株安の一因「円高」はどの程度心配すべき?

株安の一因「円高」はどの程度心配すべき?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/02/25

反落基調。「円高」「関税」「ウクライナ」が気がかり

2月第3週(2/17~21)の日経平均株価は前週末比372.49円安(▲0.9%)と、週足ベースで反落しました。国内金利の先高観を背景とした円高や、トランプ大統領の関税政策、ウクライナでの戦闘を巡る和平交渉など、複数要素への先行き不透明感が重しとなりました。トランプ米大統領は、4月に詳細を公表予定の輸入自動車への追加関税について「25%くらいになるだろう」と発言。半導体と医薬品への追加関税引き上げ検討も明らかとなり、市場心理悪化につながっているもようです。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/14~2/21・図表7)の首位は、半導体製造装置のSCREENホールディングス(7735)です。主要顧客の1社である米半導体のインテルの株高が好感されたもようです。ブロードコムやTSMCが、インテルの買収を検討しているとの報道がありました。9位の日産自動車(7201)は、EV大手の米テスラによる出資計画策定が報じられたことを契機に、大幅高となりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/14~2/21・図表8)の首位は、電通グループ(4324)です。14日(金)に決算発表を行い、24.12期は海外事業で減損を計上し、通期最終損益は市場予想を下振れ赤字で着地。また、25.12期の会社計画で示された予想最終利益も市場予想に届かず、売りが広がりました。

2/21(金)および2/24(月)の米国市場は総じて波乱の展開でした。米経済指標の悪化で景気減速懸念が強まったうえ、データセンター拡大路線への疑問も逆風となりました。それを受け、2/25(火)の東京株式市場は売り優勢で取引開始となりました。

2月第4週(2/24~28)はAI向け半導体の最大手であるエヌビディア(NVDA)が現地時間26日(水)に決算発表予定です。直近2四半期は、高すぎる市場期待に応えられず、決算通過後の株価の反応は▲6.4%、+0.5%とポジティブサプライズとはなりませんでした。

一方、市場予想数値の過熱感解消が進んだことで、業績が上振れ着地となれば、テック株を中心とした株高に期待ができるでしょう。もう一つの注目材料は引き続きトランプ政権の関税政策です。メキシコとカナダに対する25%の関税の発動期限が3月4日に近づき、発動回避のための交渉が行われるかに注目が集まります。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/14~2/21)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/14~2/21)

株安の一因「円高」はどの程度心配すべき?

冒頭でご説明した通り、2月第3週(2/17~21)の日経平均株価は週足ベースで反落し、3連休明けの2/25(火)も売り先行となりました。国内金利の先高観を背景とした円高や、トランプ大統領の関税政策、ウクライナでの戦闘を巡る和平交渉など、複数要素への先行き不透明感が重しとなりました。

図表9は、日経平均株価とドル・円相場を比較したものです。様々な論議はありますが、2023年以降の推移をみる限り、外為市場の円安・ドル高傾向が日経平均株価の上昇に寄与してきたことは確かなようです。

日経平均株価の変動に大きく寄与している値がさ株の多くが、グローバルに事業展開をしている企業であり、円安・ドル高がプラスになりやすいことがその理由です。円安・ドル高は輸入物価の上昇を通して、物価上昇につながるという面では、日本経済に負の影響をもたらします。それゆえ、1ドル160円を超えるような円安・ドル高局面では、経済界からも批判的な声が目立っていました。しかし、物価上昇傾向が「理由」となり、多くの内需型企業も、長年の懸案であった「価格の適正化」(値上げ)を実現し、業績の改善を得ることができたとみられます。

2/21(金)時点の日経平均予想EPS(1株利益)は2,556円で、企業業績は過去最高水準です。輸出企業のみならず、内需型企業の多くも増益となった背景には、円安・ドル高の効果もあったのではないでしょうか。

ただ、1月末に1ドル155円だったドル・円相場が2/21(金)には一時148円台に入るなど、円高・ドル安に振れたことで、日経平均株価の下落につながったと考えられます。

図表9 日経平均株価とドル・円相場(週足)~足元の円高・ドル安が株安の一因か

外為市場に変動をもたらす要因には、①金利差、②貿易・経常収支、③インフレ格差他が掲げられます。資本が自由に往来し、インフレ格差が相対的に小さい先進国通貨の間では、金利差の変動が当面の外為相場に大きく影響しやすいとみられます。

図表10は日米金利差(ここでは米国10年国債利回りから日本10年国債利回りを引いた数字)とドル・円相場の推移をみたものです。日米金利差が拡大するということは、米国の金利が日本の金利に比べ「魅力的」に映ることで、円からドルにおカネが流れやすくなるため、円安・ドル高になりやすいと考えれば理解しやすいでしょう。2023年秋ごろまでのドル・円相場では、日米金利差の拡大を背景に円安・ドル高が進みました。

しかし、2023年秋以降の日米金利差は上下を経ながら縮小傾向になったとみられます。それでも、円に対し、ドルが踏ん張った背景には、日本の新NISA等を背景に、米国債や米国株への投資が増えたことが影響しているかもしれません。

ただ、足元については、日銀による追加利上げ観測がくすぶり続けていることにより、その分日米金利差が縮小しやすくなると予想され、円高・ドル安につながっていると考えられます。円高・ドル安は今の所、株安要因となりやすいため、日経平均株価の軟調につながっているとみられます。

しかし、日本の中立金利(緩和でも引き締めでもない金利水準)は政策金利で1%程度であるとみられます。現在の政策金利水準(0.5%)からの上昇余地はそれ程大きい訳ではありません。トランプ氏の関税政策による内外の経済指標の変動や、株価波乱等、日銀が金利を上げ続ける際に留意すべき点も多くあります。「金利の正常化」は、「経済の正常化」が維持されていることが前提と考えられます。

さらに、米国では利下げ局面が最終局面に来ている可能性があります。トランプ大統領が関税政策をこのまま強化すれば、米国のインフレが再燃しかねないため、FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げを急がないと予想されるためです。

日米金利差の縮小には限界があり、したがって極点な円高・ドル安は想定しにくく、その分株価下落にも歯止めがかかりやすいとみられます。

図表10 日米金利差とドル・円相場(週足)

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