日経平均株価の基調的上昇をもたらす要因は?

日経平均株価の基調的上昇をもたらす要因は?

投資情報部 鈴木英之 植田雄也

2025/09/02

日経平均は小幅反発、AI関連銘柄が下支え

8月第4週(8/25~8/29)の日経平均株価は、前週末比85円18銭(0.2%) 高と週足ベースで小幅ながら反発。26日(火)には、トランプ大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)人事に関する発言が市場心理を冷やし、為替市場では円高が進行。これを受けて日経平均は一時600円超の下落を記録するなど、リスク回避の動きが強まりました。

週後半の28日(木)には、米半導体大手エヌビディアの5~7月期決算が発表され、同社の好決算を背景に東京株式市場でもAI関連銘柄への選好が継続しました。市場全体としては外部環境の不透明感が残る中でも、成長分野への資金流入が相場を下支えする構図が鮮明となりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/25~8/29、図表7)には景気敏感株を中心とした銘柄群が並び、特にAIインフラ関連の半導体・電線セクターが投資家の注目を集めました。データセンター向け製品の需要が急増していることから、フジクラ(5803)は上場来高値を更新。古河電気工業(5801)も堅調な値動きを示しました。これらの企業は、光ファイバーや高性能ケーブルの供給を通じてAI関連設備投資の恩恵を享受しています。

また、ニコン(7731)は欧州眼鏡メーカーによる出資比率引き上げの提案を受けて急伸。企業価値向上への期待が買い材料となりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/25~8/29、図表8)にはIPコンテンツ関連銘柄が並びました。これらの銘柄にはトランプ関税対象外の報道を受けて資金流入が見られていました。その後関税懸念は後退し、投資家の物色対象が「業績・成長率重視」へとシフトしていった結果として、割高感のあるIP関連株には売りが先行しました。

また、日産自動車(7201)は、メルセデス・ベンツ年金信託による約1億4,000万株の売却報道を受けて下落。需給面での圧迫が株価の重しとなりました。

9月第1週のスタートとなる9/1(月)の日経平均株価終値は下落でスタート。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは前週末29日(金)、中国のアリババが新しいAI向け半導体を開発したと報道。米中のAI半導体の開発競争を巡る懸念から、アドテストをはじめとする半導体関連株が軒並み下落しました。株価指数先物が主導する形で日経平均は900円近くまで下げる場面もありました。

今週は米国経済指標が目白押しです。特に9/5(金)の雇用統計に注目が集まります。失業率は4.3%、非農業部門雇用者数は前月比+8.0万人程度の見通しです。8月末のジャクソンホール会議にてパウエル議長は、雇用市場のリスクに重点をシフトすることで、インフレが完全に目標を達成するのを待たずに政策金利を引き下げる可能性を示唆しています。そのため8月の雇用統計が7月分に続いて低調な内容だった場合、9月利下げの可能性は一段と高まると考えられます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/22~8/29)

図表8  日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/22~8/29)

日経平均株価の基調的上昇をもたらす要因は?

日経平均株価は8/19(火)取引時間中に43,876円の過去最高値を付けた後は下落に転じ、9/1(月)には一時41,835円まで下落しました。

日経平均株価が下落に転じた理由は第一に、過熱感が強まったためです。テクニカル的には一時、25日移動平均線からのかい離率が6%(通常は5%程度で「過熱」)、騰落レシオが155%(通常は130%で「過熱」)、RSIが73%(通常は70%で「過熱」)まで、それぞれ上昇しました。また、予想PERが一時18倍、PBRが1.6倍に接近し、ともに2012年以降の最高水準(「コロナ禍」の時期を除く)となり、投資家が上値追いに慎重となりました。また、日米で半導体・AI関連株の上昇が一服したことも影響しました。

今後はどうなるでしょうか。まず、テクニカル的には過熱感が解消しつつあります。日経平均株価の25日移動平均線は9/1時点で42,063円でしたが、日経平均株価そのものは冒頭に示した通り、一時41,835円まで下げましたので、同移動平均線と接触した形になりました。上昇基調の25日移動平均線まで株価が下がってくると、そこが当面のボトムになるケースが時々あります。騰落レシオは131%(9/1)でいまだ過熱圏にあるものの、RSIは44%(同)まで低下しています。

日経平均株価の予想PERは17.5倍、PBRは1.55倍(ともに9/1時点)で、引き続き2012年以降(「コロナ禍」の時期を除く)では高水準です。しかし、日本経済がインフレ基調に転換し、企業業績がその分押し上げられやすくなる中、市場(Bloombergコンセンサス)では日経平均採用銘柄は来期に向けて10%程度の純増益が見込まれています。日経平均株価の予想EPS(1株利益)の下げ止まりが確認されれば、市場がPERやPBRの上昇を許容してくる可能性もありそうです。

図表9  日経平均株価(日足)と25日移動平均線・同かい離率

上記のとおり、日経平均株価は高値からやや下げた水準にあるものの、半導体関連株等グロース株の下げに引っ張られている印象が強いのも実情です。 

図表10は「TOPIXバリュー指数」を「TOPIXグロース指数」で割った数値の推移を示しており、バリュー株の相対株価指数を示していると考えても差しつかえありません。この図表が示すように、バリュー株は相対的に強い状態が続いているとみられます。

大雑把に表現すれば、TOPIXバリュー指数は「低PBR株」、同グロース指数 は「高PBR株」の動きを示しているという理解でほぼ間違いないと思います。東証がPBR1倍割れ企業を中心に「改善要請」を出したのが2023年3月です。以降、PBR1倍割れの銘柄を中心に、資本政策の改善に向けた努力が広がり始め、PBRを上昇させる企業も増え始めました。

図表10は、低PBR企業の努力を示していると言え、外国人投資家が日本株を評価する要因になっています。企業業績の改善による内部留保の充実と、それを生かした資本政策の見直しは継続しており、日本株の上昇基調は継続しそうです。

図表10  バリュー株の相対的強さは低PBR銘柄の「努力」の結果?

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