【保存版】日経平均はもう高値?まだ割安?

投資情報部 鈴木英之 植田雄也
2025/12/09
日米金融政策決定会合を控え、上値が重い展開
■12月第1週(12/1~12/5)の株式市場動向
日経平均株価12/5(金)終値は50,491円87銭で、前週末比237円96銭(約0.47%)の上昇でした。
・日経平均株価の変動要因
①週初(12/1):米長期金利の再上昇 と 暗号資産急落によるリスクオフ。 日本株もその流れを受け、ハイテク株中心に利益確定売りが優勢となりました。
②週中(12/2~12/4):米国における利下げとロボティクス関連の政策期待による株高が相場の追い風となりました。12/4には終値ベースで5万円台を回復しました。
③週末(12/5):日銀の利上げ姿勢維持との報道が株式市場には逆風となりました。
■ 騰落率の傾向(11/28~12/5)
・上昇率上位:半導体・電子部品関連を中心に強い上昇を見せました。米国ハイテク株の上昇とFRBの利下げ観測によるリスクオン姿勢が主な要因となりました。
・下落率上位:電力会社が3社入りました。日銀の利上げ観測の高まりを背景に、負債・設備投資比率の高い公益セクターは、資本コスト上振れ懸念から相対的にアンダーパフォームとなりました。
■ 12月第2週のスタート(12/8~12/9)
12/8(月)にSOX指数が約1カ月ぶりに最高値を更新しました。その流れを引き継ぎ日本株の上昇を期待したいところですが、日米の金融政策決定会合を控える中で、上値が重い展開になっています。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
図表2 日経平均株価
図表3 NYダウ
図表4 ドル・円相場
図表5 主な予定
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(11/28~12/5)
図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(11/28~12/5)
【保存版】日経平均はもう高値?まだ割安?
2025年もまもなく終わろうとしています。過ぎし日を振り返り、新しい年を展望するにあたり、日経平均株価の長期推移を理解しておくことも悪くないでしょう。
■バブル崩壊(1990年1月)から金融危機底値(1998年10月)まで
・株価や不動産の急騰に象徴される「平成バブル」は1989年12月にピーク
・不動産融資を強く規制する「総量規制」(1990年3月)も手伝い、バブル崩壊が加速
・景気悪化に対応し、低金利継続と財政出動を中心とする総合経済対策(1992年8月)でいったん底入れ
・日米貿易摩擦や円高を背景に1995年春に向けて再び下落
・消費税率引き上げ以降株価が再び下落。アジア金融危機(1997年7月)で不透明感が増幅
・不良債権処理の遅れもあり、1997年・98年に大手銀行・証券で破綻が続く
・金融再生法(1998年10月)で底入れ
■金融危機底値(1998年10月)から「アベノミクス」スタート(2012年11月)まで
・米国発でインターネットの普及を背景に「ITバブル」が展開
・相場の過熱や光通信の業績悪化、日経平均採用銘柄大幅入れ替えを契機にバブルが崩壊
・持合解消や代行返上が本格化し、需給悪化から2003年4月まで下落
・りそな銀行の国有化(当時)等があり、日本経済の不良債権問題は事実上終息
・米住宅バブルもあり2007年7月まで株価が上昇
・2007年にサブプライム問題が本格化、リーマンショック(2008年9月)を経て金融危機へ
・民主党が総選挙(2009年8月)で大勝し、民主党政権がスタート
・野田首相(当時)と安倍自民党総裁(当時)の党首討論(2012年11月)が「アベノミクス相場」のスタート
■「アベノミクス」スタート(2012年11月)以降現在まで
・2013年4月に、日銀が「異次元の金融緩和」を打ち出し相場上昇が加速
・英国が国民投票(2016年6月)でEU(欧州連合)から離脱(いわゆるBrexit)を決定し、内外の株式市場が下落
・新型コロナウイルス感染症について、WHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言(2020年3月)
・2020年3月に世界の主要中央銀行が金融緩和を強化し、株価が反発に転じる
・新NISA(少額投資非課税制度)の導入(2024年1月)で東京株式市場に資金流入
・日経平均株価は2024年2月にバブル期の史上最高値を更新
・日経平均株価は2025年10月に史上初めて5万円台に到達
現在の上昇相場は「アベノミクス相場」を起点としているように見受けられます。2012年11月末終値(9,446円)から本年12/5終値(50,491円)まで日経平均株価は約5.3倍の上昇率になっています。
高値警戒感が出ても不思議ではありません。
図表9 日経平均株価(月足)の長期推移(1989年1月~2025年12月)
■長期的には、米国株と比較して出遅れ感が顕著
上記したように、2012年11月末終値(9,446円)から本年12/5終値(50,491円)まで日経平均株価は約5.3倍の上昇率になっています。同じ期間の米S&P500指数は、1,416.18→6,870.40で4.85倍の上昇率ですから、相対的にも好パフォーマンスといえそうです。
もっとも、同じ期間、ドル建て日経平均株価(Quickベース)の上昇率は、円安・ドル高の影響で2.84倍にとどまります。海外投資家から見れば日本株の方が出遅れているように映るでしょう。
また、東京株式市場が平成バブルの高値を付けた89年末終値(38,915円)から12/5高値までの上昇率は29%です。S&P500指数は89年末353から12/5まで19倍の上昇です。平成バブル崩壊後の長期低迷が響いており、長い視点で考えれば、東京株式市場の出遅れは顕著であると考えられます。
■2026年はPBR(株価純資産倍率)の水準訂正に期待
図表10は日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)を、そのデータをQUICKから採取できる1995年7月以降について、月足で折れ線グラフにしたものです。
ある会社を時価総額(株価×発行済株式数)で買収し、負債をすべて返済し、手元に残る金額が純資産です。このため、純資産は別名「解散価値」と言われます。株価が純資産の何倍で買われているのかを示しているのがPBRで、株価の割高感や割安感を示す投資指標のひとつです。日経平均株価採用銘柄をひとつの会社に見立てた場合のPBRの推移が図表10となります。
日経平均株価のPBRは1995年7月~2008年5月の期間はおおむね1.5倍~3倍で推移してきました。これに対し、2008年6月以降、おおむね1.5倍以下で推移しています。図表の期間中のPBR(月足)の平均は1.58倍ですから、2008年6月以降は「平均」以下での推移が長かったことになります。
図表9で見てきた通り、1995年~2008年の東京株式市場は、不良債権問題に悩み、株式市場の需給悪化に見舞われ、サブプライム問題の不安に襲われた期間です。しかし2008年6月以降は、リーマンショックを乗り越え、2012年11月以降は上昇が本格化しています。前者の時期の方が株価が純資産に対し高く買われ、後者の時期の方が純資産に対して安く買われているという矛盾した状態にあるとみられます。
言い換えれば、デフレ時代の株価の方が「高評価」で、脱デフレの時代の株価の方が「低評価」ということになります。本年12/5時点の日経平均株価のPBRは1.67倍です。1995年7月以降の平均値を少し上回る程度にとどまっています。日経平均株価のPBRにはまだ上昇余地があるのではないでしょうか。
2026年は日経平均株価が上昇し、PBRが回復する展開に期待したいところです。
図表10 日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)の推移(月足)
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