日経平均の年末ラリーは期待できるのか?

日経平均の年末ラリーは期待できるのか?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2024/12/03

日経平均は3週続落。米関税政策強化に対する警戒感漂う

11月第4週(11/25~11/29)の日経平均終値は前週末比75円82銭安(▲0.19%)となり、週足ベースで3週続落しました。

11/28(木)は感謝祭で米株市場が休場。感謝祭の数日前から休暇を取得した海外投資家も多く、閑散とした相場展開が続きました。そのような中、為替相場で円高ドル安が進行。12月の日銀会合で利上げされる可能性が意識されたほか、トランプ次期米大統領の関税政策に対する警戒感や、ホリデーシーズンを前に、持ち高調整によるドル売りが発生したもようです。11/28(木)以降は、1ドル149円台と10月半ば以来の円高水準を付ける場面が何度かみられ、1ドル150円近辺でもみ合う状況となっています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(11/22~11/29・図表7)の首位は、生命保険業のT&Dホールディングス(8795)です。27日(水)の投資家向けIR説明会で、配当や自社株買いなどに触れ、株主還元の強化を示唆するような発言が好感されました。

2位は京成電鉄(9009)です。同社はOLC(4661)の株式を21.04%保有する筆頭株主です。OLC(4661)が実施した自社株買いに応募し、会社計画の通期(25.3期)予想純利益の上方修正と、期末配当の引き上げ(5円→11円)を発表しました。なお、京成電鉄(9009)の株式を保有している英投資ファンド(いわゆる物言う株主)は、OLCの保有株比率を26.3末までに15%未満に引き下げるよう求めており、今後の動向にも注目が集まっています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(11/22~11/29・図表8)には、トランプ次期大統領が掲げる関税強化策が懸念され、首位のアドバンテスト(6857)や、2位~4位の自動車メーカーなど、海外売上高比率が高い企業がランクインしました。また、フジクラ(5803)やIHI(7013)など株高好調が続いていたものは、利益確定売りが発生したもようです。

12月第1週(12/2-6)は、最終日12/6(金)に米11月雇用統計が発表予定です。10月の非農業部門雇用者数は2020年以来の低い伸び率となっており、弱い数字が続いた場合、FRBによる利下げが進むと想定されます。その場合、日米金利差縮小による、円高進行が東京株式市場の重しとなる可能性があります。トランプトレードの巻き戻しや関税政策の強化懸念も残存しており、引き続き動向を注視する展開が続くでしょう。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(11/22~11/29)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(11/22~11/29)

日経平均の年末ラリーは期待できるのか?

11月相場が終わりました。日経平均株価の月末終値は前月末比2.2%下落し、月足ベースでは反落です。米国ではS&P500が月間で5.7%上昇し、月足としては過去初めてとなる6,000ポイントの大台に乗せ、過去最高値となっています。日本株は米国株に対しアンダーパフォームしました。

とはいえ、日経平均株価の11月末終値は、昨年末終値に対して14.2%のプラスとなっています。株式市場には「年末ラリー」や、「掉尾の一振」(とうびのいっしん=年末にかけて勢いが盛んになる様子)という言葉がある通り、多くの投資家が株価上昇をイメージしている月とみられます。その期待通り、2024年の12月相場で日本株は上昇して終わるでしょうか。

図表9は、過去10年および30年の、1年間の各月の日経平均株価平均騰落率をグラフ化したもので、一目瞭然、11月の騰落率が年間でもっとも高いことがわかります。上記した通り、2024年11月の日経平均株価は2.2%下落しましたが、同月を含む過去30年の11月は平均2.8%上昇していたというデータになっています。11月は経験則的に上昇が期待されたにもかかわらず、2024年は下落で終わった格好です。

12月はどうなるのでしょうか。2023年までの過去10年のデータを見る限り、平均0.8%下落、過去30年では0.8%上昇という結果です。株高をイメージできる言葉があるにもかかわらず、過度に期待しない方が良いのかもしれません。

図表9  日経平均株価の月別平均騰落率(過去10年&30年)

「年末相場に過度に期待しない方が良い」とのアノマリー(経験的に観測される市場の規則性)は米国についても同様です。図表10は、過去10年および30年の、1年間の各月のS&P500指数騰落率をグラフ化したもので、やはり、11月の騰落率が年間で相対的に高いことがわかります。2024年11月のS&P500指数は5.7%上昇しましたが、同月を含む過去30年の11月は平均4.1%上昇していたというデータになっています。本年11月は期待以上の上昇で終わった格好です。

11月といえば、4年に1回大統領選挙がある月です。リーマン・ショック後の2008年やITバブル崩壊の2000年11月は下げましたが、2004年、2012年、2016年、2020年の11月の米国株は上昇しました。バイデン氏が大統領選挙で勝利した2020年は10.8%も上昇しています。

一方12月相場は、11月相場に比べるとパフォーマンスは悪く、2023年まで過去10年の平均では1.0%上昇、30年の平均では0.1%上昇にとどまっています。仮にアノマリー通りであれば、S&P500は6,000ポイント台での年末着地は期待できるものの、それ程上値余地は少ないと予想されます。

もっとも、2023年のS&P500指数は11月に8.9%上昇した後、12月も4.4%上昇しました。昨年は年末にかけ、FRB(米連邦準備制度理事会)のハト派的姿勢が好感され、12月の米長期金利は急低下し、米国株に強い追い風となりました。本年も、基調的には米金融政策は緩和方向で、米長期金利は低下傾向であり、株高継続が期待できる投資環境といえそうです。

ちなみに、2023年12月は金融政策について、米国が緩和指向、日本が引き締め模索と方向感の相違が意識され、外為市場で円高・ドル安が進みました。2023年までの10年間、12月は平均0.5%円高・ドル安となっています。やや円高・ドル安になりやすいことが、日米株価の12月の株価パフォーマンスの差の一因といえるかもしれません。

2024年も昨年同様、日米で金融政策の方向感に違いが見られ、円高・ドル安につながりやすいことは、日経平均の重しとなる可能性があります。ただ、2024年はNISA(少額投資非課税制度)が拡充された初年度であり、成長投資枠使い切りを目的とした投資資金の一部流入の可能性はあるので、「掉尾の一振」となる可能性も残りそうです。

図表10 S&P500指数の月別平均騰落率(過去10年&30年)

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