日経平均株価が「節目」に到達、高値更新継続の条件は?

投資情報部 鈴木英之 植田雄也
2025/08/19
日米株式市場で最高値更新。ジャクソンホール会議に注目
8月第2週(8/12~8/15) の日経平均株価は、前週末比1,557円83銭高(+3.72%) と週足ベースで大幅続伸。引き続き海外短期筋と見られる先物主導の買いが強い格好です。先週同様、好決算の主力値がさ株を中心に、日本株全体が堅調となり、日経平均とTOPIXともに8/12(火)・13 (水)・15(金)と4営業日中3営業日で最高値を更新。日経平均株価は4万3,000円台後半の水準まで上昇しました。8/11(月)に発表された米7月CPIが概ね市場予想通りとなり、FRBによる利下げ観測が拡大。全面的な米国株式の上昇も日経平均株価の上昇に寄与しました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/8~8/15、図表7)においては、三井金属鉱業(5706)が年初来高値を更新。今期予想を上方修正し減益幅縮小、AIサーバー向け需要も強くポジティブ材料となりました。騰落率上位の2番手には先週に引き続き、日経平均株価構成銘柄の6%超を占めるソフトバンクG(9984)が入りました。他には、日銀の利上げ期待等から銀行株が3社ランクインしました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/8~8/15、図表8)は、多くの銘柄が決算発表後に売られた格好です。特に、収益性の低下や通期見通しの保守的な内容が嫌気されました。中でも電通グループ(4324)は14日の取引終了後、2025年12月期(今期)の連結最終損益(国際会計基準)が754億円の赤字(前期は1921億円の赤字)になる見通しだと発表しました。海外事業の不振で従来見込んでいた100億円の最終黒字から一転して赤字予想となったことに売りが集まりました。
8月第3週の日経平均株価は、8/18 (月) の終値では日経平均・TOPIX並びに最高値を更新。米国の利下げ期待の高まりや、決算発表が一通り出揃い、企業業績の先行きに対する警戒感が和らいだこと等が株価上昇の一材料となりました。今週は注目のジャクソンホール会議を控えており、FRBのパウエル議長の経済見通しや政策枠組みの見通し等が今後の株式相場を左右しそうです。加えて、ホーム・デポ、ターゲット、ウォールマート、といった小売り大手の決算を控えており、米国の消費動向の強さにも注目が集まります。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/8~8/15)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/8~8/15)

日経平均株価が「節目」に到達、高値更新継続の条件は?
日経平均株価が過去最高値圏にあります。今後、株式市場が上昇するのか、反落するのかを占うには、現在の株価水準を上場企業の財政状態等と比較し、妥当性を検証しておく必要がありそうです。
図表9は、日経平均株価(月足)と、その時のPBR(株価純資産倍率)1倍ライン、1.5倍ラインと比較したものです。
PBRは株価がBPS(1株純資産)の何倍まで買われているのかを示しています。 また、BPSは純資産を発行済み株式数で割った数値です。純資産は、総資産から負債を引いた数値で、しばしば「解散価値」と表現されることがあります。
ある会社を総資産で買収し、負債を代わりに支払った場合、残るとみられる金額が純資産です。したがって、ある会社を純資産未満で買収できた場合は、それだけで利益が出る「お買い得」な状況を示しています。PBR1倍割れというのは「解散価値割れ」を示しており、その会社が割安状態に放置されていることを示しています。
図表9において、日経平均株価(月足)はその下落局面において、PBR1倍ラインを割り込んだことが何度かありました。リーマンショック後の下落局面、東日本大震災後の下落局面、コロナ禍での下落局面が実例となります。しかしPBR1倍割れは、株価にとって「不合理に割安な状態」と捉えられ、長続きしないのが普通です。
なお、2001年4月に日経平均株価のPBR1倍ライン、すなわちBPS水準は5,238円と当面のボトムを付けました。同じ月の日経平均株価終値は13,934円です。本年8/15(金)の日経平均株価終値は43,378円の過去最高値圏で、2001年4月から3.1倍になった計算です。ちなみに同じ期間、日経平均株価のBPSは5,238円から27,454円(5.2倍)になりました。
企業は、その活動を通じて利益を継続的に上げ、内部留保として積み上げていきます。その積み上げの結果が純資産と考えることができます。2001年4月以降の24年超で、企業活動の成果であるBPSは5.2倍にも膨れ上がったにもかかわらず、それを評価する株価は3.1倍にしかなっていないということになります。こう考えると、現在の日経平均株価は、企業活動の成果を普通に評価した結果であると考えられます。
ちなみに、2001年4月の日経平均株価はPBRで2.6倍に評価されていました。8/15(金)時点では1.58倍です。95年7月以降の過去30年で、日経平均株価のPBR(月足ベース)は0.88~3.01倍で推移してきましたから、2001年4月の水準が割高であり、当時は割高感の調整過程であったといえるかもしれません。したがって、BPSの増加ほどに日経平均株価が上がっていない背景には、かつての割高感を解消する局面があったことを示しています。
なお、2012年11月、当時の野田首相と安倍自民党総裁の党首討論で衆院解散が方向付けられ、「アベノミクス相場」がスタートし、それ以降息の長い上昇相場になっています。この上昇相場では日経平均株価のPBR(月足ベース)はこれまで、24年3月1.54倍が最高でした。したがって、現在のPBR1.58倍はそれを上回っており、「高値警戒感」が出ても不思議ではない水準であると考えられます。
ちなみに、
PBR=株価/1株純資産
=(株価/1株利益)×(1株利益/1株純資産)
=PER(株価収益率)×ROE(株主資本利益率)
PBRの上昇が歴史的水準を超えて上昇し続けるには、企業の資本効率向上が確認され、投資家心理が上向くことが必要になるとみられます。上場企業の自社株買いが過去最高水準にあり、ROE改善への努力が続いていることは、株価上昇の条件がひとつ整っていることを示しています。
図表9 日経平均株価(月足)とPBR1倍ライン・PBR1.5倍ライン

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