米インフレ指標に要注意!そのワケは?

米インフレ指標に要注意!そのワケは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/09/10

日経平均は4週ぶりに下落!半導体関連株が大幅安

9月第1週(9/2-6)末の日経平均終値は、前週末比2,256円28銭安(▲5.83%)と週足ベースで4週ぶりに反落。米景気減速観測の拡大を背景とした株安が進行しました。特に米半導体株の下落の影響で、東京株式市場においても半導体関連株の下落が目立った展開でした。また、8月上旬の大幅株安の引き金となった米雇用統計の発表を6日(金)に控え、警戒感が漂いました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/30~9/6・図表8)でも、首位のレーザーテック(6920)をはじめ、東京エレクトロン(8035)やルネサスエレクトロニクス(6723)など半導体株や関連株が多数ランクイン。その他の銘柄も、電気機器や機械など、いわゆるハイテク株が多くを占めました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/30~9/6・図表7)の首位は花王(4452)です。大手証券会社が9/3(火)に、目標株価の引き上げを実施。構造改革効果等により業績拡大加速を見込んでいます。3位の小売大手イオン(8267)は内需関連かつ円高恩恵期待銘柄として買われた格好です。

9月第2週(9/9-13)の日経平均は、一時1,100円超の大幅安となったものの、引けにかけて下落を急激に埋め、前日比▲0.48%の小幅安に止まりました。9/17-18開催のFOMCで、0.25%ptもしくは0.50%ptの利下げが行われるかに市場の注目が集まる中、現在はFRBメンバーが会合前のブラックアウト期間に突入しています。11日(水)に発表予定の米8月消費者物価指数(CPI)が事前予想と同程度もしくは想定内と範囲に収まる“程よい伸び鈍化”となった場合、米経済の軟着陸期待も高まると想定されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/30~9/6)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/30~9/6)

米インフレ指標に要注意!そのワケは?

9/3の225ココがPOINT9月相場で日経平均のカギを握るのは?」で指摘したとおり、当面の国内株式市場の動向を占う上で重要なのが米国株式市場や円相場となります。

9/9(月)の日経平均は前週末▲175円の36,215円と5日続落。前週末の大証日経平均先物が夜間取引で35,150円(前日比▲1,210円)と大幅下落したことで、週明けの日経平均は一時1,100円を超える大幅下落となる場面がありました。

日経平均が(一時)大幅に下落した背景にあるのは、先週末の米国市場がテクノロジー株主導で大幅に下落し、円相場が一時8/5以来の1ドル=141円台へ円高が進行したことであり、そのきっかけとなったのが8月雇用統計でした。

8月雇用統計の事前予想は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+16.5万人、失業率は前月から0.1ポイント改善の4.2%でした。それに対する結果は、NFPが+14.2万人、失業率は4.2%であり、一見するとNFPがやや予想を下回ったものの、それほど悲観する結果ではないように見えます。

しかし、7月NFPが速報値の前月比+11.4万人から同+8.9万人に下方修正されるなど、6月・7月が合計で8.6万人ほど下方修正されており、8月NFPは6・7月分が下方修正された上で更に市場予想を下回る結果となりました。また、一見すると市場予想通りだった8月失業率についても、小数点第2位を考慮すると、7月失業率が4.25%(四捨五入で4.3%)に対して8月は4.22%(四捨五入で4.2%)であり、実は0.03ポイントの改善に留まりました。7月の雇用市場はハリケーンの影響で一時的に軟化したため、8月はその反動で回復することが期待されていましたが、実際は小幅回復に留まりました。先日、労働統計局が2024年3月までのNFPの増加数を81.8万人下方修正したことも考慮すると、8月雇用統計は労働市場が失速していることを改めて窺い知る内容と考えられます。

図表9 米国 雇用統計

今週の米国市場では、9/11(水)の8月消費者物価、12日に生産者物価、13日に輸入物価など、インフレ関連指標の発表が相次ぎます。市場参加者の関心は雇用市場をはじめとする景気動向にあり、インフレへの関心は従来よりも低下しているとの指摘もありますが、それでも金融政策を占う上でも超重要な指標であることに変わりはないと思われます。

ただし、インフレ指標を見る上で注意しなければならないことは、米金融市場が金融相場(あるいは逆金融相場)から業績相場(あるいは逆業績相場)に移行した可能性があるということです。従前の金融相場では、インフレの鈍化は金利低下を促し、早期金融緩和による景気刺激への“期待”が高まって株式市場にとってポジティブに受け止められてきました。しかし、業績相場では、インフレの鈍化が金利低下を促すところは変わらないのですが、金利の低下は景気後退を背景とする大幅金融緩和“懸念”が強まって株式市場にとって逆風になると考えられます。

8月消費者物価の市場予想(Bloomberg予想)は前月比+0.2%(前年同月比+2.5%)、食品・エネルギーを除いたコア消費者物価は前月比+0.2%(前年同月比+3.2%)となっています。エネルギー価格の下落などの影響もあり、消費者物価の前年同月比伸び率は鈍化が見込まれています。インフレ指標の伸び悩みで米国金利が低下すれば、リスク回避で米国株式市場も弱含みとなることが想定されるでしょう。

図表10 米国 消費者物価

日経平均は8月初旬の急落に対し、月末にかけて大きく買い戻されました。意外なほど順調に値を戻してきたのは、米国株式市場においてテクノロジー株主導で堅調に推移したことが上がられます。しかし、米国経済の不透明感が改めて意識されるなか、米国株が調整すれば、日本株を下支える要因がなくなると考えられます。

現状、米10年国債利回りは3.7%前後と8/5の株価下落時の水準を大きく下回っています。米国経済の不透明感が強い中、消費者物価などインフレ指標が下振れすれば、米国金利が更に低下し、米国株は弱含みとなるでしょう。また、円相場については円高・ドル安を促すことが想定されます。米金利低下により円高・ドル安の動きが促され、1ドル=140円を下回る円高となるようであれば、日経平均についても、改めて8/5の安値以来の二番底を探る展開も否定できず、注意が必要と考えられます。

図表11 日米主要指標

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