アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~AI向けソフトウェアで業績好調のモンゴDB、スノーフレークとAI半導体関連銘柄~

投資情報部 榮 聡
2025/09/01
先週の米国株式市場は、9月FOMCでの利下げ期待、4-6月期GDPの上方改定を受けて上昇基調となりましたが、エヌビディア、マーベルテクノロジーなどAI半導体銘柄の決算が市場の期待を満足させることができず、週末に反落しました。今週の株価材料として、8月雇用統計、ブロードコムの決算、企業景況感などが注目されます。
今回は決算発表に絡むAI関連のソフトウェア、AI半導体銘柄に焦点を当て、モンゴDB(MDB)、スノーフレイク インク(SNOW)、エヌビディア(NVDA)、マーベルテクノロジーグループ(MRVL)、ブロードコム(AVGO)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

引き続き史上最高値の更新が続いて、8/28(木)には6,500ポイントの大台に到達しました。押し目を入れつつ上昇して、上昇の過熱感は見られません。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 2.5% | 4.8% | 9.6% |
金融 | 0.7% | 4.8% | 5.9% |
コミュニケーションサービス | 0.7% | 5.3% | 12.9% |
素材 | 0.0% | 6.4% | 6.7% |
情報技術 | -0.1% | 2.4% | 14.7% |
S&P500 | -0.1% | 3.6% | 8.8% |
不動産 | -0.1% | 2.3% | 1.3% |
一般消費財・サービス | -0.5% | 7.2% | 8.1% |
ヘルスケア | -0.6% | 4.6% | 3.5% |
資本財・サービス | -0.8% | 1.3% | 6.6% |
生活必需品 | -1.7% | 0.9% | -3.5% |
公益事業 | -2.1% | -2.1% | 2.7% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ウェルズ・ファーゴ | 3.9% |
アメリカン・エキスプレス | 3.8% |
アルファベット | 3.3% |
GEエレクトリック | 3.3% |
セールスフォース | 3.2% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ネクステラ・エナジー | -5.6% |
オラクル | -4.3% |
ファイザー | -4.3% |
チャーター・コミュニケーションズ | -4.3% |
キャタピラー | -3.8% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.1%、ダウ平均は0.2%、ナスダック指数は0.2%の下落でした。
8/22(金)のパウエルFRB議長の講演が9月FOMCでの利下げに道を開いたと捉えられて市場に安心感が広がり、また、4-6月期実質GDPの改定値が個人消費の上方修正を受けて前期比年率+3.0%から+3.3%に上方改定され、8/28(木)までは上昇基調となりました。
トランプ大統領がリサ・クックFRB理事を住宅ローンの契約に関する不正疑惑を理由に解任するとし、これに対してクック理事は訴訟で対応するとしました。FRBの独立性に対する懸念が再燃するとの警戒もありましたが、これまでのところ市場への影響は限定的です。
市場の注目を集めたエヌビディア決算は、5-7月期決算実績、8-10月期売上ガイダンスとも市場予想を上回ったものの、データセンター売上が予想を下回ったことで利食いが先行しました。また、翌日に決算を発表したカスタムAI半導体を手掛けるマーベルテクノロジーが失望決算となって市場のセンチメントを悪化させ、8/29(金)には週内の上昇を相殺する下落となりました。
業種指数では、米国の原油在庫の減少やロシアに対する制裁の思惑から原油価格が堅調となってエネルギーが上昇、銀行株指数が最高値を更新した金融、アルファベット A(GOOGL)が最高値を更新したコミュニケーションサービスもプラスを確保した一方、公益事業や生活必需品などディフェンシブが売られました。
上昇率トップのウェルズ ファーゴ(WFC)は、6/27(金)に公表された年次ストレステストを受けて実施された四半期配当金の引き上げで、リテールバンキングを行っている大手銀行の中で引き上げ率が最も高く(1株当たり0.40ドルから0.45ドルへ12.5%の引き上げ)なっていました。
