米大統領選挙後は株高のアノマリー!?注意点は?

米大統領選挙後は株高のアノマリー!?注意点は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/11/05

日経平均は「往って来い」。決算発表で高安まちまち

10月第5週(10/28-11/1)の日経平均は、前週末比139円75銭高(+0.4%)と週足ベースで小幅反発。「往って来い」の展開でした。

衆議院選が終わったアク抜け感や米テック株の上昇により、10/28-30は3日続伸し、計1,363円高となりました。しかし、米半導体株の下落をきっかけに、10/31-11/1で計1,223円超の大幅安となり、週前半の上昇分を打ち消した格好です。10月第5週は、米大型テック株の7-9月期の決算発表が相次ぎ、東京株式市場にも影響を及ぼしました。

米テック株は大型株への好決算期待から、現地時間29日にナスダックが最高値をつけていましたが、発表後はまちまちの展開でした。現地時間30日(水)引け後に決算発表を行ったマイクロソフトやメタは、ともに好業績を示したものの、AIインフラへのさらなる支出引き上げを発表し、収益性への懸念が売りにつながったとみられます。

日本でも7-9月期決算発表が本格化し、目立った値動きの銘柄が多々ありました。日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/25~11/1・図表7)の首位から9位まで、全て期中に決算発表を行った銘柄でした。好業績の他、2位の東京瓦斯(9531)や3位のアドバンテスト(6857)などは自社株買い計画を発表しており、株主還元施策の強化が買いにつながったもようです。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/25~11/1・図表8)は、打って変わり、決算発表が嫌気された銘柄がほとんどです。当社の売買代金ランキングで上位常連のレーザーテック(6920)は、生成AI関連への投資拡大から、7-9月期の業績自体は堅調でしたが、今期(25.6期)から四半期ごとの受注高・受注残高実績の開示を廃止したことがが嫌気されました。9位のオリンパスはCEOが違法薬物購入疑惑により辞任しました。

11月第1週(11/5-8)は決算発表が株式市場の材料となる一方、いよいよ米大統領選挙の投開票予定です。激戦州が多く、結果が判明するのは翌週になるとの声も市場から聞こえており、当面は方向感に乏しい展開が続くと予想されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/25~11/1)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/25~11/1)

米大統領選挙後は株高のアノマリー!?注意点は?

今週は国外を中心に国内外で注目イベントが相次ぎますが、その中で最も注目されるのは米国で11/5(火)実施の米大統領選挙でしょう。大統領選挙の仕組みなどについては各媒体で報じられているため割愛いたしますが、間接選挙で選出される日本の総理大臣とは異なり、米国大統領選挙は有権者の投票で実質的に直接選挙で大統領が選ばれます。米国のリーダー=世界のリーダーといっても過言ではなく、投資家の関心も極めて高い選挙と言えるでしょう。

今回の大統領選挙はバイデン政権で副大統領を務め、バイデン氏が再任を目指した今回の選挙から撤退したことで後任候補となったカマラ・ハリス氏と、2016年の大統領選挙の勝利でサプライズを起こした元大統領のドナルド・トランプ氏で争われています。リアル・クリア・ポリティクス社の集計によると、大統領選挙における両候補の支持率(11/4時点)はいずれも48.5%と互角となっており、どちらが勝っても不思議ではない状況となっています。

図表9  米大統領選挙の候補者別支持率推移

では、大統領選挙と株価の関係はどうなっているのでしょうか。過去を振り返ると、大統領選挙を過ぎると日米の株価は堅調に推移する傾向があります。トランプ氏が大統領候補として選挙に臨んだ2016年(同氏が勝利)と2020年(同氏が敗北)は、選挙前に日米の株式市場は弱含んでいましたが、選挙が終わるとトランプ氏の勝敗にかかわらず、いずれも株価が堅調に推移しました。特に、トランプ氏が敗北した2020年の大統領選挙は、トランプ氏の陣営が選挙結果に異議を唱え、最終的に2021年1月6日の米国議会議事堂襲撃事件に至ったものの、株式市場は比較的に冷静な値動きに終始していました。

