日経平均株価は来年47,000円も?その「意外な援軍」は?

投資情報部 鈴木英之 植田雄也
2025/08/26
日経平均株価は週初に高値更新も、後半は売り優勢
8月第3週(8/18~8/22)の日経平均株価は、前週末比745円02銭安(-1.72%) と週足ベースで反落。18日には日経平均並びにTOPIXが揃って最高値を更新するも、週を通して値がさ株中心に売りが入りました。一方で中小型株は堅調に推移しており、NT倍率は7月時点の14倍から13倍台に低下しています。大型株から中小型株へと投資家の物色動向の変化がうかがえます。週後半には注目イベントのジャクソンホール会議があったこともあり、様子見ムードが広まる場面もありました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/15~8/22、図表7)においては、株価中位の銘柄で上昇が目立っています。四半期決算を終えて大型株が上昇をけん引してきた経緯があり、割安感から中小型株に資金が流入しました。騰落率2位のスズキ(7269)はインド政府が10月までに消費税を減税する方針を示したことで、同市場が主力の同社に対し、消費刺激による販売増への期待から買いが集まりました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/15~8/22、図表8)は、半導体関連を含む値がさ株中心に売られました。米国のハイテク株が売られたことを引き継ぎ、下げた格好です。19日には日経平均株価が一時、史上最高値を更新するなど高値警戒感から利益確定売りが優勢となったことも一因としてあります。
8月第4週の日経平均株価は、8/25(月)の終値は上昇でスタート。ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演がハト派的と受け止められ、景気減速懸念の後退から米国株が急伸した流れを引き継ぎました。今週は27日にエヌビディアの決算が控えており、今後の人工知能(AI)関連銘柄にとって重要な試金石となります。加えて、29日に発表される米個人消費支出(PCE)にも注目です。インフレ再燃への懸念がくすぶる中、結果次第では政策の方向性が揺れる可能性も大きいと考えられます。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/15~8/22)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/15~8/22)

日経平均株価は来年47,000円も?その「意外な援軍」は?
米国時間8/22(金)、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長がジャクソンホール会議で講演を行いました。同氏は米国労働市場について下振れリスクを指摘し、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げに肯定的な姿勢を示しました。米国市場はこれを好感し、主要株価指数は大幅高となりました。
その流れを引き継いだ、8/25(月)の東京株式市場も買いが先行。日経平均株価は一時、前週末比568円高水準まで上昇し、3営業日ぶりに43,000円台を回復(取引時間中)しました。ただ、買い一巡後は伸び悩み、終値は前週末比174円高水準にとどまり、終値での43,000円台回復はお預けになりました。8/26(火)は売り先行の寄り付きになりました。
日経平均株価の上値が重くなってきた一因には、高値警戒感があると考えられます。日経平均株価の予想PERは8/22(金)時点で17.75倍あり、2012年以降での高値圏(コロナ禍の時期を除く)にあります。予想PERが「上限」に達し、関税問題等を背景に予想EPS(1株利益)で示される企業業績が目先伸びにくいとみるならば、予想EPS×予想PERで計算される日経平均株価の上値余地は限定的と考えられても致し方ありません。
しかし「225の『ココがPOINT!』」では、予想PERが18~20倍に上昇し、来年にかけては予想EPSの増加が後追いする形で、日経平均株価は47,000円程度まで上昇する可能性があると思います。そう考える理由は、日本経済がデフレを脱し、インフレ傾向の経済に変わってきたと思われるからです。
図表9は日経平均株価と名目GDPの推移を比較したものです。
(名目GDP成長率)=(実質GDP成長率)+(インフレ率)
と定義されています。すなわち、名目GDPはインフレが進行する経済では、実質GDPよりも大きくなります。
8/15(金)に発表されたGDP統計では、実質GDP成長率が年率1.0%成長と堅調でしたが、名目GDPは5.1%も伸長しました。図表からもお分かり頂けるように、最近になって名目GDPの上昇が加速しています。
1980年代には、名目GDPが急上昇していますが、資産価格の急騰とインフレの高進、株価上昇が共鳴しました。しかし、資産価格の反落を契機に、デフレ時代が長期化し、名目GDPも長期横ばいとなったのが「失われた20年」です。その後「アベノミクス」が始まり、日銀による「異次元の緩和」を経て再びインフレ率が上昇し、名目GDP成長率の向上が始まりました。
インフレ高進が続く中、日経平均株価は上昇しやすいとみられます。
図表9 名目GDP成長加速が導く?日経平均株価上昇

ではなぜ、名目GDPと株高は「連動」しやすいのでしょうか。それは、企業収益を示す各種指標は、物価を勘案しない名目値で示されているため、名目GDPが成長するインフレ局面では、企業の収益が増えやすくなります。図表10は、名目GDPと法人企業の営業利益を比較したものですが、両者は共鳴しやすくなっています。
足元の日本経済でも、円安やインバウンド景気好調の効果もあり、インフレの高進が見られます。そうした中、小売・外食のみならず卸売業、製造業等の広範な業種で「念願の」値上げ(価格の適正化)が実施され、賃金の上昇を可能にしています。それでも企業の手元には利益が残り、営業利益は増加基調です。
トランプ関税の影響が日本経済へ不透明感をもたらしていますが、その影響をいったん織り込むことができれば、インフレ率上昇を背景に、企業業績の拡大が見込めそうです。日経平均採用銘柄の「来期」純利益は、市場コンセンサス(Bloomberg集計)では、1割程度の増益が見込めそうです。
8/25(月)の日経平均株価終値は42,807円です。来期1割の増益を織り込み、株価も1割上昇が可能であれば、日経平均株価は来年にかけて「42,807円×1.1=47,087円」より、47,000円前後に上昇できると期待されます。
図表10 名目GDP成長と企業の利益成長は連動する傾向

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