アメリカNOW! ~AIデータセンター投資の恩恵を受けるエヌビディア、ブロードコム、アンフェノール、コーニング、オラクル~

投資情報部 榮 聡
2025/09/16
先週の米国株式市場は、雇用市場の鈍化が一層はっきりとして市場の利下げ期待が強化される中、オラクルの決算がAI需要の強さを示唆してテクノロジー株に対する物色を刺激、最高値更新に進みました。今週の株価材料として、FOMC(連邦公開市場委員会)、8月小売売上高、マイクロンテクノロジーの決算などが注目されます。
今回はAIデータセンター投資から恩恵を受けている銘柄から、エヌビディア(NVDA)、ブロードコム(AVGO)、アンフェノール A(APH)、コーニング(GLW)、オラクル(ORCL)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

8月初から9月上旬にかけてのもみ合いレンジを上放れました。一段高が期待できる形に見えます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は9/8(月)終値~9/15(月)終値によります。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
公益事業 | 3.6% | -0.2% | 5.2% |
コミュニケーションサービス | 3.5% | 8.2% | 20.3% |
情報技術 | 3.2% | 2.4% | 17.1% |
一般消費財・サービス | 1.9% | 4.8% | 13.3% |
S&P500 | 1.8% | 2.6% | 10.7% |
エネルギー | 1.4% | 2.9% | 0.2% |
金融 | 1.1% | 2.2% | 7.4% |
不動産 | 0.7% | 2.0% | 1.0% |
資本財・サービス | 0.7% | 1.0% | 6.6% |
ヘルスケア | -0.7% | 0.3% | 0.5% |
素材 | -1.0% | 0.9% | 5.0% |
生活必需品 | -1.1% | -2.3% | -1.6% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
オラクル | 26.7% |
テスラ | 18.4% |
ユナイテッドヘルス・グループ | 8.6% |
アルファベット | 7.5% |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 6.4% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
アクセンチュア | -6.9% |
ボーイング | -6.6% |
ダナハー | -5.1% |
クラフト・ハインツ | -4.7% |
テキサス・インスツルメンツ | -4.1% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.6%、ダウ平均は+1.0%、ナスダック指数は2.0%の上昇でした。主要3指数が揃って史上最高値を更新しています。
雇用市場の鈍化が一層はっきりとして市場の利下げ期待が強化される中、リセッションを懸念するほどではないとの見方が相場を押し上げました。また、オラクルの6-8月期決算はAIデータセンター投資の強さを再確認する結果となり、テクノロジー株に対する物色を刺激しました。S&P500指数は従来のもみ合いレンジを上放れています。
経済指標では、雇用統計の年次改定推計値(改定は来年2月)が91.1万人のマイナスとなり、また、新規失業保険申請件数の増加基調が確認されて、8月非農業部門雇用者数の下振れで強まった雇用市場の減速が一層はっきりしました。一方、8月生産者物価は前年比の伸び率が総合指数、コア指数とも前月値、市場予想値を下回って、市場の9月利下げ予想を強化しました。
業種指数では、原子力発電を手掛ける電力企業の上昇が目立った公益事業、アルファベットがけん引したコミュニケーションサービス、オラクルがけん引した情報技術などが3%以上の上昇となりました。個別銘柄で上昇率2位のテスラ(TSLA)は、取締役会がマスクCEOに10年で1兆ドルの報酬案を提示したことに呼応するかのように、9/12(金)にマスクCEOがテスラ株10億ドルを購入したことが明らかになりました。マスクCEOがテスラ株を購入したのは2020年2月以来です。
今週の米国株式市場
S&P500指数は6,500ポイント台後半に到達して、8月初めから9月上旬にかけてのもみ合いレンジを上放れました。株価チャートは一段高が期待できる形に見えます。
米大手証券10社による年末目標値の平均は依然として6,400ポイント台ですが、先週大手証券で初めてドイチェが目標値を7,000ポイントに引き上げて、目標値を上回って推移する現状を追認する動きも出ています。