今週の米国株式市場
S&P500指数は米大手証券各社の年末目標株価のうち高い方の予想(6,500~6,600ポイントが多い)に近づいています。その意味では、高値警戒感が生じやすいでしょう。
ただし、AI関連銘柄に対する物色動向に左右される面も大きいと見られます。S&P500指数採用銘柄の時価総額上位10銘柄のうち8銘柄はAIに関連する銘柄(マグニフィセント7+ブロードコム)で、構成比は35%を超えています。
AIに対する市場のセンチメント次第で、年末目標株価を超えてくる可能性もありますし、AIデータセンターの投資減速などが意識されると、予想外の調整となる可能性もあるでしょう。
今週の株価材料として、8月雇用統計、ブロードコムの決算、企業景況感などが注目されます。
8月雇用統計は、前月比7.5万人増の予想です。7月雇用統計では、過去3ヵ月は平均で3.5万人の増加にとどまり、労働市場の減速が決定的となりました。8月雇用統計は鈍化のペースを推し量るうえで重要と考えられます。
9/4(木)引け後にブロードコムの5-7月期決算が発表予定です。同社はカスタムAI半導体を生産しているほか、データセンター内で使用される通信機器向け半導体を手掛けるため、AI関連需要の動向を推し量る重要指標の一つと見られています。同社のAI半導体の主要顧客は米国の大手テクノロジー企業であるため、エヌビディアやAMDにある中国売上の不透明といった要因がなく、堅調な結果が見込まれています。
企業景況感では、9/2(火)に8月ISM製造業景気指数(前月の48.0から49.0に改善の予想)、9/4(木)に米国の8月ISM非製造業景気指数(前月の50.1から50.9に改善の予想)が発表予定です。製造業については低位安定の見通しで、非製造業については50前後での動きが続いています。
経済指標では上記のほか、9/3(水)に米国の7月製造業受注(前月比-1.4%の予想)、米国の8月ADP雇用統計(前月比8.0万人増の予想)などが予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週好決算を発表して株価が大幅に上昇したAIに関連するデータ管理ソフトウェアのモンゴDB(MDB)とスノーフレイク インク(SNOW)、好決算ながら市場の期待を満足させることができなかったエヌビディア(NVDA)、業績実績・ガイダンスとも市場予想を下回って株価が大幅に下落したカスタムAI半導体のマーベルテクノロジーグループ(MRVL)、さらに9/4(木)にAI半導体4銘柄のうち最後に決算を発表するブロードコム(AVGO)をご紹介いたします。
図表3 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (8/29) |
予想PER (倍) |
ポイント |
買付 | モンゴDB(MDB) | 315.61ドル | 84.8 | 【AIアプリを開発する会社に人気】 ・データベースソフトウェアの会社です。同社のデータベースソフトウェアは異なるフォーマットのデータに対しても機能することが特長で、スピードや状況変化への対応が求められる局面で優位性を発揮すると言われています。同社は年初来5000社以上の新規顧客を獲得して、その多くがAIアプリを構築している企業だと述べています。 ・5-7月期売上はAI関連需要の好調を背景に前年同期比24%増、調整後EPSは同43%増で、市場予想に対してそれぞれ7%、53%上回りました。8-10月期の売上ガイダンスも市場予想を上回り、通期の売上と調整後EPS見通しも上方修正しています。 | |
買付 | スノーフレイク インク(SNOW) | 238.66ドル | 198.9 | 【AI関連の需要が売上を押し上げる】 ・クラウドベースのデータ分析プラットフォーム(データウェアハウス)を展開している会社です。高速かつ高並列処理に対応したSaaSベースのデータウェアハウスソリューションを提供します。モンゴDB同様にAI関連の売上が業績を押し上げています。 ・5-7月期の売上は前年同期比32%増、調整後EPSは同94%増で、市場予想に対してそれぞれ5%、31%上回りました。8-10月期および2026年1月期通期の売上ガイダンスとも市場予想を上回りました。 | |
