日米合意受け急伸!日経平均高値更新の条件は?

投資情報部 鈴木英之 植田雄也
2025/07/29
日米合意、米株価堅調を受け急伸
7月第4週(7/22~7/25)の日経平均株価は、前週末比1,637円12銭(4.11%)高と週足ベースで急伸。7/24(木)には日経平均が一時42,000円を超え、TOPIXは終値ベースで市場最高値を更新しました。7/23(水)の日本時間朝方に日米関税交渉の合意が伝わり、これまで関税懸念が上値を抑えていた自動車株を中心に幅広く買いが入りました。加えて、米企業が市場予想比で堅調な決算を発表し、S&P500やナスダック指数が高値更新を続けたことも追い風になりました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(7/22~7/25・図表7)の首位はSUBARU(7270)です。同社の米国販売は24年度実績で66万台規模で、そのうち約半数を日本から輸入しています。同社は関税の影響で今期の営業利益ベースで最大3,600億円程度の負担増となる見通しを示していましたが、日米関税交渉の合意による業績改善期待から買いが集まりました。
第2位は安川電機(6506)です。米関税政策の影響による需要の先行不透明感の高まりから26年度通期連結業績予想を下方修正してましたが、日米関税交渉の合意を受けて業績改善期待から買いが入りました。加えて7/27(日)、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)電子版は、関係者の話として「中国と米国は7/28(月)からストックホルムで始まる貿易交渉で関税停止をさらに3カ月延長する見通しだ」と報じ、米中の緊張が和らぐとの見方から、25.2期実績で他の同業種同様、米中向けの売上比率が高い同社にも買いが入りました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(7/22~7/25・図表8)首位は、荏原製作所(6361)です。水処理など環境装置強化、半導体関連装置等を扱っています。同業の受注減少を受けて同社にも先行きを警戒した連想売りが出ているとの見方があります。ガスコンプレッサーなど工業部品を手掛ける同業の産業機械大手アトラスコプコが7/18(金)に発表した2025年4~6月期決算で、将来の売上につながる受注高が前年同期比8%減でした。同社とアトラスコプコは半導体の製造工場で利用されるドライ真空ポンプで競合関係にあります。
7月第5週(7/28~8/1)の日経平均株価は下落スタート。急ピッチで上昇してきた反動で利益確定売りが増えていることや、半導体関連株の下落が響いています。今週は内外主要企業の決算と重要な経済指標の発表が目白押しとなっており、今後のモメンタムを左右するとして市場の注目が集まる状況です。
さらに、日本においては石破茂首相の政権運営を巡る先行きの見極め、日銀の金融政策決定会合の動向等を手掛かりにした物色が続きそうです。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(7/18~7/25)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(7/18~7/25)

日米合意受け急伸!日経平均高値更新の条件は?
先週の東京株式市場では日経平均株価が一時42,000円台を回復、年初来高値を更新し、TOPIXは過去最高値を更新しました。日米関税協議が合意に達し、不透明感が晴れたことが要因です。しかし、そもそもここに至るまで株価上昇をもたらした要因が重要です。
ひとつに、企業統治改革の進展があります。東証によるPBR1倍割れ企業への圧力が奏功し、資本効率改善が加速。自社株買いや増配が過去最高水準に達しました。
もうひとつは 海外投資家の回帰です。トランプ政権の米国への資金偏重が疑問視され、国際分散投資の観点から日本株が見直されています。東証の発表では、7/18(金)までの週で、海外投資家の買い越しは16週連続となりました。
さらに、 新NISA制度の定着もあります。個人投資家の長期投資志向が強まり、国内マネーの株式市場回帰が進行。最後に業績の底堅さがあげられます。日経平均の予想EPSは7/28時点で2,506円となっており、依然過去最高水準が視野に入る水準です。
図表9 日経平均株価(日足)と予想PER

今後、日経平均株価上昇継続に必要な条件は、「業績」「需給」「マインド」に関する3つの条件とみられます。
「業績面」では、日経平均の予想EPSが持続的に拡大することです。仮に日経平均採用銘柄の予想EPS(7/28時点)が来期10%増える見通しとなれば、1年後の「予想EPSは2,756円」が見通せることになり、予想PER16倍(7/28は16.3倍)をかければ日経平均株価はおおよそ44,000円が可能です。
需給面では自社株買いや増配の継続が重要です。25.3期決算では自社株買い増加が株価に直結しました。また、海外投資家の買いが継続するかもポイントです。米国一国集中から資金分散が続き、日本が安定的な受け皿になれるかどうか、見極めたいところです。
マインドの面では、生活実感と高い株価の間のギャップの解消が重要でしょう。実質賃金上昇による消費回復が実現されるか注目です。また、決算発表で関税の影響を素直に語る企業は安心感から評価されるでしょう。
そうした中、今週からいよいよ決算発表が本格化します。7/31(木)には300社以上が発表する最初のヤマ場が来ます。7月までに発表する企業が時価総額の大きな主力企業が多いので、そこまででおおむね企業業績の方向感が見えてくるかもしれません。
発表社数の上でヤマ場は400社発表の8/7(木)、880社発表の8/8(金)です。7/29のアドバンテスト、7/31の東京エレクといった半導体関連、関税問題で関心を集めた自動車ではトヨタが8/7発表の予定です。
決算発表でのポイントは、関税の影響の織り込み具合、業績ガイダンスの強弱、自社株買い・増配の有無、新規事業再編の進捗等になるとみられます。
2025年夏の決算発表は、単なる業績確認ではなく、企業の構造改革と資本政策の“実行力”を測る場になるでしょう。この局面を乗り越え、EPSの持続的成長+資金の定着+生活実感とのギャップ解消が揃えば、日経平均は新ステージへ進むことができるでしょう。
図表10 日別決算発表予定社数とおもな発表予定企業

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