上値を推し量るうえでのポイントは、AI関連銘柄に対する物色と考えられます。図表3の通りS&P500指数採用銘柄の時価総額上位8銘柄(マグニフィセント・セブン+ブロードコム)の比率は36%を超えていますが、いずれもテクノロジー株でAIに関連性のある銘柄です。AIに対する市場のセンチメント次第で、年内に7,000ポイントに到達する可能性がありそうです。
今週の株価材料として、FOMC(連邦公開市場委員会)、8月小売売上高、マイクロンテクノロジーの決算などが注目されます。
9/17(水)のFOMC結果発表では、政策金利の引き下げが確実とみられています。FedWatchの予想では、0.25%ポイントの利下げが96%、0.50%ポイントの利下げが4%の確率です(日本時間9/16(火)午前9時時点)。また、年内の利下げ回数は3~4回と予想されています。この予想に沿う声明文、議長の会見となるか注目です。
9/16(火)発表の8月小売売上高は前月比+0.2%の予想です。雇用市場の減速がはっきりしてきていますが、このような環境でも引き続き消費の堅調が維持されるか注目です。
マイクロンテクノロジーは、AIコンピュータでAI半導体と共に使用されるDRAM(揮発性の半導体メモリー)の大手です。先々週のブロードコム決算、先週のオラクル決算に次いで、AIデータセンター投資の動向を測る上で重要な指標の一つと言えます。
経済指標では上記のほか、9/17(水)に米国の住宅着工件数(前月比-4.4%の予想)・建設許可件数(前月比+0.6%)などが予定されています。
今週の5銘柄
先週はオラクルの決算発表を受けて改めてAI需要の強さが確認されました。そこで今回はAIデータセンター投資から恩恵を受けている銘柄に注目して、AI半導体からはエヌビディア(NVDA)、ブロードコム(AVGO)、電子部品からはアンフェノール A(APH)、コーニング(GLW)、最後に市場を驚かせる決算を発表したオラクル(ORCL)をご紹介いたします。
なお、エヌビディア、ブロードコムについては2025年8月20日掲載の「どうなる来週のエヌビディア決算!持続で良いのか!?」、アンフェノールについては2025年8月6日掲載の「AI投資の恩恵を受けるコネクタのアンフェノールとTEコネクティビティ」、コーニングについては2024年9月4日掲載の「株価大幅上昇のフジクラは北米DC向けが好調!!米国の類似銘柄を探る」もご参照ください。
図表3 S&P500指数の時価総額上位8銘柄

注:S&P500指数に占める比率は各銘柄の時価総額に基づいて筆者が計算したものです。9/10(水)のデータによります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (9/15) |
予想PER (倍) |
ポイント |
買付 | エヌビディア(NVDA) | 177.75ドル | 39.5 | 【アナリストは目標株価を引き上げ】 ・AI計算においてGPU(画像処理半導体)が適していることにいち早く気付き、また、GPUを汎用コンピュータとして使うためのソフトウェアへの投資を行ってきたことから、需要が急増するAIコンピュータ分野で優位な地位を確立しています。 ・5-7月期決算は売上・EPSとも市場予想を上回り、8-10月期の売上ガイダンスも市場予想を上回りましたが、データセンター向け売上が市場予想を下回ったのがやや失望感を招きました。8-10月期売上ガイダンスには中国向け売上は算入しておらず、輸出が可能となれば20~50億ドルの上振れ要因となる可能性があります。総合的に好決算と判断され、アナリストは決算発表後に目標株価を引き上げています。 | |
買付 | ブロードコム(AVGO) | 364.09ドル | 39.5 | 【AI関連売上が業績をけん引】 ・通信用半導体が主力の会社でしたが、VMウェアを買収してソフトウェアにも展開しています。市場の注目を集めているのは、特定顧客向けのAIアクセラレーター(エヌビディアのGPUと同様の機能をもつ半導体)や生成AIの計算量が巨大化したことでデータセンター内外で使用されるネットワーキング半導体の需要拡大です。 ・5-7月期の売上・EPS、8-10月期売上ガイダンスとも市場予想を上回って好調です。AI関連売上は2-4月期44億ドル、5-7月期52億ドルから、8-10月期は62億ドルへ増加するガイダンスです。5-7月期にAI半導体で見込み顧客の1社から量産発注を受けており、2026年10月期のAI関連売上は前年比50~60%増に引き上げられる可能性があると述べました。 | |
