中東で地政学的リスク再燃!意外なシナリオと対処法は!?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2025/06/17
日経平均、中東情勢を巡る懸念は限定的?中銀ウィーク突入
6月第2週(6/9~6/13)の日経平均株価は、前週末比92円64銭高(+0.25%)と週足ベースで小幅反発。米中貿易協議の進展や、米労働指標および経済指標が想定以上に堅調な結果となり、米国株がテック株を中心に上昇。日本でも主力株が連れ高となり、6/11(水)の取引時間中には心理的節目の38,500円台を付ける場面もありました。
米中の通商協議では、中国によるレアアースの輸出規制問題等が話し合われ、米国向けの供給再開で合意したと発表。リスクオンムードが広がり、日経平均株価は6/11(水)までで4営業日続伸しました。同問題は、東京株式市場でも自動車大手のスズキ(7269)が主力小型車の生産を一時停止するなど世界各国の製造業に影響を及ぼしており、協議の行方に注目が集まっていました。
しかしその後、中東情勢の緊迫化を受け、日経平均株価は再び38,000円を割り込みボックス圏に押し戻されました。イスラエルのイラン攻撃、イランによる報復措置が繰り広げられており、供給ひっ迫懸念が生じた原油や、安全資産の金が上昇しています。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/9~6/13・図表7)の首位は、住友ファーマ(4506)です。国内大手証券会社が既存品の売上成長等を背景に、投資判断と目標株価の引き上げを行いました。『メイプルストーリー』や『アラド戦記』で有名な3位のネクソン(3659)は、オンラインゲームの世界的大手テンセントによる買収可能性が報じられ、思惑買いが入ったとみられます。他には、原油高の影響で、INPEX(1605)やENEOSホールディングス(5020)などのエネルギー関連株も連想買いされました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/9~6/13・図表8)の首位は、日野自動車(7205)です。6/10(火)に三菱ふそう(非上場)と経営統合の最終合意に至ったと発表。統合前に、日野自動車はトヨタ(7203)を引受先とした第三者割当増資を実施することを明らかにしました。その金額が2,000億円、希薄化率最大約78%(現時点での株式の価値が約4分の1に)とあまりの大きさから、希薄化が嫌気されて急落しました。
6月第3週(6/16~20)の日経平均株価は、上昇スタート。中東情勢を巡る過度な懸念が後退したと指摘する声が市場から聞こえます。同期間は日銀の金融政策決定会合と米FOMC(米国連邦公開市場委員会)が開催予定です。日銀会合では、政策金利は現状維持予想が濃厚で、国債買い入れ額の減額ペースや、会合後の植田総裁の発言に注目が集まっています(2025/6/17 10時時点)。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/6~6/13)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/6~6/13)

中東で地政学的リスク再燃!意外なシナリオと対処法は!?
6/13(金)の東京株式市場では日経平均株価が一時前日比で632円安と急落しました。イスラエルがイランの核施設を攻撃し、さらに核科学者や専門家らを殺害したことが伝えられました。それに対し、イランがイスラエルへの反撃を示唆するなど、中東情勢が一気に不透明化したことが要因です。ただ、この日の大引けは338円安水準まで下げ渋りました。週明け6/16(月)は先週末比477円高と大幅反発し、先週末に下げた分を取り戻した形です。
市場では、イラン・イスラエルの対立は長続きしないとの期待が強いのかもしれません。たしかに、昨年4/19にイスラエルによるイラン拠点攻撃を受け、日経平均株価が前日比1,011円下げたものの翌日以降は3連騰し、下げた分以上を取り戻したという経緯があります。
今回も、米国が積極的にイスラエルを支援する姿勢を見せていないこともあり、紛争の長期化はメインシナリオになっていないように見受けられます。イスラエル、イランともに「親日国」であり、日本が両国の紛争に直接巻き込まれるリスクも小さいと考えられます。
図表9 イラン・イスラエルと中東主要国

多くの人々にとり、また株式市場にとっても、このまま、イランとイスラエルの紛争が収束に向かうことがベストシナリオでしょう。しかし、紛争の長期化につながる要因は複数あります。
・イラン(イラン・イスラム共和国)は、1979年の「イラン・イスラム革命」により成立し、反米・反イスラエルが「国是」
・イランはイスラム教(おもにシーア派)、イスラエルはユダヤ教で、一神教であり、異なる宗教
・もともとイランはヒズボラ(レバノン)、ハマス(パレスチナ)等を背後で支援し、イスラエルと代理戦争状態にあった
・イスラエルの攻撃により、軍指導者や核科学者を殺害され、イランのイスラエルへの恨みは深化している可能性
・イスラエルはイラン核施設を攻撃したものの、ウラン濃縮施設の多くは地下に残っているとの指摘
これまでは直接交戦する機会は少なかった両国ですが、ここにきて直接戦火を交えており、ステージとしては一段上がった印象です。両国の戦争が長期化する可能性は残りそうで、株式市場が動揺を余儀なくされる場面はありそうです。ただ、市場には紛争長期化に備えたり、リスク回避を目指した動きが多方面で見られることも事実です。
紛争が長期化した場合、イランがホルムズ海峡を封鎖する可能性があります。同海峡は世界の原油輸送の約2割を占めているとみられ、原油価格の高騰が予想されます。こうしたリスクを警戒してか、WTI原油先物相場は本年5月初旬には1バレル57ドル台でしたが、6/13(金)には同73ドル近い水準まで急騰しています。なお、原油価格が高止まりした場合、ロシアの財政が下支えされ、ロシア・ウクライナ戦争が長期化するリスクも高まりそうです。
※ホルムズ海峡の封鎖は原油輸出国でもあるイランにとってもリスクがあるため、実現の可能性は低いとの指摘もあります。
「有事の金」も保ち合い放れしてきています。NY金先物相場は4/21(月)に1トロイオンス3,425ドル、5/6(火)に3,422ドルとダブルトップの状態にありましたが、6/13(金)には3,452ドルと上放れてきました。また暗号資産等への資金流入が続く可能性もあります。
東京株式市場では、地政学的リスクの高まりを受け、防衛関連株がさらに高値を追う展開になっています。原油高騰を受け、鉱業セクターの銘柄や原油ETF等が動意づいています。なお、海上交通に支障が出てきた場合、海上輸送運賃が高騰し、海運株が注目される可能性に注意したいところです。
図表10 原油先物価格と金先物価格

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日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
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