買付 | エヌビディア(NVDA) | 174.18ドル | 38.7 | 【アナリストは目標株価を引き上げ】 ・AI計算にGPU(画像処理半導体)が適していることにいち早く気付き、また、GPUを汎用コンピュータとして使うためのソフトウェアへの投資を行ってきたことから、需要が急増するAIコンピュータ分野で支配的地位を確立しています。 ・5-7月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回り、8-10月期の売上ガイダンスも市場予想を上回りましたが、データセンター向け売上が市場予想を下回ったのがやや失望を招きました。8-10月期売上ガイダンスには中国向け売上は算入しておらず、輸出が可能となれば20~50億ドルの上振れとなる可能性があります。総合的に好決算と判断され、アナリストは目標株価を引き上げています。 | |
買付 | マーベルテクノロジーグループ(MRVL) | 62.87ドル | 22.5 | 【8-10月期売上見通しが市場予想を下回った】 ・ハイパースケーラー向けにカスタムAI半導体を供給するほか、データセンターで使われるオプトエレクトロニクス製品が伸びていることでAI半導体関連銘柄として注目されています。5-7月期決算では、データセンター向け売上が市場予想を下回り、また、8-10月期の売上ガイダンスが市場予想を下回ったことが失望を招き決算翌日に株価が18.6%下落しました。 ・5-7月期決算は売上が前年同期比58%増、調整後EPSは同2.2倍に拡大、主力のデータセンター向け売上は同69%増でした。8-10月期の売上ガイダンスは前年同期比36%増に相当します。データセンター向けは5-7月期比横ばいのガイダンスです。 | |
買付 | ブロードコム(AVGO) | 297.39ドル | 35.8 | 【AI関連売上が業績をけん引】 ・特定顧客向けのAIアクセラレーター(エヌビディアのGPUと同様の機能をもつ半導体)や生成AIの計算量が巨大化したことでデータセンター内外で使用されるネットワーキング半導体の需要拡大が期待されます。 ・5-7月期のガイダンスでは売上が約158億ドル(前年同期比21%増相当)で、AI関連売上は2-4月期の44億ドルから51億ドルへ加速する見込みです。同社のAI半導体関連の顧客は米国の大手テクノロジーが中心のため、エヌビディアやAMDが直面する中国向け売上の不透明さといった問題がありません。9/4(木)に発表予定です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ブロードコムが2026年10月期、その他は2026年1月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
9月 1(月) |
・米市場休場(労働者の日) | |
2(火) | ・米ISM製造業景気指数(8月) ・米建設支出(7月) |
|
3(水) | ・米求人労働異動調査(7月) ・米製造業受注(7月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) ・セントルイス連銀ムサレム総裁が講演 |
セールスフォース |
4(木) | ・米チャレンジャー人員削減数(8月) ・米ADP雇用統計(8月) ・米新規失業保険申請件数(8月30日に終わる週) ・米貿易統計(7月) ・米ISM非製造業景気指数(8月) ・NY連銀ウィリアムズ総裁の講演 ・シカゴ連銀グールズビー総裁がQ&Aセッションに参加 |
ブロードコム、ルルレモンアスレティカ |
5(金) | ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、確報値) ・米雇用統計(8月) |
|
8(月) | ・NY連銀1年インフレ期待(8月) ・米消費者信用残高(7月) |
|
9(火) | ・日本工作機械受注(8月) ・米NFIB中小企業楽観指数(8月) ・米3年国債入札 |
オラクル(E) |
10(水) | ・米生産者物価指数(8月) ・米10年国債入札 |
|
11(木) | ・ECB主要政策金利 ・米消費者物価指数(8月) ・米新規失業保険申請件数(9月6日に終わる週) ・米家計純資産変化(4-6月期) ・米30年国債入札 |
アドビ |
12(金) | ・米ミシガン大学消費者信頼感指数(9月、速報値) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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