“石破ショック”から再び上昇に向けた手掛かりとは
投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実
2024/10/01
日経平均、3週続伸で大幅高。「高市トレード」解消後の9/30(月)は、上昇分をほぼ打ち消す大幅下落
9月第4週(9/24-27)の日経平均は、前週末比2,105円65銭高(+5.58%)と週足ベースで3週続伸。株式市場では、好材料が相次いだ格好です。
日銀総裁の発言を織り込んだ円安進行や、米半導体株の堅調が上昇に寄与しました。中国当局が景気刺激策を発表したことも好感されたもようです。また、週内最終営業日は自民党総裁選の投開票日にあたり、金融政策に関しハト派スタンスを掲げる高市氏が当選優位との見方が拡大。円安・株高を見込んだ「高市トレード」が発生した格好です。
しかし、大引け後に石破氏当選が明らかとなり、「高市トレード」の巻き戻しが起こり、急速な円高と日経平均先物の大幅下落が発生。翌営業日である9/30(月)の日経平均は、一時2,000円超の大幅安となる場面もあり、前日比1,910円01銭安となり、前週分の上昇幅の多くを相殺しました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/20~9/27・図表7)では、中国の景気刺激策発表を受け、首位の荏原製作所(6361)をはじめ、資生堂(4911)やダイキン工業(6367)などの中国関連銘柄が多数顔を並べた格好です。目標株価やレーティングの引き上げが行われていた三菱重工業(7011)も5位にランクイン。同銘柄は防衛を重視する石破関連銘柄として、同期間明けも堅調が続いています。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/20~9/27・図表8)の首位は、協和キリン(4151)です。アトピー性皮膚炎の新薬開発への期待が広がる中、共同開発を行う米アムジェンが投資家向け説明会を実施。試験結果が芳しくなく、失望売りが発生しました。また、日銀総裁が追加の金融引締めに関し、「時間的な余裕はある」など慎重な姿勢を示したことや、「高市トレード」の織り込みで、銀行業が4銘柄ランクインするなど軟調でした。
10月第1週(9/30-10/4)は、週末に米9月雇用統など重用日程が目白押しで、注視が必要な週となると予想されます。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/20~9/27)
図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/20~9/27)
“石破ショック”から再び上昇に向けた手掛かりとは
9/27(金)に実施された自民党総裁選挙では、石破茂氏が決選投票の末、高市早苗氏を破り勝利しました。10/1(火)召集の臨時国会において、石破氏は第102代内閣総理大臣に指名される見通しです。
9/27の東京株式市場の取引終了後、大どんでん返しで幕を閉じた総裁選挙を受けて、週明け9/30(月)の東京株式市場は朝方から売りが先行し、日経平均は前週末比1,910円安と急落。また、円相場は、9/27に一時1ドル146円台を付けていましたが、9/30は一時141円台と前週末から5円近い円高が進行しており、石破新総裁(新首相)の誕生に対し市場の反応は歓迎ムードとは程遠いものと言えるでしょう。
確かに石破氏はかつて、金融所得課税や法人税の強化に言及するなど、金融市場にとって厳しい政策を行う可能性が懸念されています。また、日銀が行う金融政策についても、円安是正の観点から金融引き締めに前向きな姿勢を示しており、このことも株式市場にとっては逆風に捉えられがちです。石破総裁の誕生を市場としては手放しで歓迎できないのも無理はないかもしれません。
もっとも、週明けの株価急落は石破総裁の誕生を敬遠する動きよりも、高市氏の勝利を期待した先回りの買い(いわゆる“高市トレード”)に対し、当てが外れたことで巻き戻しの動きが生じたことが大きいと考えられます。もともと、今回の自民党総裁選挙は、実施が近づくにつれてアベノミクス路線の継承と、金融緩和の維持を是とする高市早苗氏が優勢との見方が強まるとともに、高市トレードと言われる株高が進みました。総裁選挙の当日は、取引時間中に行われた9名の候補者による第1回目の投票で、高市氏は国民からの人気が高いと目されていた石破氏を上回り、トップ票を得たことで株式市場では株高、円安の動きに拍車がかかりました。しかし、決選投票で大どんでん返しが起きたことで、これまでの期待が一気に剥落したと思われます。
図表9 日経平均と円相場
金融市場の評価としては、波乱の門出となった石破新体制ですが、相場が落ち着きを取り戻してくれば、石破関連銘柄(投資テーマ)への注目は集まるのではないかと思われます。具体的な政策が示されるのはこれからと思われますが、目先の株式市場では、石破氏が注力すると期待される防災関連や地方創生関連、また石破氏がかつて農林水産大臣を担当していたことから農業関連などが注目されると考えられます。さらに、日銀の金融政策については今後、引き締めが進む可能性が高いとの見方が強まりやすく、金利上昇を手掛かりに銀行などの金融株物色が進む可能性があるでしょう。
また、石破氏は自民党総裁の就任にあたり、10/9(水)に衆院を解散し10/27(日)に総選挙を行う方針を示しました。同氏は総裁選挙の討論でも早期の衆院解散に否定的な見解を示していただけに、これを翻す決定はサプライズと言えるでしょう。
経験則では株式市場にとって総選挙は“買い”になることが多かったです。戦後、東京証券取引所が再開した1949年以降の総選挙(第25回選挙から49回選挙までの25回)では、衆院解散から投票日(前の営業日)までの日経平均の勝敗(騰落)は、19勝6敗(勝率76%)、平均で2.12%上昇しました。選挙期間中は、公約などを通じて国民受けの良い政策方針が示される傾向があり、株式市場としても好意的に受け止められやすいと考えられます。今回は石破ショックにより相場が大きく下落した後だけに、総選挙期待による買い戻しの動きに要注目となることが期待されます。
図表10 衆院解散日から投票日までの日経平均騰落率
図表11 衆院解散日から投票日までの日経平均推移(過去10回)
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