日経平均の先高観を示唆する意外な指標は?

投資情報部 鈴木 英之 植田 雄也
2025/11/11
高値更新後で利益確定売りが優勢
■11月第1週(11/3~11/7)の株式市場動向
・日経平均株価11/7(金)終値は50,276円37銭で、前週末比2,134円97銭(4.08%)の下落。
・日経平均株価の変動要因
①11/4(火):年初来高値を更新する場面もありましたが、過熱感から利益確定売りが優勢となり、終値は前週末比で反落しました。
②週中:米ハイテク株の調整や日経平均株価のテクニカル的な過熱感から、11/5(水)の日経平均は2,423円の急落で一時5万円割れとなりました。
③11/7(金):米政府閉鎖が続く中、米雇用の弱さが示されリスク回避が広がりました。
■ 騰落率の傾向(10/31~11/7)
・上昇率上位:首位の住友ファーマ(4506)は26年3月期の連結純利益を従来予想の400億円から920億円(前期比3.9倍)と、大幅な上方修正を行ったことが好感され買われました。
・下落率上位:半導体関連株やハイテク株全般に調整圧力が強まりました。首位のソシオネクスト(6526)は26年3月期の純利益を105億円から67億円(同65.8%減)と、下方修正を行ったことが嫌気され売りが入りました。開発費が重荷となったとのことです。
■ 11月第2週のスタート(11/10)
今週で終盤を迎える決算発表ですが、11/10(月)時点で日経平均構成銘柄のうち約7割にあたる160社が決算を発表しており、そのうち約64%がBloombergのまとめたアナリスト予想を上回る利益サプライズを出しています。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/31~11/7)
図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/31~11/7)
日経平均の先高観を示唆する意外な指標は?
■移動平均線を使ったテクニカル分析の基本
移動平均線は、株価のトレンドを把握するために使われる代表的なテクニカル指標です。
日足では 25日移動平均線、100日移動平均線、200日移動平均線、週足では 13週移動平均線、26週移動平均線などがあります。今回は、最もよく使われる移動平均のひとつである 25日移動平均線 に注目します。
■25日移動平均線とは?
名前は難しそうですが、計算は簡単です。
25日移動平均とは、過去25営業日の終値を合計し、25で割った値です。
例えば、2025年11月7日(金)の日経平均株価の25日移動平均は 49,031円(小数点以下切り捨て)でした。
この計算は、日足データとExcelがあれば誰でもできます。
この25日移動平均を毎日つなげたものが 25日移動平均線です。
投資家の間では「過去25日間の平均的な買いコスト」と理解する考え方があります。
■強気相場と弱気相場の見分け方
「強気相場」「弱気相場」という言葉には厳密な定義はありませんが、一般的にはこう考えます。
- 強気相場:株価が25日移動平均線より上 → 買い方が利益を出している人が多い
- 弱気相場:株価が25日移動平均線より下 → 売り方が優勢
例えば、11月7日の日経平均株価は 50,276円、25日移動平均は 49,031円なので、強気相場と判断できます。
◎ポイント
- 強気相場で株価が移動平均線に近づくと「押し目買い」が入りやすく、下値の抵抗線になります。
- 逆に移動平均線を割り込むと、投資家心理が「強気」から「弱気」に変わり、売りが加速しやすくなります。
■乖離率で相場の過熱感をチェック
相場が「上げ過ぎ」や「下げ過ぎ」になっていないかを判断するのに便利なのが 移動平均線乖離率です。
これは、株価が移動平均線からどれだけ離れているかを%で示します。
◎目安(25日移動平均線の場合)
- -7.5%以上乖離(下方向) → 下げ過ぎ、底打ちが近い可能性
- -5.0%以上乖離(下方向) → 下げ過ぎ、反発準備
- +5.0%以上乖離(上方向) → 上げ過ぎ、天井警戒
- +7.5%以上乖離(上方向) → 上げ過ぎ、ピークアウトが近い
◎実例
- 昨年8月や今年4月の急落では、日経平均が移動平均線から -7.5%以上下方乖離 → その後急反発
- 今年10月末には +8.9%上方乖離 → 直後に急落(10/31終値52,411円 → 11/5に一時49,073円まで下落)
■覚えておきたい格言
「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福の中で消えていく」
乖離率の目安と合わせると、
- -7.5%乖離 → 悲観(底打ち)
- -5.0%乖離 → 懐疑(反発準備)
- +5.0%乖離 → 楽観(天井警戒)
- +7.5%乖離 → 陶酔(ピークアウト)
◎チャート確認方法
SBI証券のチャートツールで「エンベロープ」を選択すると、移動平均線と乖離率を簡単に計算できます。
図表9 日経平均株価と25日移動平均線かい離率の推移(日足)
■移動平均乖離率とトレンドの重要性
移動平均線乖離率は、相場が「上げ過ぎ」や「下げ過ぎ」になっていないかを判断するための便利な指標です。しかし、中期的な相場の方向性を見極める際には、意外な盲点があります。
図表10では、日経平均株価の25日移動平均乖離率が「久しぶりに」+7.5%を超えた日を基準日とし、その1カ月後および3カ月後の騰落率を調べています。「久しぶり」とは、日経平均株価が25日移動平均線+7.5%未満で10営業日以上推移したことを意味します。
過去20年間で、この条件を満たしたケースは多くありません。しかし、意外にも株価が上昇するケースが目立ちます。2005年12月以降、本年5月までに同様の事例は14回あり、その後の騰落率は 1カ月後・3カ月後ともに「10回上昇・4回下落」 という結果でした。
直近では、本年10月6日(月)に日経平均株価の乖離率が8%となり、+7.5%を超えました。その後、1カ月後の11月6日(木)までに株価は 6.1%上昇 しています。
ここで重要なのは、乖離率だけでなく「トレンド」です。図表9を見ると、25日移動平均線そのものが鋭く上昇しており、強い上昇トレンドが確認できます。移動平均線からの乖離率が大きく、かつ移動平均線自体が強く上向いている場合、過熱感はむしろ中期的な上昇を示唆することがある点に留意すべきです。
図表10 日経平均株価・25日移動平均上方乖離率+7.5%到達後の日経平均株価
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日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。
・ 指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。
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