買付 | アンフェノール A(APH) | 119.24ドル | 39.2 | 【コネクターの世界的大手】 ・1932年創業のコネクタ大手で、航空宇宙や産業機器向けのコネクタに強みを持ちます。同業の買収に積極的で、8/4(月)には、コムスコープのブロードバンド接続部門を105億ドルで買収する意向と伝えられました。実現すれば、ネットワーク事業の強化につながると期待されます。 ・4-6月期決算は、売上が前年同期比57%増、調整後EPSが同84%増で、それぞれ市場予想を12%、21%上回って好調でした。高い売上の伸びには買収効果が含まれますが、オーガニックの売上成長も同41%増と非常に高くなっていますデータセンターでの強い需要が売上をけん引しています。 | |
買付 | コーニング(GLW) | 77.98ドル | 31.4 | 【AIデータセンターで光コネクタが伸びる】 ・光ファイバー、フラットパネル用ガラス基板、スマホ用ガラスなどガラス関連の各種事業を展開する企業です。現在業績拡大をけん引しているのは2025年4-6月期に売上の39%を占めたオプティカルコミュニケーション部門で、売上は前年同期比41%増でした。AIデータセンター向けに光コネクターが大幅に伸びています。 ・4-6月期は売上・EPSとも市場予想を5%上回って好調でした。ディスプレイテクノロジー部門、自動車部門は前年同期比減収ですが、オプティカルコミュニケーション部門の伸びでカバーされました。関税の影響は市場で懸念されたほど大きくはありませんでした。 | |
買付 | オラクル(ORCL) | 302.14ドル | 44.3 | 【AI向けにクラウド・インフラストラクチャが急増】 ・データベースソフトウェアの世界最大手として有名ですが、最近はクラウドサービスが成長をけん引しています。2025年6-8月期の売上構成比は、クラウド48%(前年同期比28%増)、ソフトウェア38%(同1%減)、ハードウェア5%(同2%増)、サービス9%(同7%増)です。 ・クラウド売上の半分弱を占めるクラウド・インフラストラクチャがAI向けに伸びて前年同期比55%増となり、8月末の受注額指標は5月末の3.3倍に急増して市場を驚かせました。会社はクラウド・インフラストラクチャの年間収入が、2026年5月期の180億ドルから今後4年間にわたり320億ドル、730億ドル、1,140億ドル、1,440億ドルと推移すると見込みます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアは2026年1月期、ブロードコムは2026年10月期、オラクルは2026年5月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
15(月) | ・米NY連銀製造業景気指数(9月) | |
16(火) | ・米小売売上高(8月) ・米鉱工業生産(8月) ・米NAHB住宅市場指数(9月) ・米20年国債入札 |
|
17(水) | ・日本機械受注(7月) ・米住宅着工・建設許可件数(8月) ・FOMC政策金利 |
・メタの開発者会議「メタ・コネクト」(18日まで) ゼネラルミルズ |
18(木) | ・米新規失業保険申請件数(9月13日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(9月) |
フェデックス、レナー、ダーデンレストランツ |
19(金) | ・アップルの新製品群の発売 | |
22(月) | ・米シカゴ連銀全米活動指数(8月) ・セントルイス連銀ムサレム総裁の講演 ・クリーブランド連銀ハマック総裁の講演 |
|
23(火) | ・S&Pグローバル日本製造業PMI(9月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(9月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(9月) ・米中古住宅販売件数(8月) ・米2年国債入札 |
マイクロンテクノロジー、オートゾーン |
24(水) | ・ドイツIFO企業景況感指数(9月) ・米新築住宅販売件数(8月) ・米5年国債入札 |
|
25(木) | ・米実質GDP(4-6月期、確報値) ・米耐久財受注(8月) ・米新規失業保険申請件数(5月24日に終わる週) ・シカゴ連銀グールズビー総裁の講演 ・米7年国債入札 |
アクセンチュア、コストコホールセール |
26(金) | ・米個人所得・個人支出(8月) ・米個人消費支出物価指数(8月) ・米ミシガン大学消費者信頼感指数(9月、確報値) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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