もっとも2016年と2020年では、選挙後における日本株のけん引役に違いがありました。選挙日から年末までの東証33業種別の騰落率を見ると、トランプ氏が勝利した2016年は、証券株(+27.3%)や銀行株(+23.8%)などの金融株や、鉱業(+24.1%)、石油・石炭(+22.2%)などのエネルギー関連株が大きく上昇しました。一方、同氏が敗北した2020年は海運(+26.9%)、非鉄(+20.7%)、鉄鋼(+17.8%)、紙パ(+15.0%)などの市況関連株が堅調でしたが、2016年に買われた金融株やエネルギー株は上値の重い展開となりました。このようにどちらが勝利するかで物色の方向性が変わってくる点は、気を付けておきたいところです。

図表10 2016年、2020年大統領選挙前後の日経平均推移

そして、大統領選挙による日本株の影響について注意するべき点をご紹介します。

その1つは、東京株式市場が大統領選挙の結果を最も早く反映する主要市場となる可能性があることです。2020年の大統領選挙では、新型コロナで郵送投票が増えた影響により、選挙の大勢が判明したのは選挙日から4日後と遅れました。一方、2016年の大統領選挙は、開票が開始されて数時間でトランプ氏が勝利した、との見方が濃厚になりました。日本時間でみると、選挙の大勢が判明したのは選挙日(2016/11/8)の翌日(11/9)昼過ぎ頃。トランプ氏の勝利でサプライズが起きたことにより、その日の日経平均は下げ幅を拡大し919円安(▲5.35%)の大幅下落。しかし、その日の夜の米国株式市場では、NYダウが256ドル高(+1.40%)となるなど、その日の日経平均の急落に反して堅調に推移しました。すると翌日(11/10)の日経平均は慌てて買戻しが入り、1,092円高(+6.72%)と一転して大幅上昇しました。大統領選挙の結果が、米国よりも日本の方が早く材料として織り込まれるような展開になると、株式市場のボラティリティ(値動き)が荒くなる可能性があります。

今回の大統領選挙は、図表9で示すように世論調査の支持率でトランプ氏が終盤に追い上げる格好となっています。市場ではトランプ氏が大統領選挙に勝利するのでは?との見方が強まるなか、米国市場ではトランプ・トレードと言われる株高・債券安(金利上昇)現象が起きたと言われています。トランプ氏が勝利した場合、このトランプ・トレードに一旦、利益確定の巻き戻しの動きが出る可能性に注意する必要があるかもしれません。

もう1つの注意点は、大統領選挙後に緊縮財政シナリオが意識されるリスクです。米国経済は新型コロナを乗り越えて堅調に推移しています。こうした堅調な経済の裏側で膨大な規模の経済対策が打ち出されたことは記憶に新しいところです。今年4月にIMF(世界通貨基金)は、先進国の中で際立っている米国経済の好調は、持続不可能な財政政策によってもたらされている部分があると指摘しています。米国新大統領による次の4年は、財政面で厳しい対策を迫られる可能性があります。今回の大統領選挙でハリス氏が勝利した場合、市場では緊縮財政による増税へのリスクが意識される可能性があるでしょう。ハリス氏は今回の選挙戦において、法人税の引き上げや、富裕層向けや、金融取引における売却益(キャピタルゲイン)に対する課税強化、また金融資産の未実現利益(含み益)に対する課税などにも言及したことがあります。前述したように、アノマリー的な要素として大統領選挙後の株価は、結果によらず株高になり易いと指摘しましたが、増税強化の色彩が意識されるようであれば、経験則が当てはまらない可能性がある点には注意が必要です。

図表11 米国政府債務残高の推移(IMF予想)

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