どうなるエヌビディア?どうなる日経平均?

どうなるエヌビディア?どうなる日経平均?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/08/27

日経平均は一進一退。エヌビディア決算控え、様子見気味

8月第3週(8/19-23)の日経平均は、前週末比301円6銭高(+0.79%)と週足ベースで続伸。8/16(金)に38,000円台を回復後、一進一退の展開です。日銀総裁のハト派発言で安心感が広がりましたが、日本時間23日(金)夜にFRB議長講演を控え、警戒ムードが漂いました。ジャクソンホール会議のFRB議長講演では、9月利下げ開始を確信づける発言が行われ、23日(金)米国市場は主要3指数が揃って1%超の大幅高となった格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/16~8/23・図表7)の首位は、製薬会社の住友ファーマ(4506)でした。7月末の4-6月期決算発表と同時に、国内社員数の2割にあたる800人の早期退職募集を発表しました。このような販管費の削減のほか、基幹商品の成長等で黒字転換への確度が上昇しました(特許切れの影響で24.3期は2期連続最終赤字)。さらに、5日(月)にはiPS由来の網膜細胞を使用した臨床実験実施を発表。アナリストによる投資判断や目標株価の引き上げが相次ぎました。2位は、セブン&アイ・ホールディングス (3382)はカナダのコンビニ大手に買収提案を受けたことが19日(月)に報じられた後、大幅高となりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/16~8/23・図表8)の首位は、三越伊勢丹ホールディングス(3099)でした。為替相場が円高・ドル安になり、インバウンド需要が剥落するとの懸念が広がったと考えられます。他には、半導体関連企業など電気機器や機械など、海外向け売上高比率が一定以上あるグロース株が多数顔を並べました。

8月第4週(8/26-8/30)の日経平均は下落スタート。FRB議長発言によるハト派発言を受け、為替相場が円高ドル安方向に進行したことが重しとなりました。ただ、海外売上高比率が高い銘柄が売られる一方、食品などの内需関連銘柄が下支えた格好です。週半ばには、本年の株式相場をけん引してきたエヌビディア(NVDA)の2Q(5-7月期)決算が発表予定です。受託製造やサーバー導入を行う同社関連企業の直近決算動向から、上方修正の余地もあると考えられます。ただ、新製品「ブラックウェル」の量産出荷が遅延するとの観測もあり、ガイダンスにどの程度影響を及ぼすか注目です。同社の決算発表は、日本の半導体関連株、ひいては日経平均株価の方向感を左右する大きな材料となり得ると想定されます。米国市場では、持ち高調整とみられる売りが発生しており、警戒ムードが高まっています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(8/16~8/23)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(8/16~8/23)

どうなるエヌビディア?どうなる日経平均?

8/26(月)の日経平均終値は38,110円でした。8月初旬の急落から順調に回復し、8/16(金)に38,062円に到達しましたが、そこからは38,000円を挟んだ値動きが続いており、株価の回復に頭打ち感が見られます。

先週(8/20)の225ココがPOINT「乱高下に注意?二番底の可能性を排除できないそのワケは?」でも指摘しましたが、日経平均は再び調整局面に入り、二番底をつける可能性があると考えられます。現状、国内株式市場は一見すると落ち着いた値動きのように見え、「二番底のリスクがある」と言われてもピンとこない方が多いかもしれません。

しかし、円相場(ドル円相場)に目を向けると、8月初旬に日経平均が急落した際に一時1ドル=141円台へ円高・ドル安が進んだ後、日経平均が値を戻したタイミングで1ドル=149円台へ値を戻したものの、8/26(月)には再び1ドル=143円台へ円高・ドル安が揺り戻されています。こうした値動きを見ると、円相場については(ドルが円に対し)二番底をつけに行く展開になっているように見えます。

