社株買い」がけん引して上昇!?

5/15で3月期決算企業の決算がほぼ出揃いました。今回は本決算発表であり、前期(24年3月期)実績と共に、今期(25年3月期)の会社計画が発表されたのですが(一部の企業は未発表)、今回の決算シーズンにおいて特徴的だったのは、今期の会社計画が市場予想を大きく下回る、いわゆる“保守的”な計画を打ち出す企業が数多く見られたことでしょう。

図表9はQuick社のデータを基に、日経平均を構成する3月期決算企業の前期実績および今期予想を集計した一覧表です。前期実績については売上高、経常利益、税引利益がいずれも市場予想を上回って着地しており、実績は好調だったと言えます。一方、今期予想については、市場予想(Quick社集計のコンセンサス予想、5/20時点)では、売上高が前期比+2.8%、経常利益が同+1.7%と増収・増益予想なのに対し、会社計画は売上高が同+2.4%、経常利益が同▲7.7%と、増収・減益予想となっています。特に、経常利益については市場予想と会社計画の乖離率が▲9.4%ptと大きくなっています。例年、会社の期初計画は保守的になり易いと言われていますが、今期について、企業は(アナリスト予想と比較して)例年以上に慎重なスタンスで臨んでいるようです。

図表9 日経平均(3月期決算企業)の決算概要

一方、今回の決算発表シーズンにおける、もう1つの特徴としては、企業が例年以上に株主還元を打ち出す姿勢を鮮明にしたことです。Quick社データを基に集計すると、2024年4月、5月に発表された自社株買い金額は、4月が1.2兆円、5月が5.6兆円(5/17まで)と、前年の実績(23年4月:0.7兆円、5月:3.0兆円)を大きく上回りました。特に5月は、途中経過ながら2000年以降、単月で過去最高金額に到達。また、24年4・5月に設定された取得枠(上限)で1,000億円以上の大型自社株買いは21件と、前年同期(12件)を大きく上回っており、大型自社株買いも目立ちます。

今回の決算発表シーズンでは、個々で見れば、今期の会社計画が市場予想を大きく下回ったことが嫌気されて株価が大きく下落する銘柄が散見されました。しかしながら、日経平均株価は、決算発表シーズンが始まる前の4/19につけた37,068円をボトムに、じりじりと値を切り上げる展開となっています。日経平均全体で見れば、(市場予想を下回る)低調な会社計画による株価の下押しよりも、自社株買いなどによる積極的な株主還元策による株価下支え効果が勝ったと捉えることでできるでしょう。

図表10 自社株買い発表企業の推移

最後に、前述した今回の決算発表の特徴の1つである“保守的”な会社計画についてですが、景況感の悪化などにより企業の収益が低迷することもある点は要注意ですが、本当に“保守的”ならば、いずれ会社計画は上方修正されることになるでしょう。図表11は日銀短観をベースに、過去3期における経常利益予想の変遷を見たグラフです。過去3期については、“保守的”な期初予想(3月調査)に対し、最終的な実績が大きく上振れしたことが見て取れますが、経常利益予想の上方修正が始まるのは9月調査、つまり中間決算発表のタイミングになることが多いようです。中期的には業績予想の上方修正期待が相場を支える展開が期待できますが、短期的に見れば自社株買いなど株主還元策などの材料が一巡することも相まって、手掛け難さが意識される可能性があるでしょう。

図表11 経常利益の予想変遷(日銀短観)

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