日経VIで読み解く「相場のカナリア」──暴落を味方につける投資戦略

日経VIで読み解く「相場のカナリア」──暴落を味方につける投資戦略

投資情報部 土居雅紹 植田雄也

2025/09/16

日経平均株価・TOPIXともに史上最高値更新!

9月第2週(9/8~9/12)末の日経平均株価は前週末比1,749円37銭(4.0%)高と週足ベースで大幅続伸。「AI需要」と「政局期待」が交錯する中で、投資熱の高まりから株高となった一週間でした。日経平均は週初から上昇基調を強め、週末には4万5,000円台目前まで迫る展開に。特にAI関連銘柄が相場を牽引し、SBG(9984)や半導体株が連日で高値を更新するなど、値がさ株中心に資金が流入しました。また、9/12(金)にはメジャーSQがありました。「45,016円28銭」と史上最高値で決まり、需給と期待の高まりがうかがえる結果となりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/5~9/12、図表7)には、半導体関連株やAI関連株が入りました。米利下げ期待の強さや、米半導体関連株の上昇を引き継いだ格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/5~9/12、図表8)には、医薬品や食料品といった銘柄が中心に入りました。AI関連需要を巡る不透明感が概ね後退したことで、投資家の選好がディフェンシブ銘柄から景気敏感株・成長株へとシフトしたと考えられます。

9月第3週の初まりとなる9/16(火)の寄付後に日経平均株価は史上初となる4万5,000円台の4万5,055円38銭を付けました。前日の米主要株3指数が最高値を揃って更新したことを引き継いだ格好です。日米ともに連日最高値を更新する中、今週は金融政策イベントが集中する「転換点」となりそうです。FOMCと日銀 会合が続き、市場では新政権への期待と金融緩和の流れが織り込まれ、さらなる株価上昇期待が高まっています。しかし、9/12(金)時点の日経平均株価の 予想PERは18.12倍、PBRは1.6倍です。過去10年の日経平均株価の推移(コロナ禍の特殊な時期とみられる2020年~21年を除く)をみると、PER18倍台以上で推移した例はありません。また、現在のPBRは過去10年で最高値圏です。このことを踏まえると、短期的な調整が入るリスクに注意が必要かもしれません。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/5~9/12)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/5~9/12)

日経VIで読み解く「相場のカナリア」──暴落を味方につける投資戦略

日経平均株価が最高値圏に位置する今、春先のトランプ関税ショックによる大荒れ相場など、まるで遠い昔の出来事のように感じられます。しかし、相場の急変はいつも突然やってくるもの。しかも昔に比べて、急変が起こる回数が多くなってきているようです。

そこで今回は、日経平均オプション価格から導出される「日経平均VI指数(以下、日経VI)」を使って、投資タイミングをどう計るかを考えてみたいと思います。

スパイクするVI──市場の悲鳴を聞け

図表9では、2001年から2025年までの日経平均株価と日経VIの動きを並べてみました。相場がクラッシュすると、オプション価格に反映される予想変動率(インプライド・ボラティリティ)が急上昇し、それに伴って日経VIもスパイクします。

特に注目すべきは、日経VI50を超えたタイミング。この水準を超えることは稀ですが、過去のデータを見る限り、ほぼ例外なく相場の大底と一致しています。まさに「相場のカナリア」と呼ばれる所以です。

日経VIと騰落率──嵐の後に咲く花

図表10では、日経VIの水準別に日経平均の日次騰落率を比較しました。

全期間平均:+0.03%(年率換算で約7.65%)

日経VIが30超:-0.25%

日経VIが50超:-0.79%

つまり、日経VIが高いときは相場が荒れている証拠。しかし、その後1カ月間の平均騰落率を見ると、

VI50超後:+0.12%

VI30超後:+0.05%

と、反転上昇の兆しが見えてきます。これは、日経VIのスパイクが「底打ちのシグナル」であることを裏付けています。

ロングポジションの見極め──VI40が分水嶺

図表11では、どの水準の日経VIを境にロングポジションを外すべきかを検証しました。結果は興味深く、

VI40までは保有が有利

VI45前後でパフォーマンスが急落

VI50超で再びパフォーマンスが改善

この動きは、相場の大荒れ時に反転上昇をうまく捉えられるかどうかが鍵となっているようです。VI65近辺でもパフォーマンスは改善しますが、変動が大きくなるため、リスク管理が重要になります。

結論として、ロングポジションを外す目安は「日経VI40」が妥当と考えられます。

戦略比較──「嵐の前に逃げ、嵐の後に拾う」

図表12では、以下の4つの戦略を比較しました:

戦略① 常時ロング

戦略② VI40以下のみロング

戦略③ VI40以下ロング、40超でショート

戦略④ VI50超確認後、1カ月だけロング

最も好成績だったのは日経VI40超でポジションを外す戦略②で、25年弱で約3.6倍のパフォーマンスでした。戦略③はショートも使って手間がかかる割には常時ロングの戦略①と同程度の結果でした。日経VI50超の後1ヵ月だけポジションを持つ戦略④は市場ショック時の落ち込みが少なく、安定した運用が可能なので効果的な戦略といえます。さらに戦略④の応用として、日経VI50超でプット売りやカバードコール(先物ロング+コール売り)を組み合わせれば、相場上昇とボラティリティ低下の両方から収益を狙える可能性があります。

図表9  日経VIが50を超えると相場は目先の底

図表10  日経VI50超え後の1カ月(20営業日)は大きくプラスで底入れを示唆

図表11  日経VIいくら以下なら投資継続するのがよいか? この期間では日経VI40以下がバランス良好

図表12  日経VIを先物・CFDの投資シグナル使うなら:日経VI40以下の間だけロングする戦略が最も有効か?

損失は限定的!日経平均の予想に応じたオプション取引戦略を動画でご紹介

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