必読!?中銀ウィークの注目点は?

必読!?中銀ウィークの注目点は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/06/11

日経平均はボックス圏での推移が継続。重要イベントを控え、薄商い

6月第1週(6/3-6/7)の日経平均は、前週末比196円3銭高(+0.51%)となり、週足ベースで反発。39,000円が上値抵抗の厚い壁となり、弾き返された格好です。一方で、下値も底堅く、期中につけた最安値は38,343円と、5月から続くボックス圏での値動きを維持しました。新たな動意材料に乏しく、薄商い状態となり、7日(金)の東証プライム市場の売買代金は3兆4,623億円まで沈みました。そのため、物色動向としては個別材料が重視された形です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/31~6/7・図表7)の首位は、メルカリ (4385)です。外資系大手証券会社による目標株価の引き上げが、買い材料となりました。同社は5/9(木)の直近決算発表後、5/17(金)に日系大手証券による目標株価の引き上げも行われています。3位のJ.フロント リテイリング(3086)もアナリストによる目標株価と投資判断の引き上げが好感されたもようです。また、5/10~24には2週連続で騰落率ワーストであった住友ファーマ(4506)が一転、騰落率上位の2位にランクイン。300円を節目に押し目買いや、買い戻しが入ったとみられます。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/31~6/7・図表8)では、前週首位であったレーザーテック(6920)が2位にランクイン。日米長期金利の上昇のほか、空売りアクティビストが、同社の不正会計疑惑を指摘するリポートを公表したことが材料視されました。これに対し、同社は2回にわたる反論を実施。6/7(金)、9日ぶりに株価は反発となりました。3位の塩野義製薬(4507)は、肥満治療薬の試験結果が目標値に届かなかったことが明らかとなり、失望売りにつながりました。

6月第2週(6/10-14)の日経平均は、6/10(月)に上昇スタート。ただ東証プライム市場の売買代金は3兆3,195億円と今年最低を記録しました。週内は、重要イベントが目白押しのため、様子見姿勢が強まっている状態です。日米の中銀会合や、米5月消費者物価指数(CPI)の発表などが注目材料となるでしょう。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/31~6/7)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/31~6/7)

必読!?中銀ウィークの注目点は?

今週は日本と米国で金融政策を決める重要な会合が相次ぐ、いわゆる中銀ウィークとなります。

まず、先陣を切るのが6/11・12開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)。今回の会合では、政策金利の引き下げなど金融政策の変更は予想されていない一方、市場ではFOMC後に公表される政策メンバーによるFFレート見通し(ドットプロット)に注目が集まっています。

前回(3月)公表のドットプロットでは、中央値で2024年に3回(0.25%×3回=0.75%pt)の利下げが想定されていました(図表9)。しかし、米国経済が想定ほど減速せず、インフレ率も高止まりするなか、現在は利下げ開始の時期や利下げ回数が不透明となっています。

現時点で市場では今年9月か11月のFOMCで利下げを開始し、2024年中に1から2回程度の利下げが予想されているようです。今回のドットプロットでは3月よりも利下げ回数が減少すると見られますが、1から2回であれば市場予想通り、ゼロ回ならばタカ派的と受け止められるでしょう。

もっとも、今回のドットプロットは実は見どころが満載です。図表9を見ると、3月時点で2024年のFFレート見通しで利上げ予想はありませんでした。しかし最近、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁は「利上げを選択肢から完全に排除した人は誰もいないと思う」と発言しています。今回のドットプロットで利上げ予想が出現する可能性があります。ドットの中央値が市場予想通りでも、利上げ予想のドットが複数出現するようであれば、タカ派的なイメージが強まる可能性があります。

更に注目するべきは25年以降のドットでしょう。図表9では25年に現在から6回(0.25%pt×6月=1.50%pt)、26年末に9回(=2.25%pt)の利下げが予想されています。これが大きく上方修正されれば、市場において今後の金融政策が利下げサイクル入りではなく、政策金利の微調整と認識されるかもしれません。

先週は6/5(水)にカナダがG7で初めて利下げ、更に翌6日(木)にユーロ圏(ECB)が利下げに踏み切りました。こうした動きを受けて米国でも(実際に利下げの可能性は低いものの)金融緩和ムードがたかまり、米金利が低下傾向にあります。それでなくても、金利低下は株式市場の追い風となり、債券投資家からしても債券価格の上昇につながります。そのため、市場ではハト派期待が織り込まれ易い状況にあるのですが、裏を返せば、タカ派に振れたときには市場の波乱要因になり易いと考えられます。

今回のFOMCは終了日の直前に5月消費者物価指数が発表されます(日本時間で12日21:30発表)。FOMCにおける議論の材料になることは勿論、FOMCの結果発表を前にして、同統計結果も相場の大きな材料になり要注目です。

図表9 FOMCメンバーによるFFレート見通し(24年3月時点)

一方、6/13・14に日本で開催されるのが日銀金融政策決定会合です。

日本の金融政策のめぐる動きは、今年3月会合で政策金利である無担保コール翌日物金利を0.00-0.10%に設定(事実上のマイナス金利政策の解除)、また長期金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を撤廃するなどの措置が行われました。

市場では次なる金融引き締めとして、追加利上げのタイミングに注目が集まっています。図表10はQuick社がエコノミストなどを対象に追加利上げの予想についてヒヤリングした調査です。同調査によると、今回(6月)会合での利上げ予想はゼロではないものの少数であり、本命は7月会合(36.5%)となっています。また、半数以上が8月会合までの追加利上げを予想しています。

6月会合で利上げが行われる可能性は低そうですが、ただ、YCC政策が撤廃された後も続けられている国債買い入れ措置の買入れ減額など措置を予想する声が聞かれます。その場合、今後の追加利上げに向けた地均し的な措置と受け止められる可能性があるでしょう。

図表10 日銀が追加利上げに動くのはいつ?

また、今回の日銀会合では、会合後に行われる植田総裁の記者会見の内容が注目されます。前回4月の会合後の記者会見では、植田総裁が金融政策に対してハト派的なスタンスを強調しすぎたため、為替相場で円安が加速し、その後の円買い介入につながったとの指摘があります。今回の記者会見では、為替相場に配慮した発言になる可能性があり、また、近い将来の追加利上げが視野に入っているのであれば、総裁から何らかの示唆する発言が出る可能性があります。

日米中銀ウィークを経て、日米の金融市場では金利上昇の動きが強まるかもしれません。また、為替相場についても円の先安観が強まる可能性があります。その場合、日本株としては輸出株や金融株などのバリュー株(割安株)が選好され易い展開になることが想定されます。

図表11 日米金利差と円相場

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