エヌビディア最高値突破!日経平均はどうなる?
投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実
2024/06/18
中銀ウィークでの日経平均は一進一退
6月第2週(6/10-6/14)の日経平均は、前週末比130円63銭高(+0.34%)となり、日米中銀ウィークを迎えた中、週足ベースで小幅続伸しました。
週初の日経平均は、米大型テック株の上昇に連れ高した半導体関連株や、日銀の金融政策正常化加速期待から金融株などが上昇をけん引。週半ばになると、米5月消費者物価指数(CPI)やFOMCの結果発表への警戒感から売りが増えましたが、大過なく通過。その後も、週内最終6/14(金)に予定されていた日銀の金融政策決定会合結果発表に向け、様子見ムードが続きました。結果は、追加利上げが見送られたものの、国債買い入れの減額方針が決定。市場では、ハト派的と受け止められたもようです。
同期間の米国株式市場は、NYダウが▲0.5%と軟調でしたが、S&P500は+1.6%、ナスダックは+3.2%と5連騰し過去最高値を更新するなど堅調です。ただ、相場を押し上げたのは、生成AI関連の半導体株や、それを活かしたソフトウェア会社、データセンター関連株など一部に偏った面も見受けられます。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/7~6/14・図表7)の首位は太陽誘電 (6976)でした。現地時間6/10(月)にアップルが開催した世界開発者会議(WWDC)で、生成AIに関する新機能を発表。iPhone需要を喚起するとの期待感が広がり、スマホ向け部品などを提供する同社や村田製作所 (6981)などのアップル関連銘柄に買いが集まりました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/7~6/14・図表8)の首位は、東宝 (9602)です。5月の映画部門の興行収益が前年同月比で大幅減となったことが嫌気されました。3位のエーザイ(4523)は、主力製品の一つである認知症治療薬「レカネマブ」の収益性悪化が懸念されました。米医薬品大手のイーライ・リリーが開発した認知症治療薬「ドナネマブ」が、米食品医薬品局(FDA)による承認勧告を得たと報じられています。
6月第3週(6/17-21)の日経平均は、6/17(月)に700円超の大幅安でスタート。フランスを中心とした欧州政治への不安感が広がり、前週末の欧米株式市場では債券や金などの安全資産に買いが入りました。週明けの東京株式市場でも、参加者の7割以上を占める欧州投資家がリスクオフムードとなった影響で、先物主導で売りが発生。しかし38,000円のボックス圏の下辺は、底堅く維持された格好です。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/7~6/14)
図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/7~6/14)
エヌビディア最高値突破!日経平均はどうなる?
先週、米国と日本では金融政策を決定する会合など注目イベントが相次ぎました。
まず、米国では6/11・12にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されました。同会合では、四半期に1度のペースで更新される政策メンバーによるFFレート見通し(ドットチャート)が注目されました。
前回3月会合時のドットチャートでは、24年末のFFレート水準(中央値)において、現状値(5.25-5.50%)から3回(0.25%pt×3回)の利下げ見通しが示唆されていました。その後、インフレ率などが想定よりも強めで推移したことなどもあり、今回の利下げ回数の予想は減少することが見込まれていました。そうした中で公表されたドットチャートでは、24年末までに1回の利下げ想定が示されました。つまり、前回比で2回分の修正となります。
この修正幅は、政策メンバー19人分の中央値の変化ということを考慮すると、決して小幅な修正ではありません。リーマンショックなどの急激な経済変動が生じたにも関わらず、たかだか3ヵ月間でメンバーの政策金利見通しが大きく変化したことを示唆しています。これは見た目以上にタカ派的な変更と言えるでしょう。
もっとも、タカ派的なFOMCを受けた市場の反応は大きくありませんでした。FOMC前に発表された5月消費者物価指数が市場予想を下回ったことが(FOMCの結果以上に)強く材料視されたと見られています。結果的にFOMCのタカ派に対して市場はハト派スタンスを強めることになりました。
図表9は市場が予想する24年末までの利下げ回数予想と10年国債利回りの推移です。現状は24年末までに2度の利下げが予想されており、利下げ観測が強まるなかで10年国債利回りが低下してきました。ただ、こちらのグラフを見ると最近の利下げ観測の織り込みに対し、10年国債利回りの低下が行き過ぎているように思えます。ドットチャートと市場との間の利下げ見通しに乖離があることを考慮すると、乖離が修正されるタイミングで10年国債利回りが上昇へ転じる可能性があります。
図表9 米10年国債利回りと市場が予想する24年末までの利下げ回数
一方、国内では6/13・14に日銀金融政策決定会合が行われました。金融政策については事前予想通り、政策金利(無担保コール翌日物金利)は据え置きとなる一方、金融正常化策の一環として国債買い入れ額の減額方針が示されました。ただ、減額規模は市場の影響を考慮して次回の会合で発表される旨が示されており、やや踏み込み切れていない印象があります。実際、市場では今回の日銀の結果は、ややハト派的との受け止めが強く国内金利が低下しました。
Quick社が市場関係者を対象に行った調査によると、日銀が次に利上げをする時期は7月会合(つまり次回会合)との見方が有力視されているようです。ただし、図表10で示すように、需給ギャップは改善傾向にあるとは言え、23年10-12月期時点でゼロ近辺と需要が強まっている訳ではありません。24年1-3月期実質GDP成長率も前期比年率▲1.8%とマイナス成長であることを考慮すると、依然としてインフレ圧力が強まっているとは言い難く、利上げを急ぐ必要性は低いと言えそうです。今回、国債買い入れの減額に踏み込み切れなかった日銀の政策スタンスを併せてみても、金融引き締めの動きは市場の想定よりも多少、後ズレしている感が否めないでしょう。
もっとも、金融政策の方向性自体は、引き締め方向で変わりはないと考えられます。国内金利は米国金利にある程度、連動性があることを併せて考えると、米国金利の動きに合わせて国内金利についても上昇する展開が想定されます。
図表10 日本の需給ギャップ、実質GDP、消費者物価
図表11は日米の株価指数(2024年4月末=100)と米長期金利の指標である10年国債利回りの推移を示したグラフです。まず、5月以降、米ナスダックが堅調に推移する一方、NYダウは重い値動きとなっており、同じ米国株価指数でありながらパフォーマンスがまた先のようになっています。
同期間で米長期金利が低下傾向を辿っており、成長株(グロース株)もウェイトが大きいナスダックにとっては追い風です。更にAI(人工知能)関連の筆頭銘柄である米エヌビディアは、5月の決算発表後も株式分割など何かと話題となるなか、同社株価は130ドル/株(分割修正後)を突破するなど、依然として株式市場のけん引役となっています。
一方、長期金利は景気見通しを反映すると言われており、金利低下は景況感の悪化につながるためNYダウにとっては逆風となるとの見方が出来ます。そして、最近の日経平均はNYダウとの連動性が(ナスダック総合指数よりも)強く、米金利の低下が日経平均の下押し要因と考えられます。
前述のとおり、現状の米国長期金利はやや下げ過ぎの感があります。市場の過度な利下げ見通しが修正され、米長期金利の低下が一服してくれば、日経平均についても上値を追う展開になることが期待されます。
図表11 日米株価指数と米10年国債利回り
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