株価急落シナリオを疑う!?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2024/12/10
日経平均は4週ぶり反発。米株最高値を更新!だが、日本株は円高が重しに
12月第1週(12/2-6)末の日経平均は、前週末比883円高(+2.3%)と4週ぶりに反発。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による運用利回りの目標引き上げ方針が伝わり、株式の需要が高まるとの思惑買いが入ったことや、米主要株価指数が最高値を更新したことよるリスクオンムードの拡大などが、追い風となりました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(12/2~12/6・図表7)の首位は、電線大手のフジクラ(5803)です。12/9(月)時点で前年末からの株価は約5.7倍、東証プライム市場でNo.1の上昇率と、今年の主役銘柄ともいえます。
同社は、生成AIの拡大を背景に、データセンター向け需要の増加が続くとし、今期(25.3期)は1Q、2Qと続けざまに通期業績計画の上方修正を実施。7‐9月期の決算発表終了後、大手証券会社による電線大手の目標株価引き上げが相次いでいます。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(12/2~12/6・図表8)の首位は、一眼レフカメラ大手のニコン(7731)です。一時要因の解消以外に、来期(25.3期)以降の業績改善要因が見つけられないことを理由に、日系大手証券会社が「中立」から「アンダーパフォーム」へ投資判断の引き下げを実施しました。2位は11月第4週(11/25-29)に騰落率上2位だった京成電鉄(9009)です。11/26(火)、OLC(4661)の自社株買い応募で得た売却益を以って、今期利益の上方修正と増配を実施を発表。11月末にかけての株価は大幅高となりましたが、12月以降は利益確定売りが増えたもようです。
米株高が追い風となり、12月第2週(12/9-13)の日経平均は小幅高でスタート。現地時間12/6(金)に発表された11月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比22.7万人増(予想22万人増)と、予想を上振れたものの、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測を後退させるまでには至らず、市場に安心感が広がりました。さらに、失業率は4.2%(同4.1%)と悪化し、12月FOMC会合での利下げ観測の支援材料となりました。米株式市場は重要イベント通過でリスクオンムードが続き、12/6(金)のS&P500とナスダックは最高値を更新しました。
現在の東京株式市場は、『米株高を受けて、日本株も上昇』と素直にツレ高するような状況ではないようです。為替相場では、米利下げ観測が拡大したことで、日米金利差縮小による円高が進行。主力株に海外売上高比率の高い企業が多い、東京株式市場には重しとなっています。そのため、日銀の動向が一段と注目される中、13日(金)発表予定の10-12月期日銀短観の内容も見定めたいとする動きが続くでしょう。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(11/29~12/6)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(11/29~12/6)

株価急落シナリオを疑う!?
2024年の株式市場も間もなく終わろうとしています。2025年の株価予想については、日経平均株価で4万円以上を予想する向きがいる一方で、急落を予想するエコノミストもいることは確かです。
日経平均株価は、採用銘柄の予想EPS(1株利益)にPERをかけた数字になっています。12/6時点では、
(日経平均株価)39,082円=(日経平均予想EPS)2,478円×(同予想PER)15.77倍
となっています。過去10年は「コロナ禍」(2020~2021年頃)の例外的期間を除き、日経平均株価はおおよそPER12~16倍のレンジの中で買われてきました。過去10年の予想PERの平均(月足)は約15倍となっています。現在の株価は、多少過去の予想PERの平均からは高い水準で買われているものの、極端に割高ではないとみられます。バブルが経済の実力からのかい離を指す言葉であるとするならば、バブルはほとんど起こっていないとみられます。
なお、足元は企業業績が踊り場を迎え、日経平均の予想EPSが伸び悩んでおり、それが株価の膠着状態につながっているとみられます。日経平均株価の急落するケースとしては、この予想EPSが(何割というレベルで)急減するケースが想定されますが、今の所、そうした予想をみかけることはないように思われます。
図表9 日経平均株価と予想PER(月足・過去10年)

日経平均株価は、採用銘柄のBPS(1株純資産)にPBRをかけた数字としても計算できます。12/6時点では、
(日経平均株価)39,082円=(日経平均予想BPS)27,330円×(PBR)1.43倍
となっています。過去10年は「コロナ禍」の例外的期間を除き、日経平均株価はおおよそPBR1~1.5倍のレンジの中で買われてきました。過去10年のPBRの平均(月足)は約1.23倍となっています。現在の株価は、多少過去の予想PBRの平均からは高い水準で買われているものの、極端に割高ではないとみられます。
BPSは、企業(ここでは日経平均採用銘柄全社)の純資産を1株当たりの数値に直したものです。純資産は、総資産から負債を引いて残った金額です。表現は荒いですが、ある会社を買収した場合に、その会社の資産をすべて売って、負債を肩代わりした場合に、手元にお金が残る状態が「PBR1倍未満」で、割安な状態とみなされます。
したがって、日経平均の「PBR1倍割れ」は滅多に現れない現象ですが、それが起こった場合は、買い場である可能性が多いことになります。言い換えれば、PBR1倍割れの企業が数多くあるという状態は、日本企業がM&Aの標的になりやすい状態を示しています。東証が指摘するまでもなく、「PBR1倍割れ」企業が多いことは「危機的」であると考えられます。
なお、日経平均株価が何分の1になるような急落を想定する場合、PBR1倍割れとBPSの急減が同時に起こる可能性があります。しかし、上場企業のBPSは赤字の企業が相当増えない限り、減少することは滅多にありません。図表9と図表10に示した通り、新型コロナ流行のような世界的なショックがある場合、企業の利益は変動しますが、純資産は右上がりを続けていました。現状では日経平均のBPSが急減する展開は、日本が巻き込まれるような戦争や大規模自然災害等でも発生しない限り、考えにくいと思います。
日経平均株価は企業の利益や純資産の伸びに準じた動きなっており、バブル的な要素は少なく、株価が何分の1になるような急落は想定しにくいというのが結論です。
図表10 日経平均株価とPBR(月足・過去10年)

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追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。
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日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。
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