図表9 円相場と日経平均

先週末以降の円相場が再び円高・ドル安となった要因は、8/23(金)に米ワイオミング州で行われたジャクソンホール会議でパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長が、米インフレはFRBの目標である2%に向かいつつあるため、金融政策を調整する「時期が来た」と発言し、次回(9/17・18開催)のFOMC(連邦公開市場委員会)で利下げに着手する可能性を示唆したことです。

一方、国内でも同日、植田日銀総裁が衆院財務金融委員会で「内外の金融資本市場は引き続き不安定な状況にある」と指摘しつつも、金融政策の方向性については、日銀が想定する経済・物価見通しが実現する確度が高まれば、金融緩和の調整を行う方針は変わらないと答弁。改めて金融引き締めを継続する姿勢を示しました。

FRBと日銀の金融政策の方向性の違いが鮮明となったことで、日米金利差(米国金利-日本金利)の縮小観測が強まったことで、円相場は円高・ドル安が進みました。

また、投機筋が円売りポジションを縮小したことも円高・ドル安が進んだ背景と考えられます。シカゴ商品先物取引所が公表している円ポジションのデータでは、投機筋を含む非商業の円ポジションは、4月下旬や7月上旬に記録的な円売りポジションとなりました。そうした中、円相場は7月上旬に一時1ドル=162円へ円安・ドル高が進みました。しかし、7月中旬以降は、円売りポジションが急激に縮小すると、8月中旬には円買いへ転換しました。投機筋の間で円の先高観が強まっているか否かは不明ですが、少なくとも過度な円先安観は鳴りを潜めたと見られます。

このところの円相場の動きは、日本株にとってリスク許容度を測るバロメーターのような働きとなっています。それだけに円高・ドル安により円相場が二番底をつけに行く展開は、日経平均にとって嫌な展開と言えるでしょう。

図表10 円相場と投機筋の円ポジション

もっとも、現状は円相場の値動きに比べると、日経平均は相対的に見て底堅いように見えます。その理由としては、米国株式市場の堅調が日本株を下支えしていることが挙げられます。

米国株式市場は、米国経済が緩やかに減速することで景気後退を回避する、いわゆるソフトランディングへの期待と、ジャクソンホール会議におけるパウエル氏の発言に見られたような、金融緩和への期待を手掛かりに堅調に推移しています。ただし、先週の225の『ココがPOINT!』でも指摘したように、米国株式市場にとって良い処取りのようなシナリオは、徐々に維持することが難しくなってきていると思われます。米国株が調整局面を迎えれば、日本株も下支えを失うことになる可能性に注意する必要があります。

そうした中、今週は8/28(水)にAI半導体大手エヌビディアの四半期決算(24年5-7月期)が発表されます。AI関連の筆頭銘柄ともいえる同社の決算は、度々アナリストの事前予想を更に上回る好決算となり、決算発表後に同社株だけではなく、米株式市場の押し上げにもつながりました。

Bloombergが集計するエヌビディア株に対するアナリストの投資判断(8/26時点)は、アナリスト74人中、約9割が「買い」判断とする一方、「売り」判断はゼロとなっています。ほとんどのアナリストが同社株について強気の見通しを示す中、今回の四半期決算についても、引き続き高い利益成長、および成長見通しが示されるとの期待が高まっていると言えるでしょう。

ただ、業績拡大および株価上昇への期待が高まる一方で、決算が期待に届かない場合の失望の大きさに注意する必要があるかもしれません。また8月上旬には、同社の次世代AI半導体「ブラックウェル」が設計上の不備で投入が遅れる見込みと報じられており、今回の決算で追加の情報が示される可能性があります。同社株への期待が非常に高いだけに、少しでもネガティブな情報があれば、株価下落の材料になることも考えられます。

四半期決算を受けたエヌビディア株の動向は、米国株式市場だけではなく、日本株にも大きな影響を及ぼす可能性が高いだけに、その動向が注目されるでしょう。

図表11 エヌビディアの1株利益(実績&予想)

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